キリト「生還したら妹と弟がくっ付いてた」 作:ブロンズスモー
桐ヶ谷海斗(12)
身長:143cm
痩せ気味だけど、この歳で腹筋割れてる。
小さくて目が常にジト目でもやしっ子じゃない和人。
コイコイ
身長:150cm
体型はリアルと変わらない。
髪の毛は若干緑っぽい灰色。
大会
一ヶ月くらい経った。中学野球大会の予選の日だ。直葉は海斗の応援に来ていた。
スタメンの二番、セカンド。九回の裏、ネクストバッターの円の中で、相手ピッチャーの投げる球を観察していた。
現在、1アウトで2対2、ランナーは無し。点が入らなければ延長戦だ。
どう考えても、自分が勝負を決める打席になりそうだった。一番の先輩が出塁して、1アウト1塁で勝負を決めるか、一番の先輩がアウトになって、クリーンアップに繋ぐか。
これまでの海斗の打席は、送りバント、犠牲フライ、ファーストライナーと、出塁はない。
「どうですか?先生。海斗の調子」
直葉が監督に聞いた。
「俺のサイン通りに従ってくれてるよ。良い即戦力が入って来てくれた」
「でも、次はそうもいきませんね」
「なんだ、野球分かるのか?」
「今まで、ずっと見て来ましたから」
キィンッと良い音がした。見事なピッチャー返しで、セカンドとショートの間を抜け、先頭バッターが出塁した。
海斗がバッターボックスに入った。監督のサインを見た後、構える。バントの構えではなかった。
(………普段のバッティング練習を見て来たが……)
監督は今まで、海斗が二番を打って来たことに、少し疑問を抱いていた。スイングの速さと力強さだけは、どう見てもクリーンアップレベルまである。今年の大会は今まで打って来た二番にさせておいたが、新人戦からは強打者になる可能性も考えていた。
まず、初球は大きく空振りさせた。それによって、一番バッターは見事、盗塁に成功。
続いて、二打席目である。若干、外角に外れた球を流し打ちして、ライトの頭を超えてフェンスに直撃させた。ヒットエンドランのサインだった。
「やった!」
直葉が声を漏らした。フェンス直撃の2ベースで、2塁ランナーは一気に帰って来た。
サヨナラフェンス直撃2ベースヒットで、一試合目は幕を閉じた。
「ふぅ………」
2塁ベースに立って空を見上げながら、海斗は汗を拭った。
ー
「コイコイのサヨナラヒットを祝して!」
「「「「カンパーイ!」」」」
リーファ、レコン、サクヤ、シグルド、コイコイの四人でグラスをぶつけたあった。そのままゴキュッゴキュッと飲み干した。
「いやー、良かったよ。なんとか勝てて」
「初戦からギリギリな試合してくれて、ヒヤヒヤしたよ」
コイコイとリーファが言った。
「まぁ、勝てたから良いじゃないか」
「そうだけどね。でも、初戦くらいは圧勝しないと先が思いやられるよ」
「でも、今日の試合は去年の地区三位チームだったんだろう?仕方ないんじゃないか?」
「次の試合まで疲れが残るでしょ」
「ああ、そういう……」
今や、コイコイはすっかり慣れて、リーファだけじゃなくてシグルドやサクヤとも話せるようになっていた。
サクヤがリーファを見て聞いた。
「そういや、リーファは剣道の試合はどうなんだ?」
「あたしはまだよ。けど、今年こそ全国行ってやるんだから」
「そうか」
「そ、その時は応援に行くからね!リーファちゃん!」
「いや、あんた学校でしょ」
「あ、そ、そっか……」
「大丈夫だ、レコン。そこの金髪は地区大会くらいなら全試合二振りで終わらせてくる」
「そ、そんなことないよ!」
なんて話してると、シグルドが「そういえば、」と声を漏らした。
「大会で思い出した。もうすぐ、ALOでも大会が始まるぞ」
「へっ?」
「デュエル大会だ。全プレイヤーでナンバーワンを決める第一回目の大会だな」
「そ、そうなの⁉︎」
「ああ。これにで優勝すれば、これからALOを始める人達の種族に大きな影響がある。俺達、シルフ族も優勝を狙って行きたい所だ」
シグルドは言いながら、飲み物を飲んだ。リーファが顎に手を当てて「どうしようかな……」なんて悩んでいると、レコンが遠慮気味に言った。
「ぼ、僕はいいかな……。まだ、装備も揃ってないし、あまり対人戦は苦手だから」
「まぁ、参加するしないは自由だ。好きにしろ」
「シグルドやサクヤは出るの?」
リーファが聞くと、二人とも頷いた。
「もちろんだ」
「シルフのトップは、ほとんど我々だからな」
リーファはチラッとコイコイを見た。
「………え、何?」
「出る?」
「んー……気が向いたら」
「じゃあ、あたしとコイコイも出ようかな」
「え?いやリーファの気じゃなくて俺の気が向いたらって意味だったんだけど……」
「よし、ではデュエル大会に向けて、そろそろ外に出るか」
「そうだな。グズグズはしていられない」
「今日はどこ行く?」
「とりあえずほら、あそこの森のフィールドボス、アレこの前回復アイテム尽きてて挑めなかったじゃん」
「いいね」
五人は席を立って、その森に向かった。
ー
サクヤ、シグルド、レコンと別れ、リーファとコイコイは二人で砂漠フィールドに残っていた。
「んっ……疲れたぁ……」
「そーだな」
「なんだかんだでパーティメンバーも増えたし、ステータスも上がって来たし。順調だよね」
「うん」
ぼんやりした返事をしながら、自分の片手剣を見ていた。その様子に、リーファはムッとした。
「もう、聞いてるの?」
「聞いてる聞いてる」
テキトーな返事と共に武器をしまうと、別の武器を取り出した。灰色の弓だ。
「それいつ買ったの?」
「今日のボスドロップ」
「へぇ〜……でも、弓かぁ。あんま使わないでしょ」
「いや、どうかな」
現在、リーファ達のパーティは主力がリーファ、シグルド、サクヤでその支援にレコン、コイコイがいる。今まで、コイコイは敵の撹乱と囮をしていたが、弓を使えば遠距離からの援護が可能になる。
「………一応、とっとこう」
「ね、コイコイ」
「何?」
「良いの?」
「何が?」
「いや、コイコイは前衛やりたかったんじゃないの?」
「別に。前衛はもう三人いるし。元々、そっちが本職だったし」
「それはお兄ちゃんとやってた時でしょ」
リーファは真面目な顔で言った。
「別に、ゲームでならやりたいポジションでやっても良いと思うけど」
「やりたい事はソロの時にやるよ。周りと一緒に遊ぶ時は周りの意見を尊重する」
「でも、正直あたしはコイコイが前衛にいてくれた方が楽なんだけど」
「けど、他のメンバーはそうじゃない。特にシグルド、あいつプライド高そうだから超嫌がるよ」
「…………まぁ、コイコイがそれで良いって言うなら良いけど」
「なら良いじゃん。それに、今からちょっと試したい事もあるし」
コイコイは弓を握ると、砂漠の奥へ進んだ。
「あ、ちょっと!どこ行くの?」
「試し射ち」
「ま、待ってよ!」
奥に進むコイコイと、後を追うリーファ。地面から、サソリ型のモンスターがウヨウヨと湧いて来た。
コイコイはリーファを手招きした。頭上に「?」を浮かべながらもコイコイの方へ歩いた。コイコイはリーファを自分の前に立たせると、背中をドンっと押した。
「へっ?」
「よろしく」
サソリ型が襲いかかって来て、リーファは慌てて回避した。
「な、何するのよ⁉︎」
「良いから。少し戦え」
「あ、あんたねぇ!前々から思ってたけど、仮にも姉に向かって……!」
「戦わないと死んじゃうよ。言っとくけど、飛んだら射落すから」
「ああもうっ!後で覚えてなさいよ⁉︎」
リーファは仕方なく、サソリに向かって行った。サソリのハサミを回避し、そのハサミの付け根を横から斬り裂いた。サソリが怯んだ所を、正面から縦に斬って倒すと、次のサソリに向かった。
そのサソリのハサミを躱そうとした直後、後ろから飛んで来た矢が、サソリのハサミの付け根に直撃し、スパッと切断した。
「!」
躱す必要のなくなったリーファは、正面から二回斬ってサソリを倒した。
「おお……意外といけるな」
そう言って、引き続きリーファの援護をしようとした直後、ドスッと後ろから何かが背中から腹に貫通した。
サソリの毒針が見事に貫通していた。
「…………なるほど。狙うのに夢中になっちゃダメな奴か」
「何やってんのあんた⁉︎」
「ごめん、麻痺毒っぽい。詰んだ」
「ああもうっ!世話が焼ける!」
リーファは飛んでコイコイをおんぶすると、そのままスイルベーンに向かった。
「明日、試合なんでしょ?もう落ちるよ、今日は」
「はーい」
飛んで帰った。
「あ、そういえばさ、」
「何?」
「お兄ちゃんもモンハンやってたんでしょ?武器何使ってたの?」
「双剣」
「ああ〜……バリバリのアタッカーだね。で、お兄ちゃんとあたし、どっちが強かった?」
「カズ」
「即答………」
「まぁ、年季が違うから。俺とカズが組めば大抵の相手は落ちないでも倒せてたわ」
「大抵って……アカムとかウカムも?」
「そりゃまぁ」
「アマツ」
「あれは余裕でしょ」
「ミラ系」
「その辺は怪しい」
「………なるほど」
リーファは、デュエル大会で入賞できるくらいは強くなろう、と心の中で決めて飛んだ。
「………リーファ」
「何?」
「お腹すいた」
「ログアウトしたら、何か作ってあげる」
「どうも」