魔女幻想 ~ fantastic Magus   作:神風雲

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 下書きみたいなもんです。多分色々調整します


魔女大戦争 ~ The perfect world
Ⅰ「夜だから眠れない」


 

 

 

 ~アリス邸~

 

 

 

 「今日はありがとう、いい話が聞けたわ」

 

 「自分で言ったことだがなんか恥ずかしくなってきたな」

 

 「魔理沙の過去、興味深い物があるわね。本にでもしようかしら?」

 

 「やめてくれよ!」

 

 「ふふ、冗談よ」

 

 「アリスが言うと冗談に聞こえないんだよ・・・」

 

 過去を振り返っていれば既に時刻は夜更け。三日月が照らす草木は夜風に吹かれ、同時に魔理沙の帽子を捲ろうとしてくる。帽子を押さえながら箒に跨り、幻想の摩天楼を駆けていく。

 

 「すっかり遅くなっちまったな。だがまあ、魔法使いの真骨頂は夜からだ」

 

 本業は魔法使い、しかし一部からは便利屋、盗人、害虫と扱いは散々。いづれにせよ夜を生業とするのは性分のようだった。

 

 「今夜は何すっかなー」

 

 その時だった。突然体を揺さぶるような強烈なめまいに襲われた。耳鳴りと共に視界がぼやけ、箒を掴む手に力が入りにくくなっていった。

 

 「なんだ・・・この・・・気持ち悪い・・・」

 

 空間が歪むような感覚に頭がねじれそうだった。背筋を舐め回されるような感覚、音に近い感触だ。幻聴や幻覚が目の前をチカチカと出ては消え、それがどんなイメージなのかも理解する前に魔理沙の精神は肉体との通信を遮断した。気力を失い無力になった魔理沙の体が箒と共に地面へ向かって落ちていく。

 

 「ダメだ・・・ここじゃ・・・」

 

 辛うじて動く口を使い、微力な浮遊魔法を唱えた。魔理沙の脳は呪文詠唱をするためにだけ動き、詠唱が終わった瞬間を持って魔理沙の意識は完全に途絶えた。

 

 

 

 

 

 「魔理沙!!」

 

 一方、アリスは自宅から魔理沙の姿を見送っていた。すると家を出た直後、森の中へ落下していったように見えた。直前の動きからしてただ事ではないと判断し、急いで落下地点へ向かっていた。

 

 「何したら森の中に落ちるのよ全く!」

 

 森の草木を掻き分けて進んだ先にようやく魔理沙の姿を発見した。横たわる魔理沙に傷は無く、地上に着いてから倒れたという事が窺えた。

 

 「傷は無いみたいだけど、鳥にでもぶつかったかしら?」

 

 魔理沙に触れた途端、アリスに大量のイメージが流れ込んできた。靄がかった膨大な情報量にアリスは困惑するが、妖怪に部類されるアリスのスペックではギリギリ処理できるものだった。

 

 「これは・・・マナクレーターね」

 

 マナクレーター。巨大な魔術や魔法を使う時には本来グリモア等の魔術形式が記された書物を使うのだが、技術を極めた者になると書物を必要としなくても魔術を発動できる。その際に使われる魔術式などは魔法陣等の発動物に保存されるが、技術が未発達であった場合、魔法陣が消えても陣に保存された術式が空間に残ってしまう。

 何処のヘタクソがやらかしたのかは知らないが、おかげで人一人、いや普通の魔法使い一人が死にかけている。やはり普通の人間には情報力が多くて処理しきれなかったのだろう。

 

 「それにしても尋常じゃない情報量ね。素人がするような失敗だけど素人ができるような魔術じゃないわ」

 

 受け入れた術式の履歴を辿る。魔術式は基本古代文字や数字で構成されているが、読めなくともパターンで覚えていれば良いため意外と簡単なのだ。

 アリスは術式を読み解きながら疑問も解こうとするが、術式には見たことはあるが知らない式や、全く用途の無い術式まで入っているためどんな目的で使われたのかが分からなかった。

 

 「あいつなら分かるんじゃないか」

 

 膝の上でむくりと起き上がった魔理沙にアリスは跳ね上がった。

 

 「急に起き上がらないでよ!」

 

 「いや気が付いたらそこに・・・ってまあいいや」

 

 箒を持って立ち上がる魔理沙。だがやはりまだ回復しきれていないのかよろついてしまっていた。

 

 「ああ!もう!行先教えてくれたら私が連れて行くから」

 

 「大丈夫か?」

 

 「一応死にかけなんだから気なんて使わなくていいのよ」

 

 「いやそうじゃなくて、箒に乗れるのかっていう・・・」

 

 「つ、つべこべ言わず貸しなさい!はい!乗って!!」

 

 世話が焼けるとイライラしつつ、箒に跨り低空飛行で空を行く。魔理沙より速力も安定感も劣っている操縦だが、大まかな動きは魔理沙の動きを見て把握しているつもりだった。これが意外と難しい。

 

 「それで、あいつって誰よ」

 

 「ほら、幻想郷で魔法使いと言えばそこそこ強いやついるだろ?」

 

 「あいつ(パチュリー)のことね」

 

 「そういうことだ。行くぞ」

 

 普通の人間ならば膨大な情報量の後処理で数時間は寝たきりなのだが、長年の行いの末なのか数分で立ち直る程魔理沙は成長していた。

 アリスは空路を紅の館聳える湖に向けて夜の空を裂いて行った。

 

 

 

 

  ~紅魔館~

 

 

 夜の暗さが似合う館へ降り立った魔理沙達。

 霧がかった湖に妖精は沸いていなかった。妖精にも時間という概念があるのだろう。

 そんな静かな館に大声で且つ大胆に魔理沙は扉を蹴飛ばして堂々と侵入した。

 

 「入るぞーたのもー」

 

 「ちょっと夜分なんだから静かにしなさいよ」

 

 「大丈夫だって、吸血鬼は夜行性らしいから」

 

 レッドカーペットに荒い足跡を付けながら館を進み、地下へと通じる階段を下って行った。カビ臭く、常にジメジメしている光の僅かな図書館に踏み入り、監視用の本をぶん殴って本の持ち主と顔を合わせた。

 

 「今夜はやけに荒立たしいわね」

 

 「おう引きこもり、折り入って話があるんだ」

 

 パチュリー・ノーレッジ。通称不動魔法図書館。

 幻想郷でも指折りに入る魔法使いである彼女は、その圧倒的な知識量と研究によって賢者にも届く程の力を持っていた。生粋の魔法を持つ彼女ならば、魔術の断片を見出すことができるのではないかと頼み込んだ。

 

 「謎の魔術跡ねぇ・・・術式を見てみないと何とも言えないわ」

 

 「アリス分かるか?」

 

 「ええ、さっき見た時のを覚えてるわ。たしかこんな・・・」

 

 机上に広げた洋紙にペンを滑らせるアリス。揺れる羽と記される文字はインクの中に細かく刷り込まれた魔法式が成り立たせる魔法線。癒着したインクと洋紙の間には魔力が伝い、少しの輝きを帯びていた。

 成立した文字は人が読めるものではない。どちらかと言えば絵に似ている。二重に書かれた円の間に蚯蚓が這ったような線があり、描かれた線は全て一筆で書かれた一線であった。

 

 「よく出来た模型ね」

 

 「あなたに褒められるとそれなりに誇って良い気がするわ」

 

 「あくまでも模型の出来を褒めたの。他が出来ないようじゃ誇れるような事はなくてよ人形さん」

 

 「あーっそう!」

 

 アリスが書いたのは術式模写。言わば設計図であり、実際に魔術や魔法が発動することは無い。

 魔理沙が場を静めながら話を進行させる。

 

 「それで七曜の魔法使いさん、どうなんだ?」

 

 「そうね・・・パッと見て思ったことは、どこもかしこも古臭い式ばかり使ってることかしら」

 

 「古臭い?」

 

 「相当古い物よ。今の魔法や魔術と言った類の原点レベルでね」

 

 「そんなに古い物なの?なら何故あんな所に・・・」

 

 古い、という言葉の意味はどの技術でも共通の意味がある。それは非効率的だということ。何代にも渡って研究され続け、今に渡るまでその技術は研ぎ澄まされ、効率的に伝えられてきた。

 しかし魔理沙が躓いたクレーターに本来施されていた陣の式はとてつもなく古い式を幾つにも繋ぎ合わせ、膨大な量で現在の魔術の領域を再現した代物だった。

 

 「ただの馬鹿か天才の真似事か。いづれにしても放って置ける話題ではなさそうね」

 

 「ええ、どこかの巫女に感づかれると一番に疑われるのは私達ですもの」

 

 魔法使いの事なんて考える気も無いどこかの紅白の巫女にこの案件が耳に入れば利益を得ようと寝首を掻かれる。見た目は優しい巫女でも中身は檻すら壊す猛獣だという事を妖怪たちは皆知っている。

 

 「まああの霊夢のことだ、感づいても変に悪徳出して失敗するのがオチと思うが」

 

 「油断はならないわね。まだヒトのカテゴリーに入っているからいいものの」

 

 「いやあれも十分人害よねぇ・・・」

 

 交互に愚痴った後、三人で様々な考察を行った。

 術式は当時のランクでは最高位魔術を軽く超える大魔術だという事。具体的な例で言うと世界の半分をひっくり返したり、空を落とすことができる程度に大魔術だ。

 それを行うには長期間に渡る呪文詠唱と高度な技術、そして集中力を要する。世界征服でも本気で行わない限りしたくない魔術だ。何せ食べもせず飲みもせず眠りもしないその様は人間を辞めている。と言えどそれくらいならばパチュリーにも可能なのだが。

 複雑に絡み合った糸を紐解くように術式を解読していく、最初は三人がかりで解読していたが、途中で魔理沙が飽き始めたため一時中断。

 

 「やっぱり魔理沙が先に落ちたわね」

 

 「うっせ!もうやだ目が疲れた」

 

 「仕方ないわね、あなた達は先に原物を調べてきなさい」

 

 「でも見えないのにどうやって探すんだ?」

 

 そう言うとパチュリーが待ってましたとばかりに引き出しから二つの宝石を取り出した。紅色の尖ったクリスタルだった。

 

 「これはマナホーンと言う生遺物。微弱な魔力にだけ反応する石よ」

 

 「ホーンってことは角なのか?」

 

 「ええそうよ。魔獣の角をベースに調合したから形が似てるの。魔獣の角には人や妖怪から出る微弱な魔力を感知するレーダー的機能を備えているの」

 

 魔獣、幻想郷では妖怪の部類に入る獣のことだ。角と言うが牙でも大丈夫らしい。

 

 「なるほど、これで探せってことだな」

 

 「大体の場所は分かってるんでしょ?なら迂闊に触れないように調べなさい」

 

 「了解だぜ!」

 

 張り切る魔理沙だがアリスが時刻を気にかけて止めに入る。

 

 「でももう夜よ?一度出直してきた方がいいんじゃない?魔理沙だって疲れてるでしょうし」

 

 「何言ってるんだアリス」

 

 パチュリーと魔理沙は立ち上がってアリスに指さして大きく告げた。

 

 「夜だからやるんだぜ」

 「夜だからこそやるのよ」

 

 キョトンとするアリスは現状を読み込めた後、深いため息とともに二人の意見を承諾した。二人は魔法と言う概念に取り付かれた存在、故に昼夜等関係ない。

 夜だから眠れないのだ

 

 

 

 




なんか自分が書く二次創作って色々付け足しすぎて蛇足感するのでいつか設定まとめとか書けたらいいんですけど
投稿というかほとんどオンラインストレージ感覚なので

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