ポルカ〜剣の王の伝説〜   作:ガラスのハート

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囚人との戦い
第22話


井川は斬った、斬った、斬った。

 

目の前に立ちはだかる敵を両の手の刀で次々と切り伏せた。

 

気がつけば周りには誰もたっていないで足元は倒れた人で見えなくなっていた。

 

井川の顎からポタポタと涙に似た汗が流れ落ちる。

 

「ポルカ、後は頼んだ……」

 

井川は骸の山の中に倒れた。

 

 

~☆~

 

 

椿の鬼、又は首狩り井川と彼は祖国でそう呼ばれていた。

 

主君を持たぬ、浪人の身であった彼は武功こそが生きがいだったのだ。

 

戦場に出ては千の兵の首を跳ね、戦場出なくとも腕が立つとの噂を持つ者の首を跳ねていた。

 

だが、ある日。

 

井川は大左衛門と言う、武士の首を跳ねた時の事だった。

 

大左衛門事態は名の知れた辻斬り魔でこれは辻斬り同士の戦いで終わる筈だった。

 

しかし、井川が独り身であるに対して大左衛門は1粒代の息子がいたのだ。

 

井川は息子の存在に気付かず、大左衛門の首を椿の花のように首から落とした。

 

息子の目の前で父を殺したのだ。

 

息子は逆上して、小太刀を握って井川に襲いかかった。

 

井川はその子の首を高々と跳ね飛ばした。

 

明らかに弱い、子供の首を跳ね飛ばした井川は辻斬りの虚しさに気付き、臆病風に吹かれた。

 

井川は先祖代々伝わってきた井川片手一伝流を封じて、その日から抜刀術もしくはできる限り二刀で戦い、先祖代々伝わって来た、切り札を捨てた。

 

それでも、井川は自らの過ちに悩み続けた。

 

世界最強の剣士、ポルカの噂は東国の地にまで及んでいた。

 

大陸に真の剣士有りき。

 

井川はその者に真の剣士とは何かを知るために東国の地から大陸に旅立った。

 

真の剣士とは、刀を握るその意味は……。

 

~☆~

 

井川が目覚めると小舟の上にいた。

 

最初は三途の川を渡っていると思ったがどうも潮臭い。

 

これは、海の上である。

 

「このまま、死んじまうと思ったぜ」

 

そう言ったのはボロボロの鎧に身を纏った女だった。

 

色白で金髪の髪を後ろで束ね手入て、目は青なので東洋の者ではないようだ。

 

背は井川よりも小さいが、背中に背負っている鉄槌は井川の背丈の二倍はありそうだ。

 

井川は自分の身を見る、とてもじゃないが適当といわんばかりに巻き付けられた包帯でミイラのようになっていた。

 

井川は心の中で自分の生命力の凄さに自分で驚かされた。

 

「あたいの名前はアージュ、お前侍だな、名前は?」

 

井川は両膝をつき、土下座した。

 

「拙者は井川残鉄斉と申す、この度は助けて頂き真に感謝する」

 

アージュは驚き、井川の肩を撫でた。

 

「別に当たり前のことをしただけだろ、そんな頭下げるなよ」

井川はその言葉にとても感心する。

 

「拙者、感動した!!」

 

アージュは驚きの連続で溜め息を吐くばかりだった。

 

「変なやつ……」

 

 

~☆~

 

 

井川とアージュは陸についた。

 

アージュは此処で井川と別れようとしたが井川はアージュの手を握って離さなかった。

 

「是非とも恩を返したい、今の自分に出来ることはないか!?」

 

アージュは手を振り払おうとする。

 

「なら、その手を離してくれ!?」

 

井川は慌てて手を離すと、アージュは走って逃げた。

 

井川はその後をしつこく追った、そのせいで傷を開いてしまった。

 

アージュは立ち止まり、溜め息をついた。

 

 

~☆~

 

 

アージュは仕方なく井川を連れて、連合軍の倉庫の前にやって来た。

 

「彼処に私の武器と鎧を隠してんだが、見張りが多いな……」

 

井川が目を丸くする。

 

「ここは連合軍の倉庫ではないか、何故こんなところに?」

 

アージュは片手で顔を覆う。

 

「捕まる前に彼処に隠したんだ、彼処なら逆に見つかんないだろうって思ってな」

 

井川は首を傾げた。

 

「捕まる?」

 

アージュは溜め息をついた。

 

「お前、何も知らずにあの監獄を襲撃していたのか?」

 

アージュは井川を睨む。

 

「あの監獄には永遠に捕えられる事を義務付けられた囚人が6人いる」

 

アージュの顔は少し暗くなる。

 

「それは鉄槌、スリング、刀、双剣、拳、棒、の武器の達人であり、最悪最凶の犯罪者達」

 

アージュは鉄槌を背から下ろす。

 

「あたいは鉄槌のアージュ、捕まるまでは破壊屋の名前を好きなようにしていた」

 

井川が両手を組む。

 

「お前がか?、少なくとも俺には最悪最凶の犯罪者には見えないが……」

 

アージュは鉄槌を構える。

 

「余り、舐めるなよ!?」

 

井川は相手にせず、話題を切り替えた。

 

「そりより、その装備はそんなに大事な物なのか?」

 

アージュは倉庫の方を見る。

 

「父の形見でもある」

 

井川が倉庫に向かって歩いていく。

 

「拙者が気を引くから、アージュはそのうちに入れ」

 

井川は音速の居合いを放った。

 

井川の片手が吹き飛び血まみれになる。

 

ついでに傷も開く。

 

斬撃が飛び倉庫の門を破壊する。

 

倉庫の見張りが大慌てで集まり、井川に向かった。

 

井川は血まみれの手を垂らし、無事な方の手で小太刀を握った。

 

そして、出来るだけ大きな声で叫ぶ。

 

「掛かってこーい!!」

 

アージュはその間に素早く倉庫に忍び込んだ。

 

アージュは無事、武者鎧と無骨なウォーハンマーを手にして抜け出したが、井川は複数の兵士に捕えられてしまった。

 

そこにアージュが飛び込む。

 

アージュは次々と兵士を薙ぎ払い、井川を立たせて共に走って逃げた。

 

「突っ込むか、無茶苦茶する女だな」

 

アージュはきっと井川を睨む。

 

「アンタの方が無茶苦茶だよ、また傷開きやがって!!」


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