まぁ特に何かキリ番特典があるわけでもないんですが、多くのお気に入り登録ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
「海はいいものですねぇ。前回のアレクサンドラの戦いの際には全然、いい気分ではありませんでしたから新鮮な気分です」
「こちらとしても、嘔吐する女性に気を遣うよりはいいな。まぁ気分が悪くなったらすぐ言えよ」
「あっ、気分悪くなりました。肩を貸してください」
こちらに寄り掛かって来るヴァレンティナは、どう見ても気分が悪くなっている様子ではない。
どう考えても演技であるのだが―――まぁ悪くない感触であり、彼女の頭を撫でつつ海のむこうを二人で眺めつつプラーミャは自分の頭の上にいたりする。
家族三人無事に海洋にて、船に揺られていた。
その理由は――――。
「それにしてもまさか、ビドゴーシュ公爵を「公王」に任じるとは……少しばかり予想を外されました」
「公国があるんだ。それに準じて公爵閣下を公王に格上げすることは別に悪くないんじゃないかな?」
「そうですけど、これで公爵様は二つの領地を持つことになるのですし……私としてはあなたに任命が下ると思っていたのに」
「勘弁してくれ。その場合、俺は故郷から後ろ指をさされてしまう」
今回の公王就任の命をクルーティス卿がどう思っているのか、それを探るのが自分が今回派遣された理由だ。
もしも不満に思っているようならば、それをどうするかは自分に委ねられている。
ありのままを伝えてヴィクトール王に領地を取り上げられるか、それとも公国を繁栄させていく道筋をつけさせるか。
つまりはイルダーの格を見定めろという命を受けながらも、それをそのままにするか改善させる道を伝えるかは自分の裁量ということで、この使命を受けたのだ。
見えてきた未だに名無しの公国。かつては海賊島などとも呼ばれていた群島諸島。
船縁から見えるその公国の運命が自分の手にかかっていると思うと責任重大である。
だが、その一方でこれも使命を果たすための一つの手なのだ。
仮にもしもこの西方に「桃」の妖魔のごとき存在が現れた時に、自分や戦姫のような存在なかりせば、その時人々が生きていくためにも―――。
力を蓄えなければいけない。それは来てほしくない時の為の万が一の保険だ。だがそれでも……基本的に戦争が起こるのは好まないリョウとしては人々の生活を豊かにすることで礼節を弁えるというのならば、その方が良かろうとも考えていた。
決意を新たにしながら、それらを見ていたのだが―――――。
「どうでもいいのだけど、一応わたしがいるのも認識しているかしら?」
不機嫌な言葉を吐き上機嫌なプラーミャを抱きしめながら光の戦姫が、今回の同行者として着いてきている。
そんな美貌が一際輝く彼女の正反対なその雰囲気に周りの水夫達は背筋を正して緊張を強いられて、申しわけない気分になった。
「というかですねソフィーヤ、家族三人水入らずの旅行だったというのに、あなたが着いてくる方が変なんですよ」
「ただの視察だろ。そんな大層なものかよ」
ただまぁ久々にプラーミャをどこかに連れて行きたかったのも事実だ。
ティナの領地であるオステローデはどちらかといえば寒冷だが、火竜であるプラーミャにとっては己の熱でどうにもなるし、場合によっては暖を自分で取ったりもする。
賢い竜だなと思っていたが、それでもどこかに連れて行った方がいいとも思えた。あんまり部屋に籠って人なれしすぎると野生に帰りづらくなってしまうかもしれない。
そんな考えもあった。そこに厄介になっていた家主であるティナが同行すると言ってきて、自分を信じてくれてはいるもののティナの事に関しては少しばかり疑いを掛けているヴィクトール王の保険と言う意味でポリーシャの戦姫を付けてきた。
「本当に行き遅れの小姑も同然ですねソフィーヤ。男女の出歯亀なんかをやっていて空しくないですか?」
「そんなことは無いわ。私は元々、ジスタートの騎士階級の子女よ。まぁ領地があるわけではないのだけど―――それでも、お父様の仕事やユージェン様のような仕事こそが、本当の意味での平和への道筋だと思っているもの」
「米神をひくつかせながら言っていなければ説得力あったんだがな……」
リョウとしては頭を掻きながら、二人の言い争いが収まるのを見るしかない。
こちらに来てから分かったこと。ジスタートの戦姫に関しては、仲裁というものは肉体的な苦痛を伴うことは間違いないからだ。
とりあえず海洋に浮かぶ諸島が見えてきたので、降りる準備をしなくてはならない。
もっとも船に積載されている燃料から食糧にいたるまで、自分たちが荷運びを手伝うことはないので、やはり降りる準備だけは迅速にしなければならない。
自分の頭の上に乗ったプラーミャは、潮風を浴びながらその島を同じく見ながら少しだけ鳴いた。
「? どうした?」
お腹を抱えるように掴んでプラーミャを見るも、やはり目線がその群島諸島に眼が向く。
そこまでこの幼竜の興味を惹くものが、あそこにあるというのだろうか。
「本当に何でしょうね? 火竜山からかなり距離があるから山に郷愁が感じたのかしら?」
見ると確かに群島諸島の一つ一際大きな島には巨大な山がある。「海底火山」が隆起したから出来た群島諸島だろうということは知っていた。
しかし、ここが噴火したのは記録に残っている限りでは、六百年前。ジスタート建国以前の記録だから確かなものはないが。
「まさかとは思うが……あそこにもジスタートの竜王の一つがいたりするのかね?」
「……だとしたらばイルダー殿達は、全滅していると思うのですけど」
火竜山の主であった巨大な竜。プラーミャの父親のような存在があの山なり海の洞窟にいるのかもしれない。
戦姫であるティナや自分が竜殺しだなんだと言われていても、あれだけ巨大な竜との戦いは二度と御免である。
一撃を当てるのも一苦労なのだ。という二人の共通の苦労を嘲笑うように――――。
「プラーミャちゃんのお父さんぐらい大きな竜がいるかもしれないの? 幼竜もいいけれど竜王にも一度は会ってみたいわ」
純粋に好奇心だけのソフィーに少しばかり竜王との対峙がどれだけ精神をすり減らすものなのかを懇々と説明してあげたいところだが、フラムミーティオがああだったのは狂わされていたからであり、平時であれば賢い竜として振る舞っていただろう。
「戦姫様、自由騎士殿。そろそろ港に着きますが……何ぶん不安定なものでしてかなり揺れるかもしれませんがご容赦ください」
「分かった。しかし、海賊共はどこに船を停泊させていたんだ?」
船乗りたちの警告の言葉に疑問が一つ出てしまうのは仕方ないぐらいに急ごしらえの桟橋などの港が見えている。
石垣を使ったものをいずれは整備するのだろうが、それでもこの大型船を泊めるにはおっかないものもある。
故に―――これと同型程度の海賊船はどこに泊めていたのかが疑問だ。
「海賊共は砂浜から何海里か離れた所から小舟で上陸することもあり、更に言えば表向きは見えない洞窟の停泊所がありました。ここに多くの船を隠すことで、我々の眼を欺いていたのでしょう」
船乗り―――ジスタート水軍の若頭という男の少しばかりの苦衷を鑑みつつも、なぜそこをイルダーは使わないのかを問いかける。
「閣下は、諸外国に敵意が無いことを示すためにもそのような隠した場所に船を置くことを嫌っているのです。他にも色々と理由はありましょうが、正々堂々を旨としている人なので」
「成程」
戦術家ではないが戦略家ではあろう。そして猪突猛進の猪武者というわけではないだろう。
イルダーの評価を改めながら、接岸が行われる。宣言通りやはり揺れた。しかしそれでバランスを崩すものもそうそういなかった。
その辺りは、日ごろの訓練の賜物であった。
急ごしらえの桟橋に降りるために、昇降口が展開されると先に文官や職人達が降りていき、その中に自分たちも紛れる。
「手を―――」
「はい。エスコートよろしくお願いします」
「私には無いのかしらリョウ?」
「いやウチの息子を抱きしめているならば、そっちに注意していてくれよ」
とはいえ、それが本当の理由ではなく結局の所、ティナに手を貸しつつ他の女の子にまで手を貸すと絶対に嫉妬されてしまうからだ。
強欲な彼女のことである。そんな風な情景がありありと見えてくる。
しかし、彼女がそれを望んでいる以上はこちらもそれ相応にエスコートをせねばなるまい。
両手に華―――という割には随分と剣呑な二人を船から下しつつ、担当者がどこにいるかを見る。
だが担当者は本当に予想外の人物であって、正直一瞬何を考えているのかを疑いたくなった。
港の水夫に武官・文官達がざわめくのも当然だ。現れたのは、予想外の人物だったからだ。
ビドゴーシュ公爵にして、この名無しの島の公王に任ぜられたジスタートの二人目の王。
イルダー=クルーティスが数名の手勢を引き連れてやってきたのだ。
畏まった衣装ではなく軽い平服であるところから察するに休憩中だったのだろう。しかしながら、自分が思ったのは故郷での破天荒な友人のそれに似ていたからだ。
領内に争いあれば即座にそれを見聞きしに行く。その迅速さと即断。従来の価値観を覆す世間では「魔王」と呼ばれながらも、その異名に似合わず繊細な内面の男―――。
「このような衣装で失礼する戦姫殿、そして―――我らが自由騎士」
「政務が立て込んでいたとみるが、休んでいなくていいのか?」
「来客をもてなすのが領主の役目だ。まだあばら家程度の領館だが、とりあえずそこまで案内させてもらおう」
「いきながらでいいから現在、どんな状況なのかを説明してくれないか? 口頭で説明されるよりもそっちの方が速いと思う」
この島の状況を知るために自分はここまでやってきたのだ。てっとり早く知るためにも、彼に全てを案内させてもらった方がいい。
それに対して、自虐的な笑みを浮かべたイルダー。予想外に上手くいっていないと思われる。
「酒だけ飲ませて追い返すという策は無理そうだな」
「んなことを考えていたのかよ」
「望みとあらば女もつけたが……そちらは必要無さそうだな。これは困った。自由騎士リョウ・サカガミを籠絡する手立てが俺にはない」
「イルダー・クルーティス、戯れもその辺にしておいてほしいんだが」
「―――承知した。では、参ろうか」
こちらの少しだけ怒りを混ぜた言葉に流石にイルダーも表情を締めて、三人分の馬を用意したのだが――――。
「なんで二頭しか使わない結果になるんだよ……」
「いざ参りましょう! 家族旅行に!!」
「とりあえず公王陛下の居ないところで言いなさい」
ソフィーから離れて自分の頭に乗るプラーミャに自分の前に座るティナ。正直、積載過多ではあるが、先程のイルダーとのやり取りがあっただけに、今更問答も出来ないのでそのままに領内視察へと向かう。
後ろのソフィーの冷たい視線と苦笑するようなイルダー公王の視線に耐えながら、とにもかくにもこの島の実情を知る―――。
◇ ◆ ◇ ◆
円卓の上座に座る一人の王、先程からの貴族たちの喧々囂々のやり取りに対して、王は一つの質問という「結論」を投下した。
「ならば、この中で自由騎士リョウ・サカガミに勝てるものはいるか?」
ブリューヌ国王ファーロンの言葉に即座に反応したのは、王権を狙い暗躍している男。その野望を隠しもしないでこの場に現れた賊臣。
「実際に見ていないものを恐怖するは愚かなことだと思いますよファーロン国王陛下、なればジスタートと戦えば彼の竜殺しの実力を見ることも可能でしょう」
明らかな侮蔑を含んだ黒髪の小覇王の言葉に、何人かの貴族たちが気色ばむ。そのような言葉は既に臣下の域を超えている。
だが、それはテナルディエの権勢がとんでもないことを意味している。しかし、今回ばかりはファーロンも返す。どんな心境の変化があったのか。彼は今回退かずに返す。
「テナルディエ公爵、汝はジスタートと要らぬ刃を向け合うというのか、そのようなことは余が許さん。それは完全な外征だ。汝の勝手な思いでブリューヌを火に包むなど許さん」
「では、何故このような会議を開かれたのですかな? 私には陛下が臆病風に吹かれたとしか思えませんな」
テナルディエとは別の貴族。ガヌロンがテナルディエの言葉を直接的に言うことで国王に忠誠を誓う騎士達と貴族達が剣に手を掛けようとする。
円卓の議場が流血のものとなり果てる前に、国王陛下の傍にて石像のように佇立していた黒騎士が鞘込めの大剣を一度床に叩き付けた。
城全てが揺れたのではないかと思うぐらいに、とんでもない振動だった。それの効果なのか黒騎士の行動に全員が注目した。
「お歴々、国王陛下が恐怖するは当然です。リョウ・サカガミなる騎士のことを我々は知らないのですから、そして彼がヤーファの間者である可能性もある。ジスタート、アスヴァ―ルを同盟に加えて大陸制覇を考えている可能性も」
その言葉にテナルディエとガヌロンに従う貴族も現実的な恐怖が降ってきたようであり、青ざめながら彼らの盟主を不安げに見る。
「なればこそ我々は国王陛下に忠誠を誓うブリューヌの剣よ盾よとして彼の野望を食い止めなければならない。無論、彼に「も」そのような野望があればの話ですが……」
言葉の後半で、二人の大貴族を睨みつける最強の黒騎士。黒騎士に負けじと視線を還すも、テナルディエの腕ではロランに及ばぬ。
ガヌロンは苦笑してから少しだけ酷薄な笑みを浮かべた。しかしそれも一瞬のみで、その後には苦笑だけに留めている。
「父上、私から提案があります」
議場の安定を見計らったのかもう片側に佇立していた皇太子レグナス殿下が、ファーロン陛下に進言する。
「………言ってみろレグナス」
少しだけの沈黙をしてから、ファーロンは皇太子に発言の機会を与えた。
「はい。確かにリョウ・サカガミはジスタートの賓客ですが、ジスタートの臣下ではありません。精々が戦姫の―――個人的な友人というのが実際です」
言葉の後半で少しだけ言いよどんだレグナスだったが、とにもかくにも言い切ったレグナスの姿に少しだけ未来の王の姿を思う。
テナルディエとガヌロンの横暴によって、領地を脅かされている貴族たちは、文人肌の皇太子のありようこそが、未来のブリューヌの礎なのだと信じている。
「うむ。言われてみれば確かに彼が重要な位置にはいないことは事実。しかしそれだけで判断はできまい」
「ええ、ですから我々の最強の黒騎士と武術大会にて手合せさせるのです――――ロラン、その間だけザクスタンの国境要塞から出られますか?」
「オリヴィエという副官がおりますゆえ可能です。なによりリョウ・サカガミに対抗できるのは自分だけでしょう。他の者たちでは荷が勝ちすぎるでしょうからな」
瞑想しながら言うロランの姿は頼もしく思える。既に彼の中でこれは既定路線だったのだろう。
「ならばロラン、リョウ・サカガミの真意探れるか?」
「殿下と陛下のご杞憂、そしてブリューヌに要らぬ火の粉となるか否かの見極めは武の頂点に立つものの視線で悟りましょう」
「そのほかのことは我々でやろう。諸侯達も軽挙妄動は慎むように、ブリューヌの方針としては、そういうことだ。彼を一度招く。それまで余計なことはせぬように」
――――手温い。という顔をするのが、テナルディエ公爵の派閥であったが、それでも先程までリョウ・サカガミを侮っていたのは、彼らなので強くも言えない。
何より現実的な恐怖が彼らを包んでいたからだ。
(たかが
この円卓の議場で一番リョウ・サカガミに関して詳しいガヌロンは、思案に耽る。
恐らく自分とテナルディエは戦うことになる。それは「弓」を見つけることもだが、それ以上にかつて桃の「神」が行ったことを自分もやりたくなったからだ。
そして、そんなテナルディエとは別の敵であるファーロンは最初からテナルディエと自分に釘を打ちこみたかっただけだ。
(愚かな)
自分ならば釘ではなく「杭」を直接打ち込む。まずはジスタートを内部から浸食するためのものを使う。
手筈は既に整っている。腹心であるグレアストに命じて直接自分がやっていることではないのだと、何重にも偽装した上で、それをばら撒く。
それと同じものをいずれはファーロンの口にも含ませる。
(私は私を支配しようとするものを許せぬのだよ)
立ち上がり議場を後ろにしながら考えていたが、一人の男の姿が眼に入る。
赤毛の髪の若年の貴族、未だに少年と言っても申し分ない男。確かアルサスとかいうジスタートとの国境沿いの領地の公爵。
(そういえば戦鬼は、あの少年やレギンと殆ど変らぬ年齢だったな……)
妙な符丁を感じるとも言えなくもないが、それはとりあえず置いておくことにした。
たかだかあんな寸土の領主のことなど構ってはいられない。敵になるというのならば叩き潰す。味方となるというのならば相応の貢物を要求する。
それだけだ。と結論付けてガヌロンは議場を後にした。
◇ ◆ ◇ ◆
「ふむ。つまり農業で利益を上げることは不可能ということですね」
「はっきり言い過ぎじゃないかしらヴァレンティナ。公王殿下に失礼だわ」
「いやソフィーヤ殿も忌憚なき意見を申してください。この公国を任された以上、現実にはいつか直面するのですから」
二人の美麗の姫の言葉にイルダーは手を組み合わせて机にて沙汰を待っている。対面に座るイルダーから完全に目を離しつつ、測量士による島の全景を見つつ、風や潮の流れを見る。
「真水は十分に確保できます。燃料も可能ですし、塩の精製に関しても海があるのですから可能。問題は食糧です」
特に主食である麦の生産に完全に適しているとはいえないのだ。小さい島ではないのだが、それでも耕作地に適した所が少ない。
これからこの公国に住んでいく人たちの数を考えれば全然に足りない。
「私としてはここは完全に軍港・寄港地として栄えさせた方がいいと思っていますが……」
それでも結局の所、レグニーツァやルヴ-シュに完全に負けてしまう。
航路上の都合と言ってしまえばそれまでだが、それでは公王としては失格だ。
「つまり……この国の特産品が必要ということだな」
「その通りだリョウ・サカガミ。食糧は自給できる程度あればいい。となれば工業製品の利鞘で公国を栄えさせていく」
食糧は輸入しつつ、その他の公国特産品を輸出することで不足分を買っていく。
しかし具体的に何が出来るかだ。ヤーファにおいてもこういった問題を解決してきたことはあったが、その時は母の「薬師」としての知恵が役に立った。
「この国は今まで周辺諸国の毒だった。だがその価値を毒として見出すか薬として見出すかは、また使うものの知恵次第だ」
薬なんてのは殆どが毒なのだ。それに関して正しい知識を有するからこそ毒は薬となる。
健全なものに薬を与えれば毒に変じ、不健全なものに毒を与えれば薬に変じる。
毒を以て毒を制すという言葉は、この辺りからも来ているのかもしれない。
「工業製品か……果たして、この国で―――」
「あらあらプラーミャちゃん、どうしたの?」
深刻な悩みを打ち明けるかのようにしていたイルダーを遮るように、ソフィーの腕に収まっていたプラーミャが居館の窓に張り付く。
「外に出たいのかな? あんまり遠くに行くなよ」
窓を開けると同時に、そんな注意をするも窓枠から出ようとせずに、こちらの袖を掴んで引っ張ってくる。
それなりに鋭い爪が食い込むも、そんなことで目くじらは立てない。しかし、どこか必死な様子でいるプラーミャ。
話に飽きて遊びたいのか、それとも何か伝えたいことがあるのかは分からないが、とにもかくにもこのままプラーミャは、自分を連れてどこかに行きたいようだ。
「どうですかイルダー様、このまま館でうんうん唸っていても妙案なんて思い浮かびませんし、ジスタートの聖獣が、外に出たがっていますから、その導きに従ってみては」
「ソフィーヤ殿、あなたはただ単に幼竜と戯れたいだけでは?」
苦笑交じりの嘆息をしたイルダーの言葉に、舌を出して悪戯を咎められた少女のような仕草を取るソフィー。
「女はいつでも心は少女なのよ。失礼なことを考えないでほしいわ」
「俺の心の感想に茶々入れないでくれ」
今にも竜具の錫杖で叩いてきそうなソフィーに冷や汗が出てしまう。しかしながら、正直サーシャよりもソフィーの方が俺には年上に見えて――――。
「えいっ」
「いたっ! ちょいと俺なにかした?」
身に覚えのない打撃に抗議するも、どうにも今のソフィーには何を言っても無駄そうだ。すっごい怖い。
なんせ次は『股間』に叩き付けるぞ。とでもその眼は語っているもんだから。
「リョウ、プラーミャ行ってしまいますよ」
全員が行く準備を整えたからなのか幼竜はその翼を使って飛んでいく準備をしていた。
「うちの子は家に籠りがちなのにこんな時だけ冒険心ありすぎだ」
居館は平屋建てであり、門どころか玄関みたいなものしかないのだが、そこから出ると同時に、プラーミャがどこまで行くのか分からないので、馬を使うことにする。
どこかへと飛んでいくプラーミャ。この島は元々の先住民もおらず街道といえるほど上等なものもないのだが、それでも海賊などが踏み歩いて固められた道が存在しており、それを拡張することが街道整備につながるだろう。
「このままいけば……山の方に行くか……」
「本当に竜王がいる可能性も考えなければいけませんね……」
その場合、イルダーを逃がす手筈を整えなければならない。ティナのエザンディスならばそれは可能。問題はソフィーの持つ竜具がいかなるものかだ。
先程の打撃から察するに、杖自体の強度はかなりのものだ。恐らく自分の知る竜具の例にもれず竜の鱗を叩き割るぐらいは出来るだろう。
出来るだろうが―――――。
「何とか和平交渉出来ないかしら? この国の守り神になってくださいとでも言えば」
滔々と語りながらも落馬をしないソフィーに感心しつつ、プラーミャの親を思い出す。
「まあ話が通じないわけじゃないと思うが期待薄だな」
「リョウ・サカガミ、完全にこの島に竜がいるということで話を進めているが大丈夫か?」
「とりあえず最悪の場合を想定しているだけだ。そこまで気に病まないでくれ」
イルダーとて何の準備も無しに竜に挑むことだけは避けたいのだろう。事実、この中で一番対抗手段が無いのが彼なのだから。
不安を煽っておいてなんだが可能性は低い。仮にもしもこの島に竜王が生息しているというのならば、海賊共は何人かは胃袋の中だろう。
そもそも自分たちのアジトの内情を完全に把握しないでいるわけがない。
となると最大の疑問はプラーミャが何を思って、山の方まで飛んで行ってるのかだ。
「何かがある………」
火竜の習性とでもいえばいいのか、あの幼竜は火に関わるものに興味を示すことが多い。船の衝角作りの際の炉の温度を上げるために火を吐き出したり、火砲の導火線に炎を吐きつけて砲弾を放ったり。
火に関わる物品を欲している。海底火山が隆起してできたこの国の山には何かがあるのだろう。
険しき森林地帯を鉈などで切り裂きながら幼竜の導きに従って突き進んだ先には――――、地肌を見せた険しき山の連なりであった。
土が重なったものではない岩山―――プラーミャの故郷とは少しだけ趣が違う火山だ。
「立派なもんだが……何があるというんだか―――あれ?」
「変な声を上げて、どうしました? まぁこの山では岩塩も望めそうにありませんけど…」
オステローデの開発事業の一つとして岩塩鉱床を見つけたというティナは、この山の連なりにそれなりに考えが至ったようだが、リョウが考えていたことは別だった。
その地肌の中に赤が多く含まれているからだ。その赤色の正体にリョウは天啓が閃いた。
かつて討幕運動の立役者となった一人の土豪。正式な武士ではないが、それでもその破天荒な戦い方が時の幕府を倒す原動力になった。
土豪の財の源。悪党「楠木一族」が持っていた財産。
山の地肌に浮かぶ赤を見ていたプラーミャの視線がこちらに向けられた。
「これを俺たちに見せたかったと同時にお前は、もっと見たいんだな」
プラーミャの願いを理解した後には、クサナギノツルギを召喚して「地の勾玉」を装着させる。斬るべきは赤に含まれている岩の数々。
岩肌に近づいていくとそこにあるものの正体が知れる。これを利用すれば恐らくこの島特有の陶器が創れるだろう。
海賊共によって悪徳と退廃がのさばったであろうこの島に秩序と理想を与えるためにも、この一振りで盛運を呼び込む思いで最上段から振り下ろした。
山肌に滑り込む斬撃。地の勾玉の影響を受けた一振りはそれぞれに岩に干渉をして、その岩は自壊を果たして砂礫となって風に攫われていった。
そうして岩肌に現れた朱の塊の絢爛さと巨大さに全員が息を呑んだ。
「紅玉……違う。リョウ、これは一体……」
現れた朱石の塊の多さと正体を掴みかねているヴァレンティナに、これが何であるかを説明する。
「『シンシャ』という鉱物だ。詳しい説明は省くが俺の国では、これは釉薬や口紅になるんだ」
「つまり……この島で特有の陶器が作れるのか…!?」
「ええ、無論ただの鉱物として輸出するだけでも、かなりの利益になりますがやはり加工した上で沿岸諸都市に輸出するなり、この島に職人を招き作らせるのがいいでしょうが」
眼に見える形ですら『辰砂』の量は膨大だ。この鉱脈は当分の間枯渇することはないだろう。
後は職人たちの芸術性にかけるしかあるまい。もっとも辰砂のように良い釉薬を使えば、どんな駆け出しの職人であってもいいものになる。
「色んなものに色合いをつける意味でならば、他にもありそうだな。この鉱山は―――」
地肌に見える赤以外にも青色もあったり黄色も見える辺り様々な鉱物があるかもしれない。
「凄いものがあったわね……けど海賊達は何でこれを掘ろうとか思わなかったのかしら?」
「ああいう連中ってのは多かれ少なかれ一次産業というものの低賃金を理解しているからな。第一、てっとり早く稼ぐために略奪稼業についたというのに、そんなことをしようとは考えないだろ」
ソフィーの疑問に答えつつ、イルダー・クルーティスに向き直る。いきなりの視線のそれにイルダーが顔を引き締める。
「これをどう扱うかはあなた次第だ。だが、なるべくならば全ての人の幸福に繋がる使い方をしてほしい」
「……とりあえず鉱夫達には作業中に起きる様々な危険がある。それを考えれば低賃金はありえない。そして―――それには今回の海賊討伐で捕虜となっている賊達を使おう」
「公王閣下、本気ですか?」
イルダーの大胆な発言に、ソフィーは質問をする。もしも彼らが公王に反旗を翻してここが再び政情不安になれば、彼女の親しい人間が再び戦場に出るかもしれないのだ。
しかしそれに対してイルダーは疑念を理解した上でソフィーに説明をする。
「捕虜にした海賊の大半の連中というのは若者ですソフィーヤ殿、彼らが何故そのような行動に移ったのかは供述から知っております。それはアスヴァ―ルの内乱です」
アスヴァ―ルの内乱は多くの問題をあの国に起こしていた。戦争に関する貧困が人心を悪化させるというのは本当であり、村や町の大小に関わらず、大人達は無気力となりその日の糧だけを得ることにのみ腐心する。
結果としてそんな大人達ばかりを見ていた少年というのは結局の所、そんな体制に反発する。
「あの年頃の若者と言うのは周りの環境次第でどうにでもなります。彼らが無気力な大人達に反発してそういう反動的行動に出るというのは仕方ない。それは言うなれば何かをしたいというのに何も出来ないというジレンマ」
この人も昔はそんな感じだったんだろうなと感じられた。リョウからすれば益々あの野郎に似ているなと思わせた。
「―――それを更生させて、この国の国民にならせられますか?」
「それこそがこの悪徳と退廃が蔓延った島の公王に任ぜられた私の使命だと思いますよ」
何を目指せばいいか分からない。何をすればいいのか分からない。だからといって刹那的な快楽主義に流されていてはいつまでたっても一人前にはなれない。
「フランシス・ドレイクが国を造るなどと言って略奪を是とするならば、私はペルクナスのように法と秩序を敷きつつも、戦神トリグラフのように生きることは戦うこととする国を造ろう」
若き公王の決心と理想のそれを聞きながら、これ以上俺が何かやれるとすれば精々、遊郭などの世話だろうか。などと考えていたらばイルダーが、ソフィーから向き直ってこちらに視線を向けていた。
「リョウ・サカガミ―――あなたにこの島の騎士隊長になってもらいたいが、それは固辞するだろうから言わない。しかしこの島はあなたがアスヴァ―ルに続いて「征服」した国だ。だからこそ―――あなたが、この島の名前を付けてくれ」
言葉の前半で苦笑しつつも言葉の後半で真面目な口調で語りかけるイルダーの言葉に少しだけ考え込む。ヤーファ人ならば、オノゴロ島やオオヤシマなどと付けるかもしれない。
だが、それでもリョウの胸中に過ったのは己の先祖であったという鬼のことであった。その鬼が収めた国においては人と鬼は仲良く暮らしつつも、少しの問題もあった。
しかし少しの問題も出ていた。今まで悪行を働いていた存在と平穏を愛していた人々が同化できるかどうかが問われると言う意味では、その名前の方がいいだろう。
鉄ではなく辰砂をどう活かすかで公王の素質が問われる。「鬼」と「人」を結び付けられるかどうか、そういう意味も込めて自分は口を開いた。
戦鬼―――温羅のルーツであった吉備国のかつての名前を―――。
「ならば―――「オニガシマ」、そういう風に名づけてくれ」
「承知した。たった今より俺は公国「オニガシマ」の公王だ。先王リョウ・サカガミの禅譲により今日より真なる意味で俺はこのオニガシマの公王になる」
大袈裟な。と思いながらも先程まで館で唸っていたイルダーよりは覇気が出てきたと思いつつ、これならばヴィクトール王にも良い報告が出来るだろう。
そして今回の本当の功労者であるプラーミャがこの朱色の石に興味を示した理由を察せられた。
辰砂の巨塊を見上げているプラーミャを抱き上げて撫でるティナもその理由を察している。
「まだ子供ですもんね。朱い色に親を思い出してしまうのは仕方ないです」
だが、プラーミャの導きが無ければこのような結果は催せなかったのだ。この幼竜の心に応えるためにも自分は、全てをやり遂げなければならない。
自分もその辰砂の塊を見ていると、その形が――――誇り高き竜王の姿に一瞬見えて、心臓が早まるのを感じたが錯覚でしかなく、それでも自然と口を衝いていた。
「必ず―――」
多くの具体を言わずとも、それでも成し遂げるという意味をその一言に込めた。
◇ ◆ ◇ ◆
有望な鉱脈、鉱床を見つけたという知らせは居館にいた武官・文官達、イルダーに従うもの、王宮から派遣されてきたもの全てに喜びを与えた。
この島をただの軍事拠点にするのならば、それは近隣諸国と対立を招く結果になってしまうからだ。武官はともかく文官はそういう安堵。
武官は、この島がただの枯れた土地となりイルダーを厄介払いさせられたという懸念を払拭できたからだ。
(場合によってはここが反乱の目になったかもしれない)
ヴィクトール王の感触から察するに、イルダーを少しばかり「教育」したいという気配を感じていた。もしも彼が次代のジスタートの玉座に着くというのならば、この地で己の国のあり方を示して見せよ。
そういう無言のメッセージを受けていただけに今回の視察は良い方向に向かうはずだ。
しかしながら懸念を示すものもいるわけで公王陛下の鶴の一声で開かれたささやかなれども明日への活力を得るための酒宴。様々な人から酌をされて疲れたリョウの下にソフィーがやってきた。
彼女もこういう宴の席においては滅多に見られない華なのか様々な人間から秋波を送られていたが、それを流しつつされど冷たくせずに高嶺の華として咲き誇っていた。
相好を崩して涼んでいた自分だが、やってきた彼女はどうにもそういった感じでは無い。何か深刻な話があるようだ。
「何か用か?」
「そうね。用と言えば用だわ。リョウ―――あなたは故郷を捨てているの?」
「いいや、何故そんなことを聞く?」
ソフィーには自分の事情を一応話している。仕えている女王からこの地にて魔を討ち果たせと言うことを。
だが今更ながらそんなことを疑問に思われるとは、果たして何が彼女を不安に陥らせているのか……。
「リュドミラとの戦いを見た時から少しの疑念が私にはあったわ。あなたが本当に故郷を捨ててこの西方を征服してきているんじゃないかと」
「そこまでの野心は無いな」
「ただそれでもリョウ、あなたを慕う人間は多くなるばかり、仮に彼らがあなたを王にと推挙してきた時にあなたは断れる?」
「断るさ」
ソフィーの疑念をあっさり否定すると彼女はきょとんとした顔をする。珍しい表情に悪戯心が出てきそうになるも、今は真面目な話なので置いておく。
「俺自身に王位に興味が無いというのもあるが、場合によりけりだ。ただこの地にはこの地に根差した王が存在するのが自然の生業だと思うよ。所詮俺は外様なわけだしね」
本当にその争いが民の想いを無視した権力闘争であるというのならばアスヴァ―ルの時の如く自分は介入しつづけた。
ただあの地には民を無視した偽王二人とは別に清濁兼ね備えた「亡国王」が存在していたので、そいつ次第だとして途中から彼を立てることにした。
「今回の事でジスタートは更なる強国になったわ。その食指がヤーファに及ぶことも考えられない?」
「その時はヤーファを守るために俺は「鬼」になるだけだ」
第一、ソフィーは侮っている。ヤーファには自分に伍するだけの武者などかなりの数がいる。
それを前にすれば如何に、ジスタートとてそうそう勝てはしまい。
「それ以前にどうやってアスヴァ―ルやザクスタン、ムオジネル……ブリューヌの全てを平らげるかが問題だと思うが、それが出来なければヤーファを直撃出来ない。第一……そこまでの野心家かねヴィクトール王もイルダーも」
リョウとしては、戦なんてのは嫌いである。嫌いだからこそ国を豊かにしたい。衣食「住」満ち足りて礼節を知るという言葉がある通り、貧すれば鈍すなどということを招きたくないのだ。
「武士である自分が言うのもなんだけど、戦なんてのは起こらない方がいいさ。剣は好きだけど戦なんてのは起こらない方がいい。だからこそ……不満の種は消していきたい」
豊かな国を狙って貧しい国が戦いを挑むよりは、豊かな国にとって必要なものと交易することで争いを起こさせない。
「それでも貧しい国や地方なんてのはあるさ……ティナのいるオステローデもそんな所だったらしいな?」
「ええ、けれども彼女は努力してオステローデを開発していった。それも見据えて……」
「というわけではないが……まぁ俺としては、そんな国でも食えるぐらいにはしておけば、反乱を起こそうとは思わないだろうさ」
このままいけば寄港地としては、ルヴ-シュやレグニーツァが選ばれることが多いだろうが、オステローデ方面にまで行きたいという定期便も出るはずだ。
寒冷な土地にて暖を取る術、火を扱う術を知っていた彼女の領地の職人達が招聘されることが多いだろうし、辰砂の扱いも恐らく上手くいくだろう。
必要なことは自分が伝えればいいだけだ。
「それでも、それでもリョウ。ヴァレンティナが野心を捨てなければどうするの? ジスタートに反旗を翻した時、あなたは彼女の敵になれるというの?」
真剣な表情でこちらに質問してきたソフィーの眼が揺れると同時に夜風が彼女の金色の髪を揺らした。
―――それがソフィーの本当の疑念か。如何にリョウ・サカガミが卓越した剣士だとしても戦姫を圧倒できるとは考えていなかったのだろう。
特にリュドミラは三代にわたって戦姫であった家系だけに彼女はラヴィアスの扱いに関しては熟知していた気配がある。武器の伸縮もその一つだ。、
それを圧倒できる「戦鬼」は、ヴァレンティナにとっては最高の切り札になるかもしれないから
こればかりは俺を信じてくれというしかないが……。
「たらればばかりで申し訳ないが……、まぁあの失礼千万な銀髪の戦姫が言っていた通り快楽の坩堝に落として無理やり言うことを聞かせるよ」
「そ、それは予想外の返答だわ……とはいえ少しだけ分かったわ。あなたは本当の意味で―――「自由騎士」ね」
呆れたような表情と安堵の表情の混ぜ合わせの後には彼女なりの納得があったようだ。
しかし次の瞬間には悪戯猫のようなことをされてしまう。
「けれども私はあなたの夜の供をしてきた人みたいに手練手管を知っているわけじゃないから、どれほどの「腕前」なのか知らなければ安心できないわ」
こちらにその魅惑的な身体を寄せながらの誘い文句だが……本気ではないからかいの言葉であることは分かっていたので、こちらもそういう対応で躱すことにした。
「……今度レグニーツァに行ってサーシャにでも聞いといてくれ」
「!?」
大きく開かれた口に手を当てて、驚きの表情をしたソフィーを置いて再び宴の中に身を投じることに。
(自由騎士というのも辛いものだ――――確固たる「価値観」が国や宗教によらないからな)
それもまた試練だと思いつつも、この――――。
「リョウ、そんなにしたらば双子どころか三つ子、四つ子、五つ子とプラーミャの弟妹が一挙に出来てしまいますよ」
「盗み聞きは感心しないな」
―――自分抱きをして、何を想像しているのか分からない努力家にして野心家の姫君をどうしたものかと考える。