ポルカ〜剣の王の伝説〜   作:ガラスのハート

23 / 24
第23話

アルバートは少数の仲間を連れてポルカが白騎士を倒した森に向かった。

 

ここに夜な夜な黒騎士の亡霊が出るという噂がたったからだ。

 

アルバートは眉間にシワを寄せている。

 

亡霊を信じている訳では無いが黒騎士の死体があの後いつの間にか消えていたのだ。

 

「もしかして、いや、しかし……」

 

そう考えているうちに釣れてきた仲間が武器を構えた。

 

目の前に確かに首がない黒騎士が自らの首を抱えてヨロヨロとさ迷っているのだ。

 

アルバートは背中に背負った大槍を構えた。

 

「何たる事だ、よもやこんな事が起こり得るのんて……」

すると、黒騎士は足を止めた。

 

「おや、その声はアルバートか?」

 

アルバートは生唾を飲む。

 

「そのようなすがたになっても生前の記憶はあるんだな」

 

黒騎士は自らの首をアルバートの方に投げた。

 

アルバートの足元に首が転がる。

 

アルバートはギョッとして首を凝視した。

 

「……人形?」

 

アルバートは黒騎士をよく見る、すると、どうも肩の位置が可笑しい。

 

アルバートは溜め息を吐いた。

 

「何、遊んでんだ……」

 

黒騎士はかがみ込む、するとそこには首の位置に蓋のような者がして合った。

 

「私としたことがやはり、旧友をこの手で殺す事が出来なかったのだ」

 

黒騎士は背を向けると鎧にレバーの様なものがある。

 

「そこで、自らの首を白騎士に取らせたと思わせるつもりがこの鎧が脱げなくなって……」

 

アルバートは色々な気持ちが複雑に交差したがまずは呆れた。

 

「それがどれだけ仲間を危険にさらすかお前なら分かっていただろ、それ相当の責任は覚悟しとけよ」

 

アルバートは鎧のレバーを下ろしてやる、すると蓋が相手黒騎士の首が飛び出した。

 

「ありがとう、これで前が見えるよ」

 

黒騎士はアルバートの肩に手を置く。

 

「それと、私の処罰の前に1つ、実はあの解放した牢獄には最悪最凶の犯罪者と呼ばれる極悪人が6人いてだな……」

 

アルバートは頭を抱えた。

 

「これ以上、仕事を増やさないでくれ……」

 

 

~☆~

 

 

井川とアージュは古い小屋の中に逃げ込んだ。

 

近くにあった、机を扉の前に置き、一つしかない窓から外の様子を伺う。

 

「囲まれたで御座るな」

 

井川は汗を拭う。

 

アージュは井川の肩に布を強く巻き付けた。

 

「あんたがあとのこと考えずいきなりそんな自殺まがいな事をするからだ!」

 

井川は首を横に降る。

 

「あのままなら、拙者が捕らわれるだけで終わったのにお主が助けにくるからだろ?」

 

アージュは井川の頭を叩く。

 

「そんな誰かを犠牲にしてではなくもっと違う方法があっただろ、お前がこうをあっせたせいだ!」

 

井川は窓の近くに寄った兵士の首元に窓から刀だけを向けた。

 

「下がれ!!」

 

様子見に来た兵士は慌てて下がった。

 

井川は刀を鞘に収める。

 

「幸か不幸か入口は一つ、窓も一つ」

 

アージュは溜め息をつく。

 

「不幸だよ、袋小路だ」

 

井川が小屋の壁に手を当てる。

 

「余り、溜め息をつくと運が逃げるでござるよ」

 

アージュは井川を睨みつける。

 

「誰のせいだと思ってんだ?」

 

すると、アージュの足元を何かが走った。

 

「ウワッ」

 

それは野ウサギだった。

 

「驚かすなよ……」

 

井川がタンスのすみをみる。

 

すると、穴が空いていた。

 

「こっから出られそうだ……」

 

 

~☆~

 

 

アリウスが峠を歩いている時のことだった。

 

アリウスの目の前に何者かが現れる。

 

囚人服を来たアルバート並の高身長の男だ。

 

「久しぶりだな、アリウス」

 

アリウスは盾と剣を構える。

 

「まさか、ネメアーの獅子か!?」

 

男は指を鳴らす。

 

「ネメシスと呼んでくれや」

 

ネメシスはアリウスに殴り係る。

 

アリウスは剣をネメシスに突き立てた。

 

剣が折れ、アリウスの顔が潰れた。

 

~☆~

 

アルバートの耳にアリウスがやられた話は届いた。

 

アルバートは慌てて馬を走らせて、アリウスをかくまっている宿に向かう。

 

宿には顔に包帯を巻かれたアリウスが横になっていた。

 

「アルバート、ポルカが危ない……」

 

アルバートはアリウスの手を掴む。

 

「ポルカなら心配いらない、少なくとも俺はポルカが負けた所を見たことねえ」

 

アリウスは手を強く握り返す。

 

「奴らは強者に飢えている……」

 

アルバートは眉間にシワを寄せた。

 

そこに黒騎士がやって来た。

 

「いこう、アルバート」

 

アルバートは黒騎士を突き飛ばした。

 

「何故、あの時、いわなかった!?」

 

黒騎士は尻餅をつく。

 

「あのときは言うべきではなかったからだ」

 

アルバートは肩を怒らせて部屋から出ていった。

 

アリウスが黒騎士に一言のべる。

 

「気にするな、お前は間違っちゃいない」

 

黒騎士は溜め息をついた。

 

「そうかな、自分でも分からん」

 

 

~☆~

 

 

井川とアージュは山を降りて走って逃げている。

 

すると、その道でアルバートとばったり出くわした。

 

アルバートが目を丸くする、

 

「生きてたのか!?」

 

井川は即答で返す、

 

「勝ったのか!?」

 

アルバートは笑顔で返した。

 

「ああ、勝ったぞ、お前の武勇はポルカから聞いた……」

 

後ろから追手の声が聞こえる。

 

アルバートが眉間にシワを寄せた。

 

「何かしたのか?」

 

井川は首を縦に振って、立ち去ろうとした。

 

「それでは、そう言うことで」

 

アルバートが馬から降りる。

 

「俺の背後にいろ、話をつけてやる」

 

井川はアージュのうでをつかむ。

 

「頼れるか!?」

 

アルバートは腕を組んだ。

 

「俺を信じるか否か?」

 

井川はアージュを引き止める。

 

「このままではいずれ捕まる、この者は拙者の友だ、信じてくれ」

 

アージュは眉間にシワを寄せたが足を止めた。

 

追手がアルバートの目の前で止まる。

 

「アルバートジェネラル!?」

 

アルバートが追手を睨む。

 

「死人は出たのか?」

 

追手は首を横に降った。

 

「過擦り傷などの軽症は何人か出ましたが死人は……」

 

アルバートは溜め息をつく。

 

「そうか、なら、頼みがあるんだが?」

 

追手は首を縦にふる。

 

アルバートは井川たちを指さした。

 

「実は俺の知り合いなんだ、ここは俺の顔を立てて、任せてくれないか?」

 

追手は全員振り返り、去っていった。

 

井川が土下座しようとしたため、アージュが止めた。

 

「ありがとな」

 

すると、黒騎士がそこを訪れた。

 

「アルバート、奴らを探すにしてもお前は顔も名前も知らないだろ、私に考えがある……」

 

黒騎士はアージュの顔を見る。

 

アルバートが怒りのこもった声で喋る。

 

「なんだ、言ってみろよ、ポルカを出しにするのか!?」

 

黒騎士はアルバートの顔をまじまじと見る。

 

「いや、お前か私をだしに使う、別に強者はポルカだけでは無い」

 

黒騎士はナイフを抜いて、アージュに向けた。

 

「破壊屋だな?」

 

アージュはウォーハンマーを構える。

 

「くそ、黒騎士か」

 

アルバートは槍を構えた。

 

「こいつがアリウスを襲った奴らの仲間なのか!?」

 

井川が持ち手に手を添えた。

 

「アルバート殿、黒騎士殿、落ち着いて聞いてくれ、アージュは悪い奴じゃない!」

 

黒騎士が井川を睨む。

 

「どいてくれ、そいつは何千人も無差別に人を殺せるイカレ野郎だ」

 

井川が居合いの構えに入った。

 

「人なら我らも数え切れないほど殺してきただろ!?」

 

アルバートは少し槍を下げる。

 

「盗賊騎士の時は確かに殺した……」

 

井川が少し後ろに下がる。

 

「信じろと言ったよな?」

 

アルバートは完全に槍を下げた。

 

黒騎士も仕方なくナイフをしまう。

 

アルバートは槍を地面に刺す。

 

「さっさと行け、次は無いぞ」

 

井川はアージュの手を引く。

 

「かたじけない!」

 

井川とアージュは走って逃げ去った。

 

アルバートはくらい顔でその背を眺めていた。

 

黒騎士がアルバートの肩を叩く。

 

「少し、用を思い出した、カエルが腐る前に帰らなければ」

 

黒騎士はそう言うとアルバートが何かをいう前に足早にその場を去った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。