オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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デミウルゴスvsヴァルゼライド

 悪魔の剛腕一振りで木っ端微塵に砕ける大地。抉れた岩盤を足場としその中を縦横無尽に駆ける異形な悪魔たちはヴァルゼライドに総攻撃を仕掛ける。この場の悪魔全てがlevelも種族としての仕様も性能も上回っている。その身体一つ一つが国を亡ぼすには十分な暴力が籠められていた。

 優れた種族に、むしろ小技など必要ないのだ。生まれ持った性能を、捻りなく、在るがままに発揮するだけで十分。そう創られた悪魔はそれだけで粉砕できる。

 飛来する異形な悪魔たちをヴァルゼライドは素早く躱した。

 デミウルゴスの予想通り彼のlevelは50相当しかない。

 レベル差から生じる破壊性は絶対、level10もかけ離れれば倒すのはほぼ不可能だ。ましてやその暴力を正面から防ぐのはヴァルゼライドでも不可能。

 そこからはある意味当然の攻防劇だろう。ヴァルゼライドがどれだけ優れていたとしても、彼は所詮唯の人間である。

 殺し合いにおいて多勢を決する要素は常に出力、速度、防御力、切り札。

 すなわち純然たる能力値(level)であり、大が小を圧倒するという子供でも分かる方程式が存在するのは、誰の目に見ても明らかだ。

 level30がlevel50に、level50がlevel80に、level80がlevel100に、ましてやlevel50がlevel100に勝つなど不可能なのだ。

 たとえ攻撃出来たとしても、それは無駄だ。立ち向かったけど死にましたでは、それこそ無駄死にと変わらない。

 弱者が強者に土を付ける展開は希少。RPGではまず起こらないし、現実でも起こらないから誰もが夢見憧れて、そして当然、十中八九叶わない。

 デミウルゴスは予見する、何も恐れる物など無い。デミウルゴス配下のシモベの中でも最高峰に位置し、いわば親衛隊に当たるlevel80台の傭兵モンスター魔将(イビルロード)七体。

 低位の悪魔を召喚する能力を持っており、ヴァルゼライドを殺せなくとも囮と手数は膨れ上がる。

 小手先の技術など絶対的な強さと数を前にすれば小賢しい足掻きだ。

 低位の悪魔以外、滅ぼすことが不可能な光などに恐れる悪魔はいない。

 その刃が戦闘の苛烈が増す度に鮮烈に輝こうが意味などない。

 故に――――――

 

 

「ふッ――――――」

 

 

 鋭い剣閃が奔るたびに轟音を響かせて弾き合う異形な悪魔の攻撃が悉く逸らされた。低位悪魔を捌きつつ魔将からは決して目を離さない。フェイントに騙されず、本命のみを切り捨てる。

 

 

「なんだこれは」

 

 

 攻撃、回避、防御に反撃――――――あらゆる場面において技量が生かされない個所など見当たらない。

 余すことなく、すべてが絶技。

 あらゆる不条理をねじ伏せる。

 巧い――――――戦闘技能と判断速度が常軌を逸して凄まじすぎる。練達などという評価さえヴァルゼライドには侮辱にしかならないだろう。

 技の極みがそこにあった。

 悪魔的に積み重ねた修練の量が一拳一動から伺える。

 あまりの完成度に、デミウルゴスは万死に値する不敬な思考がよぎった――――――もしや技量のみならたっち・みー様より――――――

 奥歯を噛み砕き、自害する己を抑える。ここで死ぬのはアインズ様の為にあらず、アインズ様の御意思で死なねばならない。

 

 

「――――――おい、舐めているのか貴様」

 

 

 その隙を見逃さずヴァルゼライドは不滅の刃を振り抜いた。取るに足らない一撃はデミウルゴスの左腕を両断した。

 

 

『デミウルゴス様ッ!!』

 

「貴様らもだ。主にかまける暇があるならその瞬間に一つでも多く攻撃を繰り出すくらいはしてみせろ」

 

 

 一撃一撃、魔将に傷が刻まれていく、魔将の自動治癒スキルがHPを回復させようと傷は瞬く間に修復を行うが、ヴァルゼライドはそれを覆す速度で確実に追い込んでいく。

 

 

「調子に乗るんじゃない人間風情がァ!!!『悪魔の諸相:豪魔の巨腕』」

 

 

 悪魔としての変身能力を腕にのみ発動し、巨大化させる。

 

 

「まだッ『悪魔の諸相:鋭利な断爪』」

 

 

 悪魔としての変身能力を爪にのみ発動し、爪が80cmまで伸びる。爪の一本一本が刃の如く鋭くヴァルゼライドを切り刻むためだけに構築される。

 

 

「まだまだッ『悪魔の諸相:八手の迅速』」

 

 

 悪魔としての変身能力を足にのみ発動し、高速での移動を可能とする。

 

 

「まだまだまだッ『悪魔の諸相:触腕の翼』」

 

 

 悪魔としての変身能力を翼にのみ発動し、巨大化させた翼から鋭利な羽を撃ち出す。

 デミウルゴスに感化された魔将もその苛烈さを増していく、この場の全員がヴァルゼライドを殺すために後さき考えずにその能力を解放する。

 天井知らずに上昇していく危険度。歪み、蹂躙されていく景色。

 故に終わり。

 勝ち目など最初っからあるはずもなく、もはや個人に向けて用いるような力では断じてなく、ヴァルゼライドの破滅のカウントダウンが無慈悲に近づいていく。

 

 

「――――――まだだッ」

 

 

 刹那、ヴァルゼライドから湧き上がる光の波動――――――意志力だけでlevelが上昇していく。

 どんな時でも諦めないという物語の主役じみた精神が、逆境において勇壮()に駆動し始める。

 英雄とは、闇を討ち取る光で在らねばならない。苦難とはすなわち試練、追い詰めれられるほどやがて雄々しくその魂を覚醒させていく。

 絶対的なlevel差?種族としての優位?そんなものはねじ伏せればいい。

 推定level50だった男が、意識一つでlevelの優位性を踏み越えていく。

 有り得ない現象に呆気にとられる悪魔たちを横目に、ヴァルゼライドは一度だけ、人としての尊厳を奪われ家畜となり壊れた者、築かれた屍の山を見た。

 瞑目し、哀悼を捧げること一瞬。

 

 

「……すまん。そして誓おう、お前達の死は無駄にはしない。人を、民を弄んだその報い、魂魄まで刻んでくれる」

 

 

 開眼した瞳の奥で揺れる炎。

 底冷えさせる嚇怒の念に燃えていた。

 

 

「創生せよ、天に描いた星辰を――――――我らは煌めく流れ星」

 

 

 そして、紡がれゆくのは、最大惑星の光を人の身に降臨させる詠唱。

 ついに英雄の全霊が、魔を滅ぼさんと悪魔へ向け解放される。

 

 

「巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧政を我らは認めず是正しよう。勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる。

 百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼よ、我が手に炎を宿すがいい。大地を、宇宙を、混沌を――――――偉大な雷火で焼き尽くさん。

 聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡へと続くのだ。約束された繁栄を、新世界にて齎そう。」

 

 それは、至高。

 それは、最強。

 それは、究極。

 それ以外に、形容すべき言葉なし。

 

 

超新星(Metalnova)――――――天霆の轟く地平に、闇はなく(G a m m a・r a y K e r a u n o s)

 

 

 それは、まさしく光の波濤。

 闇を引き裂く光の一閃は、虚空へと直線的な軌道を描いていく。

 進行方向にあるものは、何一つ残らない。

 絶対不可避。音速を凌駕して亜光速にまで達した爆光が、魔将一体を容赦なく飲み込んだ。

 

 

「オオオオオオオオオオオオォォォォ――――――ッッ!!!!」

 

 

 吐かれた意志に呼応して、光は更にその出力を上昇させる。

 一切合切容赦なく、光が闇を殲滅する。

 

 

「デミウルゴス様!!この光は、ただの光ではありません!!」

 

 

 単に敵を焼き払うのみの光ではない。あらゆる悪の存続を許さず、不義の一切を殲滅すべく連鎖崩壊を引き起こす爆裂光。

 すなわち、放射性分裂光(ガンマレイ)

 突き刺さった光はその一点から連鎖して、爆発的に拡大していく。放たれた後でもなお消えず、残留しながら敵の身を喰い散らかしていく。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!『悪魔の諸相:煉獄の衣』」

 

 

 悪魔としての変身能力を服にのみ発動し、炎で己を包み、爆裂光の耐性を底上げする。

 

 

「『地獄の炎』」

 

 

 自身の扱う炎を強化する。これで強化した炎は火属性無効化を超えてダメージを与えられる。

 

 

「『内臓が入し香炉』ッ!!『明けの明星』ッ!!!『ソドムの火と硫黄』ッ!!!!」

 

 

 第10位階魔法範囲攻撃×3。

 地獄の炎で強化された炎は自分諸共灰燼とかす闇の炎。

 発動した魔法を止めるのは無理であり、逃げ場などない炎は、デミウルゴスとヴァルゼライドを包み込む。

 炎の完全耐性を持つデミウルゴスでさえ致命傷を受ける魔法で確実に息の根を止める。

 だがまだ、それでは安心できない。

 『ジュデッカの凍結』――――――対象の時間を停止させる。

 デミウルゴスの切り札、ヴァルゼライドを殺す必殺の布陣が完成する。

 時間対策などしていないヴァルゼライドにはもはや何も考えることも、行動することも出来ない。

 完全に策に嵌った時点で詰みが確定していた。

 故にそれは英雄の敗北を意味し、もはやどうしようもなく――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――ま、だだッ!!」

 

 

  時間停止を気合と根性で突破した英雄は、最後の一撃を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チトセ・朧・アマツはポーションを一気飲みし応急処置を施した傷口の具合を確かめる。男の目を憚らず上裸となり入念に傷口を調べる。

 

 

「まったく奴らめ、乙女の身体を傷者にするとは男としてどうかと思うぞ」

 

「そもそも人の形を模った悪魔が少なく性別が不明ではないかね。それと男の視線があるのだ、少しは恥じらいを持ちたまえ女神(アストレア)

 

「これはこれは審判者(ラダマンテュス)殿御忠告痛み入る。この場の男どもはどいつも私の裸を見る度胸などないよ。それともあれか?貴様はその眼鏡の奥でお、ラッキーこれ幸いと人の胸を視姦し今晩のおかずと洒落込むつもりなのか」

 

「いささか偏見と被害妄想が過ぎると思わないか女神(アストレア)。私はこれでも紳士として配慮は出来ているつもりだ。何より君に背を向け他の男性の視線に入らないよう壁役を買って出ている私にそれは不可能な行いだ。嗚呼それと、包帯が足りないなら使うと良い」

 

 

 此方を見もせず背中越しでありながら、気味が悪いほど綺麗に手元にパスをよこす。

 

 

「……おまえ絶対私のスリーサイズから黒子の数と位置を把握してるだろ」

 

「さあ、それはどうだろな。少なくとも怪我の具合とそれを踏まえたポーションの効き具合は把握しているつもりだ。包帯は足りたかな?」

 

 

 腰周りを巻いていた包帯がムカつくほどぴったり余りなく無くなったことに――――――殺意を覚える。

 審判者(ラダマンテュス)はそよ風のように涼しい顔でその殺気を受け流し、これからの展開を計算していた。まずは十中八九起こるかもしれない次の展開に備え審判者(ラダマンテュス)――――――ギルベルトが二歩横にずれる。すると。

 

 

「お~ね~え~さ~まあああああああああああ!!」

 

 

 彼が立っていた位置に暴走した副官補佐がお姉様以外何も見えていないとばかりに突撃してきた。チトセは抵抗なく受け入れよしよしと可愛がる。

 

 

「私はお邪魔の様だ、失礼する」

 

「またんか審判者(ラダマンテュス)、最後に聴かせろ。何処まで読んでいる?」

 

「何処まで……とは」

 

「文字通りだよ、正直私たちは奴らを甘く見ていた。英雄がいなければ全滅していたよ。あの人型の悪魔は別格の存在だった。何なのだアレは?常識的に考えてあんな生物が自然発生して複数いる時点でもうこの世界詰んでるぞ」

 

「だからこその総統閣下なのだ。あの御方なら一対一なら負けることは無いだろう。それに、相手は組織なのだ、組織には組織の柵と規律がある。決して無秩序ではないのだよ怪物たちは。だが、肝心の敵組織が未知数だ。戦力も思考も感性も人とはまるで異なる相手、此方の常識が通用するのか、そもそも太刀打ちできるのか不安が尽きないな、人型の悪魔――――――魔神と呼称する。魔神の存在がネックだ。悪魔だけとは限らない。必ず他にいる」

 

「それでも――――――」

 

「嗚呼、それでも――――――」

 

「「最後に勝つのは我々(私達)だ」」

 

 

 ギルベルトは部下の様子を見に行くのだろう。部下からの人望は無駄に厚い。

 

 

「お姉様、よくあんな奴と会話ができますわ。サヤは悪寒がとまりませんわッ」

 

「あ~よしよし確かにあいつは信用も信頼も出来ないムカつく馬鹿だが、アホではない。少なくとも先の答えで奴は多少なり勝機があると踏んでいる。私も同じ考えなのが腹が立つが……英雄閣下(ヴァルゼライド)がいなければそもそも勝負の領域に立てるのか不明な相手だ。それでも、英雄が駆けつけない戦場を想定するのが私の仕事だ」

 

「流石ですわお姉様、このサヤ・キリガクレ。より一層惚れ直しましたわ」

 

「はっはっは、そう煽てるな」

 

 

 ギルベルトの言う通り敵の情報が不足しているのもまた然り、今回の任務も総統閣下が反対を押し切って実行した穴だらけの作戦だった。マジックアイテムを使用し敵の魔法詠唱者の伝言(メッセージ)を結界で遮断し増援要請を阻止したが、そもそも結界内の敵戦力も不明のままだったのだ。気が気ではなかった。更に転移妨害も敵の会話からそんな機能があったのかと此方が驚いたくらいだ。

 帰ったらいい加減な説明書と一緒に渡してきた副官にお仕置きが必要だ。

 

 

「そもそも奴らは何者で何なのだ?二百年前の魔神の生き残り説は信憑性に欠ける、あれだけの化け物が二百年間大人しくしているとか想像出来ない」

 

「ならばスレイン法国の提唱する『百年の周期』説を推しますわ。新たな『ぷれいやー』と『従属神』が降臨されたと考えた方がまだましかと」

 

「神様が百年の周期でホイホイやって来るとか暇なのか神様(ぷれいやー)は?アイツに言わせれば、良い神様も悪い神様も等しく人の営みをめちゃくちゃにする災厄でしかないとか言いそうだな。いや、楽ができるとむしろ良い神様来てくれ推奨派か?スレイン法国といい他力本願が過ぎると己の足で立てなくなるぞ」

 

「その通りでございますわお姉様。何とも雄々しい前向きな考えにこのアヤ痺れてしまいます!それと、此方がお姉様が懸念されていた情報ですわ」

 

 

 今回の戦闘に参加したすべての戦闘員の報告書をまとめ、チトセ・朧・アマツが推奨する仮説を証明する材料とする。チトセの推奨する仮説は、奴ら(ぷれいやー)の強さの秘密についてだ。

 ギルベルトも今回の戦闘で確証を得たと思うが、生憎第七特務部隊・裁剣天秤(ライブラ)部隊長として、説得力のある証拠がなければ叡智宝瓶(アクエリアス)に提出は出来ない。

 

 

「……やはりか、道理で勝てないはずだ」

 

「はい、『ぷれいやー』が広めたとされる位階魔法、今では別のものとかした武技。便利なのは認めますが、それは向こうの土俵で戦うのと一緒のこと、(ぷれいやー)の定めたルールと制限がかけられた技術では絶対に人は勝てないのです」

 

「実力差があれば軽減、無力化アイテムなしでも攻撃が無力化される、弱者による逆襲を悉くなくし、同じ領域に立つには文字通り人間をやめるしかない。ハッそんな人間が一人二人といてたまるかと言ってやりたいが、本物がいるんじゃ黙るしかない。小手先の違う法則のルールで戦う私たちもある意味向こうからしたら反則かもしれんが、そこはどっちもこっちもだろ」

 

 

 そう、異世界のルールで戦うから負けるのだ。自分たちの世界のルールで戦わずしてどうする。

 常識的な法則をまず整理する。

 この世界は、戦えば戦うほど強くなる。身体の身体能力も身体としての構造も頑丈に強固になる。鍛えた筋肉とかそんなレベルではなく身体の全てがスイッチの切り替えの様に進化する。三メートルを超える巨漢も、幼児の方がスイッチの切り替えが格が上なら小指で負ける。

 強さには難易度があり、数値が高ければそれだけ格の違いがある。ここで注目するべきなのが格が離れれば離れる程攻撃が効きにくくなっていくことだ。

 位階魔法、第三位階まで習熟した魔法詠唱者は相当の熟練者、第六位階が個人の限界と見なされており、第七位階以上の使用に関しては既に英雄譚や神話において確認が取れるといったレベルの話である。スレイン法国さえ第八位階第九位階までは大掛かりな儀式で再現可能と思われる。問題は先ほどの格の話がここでも通用するということ、強力なモンスターや魔神クラスとなると位階が低い魔法は効きずらい、また無力化される。これは部下を魔法詠唱者として修業させ巻物(スクロール)に込められた第一位階魔法~第三位階魔法までの魔法が無力化されたのが大きい。同行させたスレイン法国の第五位階魔法の効果が効く奴とそうでない奴が現れたのも大きい。

 武技は、それぞれ人によって色々あるがこれは誰もが身に着けることが可能な努力の特殊能力。だがその分、格の違いで同じ武技でも威力に差が生じる。

 

 

「何処までがこの世界のルールで異世界のルールかは判別するのは不可能だが、ローブル聖王国にしか残っていないこの『()』は、格の差を抜きにして魔神でさえ有効、それでもやはり多数対一でようやくか……兵器としての性能がケタ違いだ」 

 

 

 逆襲劇など副官だけで十分なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「外で活動する僕は表立っての活動は控えるように、それとこれが新しい構成よ。連絡用の僕を各セクションに配置し伝言(メッセージ)が一秒でも遅れたその瞬間全僕は作戦を中断しナザリックに帰還する命令が作戦行動中のリーダーに行き渡るわ。その際定期連絡が途絶えた所に帰還命令も繋がらなかった場合コキュートス率いるlevel80以上の僕とシャルティア、ルベドを向かわせる。なお戦闘斥候に魂喰らい(ソウルイーター)死の騎士(デスナイト)を三百体づつ送り付けるわ。おねえ、ニグレドは監視役とするわ。それと、普段見掛けない怪しい奴を見つけたら直ぐに報告なさい。……ここまでで質問はあるかしら」

 

 

 集められた僕の中でマーレが挙手する。

 

 

「そ、そんなに巻物(スクロール)消費して大丈夫なんですか?確かその原材料はデミウルゴスさんが調達していたはずですけど」

 

「いつまでもは無理よ。懸念通りこのペースで使い続ければあっという間に伝言(メッセージ)巻物(スクロール)は底をつく。それでも一月はこのまま様子見を決め込むわ」

 

「こちらから反撃しないんでありんすか?」

 

「そもそも判明もしていない相手に反撃ってどうするのよ。町や都市を無差別に破壊してもいいけどそれで見つからなかったらどうするの?敵はデミウルゴスを倒せる相手よ、逃走手段は当然あると考えるべきよ」

 

「それなら……待つんでありんすか?」

 

「そうよ、向こうから接触してくるのを待つわ。そうすれば、完全に迎撃体制の整った私たちの敵ではないわ。迎撃隊が出動した場合残りの各階層守護者はナザリックの守護よ」

 

 

 そして、アルベドは階層守護者とセバスチャン、パンドラにアイテムを手渡す。

 

 

「常時ワールドアイテムの所持をアインズ様が許可されたわ。この意味を考え、使命を全うしなさい」

 

 

 ――――――ッ!!

 

 

 ワールドアイテムを所持する、それはナザリックで何と恐れ多く身を歓喜で溺れさす麻薬なことか。至高の方々がその足を運び、幾つもの障害を乗り越え手に入れた究極のマジックアイテム。それを無制限での貸し出し、その意味するところは、必ず無事に生還しろと願いが込められたアインズの思い。

 嗚呼、慈悲深い至高の御方を悲しませてはならない。何があろうとアインズ様の使命を全うし、生きてナザリックの地を踏みしめるのだ。

 

 

「階層守護者統括アルベド、御身の為に」

 

「第1第2第3階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン、御身の為に」

 

「第5階層階層守護者コキュートス、御身の為に」

 

「第6階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ、御身の為に」

 

「同じく第6階層守護者マーレ・ベロ・フィオーレ、御身の為に」

 

「戦闘メイド隊プレアデス指揮者セバス・チャン、御身の為に」

 

 

 ――――――"第7階層守護者デミウルゴス、御身の為に"

 

 

『御身の為にッ!!』

 

 

 この場には居られないアインズ様に最上の敬意と忠義を、格階層守護者一同誓います。

 全員にとって、あの険悪なセバスでさえデミウルゴスは大切なナザリックの一員であり、頼りになる仲間であった。 

 これはナザリックを、アインズ・ウール・ゴウンをコケにした愚か共にその行いを後悔させるだけではない――――――復讐だ。失うと思わなかった同胞の報復だ。

 デミウルゴスは、何も全うできずに死んだ。相手の情報を残すことも、アインズ様に任された牧場も、何もなせずに死んだ。それはナザリックに属するすべての者が共感できる感情――――――死より恐ろしい恐怖だ。

 悔しかったはずだ。

 苦しかったはずだ。

 怒ったはずだ。

 それらを上回る感情で、アインズ様のお役に立てない己に恐怖したはずだ。

 ならばやるしかないだろ、仲間が最悪な拷問で悲惨にも残酷に死んだのだ。

 

 

 これにて彼らは、覚醒の予兆を見せる。

 アインズ・ウール・ゴウンのNPCとしてではない。個人の感情で殺すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






4月から入社するので、投稿に遅れが生じると思いますが、よろしくお願いします。
やべーよ、ついに社会人だよ、本気出さなきゃ(光の奴隷

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