オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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英雄譚

 アインズ・ウール・ゴウンの名の下に、リ・エスティーゼ王国、バハルス帝国、ドワーフの国は安寧と繁栄を約束された。

 まだ情報が少なく、竜王国女王であるドラウディロン・オーリウクルス「黒鱗の竜王(ブラックスケイル・ドラゴンロード)」の力を警戒してはいるが、竜王国は元々後のない国、切っ掛けさえあればアインズ・ウール・ゴウンの属国に出来るだろう。

 そして、アインズ・ウール・ゴウンギルド長モモンガが最も警戒するスレイン法国。プレイヤーの痕跡が最も多く、その力の全貌が未だに不明であり、プレイヤーと敵対する危険性がある起爆剤。

 他にも様々なプレイヤーの痕跡、伝説、竜種の存在はあるが、表向きは争いはなく、反感と恨みを買わない様に計画を進めてきた。

 すべては――――――アインズ・ウール・ゴウンの名を世界に刻むために。

 

 

 モモンガは素は下請けのサラリーマン。その感性と思考は人間に近く、人のためのより良い世界を創るのかもしれない。別世界の神々(プレイヤー)は降って湧いた力と信じられないアイテムと設定通りに優秀なNPC。圧倒的に格下のゲームバランス最悪の世界は、条件さえそろえば望めば何でも可能だ。

 そう、この世界はプレイヤーと残されたアイテムと竜さえどうにかすれば、敵対しなければ、妄想に描いた自分だけの自分のための国が実現できる。

 そうすればよかったのだ。唯の人間が神の力を振るっても碌なことにはなりはしない。

 モモンガは確かに慎重に人間(弱者)の目線で"もしも"を常に考え、誰も欠ける事無く安全を第一に行動してきた。最高の頭脳と設定されたNPCを出し抜ける頭脳(黄金)は抑えた。誰も裏切らない絶対の忠義がある。最高の頭脳とモモンガしか持ちえぬ知識もある。それらすべてを無視しても余りある力がある。

 『知』『忠』『力』。

 それが狂わせた。

 唯の人間だった鈴木悟を狂わせた。

 異形種の精神になったせいもあるが、それ以上に矮小の身に過ぎたモノがいけなかった。

 現実であるがゲームである。

 ゲームのようで現実である。

 鈴木悟として何の力もない唯の人間としてこの世界に来ていれば、苦労もある。だが、人の身に相応しいそれ相応の幸せを手に入れられたかもしれないのに――――――

 

 現実的に無駄でしかない世界征服を実行してしまった。する力を持ってしまっていた。本人にそのつもりがなくともことを起こしてしまった。

 

 この世界がどれだけユグドラシルのルールに縛られようが、全く異なる異世界なのだ。

 故に、英雄が立ち塞がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぜ……なにがあった」

 

 

 モモンガは肉体上あり得ない眩暈を覚えた。冒険者モモンとして人々を安心させるため街を歩いている時にその連絡は唐突に訪れた。伝言(メッセージ)で動揺を隠せない僕を窘め、的確に報告しろと落ち着かせる。だがその報告は、モモンガの余裕を奪うのに十分すぎた。

 

 

『デミウルゴス様が何者かに殺されました』

 

 

 冒険者の仕事を中断し、ナザリック第十層、玉座の間への緊急召集をかけた。ギルド外で活動中の僕全てが計画を中断し至高の御方の前に跪く。

 

 

「……デミウルゴスが殺された」

 

 

 ――――――ッ!!

 

 

 この異常事態を何人が察しただろうか。あのデミウルゴスが、何も悟られずに殺された。

 

 

「直ちに調査隊を編成致します。全階層の警戒レベルの引き上げも行いますがよろしいでしょうか?」

 

「嗚呼、編成はアルべドに任せるがデミウルゴスを倒した程の相手がまだ潜んでいるかもしれん。調査隊を率いる守護者にはワールドアイテムの所有を許可する」

 

「それですともし奪われた際のリスクが……」

 

「私が許可すると言ったのだ。二言はない」

 

「も、申し訳ありませんアインズ様」

 

 

 アルベドに任命されたアウラ率いる調査隊がデミウルゴスの殺された現場のあたりを捜索するも、すでに敵の影はなく戦場になった牧場で羊が全て居なくなっているのが確認できた。そして、肝心のデミウルゴスの死体を回収し玉座に運び込ませた。

 

 

(よかった。遺体はあったのか、いくら蘇生できるからって遺体までなかったら……)

 

 

 アインズは怒りを抑え命令を下す。

 

 

「ペストーニャ、パンドラが蘇生基金の準備をしている間に傷口の修復を頼む」

 

「かしこまりました、わん」

 

(よし。シャルティアと同じなら誰に殺されたか忘れている可能性が高いけど、牧場の事を一番熟知しているデミウルゴスさえ蘇れば、戦闘の跡と照らし合わせてどう倒されたか検証できるかもしれない)

 

 

 対策し、新たな脅威に警戒しなければと意気込む中、蘇生は行われた。

 

 

「うむ。シャルティアの時は体が構築されたが、肉体が残っている場合は溶け込むのか」

 

 

 蘇ったデミウルゴスをどう窘めようか考えていると、異変に気付いた。

 

 

「ん?蘇生は終わったはずだ。何故デミウルゴスは目を覚まさない」

 

「シャルティアと同じく寝ているのかもしれません。なんと不敬な」

 

 

 アインズは構わないと呟くが、何故か違和感がぬぐえない。違和感の正体を確かめるべくデミウルゴスの体を揺する。反応しないその肉体はまるで死体のようで――――――恐怖を感じたアインズは玉座のシステム確認でデミウルゴスの名前を探した。どの名前も白く表記されている。その中でデミウルゴスの名前だけが――――――黒かった。

 

 

「これはどういうことだ!!何故ッ蘇らない!!システムは問題なく機能したはずだ!!」

 

 

 ユグドラシルなら問題なく機能するシステム。現実となり色々面倒なことが増えたが、ユグドラシルとは根本のところでは変わりない。

 だが、彼――――――アインズ・ウール・ゴウン。否、モモンガは、失念している。ここは異世界で、ユグドラシルではあり得ない事象があることを。

 そこから先は混乱を極めた。当然の如くデミウルゴスの抜けた穴はデカすぎる。その頭脳は必要不可欠で、同クラスの頭脳を持つアルベドとパンドラでもデミウルゴスの抜けた穴を埋めるのは難しい。何より、仲間とともに創り上げた宝物を失うのが怖い。

 

 

(クソッ計画を白紙に戻すべきか?このまま進めても敵の正体も何も分かっていない。デミウルゴスが負けたんじゃ階層守護者でも安心できないぞ。クソックソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

 

「何処のどいつだァ!!アインズ・ウール・ゴウンをコケにしやがってッ俺たちの掛け替えのない宝物を奪っておきながらその正体も曝さないだと……必ず、必ずだァ……俺にィィアインズ・ウール・ゴウンの名を持って後悔させてやる。死が決して逃げ道ではないと教え込んでやる!!」

 

 

 感情の波が抑えられず、怒りが沸騰と冷却を繰り返す。

 アインズは気付かない。どこまで狂っても自分の本質は唯の人間だということに。我儘で自己中で人の顔色を窺うが結局は自分さえ良ければそれでいい。大切な宝物を見知らぬ誰かに壊されたんだ。怒りもするし恨みもする。人によっては殺意も当然懐くし、手足が出るのも納得できる。

 だがアインズは当然の如く悪徳をなせる。これは現実で、NPCは生きている。ユグドラシルと似ているが違う異世界。そのことを理性で理解している。だが、アインズは何処まで行っても本人の自覚無しに、ゲームであるかのように行動している。

 そう――――――何処まで行ってもユグドラシルの延長線上でしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローブル聖王国。

 王国の南西に位置する小国。国土は王国の半分程。アベリオン丘陵の亜人等を警戒し国土を覆う巨大な城壁を築いている。聖王国東部には国土を上回るアベリオン丘陵とエイヴァーシャー大森林があるため、地図上では近い位置にある法国との交易は不可能。

 故に、他国と交流を持たず一国として鎖国を貫くことができた。

 二百年前、十三英雄と大陸を脅かした魔神達の戦争にも関与しなかった。

 五百年前、突如として出現し大陸を制覇したが、互いの強欲さのあまり仲間割れを起こし相争って死に絶えたとされる八欲王と呼ばれる存在。治めはしたが、大陸の端っこにある国に誰も興味を示さなかった。

 六百年前、この世界に降臨したとされる六柱の神々、六大神。人間を守護する神として降臨したが、人類種の国家として最も栄えていたローブル聖王国よりも他種族に滅ぼされかけている人間たちを救った。

 そう、ローブル聖王国は人類最古の都市国家。その歴史は千年を超え、生まれ持った血縁でその道が決まる。 血の尊さで決まる腐敗を齎す制度が、血で血を洗う革命で完全実力国家として生まれ変わったのが八年前。これまでと同じではダメだ。一国で閉じて終わるのは停滞だ。国が栄えるには土地が、力が、統率力が必要だ。

 そして、ローブル聖王国は一人の漢を頂点に生まれ変わった。時代はまさに黄金時代。人間国家で最も栄え、千年以上蓄えてきた叡智が解き放たれた。そこには、プレイヤーの一切が関与していないこの世界独自の技術で、人間としての努力の熱量が他国家とは比べる余地もなく燃え盛っていた。

 新たな支配者は僅か二年足らずで軍事国家として体制を整えた。基本的に軍部が国の実権を握り、軍部はそれぞれ部隊目的の分かれた十二部隊によって構成されている。そして、六年の歳月をかけ諜報員をそれぞれの国家に忍ばせ、ローブル聖王国のためになる技術を掻き集め国力を伸ばし続けた。邪魔する国は何処にもなく、スレイン法国さえ六年前から交流を持ち始めてきたローブル聖王国を脅威とは見ていなかった。ローブル聖王国は常に亜人、異形種と戦いその領域を守り続けてきた。スレイン法国としてはローブル聖王国に求めるものはなく、そのまま頑張ってくれと応援したいほどだ。

 ローブル聖王国もスレイン法国とは敵対する意思はなく、亜人種を撃退し、人類の領域を着々と広げていた。全ては無辜の民が平穏に暮らせる国にするために。

 

 民を、部下を、国を大切に思う英雄は、悪魔に捕まった同志たちを救うべく少人数精鋭で――――――物語は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 物語は数時間前に遡る。

 計画の中核を担うデミウルゴスは、趣味兼至高の御方の命令を遂行するため羊達の定期監査を行っている。ここは牧場、デミウルゴスの信頼における部下が管理している資源調達場。ナザリック地下大墳墓ほどの防衛機能はないが、それでもこの世界のレベルを鑑みれば何も問題のない逃げ場も潜入も不可能な鉄壁の要塞と化していた。牧場内は様々な種族が混ざり合い、悪魔が考え得る悪徳非道の限りを詰め込んだ地獄へと変わっていた。正気な者など一人もなく皆が皆、狂ってくるってクルッテ頭が馬鹿になっている。

 デミウルゴスはナザリックに属する同胞以外を愚かな生物と断ずる。生きる価値など無いだろう。その存在の一切を至高の御方に捧げよ。それでこそ生きる価値がある。

 

 

「おや」

 

 

 ニヤリと、デミウルゴスは一人の若者に近づく。その若者は、この環境で未だ瞳に理性を保ち、首魁と思われるデミウルゴスを見つめていた。悪魔の性と仕事としての観察が始まる。

 

 

「これはこれは、まだ頭が真面な方が御出でとは……辛くはないんですか?悲しくはないんですか?理不尽だと喚き散らさないんですか?個体識別番号1344。ここには希望などない。いえ、むしろ幸せを感じなさい。我々の役に立つという栄誉と存在意義を与えたのですから」

 

 

 この男が運び込まれて二週間。体中を蹂躙され、家畜以下の扱いをされ続け、ゴブリンや亜人種と交わった回数も二ケタを超え、皮を剥がされた回数などもう本人も数えてなどいないだろう。それでもなお、その瞳は光輝いていた。衰弱し凌辱されきった肉体とは裏腹に、精神だけは死んでなかった。どうやら自分はまだまだ創造主であるウルベルト様の足元にも及ばないと再確認でき、嬉しくもあった。

 自分はまだまだウルベルト様に及ばない未熟者だ。だが、悪魔として創造された身として、二週間もの時間をかけ堕ちていない人間は見逃せない。

 更なる苦しみを与えるにはどうすればいい。同族を糞尿と混ぜ合わせた餌は与えた。目の前で生きたまま解体させる同胞を見せつけ、同じ方法で解体させた。違う種族とまぐわわせ、逆に組み敷かれ犯されさせもした。恐怖公の眷属が時間をかけ捕食していく死なないボーダーラインを見極める実験もした。他にも他にも――――――なのに、瞳は死んでいない。無理矢理朦朧とする意識を覚醒させ、近づいたデミウルゴスを睨みつける反抗心もある。

 

 

「……もしや私に反抗すれば殺してくれるとでも?むしろ逆、俄然いじめがいがありそうだ。一日のノルマを君だけ増やしましょう。肉体を使った苦痛の実験も積極的に君に割り振りましょう。自らの手で女子供赤子さえ凌辱させましょう。狂った叫びを二十四時間提供しましょう。それでもなお正気を保てるなら……ここから出してあげますよ」

 

「……」

 

 

 男の瞼が僅かに反応した。勿論出すつもりはない。希望を与え叩き落とす。なんと悪魔らしいことか。

 

 

「……ァ」

 

「おお、嬉しいと、そうしてくれと言う事ですか?ハッキリと述べなさい」

 

「しね」

 

 

 吐かれた唾はデミウルゴスに掛かることなく地面のシミに消える。眼鏡を中指で押し上げる。僅かに零す溜息は冷めきっていた。

 

 

「何故そこまで強情に?打開策などなにもないのに。『言いなさい』」

 

 

 抵抗手段のない相手を容赦なく従わせる言霊は、男から完全な自由を剥奪した。

 

 

「……ぁの御方、なら…………必ずお前を滅ぼす」

 

 

 笑いが込み上げてくるのを喉で押さえる。

 

 

「『死ぬのが怖くないと?』」

 

「あの、おかぁた……役に立てないことが……死ぬほど屈辱だ」

 

 

 込み上げる感情を涙に変え、男はなお睨みつける。

 ほうっと素直に感心する。ここまでされてなお尽くせる忠義がこの漢にはあるのだ。

 

 

「その気概、人間である君に何処まで持たせられるか楽しみだよ。定期監査の楽しみが増えたね」

 

 

 そろそろ別の仕事に戻ろうと踵を返す瞬間、それは来た。

 一本の伝言(メッセージ)。ここを警備するlevel60以上の悪魔からの報告が届いた。

 

 

「人間が一直線に此方に近づいてきている?たった一人で」

 

 

 目視によれば推定level40の男が一人で突っ込んでくるらしい。罠?それにしてはlevel40一人でどうにか出来るものではない。この世界で人間でlevel40は極めて異例だ。是非捕らえて羊の一匹にしてしまった方がナザリックのためになる。

 

 

「デスナイトを十体連れて行きなさい。それと魔将も一人つけます。生きて捕らえなさい」

 

『御意に』

 

 

 いい報告ができそうだ。それに、個体識別番号1344の話も気になる。無理矢理しゃべらすよりニューロニストに情報を引き出させた方が確実だ。そうと決まれば、伝言(メッセージ)を飛ばそうとすると――――――

 

 

――――――ッ!!

 

 

「なッ、結界!?転移も妨害されている。これは、不味い」 

 

 

 混乱する結界内の僕に指示を飛ばそうとした刹那、魔将が牧場の壁を突き破り転がり込んできた。

 デミウルゴスはすぐさま臨戦態勢をとる。

 デミウルゴスは元々純粋な戦闘タイプでも魔法詠唱者でもない。この状況は非常に厳しい。牧場内にいた僕がデミウルゴスを守るべく動く。

 そして、光が漏れる壁穴の向こうには――――――

 

 

「――――――そこまでだ」

 

 

 鳴り響いた軍靴の音は、まさしく鋼鉄が奏でる響きだった。

 ここに、ようやく奇跡(正義)が舞い降りる。

 牧場に刻み込まれた数々の惨状、痛み、そして絶望。それらあまねく負の因子を鎧袖一触で振り払う守護神。

 物語にはつきものの逆転劇が、ついに災禍の渦へとその姿を現したのだった。

 そう、もはや悲劇は幕を閉じた――――――涙の出番は二度とない。

 さあ括目せよ、いざ讃えん。その姿に人類は希望を見るがいい。

 ここから始まるのは、男の紡ぎ出す新たな英雄譚(サーガ)

 ただ姿を見せるだけで、戦場(舞台)を支配する主演が立つ。

 

 

 男は運命へと挑むもの――――――覇者の冠を担う器。

 そう、彼こそ――――――

 

 

「ァ……きてくれたぁ……あなた様はやはりきてくれた……ヴァルゼライド総統閣下ッ」

 

 

 その名を口にするだけで舌が痺れ、熱い気概が更に燃え上がる。

 高潔な強者を前にした時、人は自然と畏怖の念を抱く。

 個体識別番号1344、否、彼は誰に命じられるでもなく、傷ついた身体で這うように首を垂れる。

 デミウルゴス除いた悪魔もまた、一歩後ずさる。そうすることが真理だと、無意識の内に強く感じ取ったが為の行動だった。

 デミウルゴスは彼を前にして視線を逸らすなどという愚を起こさないし、できやしない。

 つまりは対等、発する圧力がつりあっている。通常なら信じ難いが、それも仕方ないことだろう。なぜなら彼はあらゆるものが輝いている、太陽のような男だから。

 目に宿る光の密度、胸に秘めた情熱の多寡、どれもが桁を外れている。定められた限界をいったい幾つ乗り越えれば、こんな領域に至れるのか…………悪魔を前に立つその姿が、命に代えても皆を守ると何より雄弁に語っていた。

 

 

「これほどとは……何者です?レベル差は絶対、君のlevelは高く見積もっても50に届くかどうかのはず、このプレッシャーは在り得ない。何より、お互いただでは済みそうにない。取引を持ち掛けたい」

 

 

 勿論嘘だ。この男は何があってもここで滅ぼす。胸に秘めた漆黒の忠義が全細胞を尖らせる。

 告げるが真実、それはあながち一面として間違っていないが、しかし。

 

 

「これだけの血を流し、命を貪り喰らった後でまだ吼えるか、悪魔ども。なるほど、余程死にたいと見える。忘れているなら今一度、思い出させてやろう」

 

 内に秘めた光熱を解き放たんと刃を二振り、引き抜いた。

 視線に籠もる決意の炎は、強く尊く眩しく熱く――――――

 

 

「――――――貴様らを殺すのが俺の役目だということを」

 

 

 威風堂々と言い放った瞬間、ヴァルゼライドは一陣の風となる。

 同時に、動き出す異形の悪魔――――――英雄譚が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続くのか?
久しぶりなので、準備運動で書いてみました。

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