Piiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii――――――
ツアレの朝は、けたたましく鳴り響く支給された目覚まし時計のチャイム音から始まる。
メイドは、誰よりも早く起床し主人を起こしに行くまでの時間で身だしなみから朝食の準備。様々な仕事を完了しなければならない。
それが常識なのだけども、ことナザリックではあまり関係ない。24時間365日眠る必要がない人達が大勢いるからだ。
食事関係もそう。摂取する必要がない種族、アイテムで疲労も食欲も必要としない人達まで数えたらきりがない。
主人であるアインズ様が睡眠も食事も必要としない御方だからか、ナザリックメイドの朝はまず朝食を食べるところから始まる。皆さん沢山食べるから私もつい食べ過ぎちゃいます。あんなに食べても太らない皆さんが羨ましいです。
「やっほー相席いいかな?」
「シクススさん!リュミーエルさんとフォアイルさんも……あ、私は一向にかまいません。どうぞ」
「ありがとねツアレ!!」
「お邪魔しますわ」
「しっつれいしまーす」
四人テーブルを一人で占領していた私。左隣に元気いっぱいシクススさん、正面に大雑把フォアイルさん。斜め左に真面目で几帳面リュミーエルさん。
まだ馴染めずにいる私を気にかけて下さる優しい人たちです。
「あ~!ツアレ少ないゾイ!!そんなのじゃ持たないよ?」
「まあまあ私らと違って種族ペナルティーはないんだよ。人間はそのくらいが普通なんじゃない?」
「食べたいだけ食べる。それでいいでしょ」
「あははは……」
朝食とは思えない山盛りのお皿。一般的には多いそれなりの量を食べているとはいえ、その量は見ているだけでお腹が一杯になりそうです。
シスククさんは、体全体を使って積極的に話しかけてくる。八割がたは聞く方だけど、なんだか妹を思い出して互いの波長が噛み合っているのか、いち早くお友達になりました。
女の子同士で楽しくこんなにもお喋りする機会がなかった地獄の日々。
何気ない会話。そんな普通なお喋りが何よりの幸せと感じられる。外のお話は皆さん興味はあるのか、よく質問されます。楽しく、明るい話題しか私は語りません。ここで働き、私は知りました。色々な性格。個性豊かな趣味。あらゆる種族が共存するナザリックの皆さんは、強さ問わず純粋無垢。階層守護者も、領域守護者も、一般メイドやゼバス様だって――――――愛に飢えている。ナザリックの皆さんから頂いた愛を、少しでも恩返しできたら……。
「――――――でねー……って聞いてるーツアレぇ?ホワイトブリム様の凄い所はまだまだあるんだから!!」
「はい!すごいです!もっともっと聞かせてください!!」
「も~しょうがないなぁ。でねでね~」
「いい加減にしなさい。そろそろ食べ終わらないと間に合いませんよ。他の人はもう移動しちゃったし」
「うわっヤバイ!ツアレも速く食べないと……って何時の間に!?」
「すみません。食べ終わっちゃいました」
素早く上品に食すのも慣れたものです。「この~」と頬っぺた一杯に膨らませるシクススさんが可愛らしくてつい喉を震わせてくつくつと笑ってしまいます。
すると、私達しかいなかった食堂に予想外の人物が足を運ぶ。
「おや……まだ人がいらっしゃったのですね」
「せ、セバス様!?どうして……何か重要な要件でも……?」
「そう慌てないでくださいツアレ。他の方々もゆっくりしてください。私も朝食とりに来ただけなので」
「セバス様も三食食べるんですか?てっきり必要ないとばかり……あーなるほど、態々彼女さんのンーッ!!」
「フォアイル。思っても口にしたら駄目よ。それこそ"リア充馬に蹴られて死ね"とヘロヘロ様が仰っていたわ」
「ンーそんな意味でしたっけ?まあヘロヘロ様が仰るなら間違いないか」
わいわいと騒がしい外野もツアレは気にならない。なぜならば、その心は一人の男性に夢中だから。
「ええっと……セバス様も朝食を?」
「はい。ですが残念ながら一足遅かったみたいですね。そこで…………えぇ……」
「?」
らしくない。パーフェクト執事の異名を持つセバス様の歯切れの悪さ。
「おやおやおや~フォアイルさんフォアイルさんや、もしかするともしかしますよこれは!!」
「シクススさんや。ここは優しく見守るところですよ!!」
「はぁ……"馬に蹴られて死ね"はどうも私達のようね」
「え?えぇっとぉ?」
シクススさんとフォアイルさんは、リュミーエルさんに押されて食堂から退出する。シクススさんは最後まで「ガンバレー!!」て応援してくれた。
「……彼女たちには気を使わせてしまったようですね。……情けない」
「セバス様?」
セバス様は照れくさそうに右手で髭を撫でる。その優雅な動作だけで絵になるカッコいい男性はこの御方だけだろうとツアレの心はとうに射抜かれている。
「今晩の夕食……私とディナーは如何ですか?」
「はいッ!――――――ぁ/////」
反射的に大きな声で返事をしてしまったツアレは、恥ずかしそうに口元を抑える。はしたないです。
「よかった。では、今晩部屋まで向かいに行っても大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫です」
これはデートの約束――――――そうとらえて問題ないはず。ゼバス様と別れた私は期待に胸を膨らませ仕事場に急行する。そしてなぜか一般メイド全員にその話は広まっていた。普段お話ししないかたともその話題で話しかけてくる。
「ねえ、今夜セバス様に夜這いするって本当?」
「その話詳しく」
私でも聞き逃すことは出来ない話題です。ゼバス様の名誉のためにも必ず犯人を見付けて誤解を解かないと!
「ツアレ!情報伝達完了だよ。誰も近づかないようしっかりサポートするからね☆」
「シクススさんッ!!」
可愛らしいウインクつきの親指グッド――――――もうどうにでもなれやい!
そこから皆さん親切に協力してくれました。今晩は……朝まで誰も邪魔は入らないように。戦闘メイドの皆さんまで協力してくれたのは何故でしょうか?
「ぼ……んんッ応援してるわよ」
「この
「まあヤりきることね。ニンゲン」
「……1円シールあげるね」
「あの方、結構奥の手だから」
「支えてあげてねぇー」
一般メイドは可愛い方が多いですが、戦闘メイドは綺麗でかっこいいので、少し羨ましいです。スカートに貼られた1円シールはどういう意味なのでしょうか?
そこから更に色々あって現在。身を清め、支給された新品のメイド服を着用し下着は大人っぽい黒の紐パンツ。……期待してない訳ではないのだ。むしろ竜に生け贄にされる村娘くらい準備万端?
部屋で待機しているツアレは妄想を膨らませる。それはそれはピンクのスイーツ禁止事項まで迫った辺りで惜しくもノックが鳴り響く。
「ひゃイ!?」
「?セバスです。まだ準備を終えて――――――」
「お、終わってます!いま出ます!」
そこからは夢見心地。
最高のエスコートでレディーファーストされるツアレ。
二人っきりの食事。お酒を嗜み会話に花が咲く。
ぽかぽかと火照った身体は何時でも受け入れる準備は出来ている※キスです
薄く開いたピンクの蕾が、艶めかしく開く※唇です
ペロリと舐めとった唇が咥え込む※料理です
ああ……セバス様――――――しゅき※語彙力消失
「飲みすぎですよツアレ。部屋に帰りますよ……立てない?では――――――失礼」
「……あ」
セバス様の腕の中で抱きかかえられた私は、その胸板に体のの重心を預ける。力強い竜の鼓動がツアレをさらなる安心感で包み込む。
朦朧とする意識の中、ベットに寝かされた私は――――――
「お休み、ツアレ」
――――――私は。
「で、何も起きなかったと」
「はい。そうなんですぅー」
「はぁ……何をしているんだあの馬鹿は。私が態々お膳立てしてあげたというのに」
ヤレヤレだ。赤色のスーツを着用した悪魔は、丸眼鏡を中指で押し上げる。僅かに零す溜息は「不能かよ。男を見せろよ」……不満たらたらだ。
「え~!セバス様そのまま帰っちゃったの!?」
ビックリ仰天シクスス。
「間違えて睡眠姦薬わたしちゃった……」
この駄犬がッ!!お前には失望したゾ!!ルプスレギナ!!
「あの方も本当に奥手ね……」
何だかんだ頼れる意外とお姉さんなドSスライムソリュシャン。
「……エクレア貸してあげるね」
いつも優しい皆のマスコットシズ。かわいい。でも、ぱたぱた暴れるペンギン元いた場所に放してあげようね。
ワイワイガヤガヤうるさくも楽しい空間。そんなかしましい乙女の領域に踏み込む
「皆さん勢ぞろいでどうされました?」
「セバス様、女性を大切に扱うのは構いませんが限度も過ぎれば其は唯のヘタレ野郎です……わん」
「ち、違うんです!私が酔いつぶれてしまったばっかりに……」
「……犯人駄犬。ぎるてぃー」
「うわー!!や、やめるっすぅ~」
「貴女という子は……まったく」
「せ、セバス様ッたいしたことは無いので参りましょう!」
「走ると危険ですツアレ!」
幸せに満ちていた幸福な時間。此処は、私の居場所。ずっと続くと思っていた日常はいとも容易く幕を下ろす。
―――――悪魔の手によって。
私は皆の想いに一矢報いたと手ごたえを感じたあの瞬間死んだと、直感した。比喩もなく、ああ死ぬんだなってまるで他人事のように思った時、悪魔を睨み付けていた。悪を殺す鏖殺の覇道。細胞レベルで本能が危険信号を脳から全身へ、魂までも殺す絶望を前に、level1に過ぎない"唯の人間"が死を諦める事無く立ち向かった。
簡単な事ではない。この世界の"英雄級"でどれほど抗える?クリトファー・ヴァルゼライドが光輝く死の光ならば、ツアレこそが――――――何よりも尊ぶべき黄金の精神。
ツアレは否定するだろう。そんな大した事じゃないと。
ツアレは拒絶するだろう。精神強度は"英雄"に並ぶかもしれないという他人の評価を。
普通の少女。村娘。不幸をどうすることも出来ない力無き奴隷。
それだけしかない。それだけの存在。
ツアレは、それでいい。
不幸だと、可愛そうだねと、これまでの人生は確かに地獄だった。でも、セバス様との出会いだけは否定させない。
私の過去を知れば"英雄"は同情する。助けられずに済まないって……実直に謝罪して、私が流した涙を背負い未来へ勝利へ前進する――――――そんなもの求めていない。
転落人生の地獄を生きた。
両親を失い。妹も生死不明。女の尊厳をすべて奪われても、ツアレは同じ人生を選択する。
理解してもらうつもりはない。
私にとってセバス様の出会いこそが――――――なによりの救いなのだ。
アツイ……焼けるように熱い焔。つま先まで感覚が乱れ狂う暗闇の中、確かに感じるアツイ、あつい――――――温もり。
混濁する意識を無理矢理繋ぎ止め、ツアレは重い瞼を開いた。
「怪我は、ないか?」
「……セバスッさま」
竜の鼓動を感じる。
「……ぁ、ぁぁッ」
竜の息吹を感じる。
「……そん、な」
真っ赤に流れ出す竜の血潮が、ツアレを温める。セバスに護られた体に傷はなく。純白のエプロンは赤ワインの染みが無慈悲に拡がり続ける。
女は視線を下げ、すべてを覚る。だから、だろうか。いけない、流してはいけないと理解していても……溢れ出す感情の渦は止めることが出来ない。
「ないて……いるのか……?」
「――――――ぃいえ、私は無事です。また助けていただいて……私はッ!!」
人間にすぎないツアレの演技などセバスは見破っているのかもしれない。それでも――――――嘘でも震える声を抑え、堪え、気丈に振る舞う。例え溢れ落ちる涙が、私の顔に添えられた手を濡らそうとも、護られた私はちゃんと無事であることを、男の誇りにしてほしいから。
「ははは……これはエゴなのでしょう。ツアレ……貴女を救いたい。失いたくない。そんな身勝手で我が儘な自己満足」
視力を失った両目は光を映す事は二度とない。背中の広背筋から反粒子に呑み込まれ消滅した肉体。死んでないのが不思議な致命傷。肉体の過半数が欠損しようと、男は女を想う気持ちに揺らぎはない。
「何においても……何があろうと……私は貴女を必ず助けるッそれが例え……」
想いを形にし、言霊として口から紡がれた時こそ。
「ナザリックを、アインズ様を裏切る行為だとしても……ツアレ、私は――――――貴女を選ぶ」
――――――原初の世界法則に干渉し、破壊する。
この選択こそが、ナザリック二度目の異変。
救世主となるか、破滅を招くか――――――愛する二人には最早関係のない事象。
「生きて欲しい。その先が修羅へと続く地獄だとしても、最後まで生きて欲しい」
死にゆく男の言葉は、このまま終わってもいいと懐きつつあった心を縛り上げる。
「……ずるいです。そんなこと言われたら……ッ生きなきゃいけないじゃないですか!!――――――ン」
本当に、ずるい。初めては私からの不意討ちだった。貴方からキスを求められたのはこれが、初めて。絡み付く優しくも激しい口付け。流し込まれるソレを私は素直に受け止めた。
「んっ、んんぅ、ふ……んぅ…………ぷはぁ……」
「……愚かな私を許してくれとは言わない。こんな私を愛してくれた最初で最後の贈り物。……この先の希望にして欲しい。君は決して一人ではないんだと」
「なに、を――――――んあッ」
世界級アイテム:ヒュギエイアの杯。効果は等価交換。重要なのは器などではなく、中身。セバスは、所有権を譲渡すると同時に、効果を発動させていた。
死ねば消滅する魂の欠片をツアレへ分け与えた。新たな命として生まれるように。
疼く子宮の熱を感じとり、ツアレは薄々と身に何が起きたのか理解する。だから。
「愛してる、ツアレ」
「愛しています、セバス」
ソッと触れた最後の口付け。私は、動かなくなったセバスを抱き締め、堪えるのをやめた。
「あ、ああっああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――――――――――ッ!!」
叫ぶ。弱くて弱くて、どうしようもなく弱い私。お世話になった皆さんに、セバスに、合ったかもしれない此れからも続く幸福に――――――お別れを。
新たな命のために、私は生きなくちゃいけない。例え今から対峙するのが、悪魔だとしても。
「ありがとう……お元気で」
祈りを捧げる――――――どうか私に勇気を。
鏖殺者の唸りが鳴り響く。殺して殺して血の滴る音を引き連れた悪魔へ振り向き、正面から見据える。
無傷なところなどない。ポーションを飲んだのか、徐々にだが僅かばかり塞がっているが重症には変わらない。
「取引を、しませんか?」
絶対に断る。だから、言葉など待たずに実行する。
「うっ……!」
自分の左目を犠牲に、ヴァルゼライドの左目を復活させた。
「くふっ……わ、私は、貴方と敵対しない。皆で繋いだその傷を治したのが何よりの証……皆を、皆殺しにした貴方は一生赦さないし赦せない。でも、私は生きなきゃいけない。それが例え味方などいない地獄だとしても……」
腹部の下を擦り、愛した人の子を絶対に産むんだと誓う。
「この子となら、乗り越えることができる。だから、見逃してください」
血の涙を流し、もっとも憎むべき悪魔に頭を下げる。
静謐が空間を支配する。失敗すれば死ぬのだ。抵抗などさせない。刹那に首は泣き別れする。
「……行くがいい。だが、腹の子が人間に牙を向けた時、容赦はしない」
踵を返し歩き去るクリストファー・ヴァルゼライドの心情など知るよしもない。しかし、この時は確かに、"唯の人間"ツアレは"英雄"ヴァルゼライドに、小さな勝利をもぎ取った。
世界に綻びが生まれる。それは亀裂。■■■■■■の法則に生じた初めてのルール違反。
六百年前は此れでいいと判断した。六人だけでは人間を守ることは不可能。ならば、人間に戦う術を与えればいい。
だから
原初の海。始まりの座。理の流出。
自分達がプレイしていたゲームをモデルに世界に流れ出した。スルシャーナとの約束を守るために。
人間は力を持った。守れる強さを、抗う強さを、打ち勝つ強さを。
人類は生き残れる。スルシャーナと
元は人間だったプレイヤーと違い。NPCなどはギルメンやギルドへ忠誠を誓うようにした。
カルマ値によって、自己行動の自由度を設けた。
他にも他にも――――――百年後の塵屑に有利に働きかけてしまった。
スルシャーナが死んでしまった時、この法則を崩すものを待ち続けた。百年周期に訪れる来訪者。その中で至る可能性を秘めたのは二人。
現地人との融合を果たしたNPC。少女は支えてくれる人が足りなかった。
現地人と深い繋がりを得たNPC。彼はルールに反逆し愛する人を選んだ。
この先の展開は誰にも予想できない。
この綻びが、また新たな問題点を生むかもしれない。
それでも、現状よりはましであるようにと
今回:賛否両論あると思いますので、感想お待ちしてます。
fgo:第二章の鯖は全員ピックアップ1、ピックアップ2で10回転ゲッチュ。アキレウスたんはギリギリ来てくれたよ!!
ヒナまつり:今期アニメで一番面白くない?
GW:明日から仕事。仕事だよ。
群馬県栃木県:態々行ったのに思いでと言えば、ネカフェしかないぞおい