ポルカ〜剣の王の伝説〜   作:ガラスのハート

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第5話

今日も踊る子羊亭にはたくさんの傭兵で賑わっていた。

 

しかし、あからさまにイレギュラーな存在がひとり現れる。

 

武器を持っている所、傭兵なのだろうがサーベルのようでサーベルではない。

 

ベルセルクにしては獣の皮を被っている訳では無いが変わった格好はしている。

 

その男はアベルに近寄った。

 

「すまぬ、ちょっといいかな?」

 

アベルは男を物珍しそうなものを見るような目で見つめた。

 

「変わった姿だね、何かな?」

 

男は深く頭を下げた。

 

「ありがたい、拙者、井川斬鉄才と申す、人探しをしていて・・・」

 

アベルは焼酎をだした。

 

「なる程ねこのお酒の国か、それは遠路はるばるご苦労なこった、でっどんな人物かな?」

 

井川は席に着く。

 

「日が沈まぬ白夜の国に地上最強の剣士がおると聞いた、その名を鋼のポルカ、またの名は白刃の王」

 

井川は嬉しそうに話す。

 

「是非、一度、剣士の頂点にたった彼に会いたいと思って」

 

井川は周りの空気が張り詰めた事に気がついた。

 

さっきまで笑顔だった、アベルも井川を睨みつけている。

 

「あって、どうするんだ?」

 

井川は席を立ち上がる。

 

「是非、お手合わせをと・・・」

 

アベルが机を叩いた。

 

「帰れ、お前に話す事は何も無い!!」

 

井川は頭を軽く下げて店を出ていく。

 

すると、ブラックスノーの兵士達が店に向かっていた。

 

井川はその兵士達を見て胸騒ぎが襲う。

 

「あの店があぶないきがするでござる!!」

 

予感は的中していた。

 

ブラックスノーの兵士達は傭兵達を取り囲みアベル達を殺そうとしていた。

 

「お前達、ポルカのことを知ってんだろ、いえば命は助かるし金もたんまり手に入るぞ?」

 

アベルが首を横に降った。

 

「誰がてめえらなんかに言うか、ブラックスノーなんてクソくらえだ!!」

 

アベルはブラックスノーの一兵士に顔を殴られる。

 

「黙れ、豚!!」

 

腕利きの傭兵達もきちんと武装した、ブラックスノーの正規軍を前に手も足も出ない。

 

特にその中に雷獣と呼ばれる、ブラックスノーの兵士がいる。

 

彼の繰り出す斧の一撃は拳程の大きさの石を叩き割ってしまう豪腕の持ち主なのである。

 

刃向かった傭兵は皆、彼の斧で殺されていた。

 

雷獣は片手斧についた血を舐める。

 

それなら一人一人、処刑してやるよ。

 

「そこまでだ!!」

 

井川が店に乗り込み、頭に被っていた笠を投げ捨てた。

 

「やあやあ、吾こそは東国の夢見る剣豪、真の剣神をめざしてはるばる西えと参った、井川斬鉄才と申す」

 

井川は上の着物を脱ぎ、背中に刻んだ大きな虎と龍の彫りを見せつけた。

 

「拙者が参ったからには貴様だの悪業も最早ここまで、御天道様に変わって貴様たちに天誅いたす。」

 

井川斬鉄才は刀の持ち手に手を触れて腰を落とした。

 

「井川斬鉄才、推して参る!!」

 

雷獣は目を血走らした。

 

「名乗りが長いしうるせえ、俺の斧でぶっ殺してやるよ!!」

 

雷獣は斧を振り上げて、井川に飛びかかった。

 

井川の抜く刀の先端速度は音速を超える。

 

まさに目にも止まらぬ居合斬りで雷獣の斧と首をはねた。

 

「その斧を金が悪い、そのような玩具で拙者に勝つつもりだったのか?」

 

死人に口なし、雷獣は叫ぶ事もなくその命を終わらした。

 

すると、傭兵達は唖然としたブラックスノーの兵士達に奇襲をかけて、形成が一気に逆転した。

 

井川と傭兵達はブラックスノーの兵士達を分縛る。

 

アベルは申し訳さそうな顔で井川に頭を下げて謝った。

 

「さっきは申し訳なかった」

 

井川は刀についた血を振り払い鞘に収めた。

 

「いえ、当然のことをしたまで」

 

アベルは井川に焼酎を渡す。

 

「飲んでくれ、済まないが今はポルカは何処にいるのか分からないんだ、力にはなれない」

 

アベルは焼酎を一気に飲み干して、口をぬぐった。

 

「結構結構、感謝でござる」

 

すると、ブラックスノーの1人の兵士がまたやってきた。

 

兵士は舌打ちをする。

 

「情けない、それでもブラックスノーの誇り高き戦士かお前達!!」

 

ブラックスノーの兵士達は歓喜の声を上げた。

 

「イワンが来た、ブリザードイワンが来たぞ!!」

 

井川はイワンのシャシュカと言われるサーベルを見つめる。

 

「良いものをお持ちで」

 

イワンは井川を睨みつけた。

 

「お前達もう安心しろ、ブリザードイワンが来てやったぞ」

 

「ウォッカを飲んで机上で机が壊れるまで踊ろう、キャビアをたらふく食べて少女とキスをしよう、そして命尽きるまで祖国の為に戦おう!!」

 

ブラックスノーの兵士達は急に大声を上げて縛られた状態で抵抗を始めた。

 

「ダァーーー!!(はい)」

 

井川が居合の構えに入る。

 

「ならば受けてみよ、我が一撃!」

 

イワンはウォッカに火をつけて火炎瓶を井川の足元に投げつけた。

 

そのままイワンは近寄ってこない、井川の足元が燃える。

 

井川はイワンに駆け寄った。

 

イワンは刀をぬこうとする手を片手で押さえつける。

 

「わりいが、お前の自慢の一撃はくらいたくないな」

 

イワンは井川の顔面に頭突きを入れる。

 

井川は後ろに仰け反り、鞘から刀を抜いた。

 

そのまま、上段に構えてイワンに切りかかる。

 

「勇敢なるブラックスノーの戦士を舐めるなよ!!」

 

イワンは正面から突撃して、井川が刀を振り落とすよりも早く顔にパンチを打ち込んだ。

 

倒れた井川をイワンは髪を掴んで引き起こし、再び顔面を殴り飛ばした。

 

イワンはシャシュカを振り上げる。

 

「雷獣の仇!!」

 

井川は跳ね起きて、イワンをそれと同時に蹴り飛ばす。

 

「調子にのるなでござる!」

 

井川はイワンの股間を蹴りあげる、そして内またになったイワンの溝に正拳突をいれた。

 

イワンは吐瀉物を撒き散らす。

 

井川は再びイワンの溝に正拳突を打ち込む。

 

イワンは両膝を地面についた。

 

井川は溝に足先蹴りをいれた。

 

イワンは腹を抱えて四つん這いになった。

 

井川は四つん這いのイワンの後頭部に踵落としを入れる。

 

イワンは白目を向いて地面に頭をつけた。

 

井川が刀を構える。

 

「悪いが、その首をいただく」

 

イワンはガバッと起き上がり、尻を地面についた体制に入って息を切らしながら井川を見つめた。

 

「へ、この程度か?」

 

イワンは立ち上がりシャシュカを振り回した。

 

井川はサーベルの軌道を読み取り、最小限の動きでよける。

 

「大振りだな、ブリザードイワン悪いが敵ではない」

 

井川の横っぱらに傷が入る。

 

井川は間一髪で致命傷を避けた。

 

「なんだ今の・・・」

 

井川の首が少し切れる、これもまたギリギリで致命傷を避けた結果。

 

「また?」

 

井川は生唾を飲む。

 

「剣に殺気が闘争心が無い」

 

井川は刀を振るう。

 

イワンはシャシュカで井川の肩を斬った。

 

井川は刀の軌道を外してからぶる。

 

「まさに無の剣撃、無の心、無の境地」

 

井川は肩膝をつく。

 

「最早ここまでか無念・・・」

 

すると、大きな声が店に響き渡った。

 

「見つけたぞイワン、殺してやる、ハッカペル!!」

 

白刃の王が飛び出した。

 

イワンは白刃の王の一撃をサーベルで受け止めるが余り力にふっとばされる。

 

白刃の王は剣を振り上げてイワンに襲い掛かる。

 

「王女様の仇!!」

 

イワンは必死で白刃の王の一撃一撃をサーベルで受け止めるがその内手が痺れてサーベルを離してしまった。

 

「ハッカペル!!」

 

白刃の王はイワンに止めの一撃をいれる。

 

イワンは間一髪で避けたが片目をうしなってしまった。

 

イワンは割れた酒便を掴み白刃の王の腹にぶっさした。

 

攻撃に殺意が乗らないために頭に血が上っていた白刃の王はよけれなかった。

 

しかし、イワンの腹には白刃の王の手がぶっ刺さってる。

 

ブラックスノーの兵士達がイワンを取り押さえた。

 

「イワン将軍、撤退です!」

 

イワンは抵抗する。

 

「離せ、あと一息で・・・」

 

ブラックスノーの兵士達は白刃の王から無理やりイワンを引き剥がした。

 

「1000人でも彼に勝てないと申していたのは何方ですか、今回は雷獣様も亡くなり兵士達の被害が多くイワン様も負傷なさっております!」

 

イワンはそれでも抵抗する。

 

「離せ、離さんか!」

 

兵士達はそんなイワンを店の外までひこずる。

 

「私達には貴方が何よりも必要なのです、このあと首を飛ばされ用が構いません、ブリザードイワンに此処で死なれたら困るのです」

 

白刃の王は肩膝をつき、手を伸ばした。

 

「逃げるなイワン、祖国を返せ!!」

 

イワンとブラックスノーは退散する。

 

白刃の王は怒鳴り散らす。

 

「巫山戯るな、弱虫め!」

 

白刃の王は柄にもなく地面を拳で叩き、糞がと大声を上げた。


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