ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
次に気付いた時、周りはとても大きな建物で影になっている場所だった。私はすぐにそこがどこだかわかった。小学校にあった校舎と体育館の裏で、焼却炉があるくらいしかない。手をみれば、小さくなっている。
「よぉ、みつけたぞ」
「へへへ」
「こんなところに隠れてやがったか」
こいつらから、私は逃げてこんなところまできたんだった。三人は私を囲むように移動してきて、逃げ道を防がれる。これからの展開も前は何回も見てきた。でも、彼等の名前は思い出せない。
「こいつ"無個性"の癖に生意気なんだよ!」
「せっかくだから、"個性"の実験台にしようぜ」
「いいな、それ」
「じゃあ……」
炎人間の"個性"をもつ子が、身体中から炎をだして近づいてくる。私は恐怖で動けなくなり、しゃがみ込みこむ。
「おい、動けないように縛れ」
「おっけー」
地面から植物の蔦が生えてきて、私の手足を縛って焼却炉に貼り付けにしてくる。だんだんと近づいてくる熱さに悲鳴をあげながら、逃げようと暴れ回る。それでも逃げられずに炎の手が私の顔に近付いてくる。
「やめてっ、やめてっ! 熱いっ、熱いのっ! 死ぬっ、死んじゃうからっ!」
「この程度で死ぬかよ。そういや、○○のは面白い"個性"だったよな」
「ああ、俺の"個性"はペインだ。対象の痛覚を何倍にも引き上げて、持続性を持たせるって聞いたぜ」
「使ってみようぜ」
「そうだな」
「やっ、やめてっ! あやまるからっ、なんでもするからっ!」
どんなに泣き叫んでも、許して貰えずに顔に触れられる。すると、身体中が痛くなってくる。
「よし、どんな感じか試すぜ!」
「おうよ」
「ひっ!? あっ、あぁ……ぎぃゃあああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ‼‼‼ あづいぃいいいいいいっ‼‼ 痛いぃいいいいぃぃぃぃっ!?」
身体を焼かれる激痛で意識を失っても、直ぐに痛みで覚醒して、また痛みで気絶していく。そんな私を楽しそうに笑いながら見詰めてくる男の子達。
「おい、ちょっとやりすぎたかも……」
「焼却炉に入れちまおうぜ」
「そうだな……燃やしちまえばいいだろ」
焼却炉に投げ込まれ、炎を放たれて私は燃えていく。
「何をしているのっ!」
「やべっ!」
「逃げろっ!」
「今はそれどころではないわね。大丈夫、私がきたから」
焼却炉ごと吹き飛ばされ、私は炎の中から救助されてそのヒーローの人に助けられた。
次に気が付いた時、進路指導室のソファーに寝かされていた。周りには私を守るかのように沢山のミシャグジさまが集まっている。
「大丈夫かい?」
「う、うん……」
「そうか。それはよかった。しかし、よもやあのようなことがあったとは……しかし、彼女は……」
「本当に諏訪子が助かっていたのは奇跡よ」
お姉ちゃんが震えている私を抱きしめてくれる。それでちょっとは落ち着いてきた。私も詳しく覚えていない内容だった。詳しく聞くと、お姉ちゃんがオールマイト先生に事件のことを私が気絶している間に話したみたい。
「原因はわかった。解決方法は火に慣れることしかない。大丈夫かい?」
「やる。お願いします」
「諏訪子、大丈夫なの?」
「うん。何時までも克服できないのは嫌だしね」
「やる場所は指定させてもらうよ。人がいるところだと危険だからね。それと先生の言うことには必ず従うように」
「はい」
それから、何度か訓練してから家に戻るけどやっぱりうまくいけない。
その日、家に帰って眠ると諏訪子様と早苗お姉ちゃんが向かえてくれた。
「悩んでいるみたいですね。どうしたのですか?」
「実は……」
「トラウマの克服だよ。全身焼かれたからね~」
「酷いですね……克服ですか。任せてください。妹のためにお姉ちゃんが人肌脱いであげましょう」
「え?」
「がんばれー」
気が付くとそこは校舎裏みたいな場所へと戻っていた。じきにあの三人がくると思う。でも、その前にやらないといけない。
「諏訪子様、力を貸してください……」
お祈りをしてから、頬っぺたを叩いて気合を入れる。
「いいよ、任せて」
「っ!?」
後ろから抱きしめられているような感じがして、振り向くとそこには私と同じ顔をした諏訪子様が不敵な笑みを浮かべていた。
「ほらほら、がんばれがんばれ」
諏訪子様に励まされながら、身体の中にいるミシャグジさまを意識して、力を引き出していくイメージをしていく。でも、上手くいかない。もたもたしているうちに三人が来て、同じ展開になった。
「もう一回!」
「ええ、わかりました。何度でもやってあげますよ」
「頑張って」
何度もチャレンジして抵抗していくと、次第に力を出せるようになってきた。肝心だったのはイメージ。自分が弱い"無個性"の蛙吹諏訪子じゃなく、"土地神の頂点"である洩矢諏訪子であるとイメージすること。つまり、未来の英雄さんがいっていた最強の自分をイメージする。それが大事だったんだね。
「よぉ、みつけたぞ」
「へへへ」
「こんなところに隠れてやがったか」
やってきた三人を睨み付け……いや、諏訪子様ならきっと笑う。実際、私の後ろから抱き着いている諏訪子様も笑っている。だから、私も笑いながら
「逆らう気か?」
「いいぜ、そのほう面白い」
「そうだな。まずは捕まえるか」
地面から蔓が伸びて、私を拘束しようとしてくる。それを地面を踏みつけて空へと飛び上がって避ける。
「なに?」
「呪って、祟って、殺し尽せっ!」
私の言葉に地面から無数のミシャグジさまが津波のように現れて、彼等を飲み込んでいく。
「……前の私とはこれでおさらばだよ。だから、殺してあげる」
両手を合わせて力を発動する。背後に光り輝く二つの輪を呼び出し、重ね合わせる。そこから光り輝く水色の弾と米粒弾を無数にくねらせながら散布する。後ろから抱き着いてくれていた諏訪子様が私の中に入ってくる。一緒にするのは決めている。
「『土着神・ケロちゃん
ゲームでは気合避けを要求されるほど難易度が高い弾幕だけれど、見た目の美しさはかなりある。散布された弾幕で地面に弾き飛ばされ、衝撃で浮き上がってきたところをまた地面に弾かれる。以下、エンドレス。私が味わった苦しみを少しは思い知るといいよ。
少したら、動かなくなったので踏みつけて地面に埋没させながら、回りを溶岩へと変えて燃やし尽くしてあげる。もう一人は木の中に取り込んで、不細工なオブジェへと変える。最後の一人はミシャグジさまにかじられてゆっくりと食べさせて恐怖と苦しみを味わってもらう。なんだか、気分もスッキリして、とっても楽しくなってくるよ。
「はい、克服おめでとうございます。まあ、これで耐えるくらいはできるでしょう。これからも努力してくださいね」
「うん。早苗お姉ちゃんも諏訪子様もありがとう」
「けろけろ。楽しめたからぜんぜんおっけーだよ」
その後はゆっくりまったりとして起きるまで、膝枕をしてもらった。
「おっはよー」
元気よく、飛び起きるとお姉ちゃんがベッドで眠っていた。周りをみると、既に夜になっているのか、暗くなっている。
「あれ?」
日付をみると数日が経っていた。下に降りてみるとお母さんとおばあちゃんもいて、抱き着かれて事情を知った。どうやら数日間眠りっぱなしだったみたい。
それから、精密検査を受けて退院してから火を体験する。結果は大丈夫だったよ。ちょっと身体が震えて、ミシャグジさまが周りに出てくるだけで、大人しくしてくれてるし、大丈夫。