ポルカ〜剣の王の伝説〜   作:ガラスのハート

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第24話

井川とアージュは踊る子羊亭の中に逃げ込んだ。

 

アベルが井川の顔を見て、目を丸くした。

 

「久しぶりに会ったと思ったら彼女なんて拵えて……」

 

アージュが顔を真っ赤にして井川の頭が腰の高さまで下がるぐらい強く頭を拳骨で殴った。

 

「彼女何かじゃねえ!!」

 

井川が頭を抱えてふさぎ込む。

 

「何故、拙者は殴られたのだ?」

 

分かっていない井川のピュア差もとい鈍感差にアベルは苦笑いを浮かべた。

 

井川はアベルに近寄った。

 

「なあ、ポルカが今何処に居るかを知らないか?」

 

アベルは思わず笑った。

 

「お前は初めてあった時も同じような質問をしたよな」

 

店の奥からエリカが姿を表して、井川を睨みつけた。

 

「知らないわ、最近ここに顔を出しもしない」

 

井川は口をつぐむ。

 

アベルはとりあえず、井川達に奥の席を勧めた。

 

疲れてるようだな、取り敢えず座って休め、1杯までなら奢ってやるから。

 

井川はアベルに頭を下げて、お酒を貰いアージュと奥の席に向かった。

 

すると、行商人がせっせとやって来て一緒の席に座ってきた。

 

「此処で会ったが何かの縁、何か買って行かないか?」

 

行商人は荷物を纏める。

 

井川はやんわりと断ろうとしたが最後に並べられた古い木箱を見て、顔を青ざめさせた。

 

アージュは井川の張り詰めた表情を見て、これは只事ではないとおもい行商人に帰れと大声をだした。

 

しかし、それを井川が止めた。

 

「そこ木箱、中身は捨ててないか?」

 

行商人は目を丸くした。

 

「いえ、捨ててないですよ……」

 

行商人が最後までいう前に井川が木箱を手に取った。

 

「みなまで言うな、中身は知っている」

 

井川は財布を取り出す。

「何円で譲ってくれるんだ?」

 

行商人は笑顔を取り繕う。

 

「これはオマケです、他のものを買っていただかないと」

 

井川は篭手を指さした。

 

「それを貰おう」

 

行商人は篭手をとる。

 

「片っぽしかないですよ?」

 

それは明らかに売れ残りの質の悪い篭手だった。

井川は首を縦に振った。

 

「片っぽが丁度いい」

 

行商人はその篭手を少々高値で売ったが井川は買った。

 

井川は行商人から木箱を受け取るとさっそうと中身を開けて中に入ってる薄い布を手に取った。

 

それを見つめると1人でうなづいて、慣れた手つきで自分の左手に巻き付けて、その上から篭手を付けた。

 

その時、違う客が入ってきたので行商人はさっそうとそっちに移動した。

 

アージュが井川を揺する。

 

「それは何なんだ?」

 

井川はアージュと目を合わせなかったし無言を通した。

 

アージュが諦めたとき、井川がポロッとボヤいた。

 

「捨てたはずだった、しかし、これは何かの縁だ、何かの意味があるに違いない……」

 

すると、踊る子羊亭にもう一人の侍が入って来た。

 

アージュが立ち上がって、侍の前に立ちはだかった。

 

「此処じゃ迷惑かかる、表に出な」

 

侍は大きな声で笑った。

 

「そりゃ無いぜ破壊屋、お前は殺すがここの皆も死んでもらう、それが1番楽しいんじゃねえか」

 

侍は刀を抜いて近くにいた人の首をはねた。

 

「改心したつもりか、お前もこちら側の人間だろ?」

 

アージュはハンマーを振るう、侍はそれをバクステで避けた。

 

「そうだ、雑魚のことなんか考えるな俺たちは強いんだ!」

 

アージュがハンマークルクルと回すと井川が止めに入った。

 

「そんな長モノを振り回すな、拙者がやる」

 

井川は持ち手に手を当てる。

 

「井川抜刀流、井川斬鉄斎と申す」

 

侍は刀を井川に向ける。

 

「俺の名前は修羅丸、我流だ」

 

修羅丸は刀を下げる。

 

「井川って、首狩り井川か?」

 

井川はうなづいた。

 

修羅丸は眉間にシワを寄せる。

 

「なら、舐めてんのか、首狩り井川なら、井川片手一伝流だろ、井川抜刀流なんて聞いたことねえぞ!」

 

井川は居合いの構えに入った。

 

「察してくれ」

 

修羅丸は刀を上段に構える。

 

「てめえも改心したつもりか、ふざけるなよ」

 

修羅丸は井川に切りかかる。

 

井川の音速の居合い斬りが修羅丸の体に触れた。

 

修羅丸の胸が切り裂かれ血が噴き出した。

 

修羅丸は冷や汗をかく。

 

「早えぇ、鬼の血統って言うのはただの噂じゃねえようだな」

 

これは修羅丸の近づくフェイントだったのだが速すぎる居合い斬りは修羅丸に届いた。

 

しかし、致命傷には至らず剣先が触れただけだったが。

 

井川も流石にここで真の音速剣を放てなかった、巻き添えを恐れたからだ。

 

修羅丸は行商人の手をつかみ盾にした。

 

「よお、井川、改心したのならこいつは切れないよな?」

 

修羅丸は行商人を盾にしながら井川に近寄る。

 

そして、井川の間合いに入り込んだ。

 

「やはり、お前は雑魚だ!!」

 

修羅丸は行商人を突き飛ばした、井川は行商人を受け取る。

 

刀が行商人を貫き、井川に刺さった。

 

修羅丸は刀を抜き、血を振り払う。

 

「俺は名前通りだ、修羅の王さ!」

 

何者かが修羅丸の足を掴んだ。

 

「てめえ、そいつは俺の獲物だ!」

 

修羅丸はその声と一緒にぶん投げられて、建物の扉を突き破った。

 

投げられ倒れた修羅丸が身体を起こすとそこにはアレキサンダーの姿があった。

 

修羅丸は立ち上がる。

 

「雷獣か、面白い」

 

修羅丸はアレキサンダーに切りかかる。

 

アレキサンダーはハルバードの柄で刀を防いだ。

 

修羅丸はアレキサンダーの顔を蹴り飛ばした。

 

アレキサンダーが踏ん張ると修羅丸はすかさずその足を切りつける。

 

アレキサンダーは体制を崩した。

 

「くたばれ!!」

 

修羅丸は刀を振り落とす刀はアレキサンダーの首に触れた。

 

刀が止まる、アレキサンダーはハルバードを杖にして、刀の進行を阻んだのだ。

 

修羅丸は刀を引いた。

 

アレキサンダーの首から血が噴き出す。

 

それでも修羅丸をしっかりと睨みつけた。

 

修羅丸が刀を振り上げて振り落とした。

 

アレキサンダーは少し体制を既でえて、刀を肩で受け止めた。

 

そのままアレキサンダーはハルバードを短く持ち石突を修羅丸の胴体に叩き込む。

 

修羅丸は吐血して、後ろに下がった。

 

アレキサンダーはハルバードを杖に立ち上がる。

 

修羅丸は刀をやっと、鞘に収めた。

 

アレキサンダーは此処で気絶して、地面に倒れた。

 

修羅丸は背を向ける。

 

「肋を折られたか、まあいい、狙いはポルカだ」


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