明久と優子ともう一つの世界   作:e4705

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STORY9.5 悟と悠大の密かな一日

起きなさいー! いつまで寝てるのよー!

 

 

 

「…う、うぅ」

 

俺の名は哀川悟、信越高校の1年3組の生徒だ。みんなからは『特殊なバカ』という肩書きが与えられている。…別に悪くないと思っているぜ?ただ、ちょっと火遊びをしただけなんだ。今日も自分で起きることが…できなかったので、親にたたき起こされている日々。ああ、朝が弱い自分を殴りたいぜ。

 

これは、吉井兄弟と木下さんがこの世界に来る前のお話である。

 

 

 

「今日は、悠大君と約束があるって言ったでしょ?今、何時だと思っているのよ」

 

はぇ?そんな約束あt……あーーーーー!!!例の約束今日じゃん!!ってか今何時なんだよ!!

 

「約束は10時からでしょ?もう9時過ぎているのよ。さっさと朝ごはん食べて待ち合わせ場所に行ってきなさい、待たせるんじゃないよ」

 

「わ、わかってるって!」

 

自分の家からアイツの家までは20分…、まだ間に合う!

 

 

 

 

悠大「おそいなぁー、いつもなら10分は余裕もって来るはずなのに…」

 

「悪い悪い!遅くなっちまったぜ!」

 

悠大「いや、時間に間に合ってくれればそれでいいよ。ただ、いつもと違ったというかぁ…」

 

ああ、本当に朝が弱い自分を殴りたくなってきた。悠大はいつも約束を厳守しているから破ったらどんな罰ゲームが俺の身に降り注ぐのかと思うと…恐ろしいったらありゃしないぜ。ブルブル

 

悠大「…いつもと違うからやっぱり罰ゲームしてもいい?」

 

「…な、」

 

 

 

何でなんだあああああ!!!!!///

 

 

 

 

悠大「でね、さっそく―――をしたいんだけど、レポート書きたいからノートとペン持ってきてくれたよね?」

 

「一応持ってきたが、それはお前のやつでも良くなかったか?」

 

悠大「うん、そう…なんだけど」

 

…なんか腑に落ちない言い方するなぁ、何か問題でもあるのだろうか。

 

「わかったわかった、これでいいんだろ?」

 

悠大「わあ、しっかりと装飾までしてくれたんだね!」

 

「だって、お前がこれをやってくれってうるさいから」

 

悠大「こういうちょっとした雰囲気作りでも大事なものは大事なんだよ!やってくれただけでもありがたいと思っているって!」

 

そういうことにするか。実は装飾をするときちょっと恥ずかしい思いをしてしまった。例えば、ここで言いにくいような…

 

悠大「で、今日の道具は―――と―――と―――だよ」

 

ヒョイッ

 

「それはいつ見ても俺に恐怖感しか与えないんだが?」

 

うーん…、なんというか、でかい何かとコードと単なる機械だな。

 

悠大「もちろん悟くんは実験台として、でんぐり返しの状態になることを覚悟してね」

 

「…本当にやるのか」

 

悠大「だって、これを1人でやったって面白くもないでしょ?さあ、始めるよ」

 

 

 

-準備中-

 

悠大「入れるよー」

 

「ああ…」

 

ウィーン…

 

何だろう…この拡張されていく気分…、悠大にやられているというのにふわふわとした気分が…これが人体実験なのかぁ。

 

悠大「痛くない?」

 

「慣れればなかなかいいもんだな。逆に気分がいいよ」

 

悠大「それは自分が開発したせい?」

 

「うぅ…、改めて言われると俺って戻ることのできない茨の道を進んでいるような…」

 

どうしてこうなったんだろうか、―――に罪悪感を覚えなくなってきてしまった。悠大という悪友に追いかけられて早10年…、もうこんなところまできてしまt…あ、ヤバいヤバいヤバい。

 

「そろそろ…外して…」

 

悠大「うん、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠大「おかげでいいレポートが書けたよ!ありがとう」

 

「…次は俺を犠牲にせず、他の人にでも頼めないか?」

 

悠大「何言ってるのさあ!こんなの頼めるの…悟くんくらいしかいないんだよ…?」

 

「はあ…しょうがないなぁ、次回も付き合ってやるか」

 

悠大「本当!?じゃあ、次は―――と―――をしてもらいたいんだけど…」

 

これ、本当に悠大にとっては有意義なことなんだろうか。もっと他に、人生に生かせることたくさんあるというのに…困ったやつだ。でも、いくら悪友と俺が言った上でこいつとの関係が切れるなんて考えられない。10年も共に歩んできたから今更あっさり切れたとしたらそれは…

 

 

 

 

 

『親友』と呼べないだろう。…やべっ、午後から笹嶋先生の特別補習があった。

 

 

 

 

笹嶋T「お前なぁ…、ちったぁ授業の内容くらい覚えられないのか。何も答えられないなんて前代未聞だし、本来なら入学の時点で門前払いを食らっていてもおかしくないんだぞ?」

 

「…それだけは本当に申し訳ありません。それが今の俺の実力なんです」

 

今、信越高校にいる。学力層の幅が広くても平均がちょっと高めなのがこの学校の特徴。そんな高嶺の花でも俺は入学することができた。なぜなのかというと、「学力最下位枠」という枠で俺はこの学校に入学したから。元々、頭の回転は錆びたネジのように重く、内容が頭に入ってこないので全然授業についていけない。制約上なのだろうjか、この枠で入った人は『観察処分者』の称号が与えられ、普通の生活にプラスして数々の雑用や週間的な補習のプログラムが組み込まれてしまう。俺からすればどうでもいいプログラム。それより、地下にある巨大な装置が気になって気になって仕方がない。

 

笹嶋T「おい、聞いているのか?補習を倍にしてやろうか?」

 

「ひゃいっ!?あ、すみません聞いていませんでした。っていうか、補習倍はさすがの俺でも耐えられずに死んでしまいますのでやめてください」

 

笹嶋T「…ったく、言葉だけいっちょ前になりやがって。そんなんだからいつまでもクラスメイトに笑い物にされるんだぞ?」

 

「返す言葉もございません…」

 

笹嶋T「…でな、観察処分者だから雑用を任されるのは当然のことだが、その度その度ビクビクされながら待ってもらっても困るから1か月間の雑用スケジュールを作っておいた。ほら、こうすれば次に何の雑用があるのか分かるし、そんなに怯えなくて済むだろ?」

 

「ありがとうございます、先生のおっしゃる通りです」

 

…こうでも言っとかないとあの人は量で圧をかけてくるから本当に怖い。

 

 

 

2時間後…

 

笹嶋T「よし、今日はここで終わりだな。今日説明した部分は次のテストで出すからしっかり復習しろよ?毎回毎回言っているが、せっかくの人生なんだから棒に振るようなことはするなよ?自分という個性あふれる存在が失われてしまうからな」

 

「もう34回目ですよ、それ」

 

笹嶋T「…もう2時間追加してあげてもよいのだが」

 

「勘弁してください…マジで」ブルブル

 

本当に下手にもの言えねぇんだよなぁ…

 

 

 

 

母「今日も楽しく活動できた?」

 

「ああ、もちろん」

 

母「そうねぇ、いつも吉澤さん家にはお世話になってもらっているから今度は菓子折りの一つでも持って行こうかしらね」

 

「わざわざすまない」

 

母「いいのよ、あの家の悠大君には相当お世話になってもらっているし、家族とも仲良くさせていただいているからねぇ。あなた、自分で持って行こうとしてもどこかに置き忘れたりする癖があるから…」

 

「…ごもっともです」

 

…実を言うと今、ここで話している人は本当の母ではない。…俺の家族は12年前のイギリステロの犠牲者になってしまった。父と母と姉貴…、全員そうだ。俺は一人孤独に帰国の途に着いた。そんな崖っぷちな俺を救ってくれたのが今の母である。命の恩人だ、何度か自殺に追い込まれても母は全力で止めてくれた。だから、心の底から感謝している。そんな母の好意を無下にするようなことは俺の自尊心が許さない。

悠大にも助けられた。あいつはあいつで性格にしょっちゅう悩まされていたらしいが、俺の放った一言によって決心がついたようだ。もちろん、憔悴しきっている俺の心もアイツが癒してくれた。助け助けられて育まれた友情は決して壊れることのない頑丈な糸で結ばれている。

俺は今、とても幸せだ。ここに居られること、そして大事な人がそばにいてくれること、それこそが何よりだ。新たな課題に直面しても俺はできることを精一杯やるだけだ。さあ、

 

 

 

 

 

俺の新たなる1ページを刻んでやろうではないか。




以上、悟の1日(過去話)でした。最後にちょろっとシリアスな場面も入りましたが、悟のこれからを私は全力で書き上げていこうと思います。読んでくれてありがとうございました!

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