第一問
‐Side 熊野 ‐
「では開始してください」
試験監督官の声がする。
(さて始まった。ここ文月学園では振り分け試験によって新2年生のクラスが決まる)
(今年一年のクラスがこの試験にかかっているのである)
(え?いつもの口調じゃない?それは考え事する時はいちいち丁寧にしてられないもの)
そんな事を考えながら彼女はスラスラとシャープペンシルを滑らせる。
彼女の名は
(あら、意外と簡単ね)
(この調子なら結構時間余るかも)
〜数十分経過〜
(これならAクラスは確実かしら)
彼女は一旦ペンを置き深呼吸をする
(ふぅ、終わった)
(終了まであと30分…25分は眠れるかな)
そうして彼女はこれから起こる事もそれに最愛の姉である鈴谷が関わる事になる事も知らないで眠りへと落ちていった。
25分が経過した頃彼女は目を覚ます。
(あと5分…見直しには十分ね)
広い教室に聞こえるのは絶え間なく解答用紙の上を滑るシャーペンの音だけ。彼女はこの無音とも言える静寂が嫌いだ。
(懐かしいな、あの頃の喧騒)
数年前のまだ艦娘だった頃を思い出す。
(毎日訓練して出撃して敵を倒して帰る)
(日が変わればまた訓練して出撃して敵を倒してまた帰る)
(あの頃聞こえてた音…毎日耳にしていた音)
(砲撃音、銃声、エンジン音…………そして
何もかもが懐かしい
彼女が思考の海へとどっぷりと浸かっていると試験監督官の声が聞こえた
「試験は終了です。ペンを置いて答案を回収してください」
試験監督官の声に彼女はシャーペンを置き見直しを終える。
(これは自信あり)
(鈴谷はどうだったのだろう)
姉の事を心配していると後ろから答案が渡ってきたので自分の物を重ねて前の人に渡す。
(今日はこれで学校も終わりだから街にでも行って買い物でもしようかな)
これからの予定を考えながら荷物をまとめて姉の鈴谷を探すが見当たらない。
(おかしい、同じ教室で受けたはず)
(先に帰ったのかな?下駄履で靴を確認すればいいか)
筆箱と問題冊子しか入っていないほとんどカラのかばんを持ち教室を後にした。
熊野可愛い