咲き晴れ!   作:アウトサイド

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(怒るとこソコー!?)

――東横桃子の場合「昼食」

 

「京さん京さん、お昼っすよ! お弁当の時間っすよ!」

 

「お、おう。そう慌てることもないだろう?」

 

「だって、一緒にお弁当食べるんすよ? そりゃ嬉しくなるに決まってるっす。テンアゲって奴っすね!」

 

「ふむ、ではそんなモモには俺が作ったお手製弁当をあげよう」

 

「わーい!」パチパチー

 

「ほい、お手拭き」

 

「ありがとうっす! わー、サンドイッチすか。洋風のお弁当なんて、ピクニックくらいでしか見れないと思ってたっす」

 

「鮮度は安心しろ。ついさっきまで家庭科室の冷蔵庫借りて入れておいた奴を、作っただけだからな」

 

「……この場合、なんでさも当然のように家庭科室の冷蔵庫を使っているのか、聞かない方がいいっすか?」

 

「いや、あの冷蔵庫俺のだし」

 

「なんで学校に自分専用冷蔵庫があるんすか!?」

 

「ほら、俺昔執事の修行をしてたからさ」

 

「それで納得しろというのも無理な話っすよ!? なんなんすかっ、執事って!?」

 

「まあまあ、そういう話は置いておいて。ほら、食べようぜ?」

 

「そうっすね。では」ア~ン

 

「何してんだ?」

 

「もー、鈍いっすねー。せっかくだから食べさせてほしいんすよ! ほら、ア~ンって感じで」

 

「ほれ」

 

「あむあむ、おいしいっす♪ でも、京さんも少しくらい恥じらってもいいもんすよ? なんというか、あっさりしすぎている気がするっす」

 

「て言っても、こういうのはもう日常の一部になってるから。愛しく思うことはあれど、今更恥ずかしがることもな~」

 

「ムー、確かにア~ンなんて数えきれないほどやって来てるっすけど……」

 

「そんかわり……」チュッ

 

「――ッ!?」

 

「こ、こういうキスみたいなのはまだ恥ずかしいだろ?」カァーッ

 

「は、はいっす……」カァーッ

 

 このあとめちゃくちゃアーンしまくった。

 

 カンッ

 

 

――新子憧「ファッション」

 

「そういや須賀ってさ、私服どんな感じなの?」

 

「どんな感じって言われても……まあ、普通だよ。ていうか、いきなりどうした?」

 

「いやさ、あんたって背が高いし、地毛が金色だし、ヒョロいわけでもないからどんな服着てんのかなーってね」

 

「言っとくけど、現役JKのお前のお眼鏡にかなうようなファッションセンスなんてしてねぇからな?」

 

「別にそこまで期待はしてないわよ。ただ、見た目ヤンキーっぽいからジャラジャラとした恰好してないか心配になっただけ」

 

「お前、金髪が全員ヤンキーだと思うなよ!? あと、俺がそんなイケイケな恰好するように見えるのか?」

 

「付き合いがある今だからこそ言うけど、初対面のころのあんた、あたし含めてみんなから警戒されてたわよ?」

 

「うぉー、知りたくもなかった衝撃の事実!」ガーン

 

「そうね。あんたの鈍感ゆえのグイグイ来る性格が幸いして、今があると言っても過言じゃないわ」

 

「くっそー、そんなに目立つか、この金髪? いっそ黒に染めるかな……」

 

「あーいや、その、そこまでやる必要はないんじゃないかしら?」

 

「? どうしてだ?」

 

「あっ、いやっ、別に、あ、あんたの金髪、あたしは嫌いじゃないし……てゆーか、その、ちょっとカッコイイし」ボソッ

 

「おーなんつーか、あんがと」テレテレ

 

「ふきゅっ!? き、聞こえた!?」

 

「いや、今部室に二人しかいない状況で聞こえないわけがないだろ? そういや、お前の方は私服どんな感じなんだよ?」

 

「あたし? んー、まあ流行には気を付けてるけど、学生だからあまりお金はかけてないわね」

 

「ファッションと言えば、穏乃のジャージオンリーはなんとかならんものだろうか? さすがに女子としてどうなんだ、アレ」

 

「……言わないで。あれでも須賀が来てから多少は大人しく……なってないわね。今でも山の中を駆け回る野生児やってるわ、あの子」

 

「まあ、健康的なのはいいことだよな……」

 

「……ねぇ、今度の休みにシズを連れて買い物に行かない? いい加減、一着くらいあの子もそういう服を持つべきなのよ!」

 

「いいぜ。ふむ、穏乃に似合う服か……無難に白いワンピースとかどうだろ?」

 

「ああ、いいかもしれないわね! じゃあさじゃあさ、こんな服はどうかしら?」

 

 このあとめちゃくちゃ穏乃談義で盛り上がった。

 

 カンッ

 

 

――石戸霞「薄い本」

 

「京太郎くん?」

 

「……はい、分かってます」セイザー

 

「私、言ったわよね。こういう本は、小蒔ちゃんの教育に悪いから止めてくださいって」ウスイホンー

 

「いや、あの、一応俺も健康的な男児ですので、その、そういう欲求があるので……お願いですからマジで返してください! それ、本当にお気に入りだったんですよ!」ドゲザー

 

「……確かに、京太郎くんにだってそういう欲求があることは分かっています。ですが、どうしても納得のいかないことがあるんです」

 

「と、言いますと?」

 

「京太郎くん、あなたおもちが好きなのよね?」ジロッ

 

「えっと、はいそうです……というか、なんで知って……」ビクビクッ

 

「ええ、知っていますとも。普段から私や春ちゃん、時には小蒔ちゃんのおもちをそっと眺めていますから。言っておきますけど、女の子はああいう視線には敏感なんですよ?」

 

「す、すみません! つい、目が行ってしまって……今後は気を付けますので……」ズーン

 

「いえ、むしろ傾向としてはいい方向です。殿方のそういう願望には私も多少の理解は持っています。というよりも、初美ちゃんのような体型の子に目が行くよりは健全だと思っています。しかし、論点はそこではないのです」

 

「え、えーっと……では、なんで霞さんは怒っているんですか?」

 

「京太郎くん、あなたさっき、この本がお気に入りだと言いましたね?」

 

「は、はい!」

 

「私も先ほどこの本の内容を拝見しました。そして、思ったのです。この本に描かれているおもちは普通のサイズだと。京太郎くん? あなたのおもちへの情熱はどこへ行ったのですか!?」

 

(怒るとこソコー!?)ガーン

 

「だいたい、京太郎くんはおもちへの情熱が少し足りないの! 終いには、私たちのおもちだけでなく、初美ちゃんの着くずれした恰好や巴ちゃんのうなじにまで目が行く始末!? この結果を嘆かないはずがないでしょう!」

 

「いやいや! 初美先輩の着くずれした格好は視線が行かない方が男として異常ですよ!? 俺、最初にあの人見たときに肌の露出がおかしいことにちゃんとツッコミましたよね!? それに、巴先輩だってあんな綺麗な人に目がいかないわけないじゃないですか!?」

 

「ほーん、では京太郎くんのタイプは私たちの中の誰ですか?」

 

「え゛」

 

「二度は訊ねません。さぁ、答えてください」ニッコリ

 

「ええっとですね、霞さん」アセアセ

 

「はい、何でしょう?」

 

「み、皆さんお美しい方なので、俺にはその……分不相応と言いますか、高嶺の花じゃないかなーなんて思ってたりするので、その、タイプとかそういうのは……」

 

「はぁ、分かりました」

 

「分かってくれましたか!」パァーッ

 

「はい、京太郎くんに再教育というものが必要なようですね?」ジリジリ

 

「さ、再教育? ていうか霞さん、あの、なんで女豹のようなポーズで俺ににじり寄って……」

 

「ですから、教育です。おもちの素晴らしさを見失ってしまった京太郎くんには、私の体を使って教え込む必要が――キャァッ!?」バサァッ

 

「フー、なんとか確保したのですよ。さぁ、現行犯で逮捕です」

 

「ちょっ、初美ちゃん!? 今、京太郎くんに大切なことを教えてようと思っていたのに!」

 

「何が大切なことですか、奥手でヘタレのくせに色仕掛けとは卑怯としか言えません。どうせ、京太郎がからかわれて最後は霞がヘタレてオチがつくに決まっています。さぁ、お説教の時間ですよ」

 

「ちょっ、まっ、京太郎くーん! ていうか、初美ちゃんあなたどこにそんな力が!?」

 

「恋する乙女は強いという奴です。まったく、ヘタレな自分から共同戦線を張ろうとか言った癖に、抜け駆けですか? さぁ、こっちに来るのですよー」

 

「うわぁーん!?」

 

「……………………俺は?」

 

 このあとめちゃくちゃ放置された。

 

 カンッ


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