若干、コメディ色が強いかも、、、
製薬会社アンブレラ。全ての元凶にして黒幕である彼の組織によって開発、製造され、そしてアンブレラの秘密を知ってしまったS.T.A.R.S.のメンバーを抹殺するためにラクーンシティへと送り込まれた
「S.T.A.R.S.……」
話せる言葉、その単語など抹殺対象として登録された人間達が所属していた部隊名称の『S.T.A.R.S.』くらいのものでしかなく、それ以外は、その身から迸る殺意くらいしか彼に感情表現というものは存在しない。
何度か取り逃がしたものの漸く始末したブラッド・ヴィッカーズを放り投げ、ようやく見つけた
「……………!!」
彼は開発過程において、その思考の全てを奪われていたが、同時に取付された外付けのハードディスクのようなナニカの力を頼ることにより、なんとか命令に忠実に行動しようとし、まさに関係の無い第三者から見れば思わず「あらやだ、かわいい」などと呟いてしまいそうなほど愚直に鍵のかかった丈夫な扉をガシン、ドシンと叩き、親に叱られて家の外へ締め出された子どものような振る舞いで警察署正門の玄関口を蹴破ろうと躍起になっていた。
――ドゥン
だが、そこに思わぬ伏兵が現れ、自分を狙撃した。薄暗い空の下に響いた重い銃声が何なのかを認識することなく、彼は自らの側頭部に強い衝撃を受けることで、その存在をいやがおうにも認識する。
「S.T.A.R.S.……」
――ドゥン、ドゥン
次々に身体の急所、それも平時であれば致命傷どころか絶死は免れない頭部を的確に狙われ、撃ち抜かれる。相手は建物の上に陣取っており、こちらにはそれに対抗する手段が無い。つまり完全に狙い撃ちの体の良いカモにされている状態であった。「そういえば、ロケットランチャーを持ってくるのを忘れていた」と彼にマトモな言葉を発する機能があるなら呟いただろう。だが、彼にとっては幸運なことに、相手にとっては不運なことに、自分を狙う拳銃の残弾が尽きたのか、その銃撃が一先ず止まったことで、彼は、その場から退避行動を取った。
「S.T.A.R.S.……」
……身体の損傷が激しい。だが、それも幾ばくかの我慢だろう。痛みは自然に消えて、むしろ身体は傷が癒される度に強化されている気さえする。そう彼は全く関係ない、それしか呟けない言葉とは違うことを考えている。
「S.T.A.R.S.……」
あの男?は、一体何者なのか、何が目的で自分の邪魔をするのか。それは分からないが、分からないなりに彼は1つの答えを出していた。「
それはともかく。
目の前には2度の邂逅時(どちらも一方的にボコられたので実は苦手意識を持っている。正直、関わり合いになりたくない。)とは打って変わった弱々しい姿を晒し、壁に背凭れる男を見て表情筋がピクリと動いた気がした。頬の肉が削がれ、剥き出しの状態でなければ、もしかしたら口角が上がって見えるような状態だったかもしれない。
「S.T.A.R.S.……」
囁き漏れる言葉からは理解できないが、それでもありったけの殺意を込めて彼はズシン、ズシンという重い音を響かせながら男に迫る。同時に男が此方に気付き、舌打ちをした。やがて逃げ切れないと判断したのか、肩に背負うアサルトライフルを構えるのが見えたところで猛然とダッシュして剛腕を一閃させる。幾度かの攻防を経ながら、その最中に数十発、あるいは百発ちかい銃弾を叩きこまれたような気もするが、今の彼にとっては然程ダメージとはならず、そのことに満足して彼は男を追いつめた。男の手に持っていた武器を破壊し、距離を詰めて剛腕を振るい吹き飛ばした。
――ギュルルルルル、ガグゲゴゴゴゴゴ。
<!?>
突如、街全体を覆うように響きわたった余りにも凄まじい大音量に、彼は、否、彼だけでなくラクーンシティで知的な対応を取れる全ての人間は、それも否、凡そ聴覚というものを有する全ての生命は、一瞬、ほんの僅かに世界の動きが止まったような錯覚さえ覚え、動きを止めた。だが、そんな音にさえ「虚」を突かれることなく次々と仲間を狙撃しては報奨金をガメようと画策する傭兵がいたり。それとは逆に気取られてしまったが為にゾンビ犬に食い殺されてしまった哀れなものがいた。または虚を突かれはしたものの、未だ街との距離があったために然程「動揺」という感覚は覚えず、むしろ一刻も早く兄がいるはずのラクーンシティへ辿り着こうと道交法を無視してエンジンを全開にする赤いベストが映える女性がハイウェイを愛用のバイクで疾走する。或いは、とにかく女性運がなく(?)、昨晩も出来たばかりの彼女に振られて酒に溺れ寝坊するという失態をやらかし、ついには「泣けるぜ」が口癖になりつつある新米警官もまたハイウェイを疾走していた。とかく様々な反応があった中で彼が取った行動は――
「S.T.A.R.S.……」
普段と変わらない細やかな呟きを残した。それは先程の何処から届いたのかもわからない謎の大音響に比べて自身の呟き声の何と小さなことかという自信の喪失にも似た響きが含まれている様に見えないことも無い。だが、それでも彼がやることは何1つ変わらない。千載一遇の好機、これを逃せば次は再び自分が追いつめられる側に立つのだと、おそらく本能だけが知っていた。
――パンッ パンッ
鳴り響く銃声と蚊に刺されたような感覚を以て彼は振り向いた。
「S.T.A.R.S.……!!!」
その瞬間、目の前の
* * *
警察署内は既に
同僚のクリスはアンブレラの痕跡を追ってヨーロッパへ旅立ったし、バリーは家族の身の安全を優先して既に街を離れている。レベッカはどうしただろうか? 特に何も聞いていないまま此処まで来てしまったが、けれど
――ギュルルルルル、ガグゲゴゴゴゴゴ。
「い、一体、何!?」
その只ならぬ音を聞いて私は急ぎ足で外へ向かったのだった。
――そして
激しい戦闘音がする方向に向けて歩を進めた先にソレ等はいた。誰かが吹き飛ばされるようにしてアパートメントの壁に叩きつけられ、それで意識を断たれたのか、あるいは間に合わなかったのかは分からないが、相対していたものがトドメを刺そうと近寄っているところをみるに、まだ息はあるのかもしれない。そう思って咄嗟に声を発し、既に愛用となっている
「化物! こっちよ!!」
私は、私の目の前で仲間を殺した異形と相対し、その異形が私へ注意を向けるや否や誘うようにして走る。どういうわけか、異形の怪物は
「コイツもアンブレラの作り出した化物ってわけね……上等よ!」
ある程度の距離を取ってから署内で見つけたマグナムを弾丸をプレゼントしてやる。だが、その銃弾を放った反動で私の動きも止まる。その間に距離も詰められる。しかし、怯まずに引鉄を引き、攻撃を躱して応戦した甲斐もあり、やがて巨漢の異形を持つ化物は膝を突いて倒れたのだった。
「あ、危なかった……まったく、心臓に悪いわね」
そう零して私は、私よりも先に異形と戦闘に入っていた男性?を助けに来た道を戻るのだった。
* * *
先の音が如何に大音量だったとはいえ、この場所に
『シェリー………無事でいて………』
あ、訳わからん音は実は『腹の鳴る音』だったり……?