明久と優子ともう一つの世界   作:e4705

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オリジナルバカテスト 第12問

電池の起電力と内部抵抗を表す公式を「V=~」の形で書きなさい。

坂井 瑛梨奈の解答:V=E-rI(これって普通、1年生にやらせます?)
教師のコメント:正解です。そうでした、まだ範囲外なので出題させるべきではありませんでしたね。申し訳ありません。

哀川 悟の解答:(白紙)
教師のコメント:まあ、普通そうですよね。今回はお詫びとして点数をあげます。

吉井 明久の解答:先生!カンニングしてもいいですか?
教師のコメント:点数をあげたくなくなる回答がここに。絶対にいけません、不正行為です。


今回で一気に初戦~最終戦を書かなきゃ!

明久「無理なら2つに書き分けても良かったんじゃないの?」

それはそうなんだけど、予定狂うしすでに予告も出しているから今更できないんだよね…

明久「ふーん、そうか。というわけで本編は下↓のバナーをクリック!」

って、ちょっと!?しかもここにリンクなんて作ってないからね!?


STORY11 景品がああっ!

-5時間目-

 

キーンコーンカーンコーン

 

さあ、開戦だ。

 

瑛梨奈Side

 

布陣はある程度固めておいたし、操作は大体平等だから力の差はあまり見られないはず。1年の私たちがどこまで2年に対抗できるかが鍵となるわね。

 

優子「慎重にというよりかは大胆に行動するのが自分たちの戦略ね」

 

瑛梨奈「だって全員参加が必須だし、120分がリミットだからそういう制限こそこの戦法ができるでしょ?奇襲作戦の効果って案外侮れないわよ?」

 

初めてやることだから相手の作戦が的中する確率は割と低い。同じ作戦かもしれないし違うかもしれない…もし前者だったら出遅れてでも突っ込むしか方法がない。損害は大きくなるけど私のところまで来るリスクは少しでも減らせる。全員参加必須だから突っ込む作戦のほうが多いと私は予測する…そう思ってこちらも同じようにすれば戦力・戦術違いで突破口が見えるはず!

 

幸久Side

 

さあ、本来なら護衛に着く予定だったんだけど、文系科目の戦力が劣るという予測が出されているから代わりに自分が前衛を任された。からには全力で取り掛かるか。おっ、さっそく…

 

5モブ①「いたぞ!勝負だ!」

 

幸久「どこまでいけるか、見せてもらいましょう!試獣召喚(サモン)っ!」

 

~国語(現代文)~

 

1-3 吉井 幸久 411点

         VS

2-5 モブ①    335点

 

現代文の先生連れてくるなんて相当自信あるんだね。瑛梨奈さんの予測では理系の先生を用意しているとは聞いているんだけど…点数としては僕のほうがリードしているのか。だが、そもそも内容自体違うから比較もできない。

 

幸久「現代文で挑むんですね。どこの情報ですか?」

 

5モブ①「ああ、これはわざとだよ。これも作戦の一環…」

 

作戦の一環でわざわざ現代文の先生なんか連れてくるのか…?意味のないことをしているように見えてくるんだけど。

 

5モブ②「加勢するよ!」

 

5モブ③「負けてられっか!」

 

あー…ここに6人入るのか。1VS6なんて結構卑怯な感じがするので、こちらも応援を要求する。

 

金井綾「私も加勢するわ!現代文なら点数が高いの!」

 

この人は金井 綾奈さん。普段はクールな人なんだけど勝負事になるとスイッチが入って熱くなるんだよね。たしか、現代文クラス4位の実力者だっけ?

 

斎藤正「自分も参加させてくれないか?2対6はさすがにまずいし、現代文なら対等に戦えるからね」

 

で、この人は齋藤 正寛君。THEインテリな風貌をしていて現代文は確か3位だったかな?本当に心強すぎるよ…、自分なんか9位だもん。…で、勝負に戻ると3VS6の展開に。数的不利で厄介な場面ではある。しかし、文月学園で操作の練習やこの学校で操作体験をしているからここで自分が引くわけにはいかない。実質、負けられない戦いなんだ。ここは普通に突っ込むだろうからその裏を掻いて自分は…

 

ヒュンッ!

 

5モブ④「あれ?なんで当たらない?」

 

5モブ⑤「バカ!避けられてるっての!」

 

幸久「僕の技術力を舐めないでいただきたいですね、行きますよ!」

 

ガッ、キィン!

 

5モブ④「つ、強え…」

 

5モブ⑤「2人掛りでも押し負けそうだなんて…」

 

1-3 吉井 幸久 304点

        VS

2-5 モブ④    139点

2-5 モブ⑤     98点

 

徐々に点数が減っていく…、初めて勝負したけどここまで面白いものだなんて思わなかった。考える余裕すら自分にはある。自分の武器は近距離戦に不向きだが、やりようによっては特化させられることもできる。大きな鉄球に鎖があるが、鎖を持つ部分を短くすると腕力でブンブン振り回すことさえできる。通常なら大きく回して遠距離攻撃をするのが一般的なのだが、リーチを短くしているので左右にブンブンと振り回すだけで結構大きなダメージになる。ただ、3㎏とそこそこ重いので扱いに慣れるのに時間がかかる。時には自分の思い通りに召喚獣が動かせないこともあるが、相手がデフォルトでその状態なので気にせず戦える。ましてや、操作体験が残っているので扱いやすいのもある。

 

齋藤正「あれ?操作もまともにできないなんてどうされましたか?」

 

5モブ①「ちょっ、勝手に体が…」

 

5モブ⑥「自分の意志で操作できない…!?」

 

あー…腕輪に御坂さんが送った能力が付いているんだっけ、彼の初期点数は669点なので腕輪が当然使える。彼にはどうやら「洗脳能力(マリオネッテ)」のLevel4版が与えられていて、一人一人に別の洗脳を働きかけることができるようだ。一度に10人洗脳できるらしく、そのうち1人には自分の手駒として自分の召喚獣と一緒に共闘できるといわれている。っていうか、その間の人の頭の処理能力&処理速度ってどうなってんだろう…。普通に考えてヤバくない?

 

齋藤正「さあ2体の召喚獣よ、ともに歩もうじゃないか」

 

5モブ⑥「ひいいいっ!く、来るんじゃねえ!おいお前!何とかできないのか!?」

 

5モブ①「そういわれても自分で動かせないんだよ!」

 

あはは、ここだけ見るとなかなか面白い構図だね。

 

幸久「って、よそ見している場合じゃないんだけどねっ!」

 

ガキィン!

 

5モブ⑤「くそっ、隙ありと思ったらまた防がれたよ…」

 

5モブ④「初めて操作しているとは思えない…!」

 

そうだよ、だって「経験」があるから。

 

 

 

 

悟Side

 

一応、伏兵の要員として潜んでいるわけだが、会話がはずんでしまう。

 

櫻井「俺もこういう役回り好きなんですよ。いつ敵を暗殺できるか楽しみで…」

 

悟「おい、ここは戦場と訳が違うんだからあまり物騒なことは言うなよ」

 

櫻井「おっと、悪いわりぃ」

 

まあ、悪気があって言ってんじゃないんだろう。PTSDとかあるからそういうことはあまり口に出してもらわないでいただけるといいんだが。こいつは櫻井 将平、中学校で一緒に遊んだ仲だ。…まあ、悠大には敵わないが。将平の母がDVを起こしたのがきっかけで離婚となり、今は父・祖父・兄の4人で暮らしているそうだ。…というか、自分の友達って悠大以外は全員深刻な家庭事情を持っていることに驚かされる。なのにみんなが俺にそのすべてを打ち明け、仲良く生活している…ふっ、同士というものは同じ境遇にいるのが要因でより絆を深められるとでもいうのか。別に孤児院出身というわけでもないのだが。

 

櫻井「あのさ、昨日の夜のFM信越の「マジロケ!」聞いた?」

 

悟「悪い、俺FM聞く機会がないんだ」

 

櫻井「そっか、もしよかったら聞いてみ?これが結構面白くてな!」

 

悟「ああ、聞いてみるよ」

 

人にはそれぞれ特有のハマり方があるようだ。こいつはFM信越で毎週水曜日の午後9時から流れる「マジロケ!」にハマったらしい。人のハマり様はどれほどなものなのか俺も気になっている。

 

木内「悟君…これってここでいいの?」

 

悟「試合中に勉強の話持ち掛けんなって…そうだ、それであっているはずだ」

 

こいつは木内 みとり、女子ながらも理系科目ではなかなかの成績だ。質問をよく俺にするのだが、答えられるものがそんなに多くないので止めてもらいたいと思っている。高校に入ってから4階の寮で同じ部活の先輩と一緒に生活しているらしい。結構勇気が要ることだと思うのだが…

 

丹波「悟、迷い込んだ敵が1人いるからオレ1人で突っ込んでもいいか?」

 

悟「ああ構わない。もし緊急事態になったら合図を頼む」

 

丹波「オッケー!行ってくる!」

 

俺はこの部隊の指揮役じゃないんだがな…で、こいつは丹波 菱樹。この部隊唯一の明るさを持ち合わせた人だ。俺はこいつのことを「陽キャ」と呼んでいる。…え、普通に名前で呼べばいいだろって?そんなことできたら今頃苦労してないはずだ。性格が対照的なのに気安く名前で呼べる関係にあるはずがない、あっちは簡単に俺のことを呼び捨てしているが。…で、フィールド形成されたと思ったら数学か。現時点で1はすべて終わっていて、Aは半分くらいまでやっている。テスト範囲は当然やったところまでしか出ていないので、理解できなくて点数が取れないなんてことはないはず。そういえば、丹波の点数は640点でクラス内3位…もうこの時点で歴代を抜かしていると笹嶋先生は感心していたな。ということは、この高校の学力平均は昔より上昇しているということも言えるかもしれない。

 

5モブ⑦「げっ、640点は高くねぇーか?」

 

丹波「おっと、通しませんよ先輩!」

 

それ以前にお相手も559点となかなか高得点だ。理系に傾いているという情報は確かなようだな。さて、そろそろ部隊がここを通り過ぎるという予測を感じるので俺も行動するか。点数が低いからできることは限られてくるが…

 

5モブ⑧「…なんかあっさりしすぎてね?」

 

5モブ⑨「やけに静かだな…」

 

さあ、この操作力でどこまでいけるか試させてもらうぜ!

 

ヒュンッ!

 

悟「おっと、ここからはこの哀川がお相手させていただきます故、覚悟なさってください!」

 

 

 

 

瑛梨奈Side

 

その後…敵の猛攻が何回かあったが、私たちの戦術は見事にハマり、120分すべて使い切って33対19で勝利した。

 

瑛梨奈「結局私も参戦することになったけどわずか2分間の戦いだったからそこまで損傷することなくて助かったわ」

 

優子「瑛梨奈の場合、両刀型だからどっちのタイプの先生が来ても大丈夫なのよね」

 

瑛梨奈「古典とか英語が来ると勝ち筋が薄かったかもしれないけど…」

 

序盤の時点で相手は文系科目の先生を使ったから残りは理系科目だけで、自分のところには数学の先生が運よく来たから余裕が持てた。まあ、化学基礎とかでも対等にやれる力はあると思うんだけど。でも、今回の戦績は自分だけじゃなく、クラス全員の団結にある。ちゃんと自分の得意分野で戦えているところも評価できるし、操作技術に関しては2-5より上に相当していると見ても過言ではないような気がした。自分たちに係る問題解決能力が他より高いのかもしれない。

 

明久「上の学年相手にこの結果は上出来だよね!」

 

幸久「僕が前衛に突如駆り出されたのも意味があったみたいだね」

 

瑛梨奈「予測は正しかったわ。序盤で文系科目を出してくると思ったから戦力の補強をと考えていたんだけど、まさか本当にそのまま出してくるなんて…」

 

悟「たまたまじゃねーの?」

 

瑛梨奈「うっさいわね哀川!コンクリに沈めてやろうかしら!?」

 

悟「わ、わるかったって…」

 

明日が最終日でその相手は午前の勝負で判別する…2組と5組の戦いだけどみんなの予想は5組が多いわね。大橋君が統率しているから勝ち上がる確率は高いと指摘する。これは…楽しみだわ!

 

 

 

 

-夜- 幸久Side

 

ピーンポーン

 

あれ、誰だろう…

 

ガチャ

 

悠大「ごめんね夜遅くに」

 

幸久「悠大!?」

 

 

 

幸久「何かあったの?」

 

悠大「うーん別に何かがあったわけじゃないけどなんか唐突に幸久の家に泊まりたくなっちゃった 」

 

え、泊まりたくなっちゃったって何!?しかも自分の家に!?そこは普通、悟とかに言うところじゃなくて?…まあ、事情が絡んでいるのだとしたら泊まるって言い出しにくいのかな。

 

幸久「昨日は悟が「寝れない」って言って泊まりに来たんだけど…」

 

悠大「本当?なんか、悟に言おうと思ったら今夜、セミナーで学校に泊まり込みするから家にいないって言われっちゃってね」

 

幸久「そうなんだ。親にはちゃんと伝えた?」

 

悠大「その辺は大丈夫だよ。クラスメイトだって言ったらOK出してくれたし」

 

ふーん、それならいいか。僕は悠大を自室に招き入れた。兄ちゃんは悠大と話しているところあまり見たことないんだけど、険悪ムードだったら明日の試合に影響すると思って自分の部屋にした。優子さんは友達とディナーでそのまま泊まっていくから家にいないと言ってたっけ。

 

悠大「あのさ、幸久が前の世界にいたときの体験がちょっと聞きたいなーなんて…」

 

幸久「いいよー悠大からしてみれば僕たちがこの世界に突然やってきたこと自体がイレギュラーだもんね。僕はここに来る前は文月学園というところにいたというのはもちろん知っているよね?」

 

悠大「うん、それは知ってるよ。その世界でもこっちと似たような感じなの?」

 

幸久「まあ、そうだね。どう説明すればいいのか分からないんだけど、こっちと同じように学校とか何とかいろいろあるよ」

 

実際、校長の計らいで4LDKの家に住むなんて思ってなかったけど。バイトが自由なこの学校は、それなりに働いていれば家賃・光熱費だって払うことができる。校長が半分以上肩代わりしてくれることになったのは申し訳なく思うところだ。6万のところを2.5万でいいってどれだけ支援されてるんだろう…

 

悠大「じゃあ、こっちに来ても生活自体は前とそんなに変わらない感じなの?」

 

幸久「そうだね、ある物自体は以前と似ているから驚くことなくそのまま生活できてるよ。これがもし、マンガにあるような異世界ファンタジーだったらどうすればいいのか未だに戸惑っていると思うけどねww」

 

ワープした先が自分が元いた世界と同じような雰囲気だと思うとそれはそれでどこかわくわくするところがある。同じように高校・大学を出て社会人として働く…うーん、興味深い。

 

悠大「…その、さみしいとかはないの?」

 

幸久「前の世界の人と?…それはあるよ。自らこの世界に行きたいと明言した自分がいうのもアレだけど、一緒に遊んでいた仲間と会えなくなると思うと…ちょっとさみしいところはあるね」

 

雄二とか姫路さんとか…幼なじみである故に突然会えなくなったその衝撃が重い時だってある。

 

幸久「でも、いつまでもそんなことばかり考えたって現実は現実だし、新しい仲間もつくれたからさみしさなんてほとんどないや!それに、…またいつか会えるだろうって信じているから」

 

そうはいったものの、3年の夏がリミットだと言われているので会えることは明確になっている。…ただ、それを悠大とかほかのクラスメイトに言ってしまうとこっちの人がさみしさを抱えながら生活しなきゃならなくなるし、学園長から「絶対に言うな」と念を押されているのでもちろんそんなこと言えない。

 

悠大「ねえ、一緒にお風呂入ってくれない?なんか…こう…」

 

幸久「はいはい、分かってるって。ただ、僕にそういう趣味はないからね?」

 

悠大「ありがとー分かってるぅ!」

 

…きっと悠大は、人に言いづらい悩みを抱えているんだろう。悟と同じように…

 

 

 

 

11月24日 AM 7:15 瑛梨奈Side

 

私は朝早く学校に来る習性がある。特別何をするわけでもないのだが、こうして早く学校に来るだけで「自分」という存在が保たれている気がする。

 

校長「ですからね、その…景品が…」

 

校長室に何故私がいるのかって?…実は、

 

瑛梨奈「用意していた景品が盗まれたんですよね?そんなに高価なものだったんですか?」

 

校長「ええ、1つ15000円するスマートウォッチを1クラス最大45台分優勝した皆様に…」

 

瑛梨奈「それが大きな間違いだって言ってるんですよ!!!大体、総額2,025,000円するものなのにそんなに管理体制がずさんだったら盗まれるに決まってるじゃないですか!金銭感覚どうなっているんですか…、何かちょっとしたものでいいって笹嶋先生言ってたじゃないですか!それを教頭先生の制止を振り切るもんだからその管理くらい校長自らお願いしますって話し合いでの決定事項にしたのにこんな…」

 

私だったらボールペンとかでも十分だと思っているのに、校長先生はやたら高価なものを生徒にあげたがるなんて相当ズレているとしか思えない。ましてや、管理体制すら甘いなんて私の手に負えることではない。

 

校長「ど、どうしましょう…」

 

教頭「”どうしましょう”じゃないですよ!!一刻も早く犯人を捜して取り返さないと収拾がつかなくなるじゃないですか!あれも経費で落としているんですからそれを失えば大損害なんですよ!!!」

 

経費で200万以上使っているなんて…本当に呆れる話だ。

 

笹嶋T「この件は私たちに任せて…坂井は最終戦に向かってくれ」

 

瑛梨奈「…わかりました」

 

これは…ルーム長会議で話したほうがいいのか?…いや、話したとしても今の自分たちにはどうすることもできないと思う。それでも決勝戦と並行してこの事件を進めていかないと、優勝クラスが決まっても渡せるはずの景品が渡せなくなる!私がやるしか…

 

龍一「なるほど、大体の事情は分かった。この件、俺も協力させてくれ」

 

ありさ「瑛梨奈1人に責任負わせるわけにはいかないからな」

 

菜乃花「大丈夫、私たちを頼って!」

 

ガルト「同じ「1学年」ですカラネ!」

 

瑛梨奈「えっ、みんな…!?」

 

聞かれてしまったか。しょうがない、ここはみんなの力を借りることにしますか。

 

龍一「135台分ものスマートウォッチを盗むとしたら1人でもできるけど、深夜の犯行だから組織的あるいは外部の人間が盗んだ可能性だってある」

 

ありさ「もし外部の人間だとしたら捕まえるのは難航するよな」

 

菜乃花「私たちにできることと言えば、内部の人間を疑って捜査することくらいですかね…」

 

瑛梨奈「そうね…まあ、次の試合が迫っているからまずはそこを頑張ってほしいんだけど」

 

菜乃花「そうですね。龍一君、負けませんよ?」

 

龍一「おっと、それはこっちのセリフだ」

 

とりあえずスケジュールをずらして1~3時間目で準決勝を、4~6時間目で決勝をするよう調整はしてくれたようだ。その間の昼食は3時間目と4時間目の間で70分とるようにしてある。そうすればリミットまでの時間が稼げるし、2・3学年の先輩方に影響が出なくて済むはず。

 

 

 

 

-2時間目- 明久Side

 

なんか一部の人たちが騒がしいような気がするけど放っておこう。スタートは4時間目、5組の人が勝ち上がるという予測が立っているのが現状だ。5組の人たちは確か文系・理系科目両方できる人が半分いるって聞いたんだよね。ある意味それってヤバくない?対抗策が一部制限されるって意味だよね…そのため、自分たちの得意分野に先生を合わせるようなやり方じゃないといけないってことか。昨日は2年生VS1年生だったから使用する科目でズレがいくつかあったけど、今度は同じ1年生だから科目は一緒なはず。これは僕自身から得意な世界史の先生を連れてきたほうがよさそう…?

 

七橋T「明久君、調子のほうはどうですか?」

 

明久「あ、七橋先生。まあ、それなりといった感じですかね…」

 

…そういえば、七橋先生は社会系だから世界史も扱えるはず!

 

明久「先生、決勝戦のことでちょっとお話が…」

 

七橋T「ええ、いいですよ」

 

明久「作戦の1つとして僕の得意科目担当になってもらえませんか?」

 

七橋T「…まあ、規則にはそのようなことは明言されていませんのでいいでしょう。ただし、試合で明久君が戦闘不能になった場合は担当から外れますけどいいですね?」

 

明久「いいんですか?ありがとうございます!」

 

…よし、備えあれば憂いなしってね。

 

優子「明久君、ナイスチョイスね」

 

明久「得意な科目の先生をキープしておくのも作戦でしょ?」

 

優子「瑛梨奈は別にそんなこと言ってなかったけど…まあ、それもそうね」

 

僕は点数がほかの人より全体的に低いから、せめて自分の得意な科目を伸ばせたらそれはそれでいいと思う。それは自分のアピールポイントになるだろうし、体力的な表示でしかないけど、そこに技術が加われば自分にとって有利に働くだろう。

 

幸久「自分の戦力キープのために担任を出し抜くなんて…やっぱり兄ちゃんはやることが違うね」

 

明久「それって褒めてるの?貶してるの?」

 

幸久「さ、さあね~」

 

…なんかその言い方が腑に落ちないっていうか。

 

 

 

 

-3時間目- 瑛梨奈Side

 

瑛梨奈「さて、今回の編成なんだけど…護衛を明久君1人でやってもらいましょう」

 

明久「えっ、僕一人なの!?」

 

瑛梨奈「大丈夫、全員参加がルールだし、列を抜けた強者を世界史の力で撃退してもらうわ。もちろんその勝負には私も参加するんだけど、世界史は別に苦手な科目でもないから安心して。…で、共闘するからちょっとその打ち合わせをしたいんだけど後でいい?」

 

明久「うーん、ちょっと不安要素が多い気がするんだけどまあ、いいよ」

 

明久君が世界史で七橋先生を連れているからそれをうまく利用する他ないよね。今回の私の点数は622点でクラス内7位

 

瑛梨奈「…で、補欠を幸久君と優子さんと吉澤君にやってもらいます。その分、前の編成を少し変えます。前列は10人で中列を第1部隊6人と第2部隊13人に分けます。メンバーに関しては私がリストを作成しておいたので必ず見てください。ポイントとしては、第1部隊が全員理系というところです」

 

最初の試合は初めて「全員戦闘に参加」のルールを作ったから、参加できていない人がいてもそれはしょうがないということになったけど、決勝戦はそういうわけにいかない。参加してない人がいるだけでその人を生き残っている人数にカウントしないという制約がとられてしまう。幸い失格ということにはしないそうだが、計算式が×でつながっているので1人分失うと損害が大きい。総合科目の平均が足を引っ張ってなければ別だけど一気にそんなに上がるわけがないし…前回の勝負でも33対19で勝利したが総合科目の平均は相手のほうが上だったのでいかに全員参加させて生き残らせるのかもルーム長(代表)としての務めよね。

 

瑛梨奈「人員に関しては、赤文字で書いてある人以外は変更ありません」

 

悟「えーっと、俺は変更なしか」

 

瑛梨奈「第1戦で活躍してくれたからこのまま行こうと思って…もしかして前列のほうが良かったりする?」

 

悟「いや、このままでいいんだ。会話が予想以上に楽しくてな…」

 

瑛梨奈「あら、そうなの」

 

哀川は普段そんなに人とおしゃべりすることが多くないけど、いい友人でもできたのかしらね。自分のクラスの人の把握はできても、細かいところまでは…わからないものね。

 

 

 

-校長室- The 3rd Person Side

 

現在、景品として設定されたスマートウォッチは盗まれたままだ。

 

校長「なかなか手がかりがつかめませんね…」

 

教頭「内部でも捜査している人がいますが報告がありませんしね…」

 

校長「となるとやはり、外部の可能性が…?」

 

校長はそう言って防犯カメラをチェックするが、やはり死角となっているのだろう、犯人の足取りが掴めない。

 

教頭「うーん、防犯カメラでも映らないとなると犯人の割り出しができませんね…」

 

校長「せめて目撃者がいればいいんだが…」

 

1方向でしか映らないカメラだと範囲が狭く、映らない箇所が出てきてしまう。設置してある場所が昇降口(生徒が出入りする場所)しか設置してないため、犯人が映っていないシーンが多く存在する。そのため、どのような経路で逃走したかがわからない。

 

教頭「…こうしていても埒があきませんので、私は町の人に聞き込みをしてみます」

 

校長「わかった。私は警察に相談してみよう」

 

 

 

 

-4時間目- 瑛梨奈Side

 

キーンコーンカーンコーン

 

始まった。景品のことは気掛りではあるけど、情報が得られないのでこのままいくしかない。今回は180分与えられているので、私の拠点を屋上にして様子見するつもりだ。迎撃作戦がここで生きるかどうかだが、中列第2部隊に護衛役に徹してもらって(屋上へのドア付近)、本当の護衛は私の横で、補欠は補欠で準備に取り掛かっている。全員参加なのでこの配列だが、お互いの弱点を補強しあっているのできっと問題はないだろう。

 

明久「予想通り、5組との対決になったけどこれで行けそうなの?」

 

瑛梨奈「作戦を立てた以上、大丈夫よ。先に総攻撃を仕掛けられたら迎え撃ちすればいいし、様子見してるならバランスを取りつつ攻撃するだけよ。それに、万が一来られても世界史で撃ち落とせばいいだけだし」

 

今回、私の点数は変更ないものの、明久君が577点と大きくとってくれたから、操作でヘマしない限りは持ちこたえるだろうというのが私の算段である。

 

明久「瑛梨奈さんにちゃんと点数とってほしいと言われたから頑張ってみたんだけどどう?」

 

瑛梨奈「いい…ううん、上出来ね。400点程度でもOKだったけど500点台後半はすごくいい結果よ!」

 

明久「そっかー!自分自身で確認が取れてなかったけどまさかここまで行けたなんて…」

 

明久君は世界史だけ頑張って点数を上位に位置付けたけど、今後は徐々にできる教科を増やしていきたいと言ってたからできる限り私もサポートしていきたい。

 

明久「そういえばさ、一部の人たちの動きが慌ただしいんだけど何か知ってる?」

 

瑛梨奈「ええ、実は…」

 

説明中…

 

明久「そうなんだ…早く見つかるといいんだけどね」

 

瑛梨奈「勝負が終わったら成績発表になるんだけど、日程調整が間に合わなくて来週の月曜日なのよね…その間に持ち逃げされたものが売りにでも出されたら、学校としては大損害確定なのよ」

 

明久「そうなると、相手との心理戦な上に時間との戦いだなんて…僕たちに勝ち目はあるの?」

 

あるとも言い切れないのが現状。合計して相当高額なものを盗まれてるから一刻でも早く取り返したいところ…

 

瑛梨奈「みんなに言うと混乱どころじゃなくなるからこのことは他言無用でお願い」

 

明久「うん、分かった」

 

とりあえずは目先のことに集中しないと…

 

 

 

 

-5時間目- 悟Side

 

苦戦しているわけでもなく、点数はそこそこ保持している。が、5組だから前の戦いより少し大変ではある。

 

柳川「悟~、悠大と一緒になれて良かったじゃん♪」

 

悟「そ、そんなつもりはねぇよ!//」

 

悠大「そんなこと言ったって顔が赤いよ?」

 

悟「ちょ、おい…」

 

コイツは柳川 龍城、小4からの付き合いだ。家庭事情もこれまた複雑で、5年前に両親が育児放棄し、親戚の頼りもなかったのでこの学校が援助してくれている。下に弟と妹がいるので、どうしてもアパート暮らしで面倒を見なければならない。費用の一切は学校が持ってくれているらしい。ストレス発散の場が無いのか、家で苦しい生活をしている代わりに学校では陽キャとなって俺と一緒になっている…という状況だ。からかわれることが多いから俺はあまり好きではないが、話はよく合う。

 

柳川「なあなあ、現在29対23で勝負はほぼ互角らしいぜ」

 

悠大「うーん、互角かぁ。敵が見えるたびに戦ってまた隠れているけど、これでも互角?」

 

悟「相手の作戦が結構効いてるんだろう。どんな作戦か俺は分からないが、やることに変わりはないからこのままいくしかないな」

 

分かり次第、俺自身で作戦を立てて実行してみるか…でも、悠大の前じゃ下手なことできないんだよな。独断で行動したなんて悠大に知られたらすごく怒られそうだし、今後何されるか分かったもんじゃねぇ…。

 

丹波「なあ悟、この戦いならオレ1人でも行けそうなんだがどうか?」

 

悟「行けそうなら別にいいが、無茶はするなよ?瀕死寸前になったら応援を呼べ。いいな?」

 

丹波「ありがとー!分かってるー!」グッ

 

…単独行動は陽キャがやる仕事でも言いたいのか。

 

 

 

-放課後- 瑛梨奈Side

 

あのあと、5組の作戦を理解した私たちは短期戦に持ち込んだ。

 

龍一「くそっ、なぜわかった!」

 

瑛梨奈「悪いわね、こっちには策略に長けている人がいるのよ。この勝負、私がいただくわ」

 

龍一「代表同士の一騎打ちか…やるしかねぇな!!」

 

周りの援護も受けつつ私は代表の待つところへ向かい、代表戦と称して1VS1のタイマン?を申し込んだ。もちろん、明久君が連れてきた世界史で。

 

瑛梨奈「世界史やっといてよかった。別に得意な教科でもないんだけど点数を減らさずにここまで進めたんだもの」

 

龍一「622点だとっ!?俺なんか447点しかねぇのに…」

 

明久君の操作力は並大抵のものではなく、他の人たちを短時間で一掃できたのが大きく、私の出る幕がほとんどなかった。

 

 

 

~世界史~

 

1-3代表 坂井 瑛梨奈 398点

          VS

1-5代表 大橋 龍一     0点

 

ゲームエンドね。代表が戦死した時点で私たちの勝利が確定した。

 

龍一「つ、次は負けねぇーからな!」

 

瑛梨奈「いつでもかかってきなさい。全力でお相手するわ」

 

…1つ思ったのは、なぜ私は歴戦の王者みたいな言い方をしたのかということである。

 

校長「瑛梨奈さん、景品の件なのですが…」

 

瑛梨奈「分かってるわ。犯人は外部の人間しかいないし、時間の問題だってことも。幸い、結果発表まで猶予があるから探すチャンスくらいあるはず!」

 

龍一「俺も行かせてください。一緒に決勝戦を歩んだ仲なので、参加しない理由もないはずです」

 

校長「大橋君…よし、一緒に探しましょう。ですがその前に、必ず笹嶋先生の補習は受けてくださいね?」

 

龍一「うっ…わかりました」

 

…これに関しては本当にドンマイと言いたいところだ。結果は7対3でどのみち私たちが勝利していた。だが、このような場面を作ってくれたみんなに感謝しなきゃね。さあ、

 

 

 

 

 

 

次は犯人捜索だ。




…というわけで、これにて11月の試験召喚イベントは閉幕となります。

明久「瑛梨奈さんが最後に締めてくれたからおかげで優勝することができたよ!」

ちゃんとお礼しとけよ?

明久「うん!」

というわけで次は景品の行方を書こうと思います。話を大きくするつもりはないので、気分がダルくなければ多分1週間以内に書けると思います。

明久「このお話が長すぎて1週間以上かかってるんだけどね」

仕方ないじゃん、時間軸に幅持たせたんだから。

明久「あんまり読者を待たせないでよ!」

うーん、…善処します。というわけで次回もお楽しみに!

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