「何度言葉を尽くしても分からないか、モードレッド卿。此処で1つ、どちらに義があるかはっきりさせて置くべきでしょうね…」
「その他人行儀は聞き飽きたぜ父上、いや、アーサー王。良いぜ、丁度いいや、ここいらでケリをつけてやりてぇな、って思っていたんだ…!」
人理継続保障機関『フィニス・カルデア』とある一室、其処では今、現世では『アーサー王』という男性の王として世界中に知られているブリテン(現在のイギリス)の女王アルトリア・ペンドラゴンと、その娘(息子では無い)にしてアーサー王直属の騎士団『円卓の騎士』の一角を占めた騎士モードレッドが、互いににらみ合い、殺気を撒き散らしていた。
その殺気の鋭さは凄まじいの一言で、同じ部屋にいた、ウェディングドレスらしき純白の衣装を身に纏った帝政ローマの暴君ことネロ・クラウディウスも、百年戦争において窮地に陥っていたフランスを救った聖女ジャンヌ・ダルクの闇落ちした姿ことジャンヌ・オルタも、幕末の日本で最強の剣士と呼ばれた新選組1番隊組長こと沖田総司も(念のために言うが、全員女性である)、我関せずの態度で部屋の隅っこに移動する程であった。
「総司、これって一体どんな状況…?」
「何か物凄い気配がしましたけど…」
「あ、マスターにマシュさん。実を言うとですね…」
其処に、ただならぬ様子を察知した、彼女達のマスターである藤丸立香と、元はカルデアに勤務する少女であったデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライトが入室し、総司に何事かを尋ねた。
それに総司が答えようとした、その時、
「「マスター!」」
「な、何、アルトリアに、モードレッド?」
それを聞きつけたのか、アルトリアとモードレッドが、揃って立香に詰め寄って来た。
「正直に答えてくれよ、マスター…」
「貴方の回答に期待しています、マスター」
「え、えーと…」
その様子に立香がたじろぐも2人共にそんなの関係ないと言わんばかりに、
「戦隊モノっつったらリーダーは赤いヤツがやるのが常識だろ!」
「さっきから言っているでしょう、モードレッド卿!貴殿の言うその常識など時代遅れだと!そうでしょう、マスター!」
「…へ?」
そう、聞いて来た。
「何が時代遅れだ、今やっている宇宙戦隊だって赤がリーダーじゃねぇか!」
「そんな後々交代の可能性がある物を例に上げられても困ります!その点、つい最近フィナーレを迎えた動物戦隊は青がリーダーでした!他にも特捜戦隊に侍戦隊、天装戦隊は青がリーダーです!」
「2つ目の奴ちげぇだろ!それVシネマの方で、本編じゃあ赤がリーダーだぞ!3つ目の奴だって最終的な判断は赤いヤツがするじゃねぇか!」
そのどう反応したらいいかという立香を他所に、2人の口論はヒートアップしていた。
「え、えーとですね、ほら、私達って他人とは思えない位にそっくりじゃないですか、それで折角だから戦隊を組んでみよう、という話題が上がったのですが、リーダーをどうするかで、アルトリアさんとモードレッドさんが、あのようにモメてしまって…」
「あー、そういう事なんだ…」
「どうツッコんだらいいんでしょうか…?」
此処で総司からの説明が入り、何とも言えない様子の立香とマシュ。
「序でに言わせて貰うと、特撮ヒーローって言ったら赤いヤツが主役って、相場が決まっているんだよ!」
「それこそ時代遅れだ!今放送されている仮面ライダーエグゼイドを見なさい、主役がピンクですよ、ピンク!何処のプリキュアだと言わんばかりの配色です!それを含め、赤い仮面ライダーが主役だった事など、此処十年ではドライブに、百歩譲ってもウィザード位の物だ!」
「言いやがったな!だったら青いヤツが主役になった事あんのかよ!精々ブレイド位じゃねぇか!」
「フォーゼも最終フォームは青です!それに龍騎もTVスペシャルで主役が青になった!見ましたか、あの力尽きた盟友からカードデッキを託され、未だ続く戦いに赴いて行く主人公の姿を!」
「それ結局大元は赤じゃねぇか!」
「まあ、こういう感じでケンカ出来るって、ある意味幸せで平和なんだろうな…」
「先輩、遠い目をしないでください」
今尚口論が絶えないアルトリアとモードレッド、それを見る立香は、何処か諦めたかの様にそう呟いていた…