ポルカ〜剣の王の伝説〜 作:ガラスのハート
ポルカが闘技場に立つと闘技場は一瞬で静かになった。
皆が心して見守っているのだ。最高峯の剣士がどう敵を片付けるかを。
ポルカはずっと俯いている。
ポルカの目の前に1人の剣士が立ちはだかる。
バックラーとブロードソードを構えた、青年の騎士。
彼の名前・ルーク、連合軍の最終兵器とよばれている名高き騎士。
ルークの目の前には皆が視線を向けるポルカが居るのだが、ルークは観客席に堂々と座るアルバートただ1人を睨みつけていた。
ポルカはうつ向いているから、その顔を確認できたものはいなかったのだが、苦虫を噛み潰したような表情になっていた。
「俺も運がないな、初戦からかなりの手練だ」
試合の合図が上がった。
ルークは片手と肩の力を脱力して、だらんと垂らした。
胴体は半身にし、肘を軽く上げて剣は胴ぐらい高さに保った。
誰かが女性のようなポーズだとやじを飛ばした。
アルバートが微笑む。
「なにも分かっちゃいねえ、あのポーズの恐ろしさを・・・」
先に動いたのはポルカだった。
ポルカは先手必勝を特異としている、切り込みこそが美学の騎士だ。
「ハッカペル!!」
会場にポルカの怒声が響き渡る。
ポルカは剣を縦一線に振り落とす。
ルークは待ち構えていた。
どんな攻撃にも対処できるようにと、ポルカの怒声にも耐えぬいた。
脱力させた、バックラーを持つ手がムチのようにしなり、ポルカの剣を払い除けた。
ポルカのガードはガラ空きになる。
ルークはポルカのガラ空きになった胴体に斬りかかった。
ポルカの服が切れて胸に横一線の切り傷が走った。
ルークは目を丸くした。
「ありえない、半身ずらされた!?」
ポルカは間一髪の所で後ろに飛び下がった。
それは回避ではなく避難に近いものだったがあの状態から剣の届かない範囲まで逃げるなど人間を超えた反射神経と身体能力である。
ルークの耳はキーンと音を立てていた。
ポルカの怒声は耐え抜いて見せたルークにもその威力は確かに効果があった。
ポルカは俯いたままである。
ルークはポルカを睨みつけた。
「剣神と言うよりは化物だな」
ポルカは自分の胸の傷を撫でる、手にはベットリと血がついた。
「危なかった、死ぬ所だった・・・」
ポルカは剣を見つめる、磨き抜かれた剣には、怯えるポルカの顔が映っていた。
「怯えているのか私は・・・」
ルークは再び片手を脱力させて乙女のポーズをとった。
「舐めるな化物、貴様の前に居るのは、連合軍の最終兵器だぞ!!」
ルークはポルカに駆け寄る。
ポルカは慌てて剣を振った。
ルークはバックラーで剣を払いのける。
ルークは剣で突きを放つ。
ポルカは体制を崩して尻餅をついて、剣を避けた。
ルークは情けなくも尻餅をつき、隙だらけポルカに剣を振り上げる。
ポルカはルークの顔に砂を投げつけて、頭を抱えて地面を転がり剣を避けた。
ルークは顔を押さえながら叫んだ。
「卑怯者の臆病者!!」
会場は避難の嵐だ。
ポルカは冷や汗を流しながら肩膝をついて生唾を飲んだ。
「戦場ではない、あんな技は戦場では見ない・・・」
ポルカは額を斬られている事に気づく。
「どうすれば良いんだ・・・」
エリカがアルバートの脛を蹴飛ばした。
アルバートが痛いと叫ぶ。
ポルカはアルバートの叫び声を聞いて顔を上げた。
沢山の罵声の嵐の中ポルカはそれぞれの声を聞き分けることが出来ていた。
勿論エリカからの罵声も聞こえていた。
ポルカの目が座った。
ポルカは剣を捨て、上着を脱ぎ、下着いっちょになった。
ポルカは指の骨を鳴らしてルークに笑いかけた。
「お前は強い、だが調子に乗るなよ」
ポルカは審判近寄る。
彼に目を洗う、時間を与えてやってくれ。
それは前代未聞の試合展開だった。
審判はそれを承認して、ルークの元に水の入った瓶を持ってこさせた。
ルークは瓶の水で目を洗い、頭から水を被った。
そして、再び乙女のポーズをとる。
「やっと、真面目に戦う気になったのか」
ポルカは両手の指を鍵爪のように曲げて手の平を開いた。
「殺し合いに卑怯も糞もない一度でも負ければそれは直に死につながる」
ポルカはルークの瞳をしっかりと睨みつける。
「その意味を教えてやる」
ポルカはルークに飛びかかった。
「ハッカペル!!」
再びポルカの怒声が響き渡った。
ポルカは手で引っ掻くように左手を振り落とした。
ルークはそれをバックラーで弾き飛ばそうとする。
しかし、バックラーにポルカの指がしっかりと食いこみ、振り上ルークの手を押さえつけた。
ルークは突きを放つ。
ポルカは剣を手で払う、剣はへし折れて狙いをずらされた。
ポルカはルークの頭を握る。
「さあ、此処から逆転して見せろ!」
ルークはポルカの腹を蹴っ飛ばす、しかし、それぐらいではポルカは手を話さない。
ルークは折れた剣をポルカで肩に突き刺した。
それでもポルカは離さないのでルークはポルカの顎を殴り飛ばした。
ポルカはようやく手を離す。
ルークは頭をかかえながら後ろに後ずさりした。
「なんて、パワーだ、意識が飛びかけた!?」
ポルカはルークに話しかける。
「休み終わったら呼んでくれ」
ルークは眉間にシワを寄せた。
「馬鹿にするな!!」
ルークはポルカの頬を殴り、腹を蹴り、鼻を殴った。
ポルカは鼻血を手で吹きとり、唾を地面に吐いた。
「ハッカペル!」
ポルカはルークの顔面を握り拳で殴り飛ばした。
ルークは向こうの壁まで吹っ飛び意識を失った。
ポルカは頬をさすりながらため息をついた。
「だから、嫌だったんだ、こんな所にくるの・・・」