‐文月学園校門前‐
「おはよう、鈴谷、熊野」
「おはようございます、鉄人」
「おはようございます、西村先生」
「鈴谷、西村先生と呼べと何度も言ってるだろ」
「へいへーい、分かってますって」
「先生に失礼ですわ、鈴谷」
彼の名は西村宗一。文月学園高等部で補習を担当している。趣味はトライアスロン、レスリングの心得もあり、補習内容やその風貌も相まって着いた渾名は「鉄人」。
「ほれ、お前たちのクラスだ」
「まあ見なくても分かるけどね」
そう言って先生が手渡したのは一通の封筒。
「鈴谷、お前のとった行動は誇れる物だが、もう少し言葉は選べよ?」
「りょーかい」
「Aクラス……当然ですわ」
「確認したら遅刻しない内にクラスに向かえ」
「「はーい」」
〜移動中〜
「ねえ熊野……」
「?」
「ゴメンね」
「何がですの?クラスの事ならもう許しましたわ」
「うん、でも熊野が鈴谷と同じクラスになるの凄く楽しみにしてたの知ってるから………」
「もし私があの時起きていたら同じ事したましたわ」
「え?」
「私も吉井君には大変感謝しております。もし私があそこで寝ていなければ鈴谷と同じ事をしておりましたわ」
「熊野…そっか」
「ふふ、では私はここなので。吉井君にはよろしく伝えておいてくださいまし。」
「わかった。また後でね」
(熊野…やっぱり私達って姉妹なんだね)
‐Fクラス前‐
「……………………」
「廃屋かな?確か南方の無人島で一晩明かした小屋がこんな感じだったはず」
「ま、曲がりなりにも学校だから中は綺麗でしょ……おはよー」ガラガラ
「………………」
(薄汚い畳。脚の折れたちゃぶ台。ヒビに入った窓。これは酷い)
「ん?鈴谷か。おはようさん」
「おはよ、坂本」
話しかけてきたのは坂本雄二。明久達とつるんでいるバカの代表格である。
「話は明久から聞いてる。俺はこのクラスの代表だ。よろしく」
「坂本が代表なんだね。よろしくー」
文月学園では各クラスの振り分け試験の成績最優秀者が代表となるのだ。
「席は特に決まってないから好きに座ってくれ」
「ふむふむ、どこにしようかな…………って榛名!?」
「お久しぶりです、鈴谷ちゃん」
「どして?何で?why?」
「落ち着いて鈴谷ちゃん。実は振り分け試験の日に自転車とぶつかっちゃって一昨日まで入院してたの」
「何で連絡してくれなかったの?お見舞い行ったのに」
「えへへ、大した怪我じゃなかったので……やはり艤装展開してないと普通の体なんですね」
「大した事無くて良かったけど、無理しないでね」
「うん、ありがとう。鈴谷ちゃん」
「あともう高校生なんだからいい加減ちゃん付けはやめて欲しいかな」
「えー可愛いのに。じゃあ鈴谷さんでいい?」
「うん、あ、先生来たみたいだね」
「座りましょうか」
こうして彼女達のFクラスでの生活が始まった。
ようやく榛名出せた