鬼剣の王と戦姫   作:無淵玄白

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新作概要がようやく来たぁああああ!! 


完全にミラルート、おまけにまだティグルの状況がちょっといい。具体的には、今までが武田信玄だったのに対して、ようやく織田信長ぐらいにはなったというところか。

実情としてはまだまだですが、家督相続までにどれだけのことが出来るか―――実に期待!


そして何よりミラが『増量』されてる……だと……。では新話どうぞ。


「雷渦の閃姫Ⅲ」―――東方より来たりし魔王

 

 その日、老婆は恐怖した。最初は、あの鞭の娘がやってきたかと思っていただけに、それは急な来訪であった。

 

 だが似たような匂いを感じて、神殿から出た時に―――そこにいた黒髪の―――女に声を掛けた。それこそが失敗であったことを後に思い知る。

 

 

「何か用かえ…破邪と魔性の両極の乙女よ……」

 

「いや用は無いな。ただ観光ついでにこの地の信仰なるものに関して検分を広めていただけだ」

 

 

 神殿に蟠る闇から出てきた自分に驚きもせずに、邪神像―――自分を模した祖霊信仰の像を顎に手を当て唸るように見ている黒髪の乙女。

 

 少しだけの落胆をしつつも話を続けるが、やはり無視の連続である。

 

 

「うーーむ。やはり世界は広いな。我が国に劣らず優れずとも―――そういった原始信仰はあったんだな……世界は広い! やっぱり国に帰ったらば大船団開拓事業を行おう!!」

 

「以前は、この地にいる者たちも、わしを信仰してくれたものじゃ。今では十神信仰に変わられたがの、わしに信仰を捧げ、願いを乞うものを救ってきたというのに」

 

 

 薄情極まりないな。と続けた自分に構わず次は煤だらけの調度品に目を向ける乙女。コイツが一番薄情だなと感じる。

 

 老人の言葉を無視して家を漁るなど盗人も同然だ。少し箒で叩いてやろうかと思った時に―――。

 

 

「そうして無様な願いを乞うた人間の全てを―――破滅させてきたんだろう? それじゃ信仰が廃れるのも当然じゃないか」

 

「………」

 

 

 氷のような真実を射抜いた言葉で老婆―――バーバ・ヤガーは行動を止めた。

 

 同時に、闇から這い出た自分を今度こそ視界に納めた女。長い黒髪が―――闇の奔流にも見えながらも、その中に無限の光を感じるものだ。

 

 全身から出る「気」は、自分達と同質にして正逆のもの。

 

 

「神、仏、霊とはその本質においては、何もしない。『ただあるがまま』……というのはウチの『竜剣』の言だが、まぁ概ね正しいよ。神様なんてでっかい『存在』が、何かを与えるのに何かを奪うなんてのは、本質はずれだからね」

 

「代償なくして、褒美だけを与えよというのか……?」

 

「それが―――『神』というものだからな。まぁ清らかな乙女だけを喰らう神もいたそうだけど、それは悪神、祟り神の類だし―――それじゃ、精々黴臭い所で、長生きしなよバアサン」

 

 

 そんな風に気楽な調子で出て行こうとする乙女だが、ここまで言われて妖魔として黙っているわけにはいかない。

 

 箒を取り出し、石臼を呼び出して戦闘の姿勢を取る。最初は奴を惑わす。奴の平静を崩すことで操ってやろうと考える。

 

 ローブの切れ端を使い、廃神殿ごと乙女を闇の帳に閉ざす。

 

 

「失礼極まりない娘じゃ―――お主にとっての最大の悪夢を見せてやろうかの……ほう、お主……実の弟を殺しおったのか、他にも坊主を殺し、義妹と実妹すらも―――」

 

「黙れ」

 

 

 幻覚にして幻惑の術が力ずくで破られる。バーバ・ヤガーの撒いた術が、まるでガラスが砕けるような音と共に砕かれた。

 

 廃神殿の中にて、ばらばらと地に落ちる黒い固形化した『術』の残骸。

 

 何をされたわけではない。力ずくで「掴まれ」「引き裂かれた」のだ。

 

 

「なっ!?」

 

「よくもまぁぺらぺらと、私の頭を覗いてくれたなババァ―――身の塵一つ、魂の一欠けに至るまで、砕いてやるぞ」

 

 

 輝く蒼い眼が、バーバ・ヤガーに向けられると同時の宣言。一刹那あるかないかで、固形化した術の残骸を踏み砕きながら剣を振るう女。

 

 バーバ・ヤガーに知覚できぬ神速の斬撃。しかしヤガーに知覚出来ぬとも己の持ち物であり、乗り物である石臼はそれよりも先に剣から逃れる。

 

 

「おのれ!」

 

 

 箒を回して、火球を放つ。あの剣では自分を斬る事は出来ない。『斬』の範囲内から逃れることが出来る廃神殿の屋上近くに陣取りながらの攻撃。

 

 これが鞭や、杖ならばともかく、あの剣では―――と思っていた時に、黒光りしつつも金色の輝きも見える―――何かが、『二つ』こちらに向けられていた。火球を躱しながらの見事な動きの末に―――。

 

 盛大な音と共に、何かから『何か』が発射された。高速で飛んできたそれは妖魔である自分の体を深々と貫いた。

 

 焼けるような熱さが内部から伝わってくる―――それで、正体が何であるのかが分かる。

 

 

「『霊』薬兵器……!?」

 

「正解。発射機構はバネ仕掛け、本来ならば炸薬及び弾丸に『火薬』を用いること出来れば、もうちっと良かったんだけど……妖魔相手ならばそれで十分だ」

 

 

『瑠璃弾』の『摩擦』で上がる『銃口』からの煙を吹きながら―――『カズサ』は、天井に浮かび上がるババァを殺す算段を着ける。

 

(『スプリングガン』は連発式じゃないもの持ってきちゃったし、びっくり兵器としては御の字だ)

 

 

 飛んでいる敵を殺せないわけではないが、他国であまり騒ぎを大きくするのもどうかとおもっ――――。

 

 

「生まれよ。土精人形!!」

 

 

 などというこちらの怒り交じりの計算を無駄にするように、土塊で出来た人形がごろごろと出てきたときには……正直、こいつ隠す気ないなと感じた。

 

 五十体も出来た造形美なしの出来損ないの土の巨人。2間―――こちらの単位で300チェート過ぎた巨人の群れに溜め息を吐く。

 

 

「例え、貴様がどれだけ術を無効化し、わしを痛めつける武器を持とうと、それだけならば壁で圧しつくすのみ、斬撃が効かぬ再生する土塊で疲労させて―――」

 

 

 長い口上が途切れる。五十体の土の巨人の群れの中に入り込んだ闖入者。それの正体は――――連続して土の巨人に走る光の軌跡で知れた。

 

 

『斬魔の斬撃』を喰らい、ぼろぼろと崩れて、元の土と砂に還る巨人たち。その本来いた巨人の中心に一人、否、一匹の猫が抜き身の刀を持って佇んでいたのだから。

 

 

「ふむ。帰りが遅いと思えば、とんだ寄り道だな。ろくでもない婆さんに付き合う必要はないと思うぞ。面倒だしさっさと黄泉に送り返してやれ『魔王』」

 

「……まぁ、それもそうか……」

 

 

 窘められて、我に帰る。何もここで感情を爆発させんでもいいはず。こんな『小物』相手に大人気なさすぎたと考え直す。

 

 

 弟の死も、義妹、実妹。それらに降りかかった悲劇も、全て飲み下してここにいるのだ。今更、誰に知られたとて構わないことだとして、天下を、狂った世の中を正してきたのだ。

 

 

 その自負を―――他国でも持っておかなければならなかったのだ。

 

 

「すまんな婆さん。――――遊びは終わりだ」

 

「娘―――貴様!!」

 

 

 言葉と同時に発現した『魔王』の力。己の『神器』を呼びかねないが、それは要らない。ただ力を―――適切な形で『放出』するのみ、だ。

 

 銃弾が無い空の『銃』の『口』を上空にて動けず固定されていた老婆に向ける。銃の内部で溜まっていく『力』が、老婆を吹き飛ばすだけ溜まったその時に、カズサは放つ。

 

 

「第六焦熱『破戒』砲―――発射」

 

 

 銃口から放たれるそれは熱と光の奔流。廃神殿の天井全てを吹き飛ばすほどの恐るべき破壊の波は止まらず天まで届いた。

 

 中心にて破壊の頂点を味わっていたバーバ・ヤガー。

 

 カズサは、放った光の結果を見ること出来なかったが……感覚で、どうやら仕留めそこなったことを感じた。

 

『霊銃』を腰に戻し、吹き抜けとなってしまった廃神殿。その青空を仰ぎ見る。

 

 

「しぶといな」

 

「というより仲間がいたのだろうよ。連れ去ったみたいだが、追うか?」

 

 

 正直言えば、始末しといた方がいいだろうが、小物で手負いとはいえ二匹の魔を相手取るのはちと面倒だ。

 

 あまり面が割れるのも避けたい。いずれはどこそこの国との交渉になるとはいえ、今はまだ、可憐な『美少女銃剣士』カズサでいたい。

 

 

「いや、いいでしょう。正直面倒ですし……私の落ち度でこんなことになったんですからさっさとリョウの所に行った方が面倒が無い」

 

「ふむ、気になることもあるが、所詮我らは外様……とりあえずはどら息子の手伝いが先決と言うのは同意する」

 

 

 真正の猫の如く己の体を舐める親父殿に苦笑しつつ、やってきた「ひよの」と「かぐや」からあれこれを聞く。

 

 

「ふむ、つまりリョウは、現在、件のブリューヌ王国なる所にいると、そういう認識で構わないのだな?」

 

「とはいえ詳しいことは分からず。どの辺にいるかも少し判別できないそうです」

 

 

 風聞こそそういった事が聞こえつつも、詳しいことは不明との事。

 

 しかしまとめると、現在の状況と目的に合致するものが無いわけではない。

 

 

「政情不安の王国か―――面白いな」

 

「カズサ様、今、ものすっっっごい悪い顔してますよ。そりゃもう「いっそ奪ってやる」ぐらいの顔でアタシには怖すぎます」

 

「だが、聞けば元々その王国は内に憂いありすぎるらしいじゃないか―――衣食住に困らない国でありながら、王に忠誠を誓わぬ輩ほど、「度し難いもの」はいないぞ「ひよ」」

 

 

 心底嫌そうな顔をするヒヨノに返しつつ、これでもカズサは「帝」の力を認めていないわけではない。近年、武家にやられ放題だった所を、何の因果か、発現した先祖帰り。

 

 宮中の力を盛り返し、かつ宮に仕えた武家の一つ「坂上」を使って武家とのパイプも繋げたのだから、サクヤとそのお父君は、優秀だ。

 

 

「私はサクヤ以外の公家の連中なんて、つっかえ棒にも使えんと思っているが、その政治力はまだまだ衰えぬ。そんな中、私が国一つ奪ったとなれば、あいつらは目の色変えるぞ」

 

「やれやれ、どうやらお館様の諧謔にも困りますね……まぁやれないとも言い切れませんが、その場合かなりの時間がかかりましょうよ。最大の敵は恐らく……」

 

「ああ、だが……一度ぐらい何かを賭けて我が「愛人」と一戦やらかすのもいいかもしれない」

 

「ミツヒデ殿の愚を今度はお館様が繰り返しますか、それはいけないことだと思いますよ」

 

 

 カグヤの言葉に今度こそ詰まる結果になる。確かに、奴とは戦いたい。だがしかしそれは……あいつにとっての心の痛みを誘発するだけだ。

 

 頬を掻きつつ軽率だったかと自戒しておく。

 

 

「とはいえ、現在のブリューヌに陛下のおっしゃる妖魔がいることも事実、ここは一つ静観しつつ「官軍」「賊軍」の別を見極めるが吉かと存じます」

 

「つまり……『上洛』を遅らせろと?」

 

「そういうことです。何故かはわかりますか、ひよの様?」

 

 

 カズサに言いつつ、ひよに問題として出すかぐや。度々この軍師はこういったことを主君であるひよのに言うことがある。いわゆる主君試しというやつだろう。

 

 

「ふふーん。かぐやってばいじめっこー! 流石にアタシだって分かるよ。要するに『影響力』強すぎるからでしょ。一応、アタシもカズサ様もヒノモトでは一国一城の城主だもんね」

 

 

 正解です。と従容に言うかぐや。

 

 事実、詭弁も同然であろうが、リョウが官職を辞してここに来たのは、その影響力が強すぎることを懸念してのものである。

 

 国外は、地続きでない国の人物のことなど気にも留めないだろうが、国内の権力者達は、どう見るか分からない。

 

 そういった疑念を払拭する形での派遣であったので、まぁ国内からはあまり生臭いことは言われていない。

 

 情に深いことは皆して言っているのでそれで、相子といったところだろうか。

 

 

「では竹中殿、どういった順路でいくかな?」

 

「剣聖殿、ご子息の安否が分からずともご了承願えれば、お教えします」

 

「構わぬ。わしはこの面子では一介の浪人みたいなものだからな。お主らの指示に従おう」

 

 

 そう言われて、かぐやも説明をする。現在いる「ルヴーシュ」を北上しつつ東部に足を向けて、最終的にはブリューヌ南部に行く形になるだろう。

 

 

「つまりこの『アニエス』なる所からブリューヌに入ると」

 

「ええ、かかる日数を数えましたが、その間にあれこれが決まると思います……その間に、所在も判明するはずですから」

 

 

 別段入ってから合流するのは簡単だが、その間に「賊」崩れの貴族軍にいいように使われるのも嫌だ。

 

「ポリーシャ」「ブレスト」「オルミュッツ」からの「アニエス」……といったルートを通ることが最適のはず。

 

 

「いいんじゃない。隊長のことは気がかりだけど、あたしも西方観光したい!」

 

 

 快活に言ってのけるひよのに誰もが同意し、出て行こうとした時に不意に何かが出てきた。

 

 老婆が這い出た闇から、同じく這い出た―――大型犬ほどの大きさの蜥蜴に似た生物。

 

『龍』ではない『竜』、その幼生。しかしその様態は少し変わっていた。その竜は一つの身体を二つの頭で共有する存在であり、どうにも苦しげだ。

 

 

「何か苦しそうだね。どうしたのー?」

 

 

 返事などあるわけがないが、問い掛けつつ『双頭』の頭を撫でるひよの。

 

 赤灰の鱗の頭、蒼金の鱗の頭は項垂れつつも少しだけ和らいだ様子だ。ひよのの持つ「神力」が、双子を和らげたのだろうと思いつつ、何であるかを考える。

 

 

「鵺―――のようなものかな。どうやらこの竜、望んでこの身体になっているわけではないようだ」

 

 

 あの老婆の「使い魔」のようなものなのだろうかと考えつつ、どうしたものかと―――カズサが思う間もなく、ひよのは神器『日輪瓢箪』を振るい、その瓢箪から溢れた「森然五穀」を、餌のように幼竜に与える。

 

 特に訝しげもせずに、それを食う幼生。

 

 喰らっていくと、その都度段々と光り輝く双竜―――咀嚼して数秒もすると光の塊となりて、その光の塊が二つに分かれて廃神殿の床に下りる。

 

 光の塊が輪郭を取り戻して、形作り彩色を取り戻すと、そこには―――赤灰の竜と、蒼金の羽根持つ竜が現れた。

 

 

 どちらも幼生ながら、将来は「竜王」と呼ばれるであろう片鱗を見せる存在が、バーバ・ヤガーの神殿に現れる。

 

 己の体を「取り戻した」幼生達は、喜んでいるのか走り回り、飛び回り、己の感覚を確かめている様子。

 

 

「もうあんな腐れたババァに捕まるんじゃないぞ」

 

 

 何となく程度の事情を察して幼生達にカズサは語る。それに首を頷いてからヒヨノにも一礼した幼生達は野に帰っていった。

 

 手を振り居なくなった幼生達が完全に見えなくなると、誰からとも無く足を向ける。

 

 

 目指す先は―――東。そこに至った後に隣国の南に至る。

 

 

 予定通りにいかなくとも、それはそれで面白いものだとして、一行はルヴーシュを離れることになっていく……。

 

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 余談であり、且つ核心とも言えることだが、そんなルヴーシュでの一幕を起こした日、その日の公国の戦姫の寝つきはいつになく良いものであり、後一ヶ月ほどはその状態が続くこととなる。

 

 どういうことなのかは、分からないが、数日たって聞こえてきた報告。

 

 十神信仰ではない原始信仰の廃神殿の一つが完全に崩れ落ちていた……という報告が少しだけ、ルヴーシュ戦姫「エリザヴェータ・フォミナ」の耳と目を吊り上げたが、その報告は後の報告によって忘れ去ることとなってしまった。

 

 

「で、戦姫様……こちらの幼竜どうしましょうか?」

 

「愚問ですわナウム。我がルヴーシュ公宮で養います」

 

 

 武官頭であるナウムに脇を持ち上げられても平然としている幼竜。

 

 姿は蒼金の鱗にして、それらの色を持つ双色目の飛竜。

 

 示し合わせたかのように来たその幼竜の姿に、目を輝かせる。別にソフィーヤ程、竜に対して憧れがあるわけではない。

 

 しかしながら、どんな因果なのかやってきたそれを育てることに迷いは無い。

 

 

「しかしこんな鱗の竜がいようとは、いやはや驚きです……」

 

「世界は広いですわね。来なさいスヴェート」

 

 

 既に名前を付けたのか。というナウムの内心の言葉。ルヴーシュ国民全員投票『幼竜の名前付けよう!』など提案せずに良かったと思う。

 

 そんなナウムの内心など知らず、呼びかけに応えたスヴェートという飛竜は、差し出されたエリザヴェータの「右腕」に乗りながらテラスへと出て行く。

 

 

「ここが、これからあなたの『家』です。あなたを苛めるものあれば、私は容赦しませんし、あなたもここに暮らすものとして、同胞であるルヴーシュの民をいじめるものあれば、一緒にやっつけるのですよ。私たちは―――家族なのですから」

 

 

 エリザヴェータはそれに対して返事は求めていないものの、それでも首肯した竜を見て「賢い子」と思っておく。

 

 そうしてテラスにて眼下に見えるルヴーシュの公都。それを守護する決意のように幼竜は、叫びと共に―――――雷撃を吐き出した。

 

 空気を帯電させる吐息がルヴーシュの空を一瞬だけ輝かせた。

 

 びっくりしつつも、こんな幼竜もいるんだなと少しだけ感慨を深くしておく。

 

 自分のような「人間」もいる一方で、こんな竜もいる。世界は広く、どこにどんな人がいるかなど、些末事としてきた人物を思い出す。

 

 

『そんな人間もいる。それだけだ』

 

 

 何のことは無い。自分の異彩虹瞳(ラズイーリス)と同じだ。ただ単にそういう人間が珍しいだけならば、それだけだ。

 

 

(良いことが続きすぎて……少しだけ怖いですよ。ウラ……)

 

 

 蒼い空の下にいるだろう一人の青年の姿を思い浮かべる。

 

 

 多幸を感じる一方で、ツケを払うんじゃないかと言う不安を覚える。彼女を完全に救うための日は、――――刻一刻と近づいていた。

 

 


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