一話「恋色マジック」
とある村外れの森
「ねえ魔理沙」
「何だアリス」
白いエプロンをかける金髪の少女と、同じ金髪のグリモワールを持つ少女が二人並んで森を歩いていた。陰湿で圧迫感のある森林を軽い足取りで進んでいた。
「魔理沙って魔法どこで覚えたの?」
「なんだよ今更だな」
「気になったのよ。魔道書を普通の人が読んだところで分かるはず無いもの」
「それは、私が人間の中でも一段と――」
「はいはいそう言うのいいから。それで本当は?」
冗談すら言わせない勢いで迫る少女。その眼差しに白黒少女は両手を挙げた。
「どうせ私の家まではまだあるんだから。暇つぶしに話してよ」
「わかったよ」
話に聞き入るように〝アリス”と呼ばれる少女は耳を傾けた。
片手に箒を持つ少女〝魔理沙”は空を仰ぐように両腕を伸ばし、指で作るフレームの中に太陽を入れた。
「あれは8歳のころだ」
―――
「私の名前は霧雨魔理沙!魔法使いさ!」
左手に箒、右手におもちゃの宝箱を持ち、黒い布をマント代わりにしてポーズを決める。わざわざ持ってきた「石浦みかん」と書かれた箱の上に乗って小さな体が吠える。
「やーい魔女が出たぞ―」
「魔女じゃない!魔法使いだー!!」
近所の同年代の子供が魔理沙をいじめてくる。だが負けじと魔理沙も箒を股に挟んで追いかける。
その様子を遠い目線で見守る少年と母親らしき女性。
「魔理沙ー!」
「あ!」
その存在に気付いた魔理沙がマントをなびかせながら走ってくる。
そして母親に抱きつく・・・・かと思ったが、狙いは隣の少年へ。
「こーりん!!」
「グヘェ!?」
股に挟んでいた箒が落ちずに少年の股間に直撃した。
少年はもがきながら魔理沙を撫でて倒れた。
「あらら・・・」
「どうしたの?」
「な、なんでも・・・なっ・・・い」
少年の意識が途切れた。
彼の名前は「
霧雨道具店に住む後継ぎの一人。現在は修行中で主に魔理沙の御守をしている。そのおかげか魔理沙に好かれて止まない。
そして魔理沙自身も霧雨道具店の後継ぎに入るのだが、まだ幼いため親族は霖之助と結婚させようと言う考えがある。結論的には許嫁になるのだろう。
実は霖之助は人間とは少し違うのだ。人妖と呼ばれる人間と妖怪のハーフで、近年このような異種族のハーフが増えていると言う。
だが彼には大きな夢と悩みがあった。
「御母さん、少しお話しが」
そしてついにそのことを明かした。
「そうね。あなたももうそんな年だし。一人立ちさせてもいいかもしれないわね」
「はい。申し訳ありませんが、ここでは少し力不足と思いまして」
一人前になるための店を持つこと。だが表は単に営業範囲を拡大することだ。
霖之助は物の取り扱いに長けていたため、人一倍商品の説明や扱いが上手かった。
「いいわ。あなたの好きにしなさい。ただし」
「ただし?」
「魔理沙を連れて行ってちょうだい」
「・・・・・」
言葉を失った。半分あの子から逃げるつもりでいたのに、またあの子の世話をしないといけないとは。
結局魔理沙を連れていく羽目に。
「はぁ・・・先が思いやられるなぁ・・・」
目指すは村や町と言った人が多く住む場所だ。とはいえ幻想郷ではその様な人口密集地帯自体少ない。霖之助が居た場所は人口200人程度の商人が集まる場所だった。村の商人たちは本来その場所から動かず、一つの拠点を軸にして動くのだが、近年は妖怪の活発化に伴い、霖之助のように村を出る者も少なくは無かった。
そして魔理沙の母も子孫繁栄のため、村から出したという事だ。魔理沙の父は数年前に妖怪退治に出かけ、既に亡くなっていた。単純に考えると人の多い所へ逃がしたかったという事だろうか。
地図を見ながら霖之助は考えた。魔理沙が安心して暮らせる場所は一つしかないと。
「博麗の巫女が管理する人里へ行こうか、魔理沙」
少女は手を繋いでいた少年を見上げ、体を震わせながら大きく頷いた。
「うん!」
推定1500人が集うその人里は、商売と娯楽と美味い物が交差する幻想郷の言わずと知れた中心部であった。
商売をするには悪くない。そう思い、霖之助と小さな魔法使いは着実な歩みを幻想の大地へ刻んで行った。
初投稿です。これからも色々至らない点があると思いますが温かい目で見守ってやってください。なるべく原作重視にしてますが一部違う可能性があります。