ポルカ〜剣の王の伝説〜 作:ガラスのハート
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第16話
丘の上から大草原を見守る男がいる。
彼は白刃の王と呼ばれ、その身は一振りの鋼。
ひと呼んでスティールポルカ。
ポルカは森のさざめきに耳を済ます。
小鳥の鳴き声、木々の揺れる音、ここにはポルカを癒してくれる自然があった。
ポルカは自らの剣を見つめる。
研ぎ澄まされた剣はまるで鏡のよう。
ポルカは今、連合軍による指名手配にんだ。
しかし、殆どの人々はポルカの味方だった。
だからこそ、ポルカは街には入らなかった。
連合軍はやっけになってポルカを探している。
街に一度入れば、誰かが巻き添えを食らってしまうだろう。
ポルカは剣を見つめる。
最早、祖国は遥か遠くに誓を立てた王女様も遥か遠くに。
ドン・ベンジャミン家にも、頼れない。
これ以上の迷惑をかけるわけには行かない。
連合軍を倒すのも手だが、そんな事をすればブラックスノーが再び南下を始める。
イワン達には嬉しい話ではあるが。
すると、誰かが丘に上がってきた。
イワンは剣にさり気なく手を触れる。
「兄さん、こんな所にいたんだね」
それは弟いや、妹のホーテだった。
ポルカは剣から手を離す。
ホーテは溜息をつく。
「まるで飢えた一匹狼だね、そんなにボロボロになるなら実家つげばいいのに、そうすれば連合軍も手出し出来ないよ」
ポルカは首を横に降った。
ホーテはポルカに剣が入った鞘を投げた。
「相変わらず頑固なんだから、その剣は兄さんにあげるよ」
ポルカは剣を見つめてホーテに突き返す。
ホーテは首を横に降って、眉間にシワを寄せた。
「別にドン・ベンジャミン家をつげとは言わないがアンタは長男なんだ、どんな理由であれ、その剣はポルカが持つべきだ」
ホーテはポルカに背を向けた。
「それさえ受け取ってくれれば、後は好きにしていいよ」
ポルカは鞘から剣を抜く。
これはドン・ベンジャミン家に伝わる伝家の宝刀である。
剣はサーベル上で黒い峯に紅の刃が特徴持ち手は黄色いゴムで巻かれてる、ロングソードの様な鍔の真ん中には大きなライトニングクォーツがはめられている。
ライトニングクォーツは水晶が地中にある時に雷を受けて水晶自体が高温となり溶けたものや、衝撃でクラックが起きて、周囲の泥を巻き込んで固まったり傷だらけになった水晶のことだ。
石言葉は雷、前進、変化。
そして鷹が刻まれている。
睡蓮の花言葉は信仰心、清浄、滅亡。
そして、鷹は強さ、勇気、遠眼、不死の象徴。
その鷹は平和の象徴のオリーブを咥えるハトを踏んづけている。
ポルカは溜息をついた。
「何とも、物騒な剣だ⋯⋯」
まるで、破壊してあるけと言わんばかりである。
ポルカは剣を鞘にしまった。
すると、影からアルバートが現れた。
「物騒な剣って、剣は元々物騒なものだろ?」
ポルカは歯噛みする。
アルバートはポルカに地図を渡した。
探すのに苦労したぜ、なんせ俺も指名手配人だからな。
ポルカは地図を見つめる。
「本当に苦労したぜ、お前の国の王女の血族を見つけるの」
あのポルカが顔を上げる。
アルバートはニカッと笑う。
「諦めるにはまだ早い、大好きな王女様の為に仕事できるぞ」
ポルカは地図を懐にしまうとサーモンスネークにまたがる。
アルバートは手を振る。
「わりいが俺に出来るのはここ迄だ、後はお前の手で切り開け」
ポルカはアルバートに手を振り返した。
「斬るのは得意だ」
~☆~
ポルカは草原の途中で馬を休めていた。
日も、もう時期暮れる。
ポルカのお腹が鳴った。
残りの食料はあとわずかだ。
流石に人里を訪れなければならないかも知れない。
ポルカは一先ず、眠ることにした。
しかし、馬のヒヅメの音が聞こえる。
ポルカは剣に手をやった。
すると、黒い鎧に大剣を持った男が黒い鎧を纏った馬に乗ってこっちに向っていた。
連合軍切っての腕利き、黒騎士と呼ばれる騎兵である。
彼自身も自らの事を黒騎士と名乗るので本名を知るものは僅かにしかいない。
黒騎士は馬の上からポルカを見下ろした。
「ふん、実に興味深い」
ポルカは寝たフリを続ける。
黒騎士は微笑の笑みを浮かべた。
「これからお前が行なう事に興味がある、起きたらそのまま進め、途中に村がある」
黒騎士は地面にビールを1口飲み、それを地面に置いた。
「連合軍はまともにツマラン、お前みたいに自分を持っているやつの方がずっと面白い」
馬のヒヅメが遠ざかる。
ポルカは起き上がり、ビールを手に取り飲み干した。
~☆~
ポルカは村についた。
ブラックスノーを追い返したというのに村人は貧相な暮らしをしていた。
ポルカは連合軍は中から腐っていると悟った。
今では、ポルカを知らない人はいないだろう。
彼は指名手配人なのである。
ポルカの予想通りだ、村人達はポルカに群がり匿う話が早くもうじょうした。
連合軍は信用できないだしい。
それにポルカを連合軍に売り飛ばそうなら、村八分にされてリンチにあい、一生を半殺しで過ごさなくてはならない。
いや、つるし上げられて殺されるかもしれない。
連合軍は村人のその後のことなんて保証しない、考えてもないのだ。
ポルカは連合軍をアホだと思った、安全も保証してやれば食いつく奴は少しはいたかも知れないのに。
どうやら今の連合軍にはまともに考える力もないようだ。
ポルカは急いでいると伝え、僅かだが彼らには精一杯の食料と水を貰い足早に村を去った。
しかし、ポルカは途端に嫌な予感がよぎり村に帰った。
予感は的中した。
連合軍達が村に押し入りポルカの事を問いただしていた。
村人は必死でシラをきっている。
すると、連合軍達は火を起こす準備を始めた。
ポルカに味方するもの見せしめにこの村を焼き払うと決断した見たいだ。
馬のヒヅメが聴こえてくる。
連合軍達は慌てだした。
「何かがこちらに向かってくるぞ」
ポルカが剣を振りかざして飛び出した。
「
怒涛の叫びが連合軍を震え上がらせた。
こうなってしまってはもう連合軍に勝ち目無い。
ポルカに蹂躙されるだけされて村を追い出された。
しかし、ほっとけばもっと大軍でこの村を連合軍は攻めてくるだろう。
この村にはもうこの村人は住めない、しかし、彼らはここ以外に行く場所が無い。
ポルカは頭を抱えた。
馬のヒヅメと人の靴音が鳴り響く。
相当な数の足音である。
ポルカは驚いた、こんなにも速く本軍が来るのか。
まず、まっ先に現れたのはイワンだった。
イワンはポルカを睨みつけている。
イワンの後ろからアレクサンダーが現れた。
「まさか、こんな所でおまえに出くわすとはな」
ポルカは静かに剣の刃を翻した。
イワンがアレクサンダーを下げる。
「お前と戦争しに来たんじゃない、ブラックスノーは一先ずお前の味方だ」
ポルカは刃を一先ず鞘に納めた。
「なぜ?」
イワンの眉間のシワが深くなる。
「宿敵連合軍を打つチャンスだ、我々ブラックスノーはこの辺りで連合軍を睨みつけて連合軍にプレッシャーをかける」
イワンはウォッカを一気に煽った。
「これはブラックスノーの意思だ、そうじゃ無かったら今すぐてめえを首り殺してえよ」
ブラックスノーの軍は大量の食料と酒と武器を村人達にアレクサンダーの支持で配給している。
イワンはそれを指さす。
「こういう事だ、連合軍は自ら破滅する」
イワンがウォッカの空になった瓶を地面に投げつけた。
「これ以上イライラさせるな、速く行け!」
ポルカは軽く会釈して、何も言わずにサーモンスネークとその場を去った。