キリト「生還したら妹と弟がくっ付いてた」   作:ブロンズスモー

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メンバー増えた

 

翌朝、直葉は自分のクラスの教室に入ると、一人の男子生徒の前に立った。

 

「な、永田クン」

 

「っ?」

 

永田慎一。クラスで一番ゲームに詳しいと言われる男子生徒だ。直葉がその永田に声を掛けた直後、辺りは騒然となったが、直葉は気にせずに話し掛けた。

 

「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど」

 

「え?き、桐ヶ谷さんが……僕に?」

 

「うん。屋上に来てくれない?」

 

「おっ、屋上⁉︎」

 

それを聞いて、永田はギョッとした。

 

(こ、ここっ、これって……僕にも春が⁉︎)

 

童貞の勘違いである。

 

「わ、わかった!良いよ」

 

との事で、二人は屋上に上がった。ネットに寄り掛かって、直葉は気恥ずかしそうに聞いた。

 

「………そ、その、さ」

 

「うん……」

 

「オンラインゲームについて、聞きたいんだけど……」

 

「うん?」

 

「や、だからオンラインゲーム」

 

「…………」

 

永田は落胆と羞恥によって、思わず顔に手を当てたが、そもそも直葉が自分に声をかけてくること自体が奇跡だと思い直した。

 

「ど、どうしたの?急に……」

 

「実は、弟とALOっていうのを始めて……」

 

「うん?」

 

「オンラインゲームの中で、気を付けなきゃいけない事ってあるかなって思って……」

 

「ああ、そういう……。弟さんからは聞いてないの?」

 

「うん。特に何も」

 

(………もしかして、弟さんも始めたばかり、とか?)

 

そう思うと、永田は引き受けた。

 

「う、うん。いいよ。あ、せっかくだから僕もやるよ。ALOやって、直接教える!」

 

「え?いや、それは流石に……」

 

「だ、大丈夫!いつか、僕もALOやろうと思ってたから!」

 

「そ、そう……?分かった。じゃ、ALOで一番大きい建物の前に、8時に来てね」

 

「う、うん!」

 

嬉しそうな顔をして永田は直葉と共に屋上から出た。

 

(よ、よし……!桐ヶ谷さんと弟くんを上手く導くぞ……!僕にも、春が来たんだ!)

 

そう決心し、永田は超気合が入っていた。

 

 

 

 

夜。晩飯も済ませ、二人はスイルベーンの街で永田を待っていた。

晩飯の時に、直葉は永田が入る事を伝えておいたのだが、それから海斗の様子が何故かソワソワしてるのが気になったが、何となく聞けなかった。

 

「あ、桐ヶ谷さ……じゃない、リーファさん、だっけ?」

 

「………レコン、くん?」

 

「レコン、で良いよ。お待たせ」

 

緑色の頭の少年がやって来た。そして、チラッとコイコイの方を見た。

 

「彼が?」

 

「うん。弟のコイコ……コイコイ?」

 

コイコイはリーファの陰に隠れた。その様子を見つつ、レコンはとりあえず気になったので聞いてみた。

 

「? なんでコイコイ?」

 

「花札が好きなんだって。………コイコイ、挨拶しなさい」

 

「……………」

 

「コイコイ?」

 

リーファが自分の後ろに隠れているコイコイに声を掛けるが、隠れたまま声を出さない。

それを見ながら、レコンは親指と人差し指を顎に当てた。

 

(………ふむ、やっぱりオンラインゲームは初めてなのかな……?)

 

そう思うと、レコンはコイコイに手を差し出した。

 

「僕はレコン、よろしくね。コイコイ」

 

「………フシャー」

 

威嚇された。猫みたいに。困った表情でレコンはリーファを見たが、リーファも困っていた。

 

「ち、ちょっと、コイコイ?」

 

「………何?」

 

「挨拶しなさい」

 

「…………どうも。リーファ、行こ」

 

「え?あ、う、うん?ごめんね、レコン。行こう?」

 

3人は街の出口に向かった。リーファがコイコイの耳元で話した。

 

「ち、ちょっと、どうしたのよ?」

 

「………は?何が?」

 

「いや、なんか余所余所しいから……」

 

「意味わかんない」

 

「意味わかんないのそっちだから」

 

「いいから行こう」

 

さっさとフィールドに出るコイコイの背中を見て、もしかして、とリーファは何となく察した。

 

(………コミュ障、だったんだ……)

 

そう思いながら、さっき背中隠れられたときに、握られた腰を撫でた。

すると、後ろから声を掛けられた。

 

「り、リーファさん」

 

「リーファで良いよ。何?」

 

「り、リーファちゃん……」

 

「……………」

 

若干、引いたが我慢した。

 

「何?」

 

「コイコイくんって、いつもあんな感じなの?」

 

「いや、今日初めて知ったけど、コミュ障だったみたい」

 

「……ああ、そういう感じなんだ………」

 

「気にしないでね。レコンは悪くないから」

 

「う、うん」

 

そんな話をしてると、フィールドに出た。ここは自分がこれからどうするか決めるしない、と思ったリーファは、羽を出して言った。

 

「とりあえず、昨日行った辺りまで行こっか。レコンはついて来て」

 

「う、うんっ」

 

予習しておいたレコンは、コントローラを出して浮いた。リーファとコイコイがコントローラ無しで浮いてるのは見なかったことにした。

1分ほど飛んで、すぐに地上に降りた。オークが数匹現れ、リーファとレコンは剣を抜いた。

 

「やるよ、僕が前に出るから二人は……!」

 

と、言いかけたところで自分の後ろから何かが発射された。コイコイから投げられた盾は、オーク4匹のうちの前にいる2匹に跳ね返りながら直撃し、怯んだ隙を突いてリーファが飛び込んだ。前の二人を斬り捨てると、後ろの2匹が襲い掛かって来る。

 

「リーファ、飛んで」

 

コイコイからの指示に従い、リーファは羽を生やした真上に飛んだ。直後、後ろからコイコイの魔法がオークに直撃して、2匹とも後ろに引いた。

上空からリーファがトドメを刺し、終わった。

その様子をぽかんと見ながら、レコンは思った。

 

(………これ僕いる?)

 

片付き、伸びをしながらリーファは聞いた。

 

「どう?レコン」

 

「え?あ、えっと……」

 

何か言わなきゃ、と思ったが、絶妙なコンビ過ぎて何も言えなかった。

 

「い、良いんじゃないかな。教える事なんて何もないと思うけど……」

 

「あ、ごめん。どう?っていうか、オンラインゲームってどういうものなのかなって。コイコイは兄といつも二人でゲームしてるから、あまり参考にならないんだよね」

 

「じゃあ、一応スイッチとかの説明もするね。少人数でやるならあまり必要無いと思うけど……」

 

リーファがレコンに色々教わってる間、コイコイは一人で狩りを続けた。と、言っても自分達の所に襲い掛かってくるモンスターだけを討伐してる感じだ。

何か、必殺技みたいなかっこいい動きを考えようと思った。

 

「……………」

 

少し考え込んだあと、盾を置いてオークの前に胡座をかいた。

 

「『卍解・花天狂骨枯松心中』」

 

そのまま動けなかった。一段目からどう表現すれば良いのかわからなかった。というか、自分ダメージ受けてないし。

 

「トランザム‼︎」

 

飛んで、ビュンビュンと飛び回りながら剣を振り回した。が、すぐに動きを止めた。口を押さえながら、ふらふらと着地した。

 

「…………酔った」

 

これはダメだわ、刹那とかスゲェな、これ量子化とかしちゃったらどうなんの?とか思いながら、別の必殺技を考える。

 

(………あ、無理。マジ無理。マジ酔った……)

 

と、いうわけで休憩する事にした。暇だったので、リーファとレコンの話に耳を傾けてみた。

 

「………まぁ、とにかく、早く強くなりたいなら、誰かと五人くらいのパーティを組んだほうがいいよ」

 

どうやら、話がちょうど終わるところみたいだ。

 

「………そっか。分かった、ありがとう」

 

「そ、それで、さ……」

 

レコンは話を終えると、目を逸らして、若干顔を赤らめながら言った。

 

「も、もしよかったら、僕をパーティに入れてくれないかな?」

 

「…………へっ?」

 

「だめなら、良いんだけど……」

 

言われて、リーファはチラッとコイコイを見た。視線で、『お先にどうぞ?』と言っていた。

リーファは空かさず、『大丈夫なの?』と視線で聞いた。

 

『平気だから。好きにして良いよ』

 

『いや、でも今までお兄ちゃんと二人だけでやってたのって、人と話すの苦手だからでしょ?』

 

『良いから、マジ気にしないで。慣れれば中崎みたいに話せる奴も出来るから』

 

と、いうわけで、リーファは少し考えたあと、レコンに言った。

 

「じ、じゃあ、よろしくお願いします」

 

「! う、うん!僕、頑張るから!」

 

パーティメンバーが一人増えた。レコンは浮かれた様子でリーファの手を取った。

 

「じゃ、早速狩りに行こう。まだ、時間大丈夫だよね?」

 

「う、うん。あたしもコイコイも大丈夫だよ」

 

「じゃあ、行こう!」

 

レコンが飛び上がり、リーファはその後に続き、さらにその後にコイコイは続いた。

飛びながら、レコンはリーファに得意げに言った。

 

「それで、さっきの戦闘を見た感じだと、リーファちゃんが前衛で暴れて、コイコイくんは後衛で上手くサポートしてたよね」

 

「うん」

 

「だから、僕は奇襲役にしようと思う。後、必要なのは壁役とサポート支援がもう一人かな」

 

「分かった。早く、パーティメンバーを揃えないとね」

 

そんな話をしながら飛び続けた。途中から、8人のサラマンダーにつけられてる事も知らずに。

 

 


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