ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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ここから少しずつ原作乖離。

原作で【アストレア・ファミリア】メンバーが描かれる以前に書いたため、原作と矛盾する死者が描かれています。


歓迎会

 ベートたちが、ポイズン・ウェルミスの薬を手に入れて戻り、毒にやられた者も治療された。

【ロキ・ファミリア】が深層で稼いだ膨大な魔石やドロップアイテムが、レベル2以上がふたりがかりで担ぐもっこで運ばれ続ける。

 多くの冒険者は、そのまま護衛されて地上まで歩くと思っているが、ベルは違うと知っている。17階層の人目を避けたルームで瓜生が装甲車を出し、それで二階層のルームまで走るのだ。六輪やキャタピラで縦穴にも落ちず、悪路や急坂、岩場、階段を登ることすらものともせずに。車内から遠隔操作されるカメラつき砲塔の重機関銃で、あらゆるモンスターを倒して。

 安全に、高速で。

 

 フィンや瓜生など、何人かの幹部や多くのレベル2は地上に去った。

 が、朝昼晩と、ごちそうは作られ続けている。材料はたっぷりあるし、魔石冷蔵庫もある。ベルやヘスティアも満足しているし、ビーツもしっかり満腹している。

 瓜生は地上に戻ったが、材料・燃料などはたっぷり置いて行ってある。

 朝は天ぷらそば。昼はラーメン・チャーハン・ギョーザ・回鍋肉・東坡肉。夜は真空調理された牛肉・豚肉・羊肉のブロックから好きなだけ、業務用圧力鍋で作られたチリコンカンに、ホームベーカリー焼きたてパンとパスタのどちらでも……と至れり尽くせり。

 リヴィラからも金を払って食いに来る冒険者がけっこういる。

 

 アイズが、なんとか回復したベルにリヴィラの街を案内しよう、というのにヘスティアもついていった。

「二人きりにさせてたまるか」

 と、いうわけだ。

 以前の、湖に守られた崖からは少し離れた、丘に囲まれた新しい街。

 それは、オラリオでも見られない眺めだった。地上でも。この世界では知られない眺め。

 多数の寝台車。何両かはつながり、いくつかは独立している。

 それに多数のコンテナハウスやトレーラーハウス。倉庫にも店舗にもなるコンテナ。

 野外入浴設備に、行列ができている。

 瓜生が出した設備を中心に、とても快適な寝台と屋根が新しい街ができていた。

 電力は通じていないが、魔石を電力に変換する設備が作られており、明るい。

 また料理設備も利用され、ダンジョンで手に入る食材を中心にさまざまな料理がふるまわれている。

 千人以上が問題なく寝泊まりできる、大規模な街が完成している。

 街の周辺は、何十本も束ねられた鋼のレールと、コンテナが頑丈な壁を作っている。

「……どれだけが、ウリューくんの……」

「ぜんぶ」

 アイズはただ一言だけ答えた。

「お金をとったらいくらになるんでしょうね」

「知らない」

 アイズに聞くべきことではない。

 レフィーヤがいたらまた大騒ぎになっていただろうが、彼女も59階層アタックのため装甲車を学んだので、運転ではなくメンテナンス作業に加わっていた。

 

 

 そうしている間にも、動いている者はいた。

 ラウル・ノールドがこの街の顔役であるボールスを訪れていた。

「ちょっと大きな声じゃ言えないっすが、困ってるっす。

 ベル・クラネル、って知ってますか?【ヘスティア・ファミリア】で、ド素人からオラリオに来て一月ちょいでランクアップしたルーキーなんすが。

 ランクアップして十日もせずにここまできて、うちに逗留してるっす。とんでもないゲスト……神様(ごく小声)までふたりも連れて」

「……ああ、一番やばいうわさは、『あれ』の眷属仲間だってのだ」

「話が早くてありがたいっす。で、それが、まあ『インチキルーキー』とか呼ばれて、嫉妬してるのも多い……というわけで、ちょっとガス抜きを……ああ、『あれ』の許可は取ってるっす。死なない、修行になるならいい、と」

 

 またその陰で、神ヘルメスがベルを呼び出していた。

 

【ロキ・ファミリア】が多数持っているトレーラーハウスには風呂がついているが、やはり18階層名物の、水晶に磨かれた清冽な水で水浴びをしたい、という女性陣が湧き水まで出かけた。

 リヴェリアはトレーラーハウスの風呂で満足しているようだ。高級品のボディソープやシャンプーもあるし、エッセンシャルオイルもある。何より、エルフの王族である彼女が水浴びをすると、よそのファミリアも含めたエルフたちが厳重な警備を始めてしまう。

 

 ヘルメスの用事とは、のぞきだった。それが男の浪漫である、と……ベルは断ったが、それが余計に事故につながり……

 アイズ、アスフィ、リリ、ヘスティアらの美しい全裸をしっかりと目に焼きつけてしまった。

 その気配を見た護衛団の強襲、ベルは必死で逃げた。

 逃げ回った挙句、リュー・リオンの水浴びを直撃してしまったのだから、

(世話はない……)

 というものだ。

 

 リューはベルを許し、なぜかビーツも呼ぶように言った。

 戻ったベルはまず女性陣に土下座し、ヘルメスは容赦ない体罰を受けていた。

 それからベルとビーツはリューに伴われ、森の奥に行った。

 そこは、リューの仲間たちの墓だった。遺体もない、いくつかの武器が地に立っているだけの。

「……ビーツ。あなたのトンファーの、持ち主です」

 幅広い薙刀……青竜偃月刀が、地に刺さっていた。

「顔の半分が、何があったのか焼けていた狼人の女。その理由は最後まで聞けませんでした。面倒くさがりでした。でも優しくて、いつでも必要とするところにいました。

 全員敏捷増強魔法と、足を封じる魔法を使いました。

 近接格闘も得意でしたが、重すぎるからとよくトンファーは宿や根拠地に残していきました。自分でとんでもない借金をして注文したのに。だからここではなく、あなたの腰にあるのです。

 ギャンブルが好きで、何回か伝説的な大勝ちもしましたが、たいていは負けていました。すぐ金を貸してくれと言ってくる人でした。

 ダンスがとてもうまく、それだけでも稼げるほどでしたが、あまり好きではありませんでした。

 男にはあまり騙されない人でしたが、変な男が寄ってくる人でした」

 いつまでも、言葉は尽きなかった。リューの頬に、静かに涙が流れ続けていた。

 ほかにも何本も並ぶ武器。その一つ一つに、そのような追憶があるのだろう。

 今もエルフ美女の心は傷を開き、鮮血をほとばしらせている。

 リューはビーツに、トンファーにふさわしい冒険者になれとか、それもこの墓に置けとか、余計なことは言わなかった。

 ただ、トンファーの持ち主のことを語り続けた。

「ビーツ。あなたが今もそのトンファーを持っていることが、とてもうれしいのです。しかし、ここに来るまでの厳しい道では、重量物は捨てたほうがよかったかもしれません。命より大切なものなどない、生きてさえいればいいと、覚えておいてください。

 でもあのとき……彼女がこのトンファーを持って行っていれば、生きていたかもしれない……どうしても、そう思えてならないのです」

 言い終えたリューは、ただ黙って遺体なき墓を見下ろしていた。

「もしよければ、本当にたまにでも……ここに来ていただけますか?」

 そう、リューはビーツに言った。少女は強くうなずく。

「ぼ、ぼくも来ます。来ても、いいですか?」

「私の過去を知っている人が、悪意を持ってあなたに言うかもしれない。だからここで言っておきます……」

 リューは過去の過ちも語った。復讐に狂い、闇派閥の関係者……無実だったかもしれない一般人すら襲い殺していったと。ギルドのブラックリストに載る存在でもあると。

「リューさん!……ウリュウさんも、よくそんな雰囲気になります。昔、ものすごくひどいことをしてしまった、というような。

 一度、ゆっくり話して」

「それは愚行です」

 リューは皆まで言わせず切り捨てた。

「ウリュウさんとは、それほどはお目にかかっていませんが、あなたのお考えはわかります。そして……私のような人が彼のような人と会えば、とことん傷をなめあって、底なしに傷つけあいます。破滅に至るかもしれません。彼もそれは、わかっていると思います」

 ベルは何も言えなかった。

「ありがとうございます。……やはり、優しいのですね」

 

 

 ベルたちが【ロキ・ファミリア】のところに帰ったとき、やってきたラウルとボールスが奇妙な提言をしてきた。

 何人かの、ならず者っぽい……以前、『豊穣の女主人』でベルに絡んでひどい目にあった者も含む……も連れて。

「このリヴィラのならわしでな。ある条件を満たす、有望な新人が初めてここに来た時には歓迎会をすることになってるんだよ」

 ボールスの言葉に、ベルはぽかんとした。

「歓迎会?」

 そこにいたリューは何かを言おうとして、やめた。ラウルとボールスの意図、周囲の冒険者の感情に気づいたのだ。

(異様に成長が早い冒険者に対する嫉妬、いじめか)

 それはわかる。が、リュー自身が動くには、相当な覚悟が必要になる。

「ああ。ここの冒険者ふたりと、街のみんなが見てる前で試合をしてもらう、という。そこのチビはいいさ、ゴライアスと戦ったばかりだからな」

 リューが見回すと、ヘルメスがかなり残念そうな表情をしている。アスフィは複雑そうな表情だ。

(くだらない嫉妬、でも反対したら、もっとひどいことになるかもしれない……うちの主神がとんでもないものを用意させたりするし)

 と。

【タケミカヅチ・ファミリア】の三人は、歯噛みをし、おびえも見せつつ耐えている……

(根回しが、すんでいる……)

 と、いうことか。

(悪意が強い、放置したら大ごとになりかねない。だから早めにガス抜きをしておきたい。協力してくれ。と、いったところか……)

 無論、無法者の街にそんなならわしなどない。だが、ベルは何も知らない。だから騙して強行し、

「面白いからこれから恒例にしようぜ」

 と、なる……反対する者はいない。

 変な伝統を作ったりしたら、それがどう悪用されどう社会を壊すかわからないが、そんなことを気にするようでは無法者とはいえない。

「な、なんでボクのベルくんが!」

 とヘスティアが叫び暴れるが、それはヘルメスが押さえこんでいた。

 ベルは何の疑問もなく従った。

 

 古い街の遺構を利用した小さな闘技場。テニスコート程度の広さだが、熱気は強い。

 百人を超える荒くれ冒険者が集まり、賭け、臨時の飲食店までできている。

 数本の木刀が供出された。

 そしてくじが引かれ……ベルは、

(『幸運』ってなんだろう)

 呆然とした。

 くじに当たったのは、以前『豊穣の女主人』でベルに絡んだモルドと、アイズ・ヴァレンシュタインだったのだ……

(でも、アイズさんとまた打ち合える、それってすごく幸運じゃないかな?)

 とも思った。

 

 丈夫だが簡素な布服、木刀が配られている。

 何人かの、超大穴狙いでベルに賭けた冒険者が狂ったように叫ぶ。

(ありえないにもほどがある……)

 が、だからこそオッズは巨大だ。

(面白いからこれから恒例にしようぜ)

 それはもう、全員の堅い合意になっている。

「よーし作戦だ。まず俺からぶちのめさせてもらう。あんたの出番がなかったらすまねえな」

 モルドは笑っている。

 アイズは静かに、木刀をゆっくりと振っていた。

(知らない、レベルも低い人との連携は無理。連携ができていない集団は弱い。なら、一人ずつかかるほうがまだいい)

 と考えてだ。

 始まるまでのほんの数秒。ベルの両足と両手に光が薄く輝き、リン、リンと小さな鈴の音が鳴る。その音を聞き取れるのは上級冒険者のみ……荒くれた冒険者たちの怒号で。

 一閃だった。

 モルドが自信満々に、得意な技で切りこんだ……ベルの姿がかき消えた。

 と思ったら、死角から一撃。それですさまじい勢いでモルドは吹っ飛び、人垣を越えて離れた壁にぶつかって崩れた。

「生きてるか?」

「救護班!この試合での傷はみんなでポーション買って治してやることにしようぜ!」

「ああ、これで死人が出たら寝覚めが悪い」

 と、騒いでいる……その間に、もうふたつ目の勝負は始まっていた。

 モルドを吹き飛ばした、その瞬間のベルを狙ってアイズがすさまじい勢いで襲いかかった。残心を怠ってはいない、歩き続けてもいた。それでもアイズは、速かった。

「くっ」

 いきなり右膝をやられた。

 離れようとして崩れる、そのみぞおちに強烈な突きがめりこみ、瞬時に半歩移動して放つ一撃が頭を強打する。

 息がつまり、呪文も使えなくなる。視界が真っ暗になる。

 立ったまま振りかぶり、必死で抵抗し続ける……アイズはすさまじい速度で動き回りながら、次々と強烈な一撃を入れている。

 レベル3以下の観客には、アイズの姿さえ見えないほどの速度域。

(朝特訓の時より……当たり前だろう)

(ランクアップしたのに、してからもあれだけ戦ったのに)

 むしろ、ベルはアイズ・ヴァレンシュタインとの、すさまじいとも何とも言いようがない差を、初めて知ったように思える。

 レベル1の時の特訓では、数秒で気絶するのを繰り返していたのだから。

 一辺の容赦もない戦闘機械。速度、一発の威力、正確さ、すべてが圧倒的に違う。

 動こうとする、すべての出ばなに強烈な一撃。右手が、左手が潰される。何かしようとする前にこめかみを、顎先を抜かれ、意識が遠くなる。

 吹き飛ばされ、人壁に叩きつけられるまえに逆方向から叩かれる。

 それが何度も繰り返される。

 空中で、両手両足を砕かれたままベルは意識を失った……ティオネが飛びこんでアイズを押さえ、ティオナがベルを抱きとめた。

 

 観衆は、ひたすら呆然としていた。

 恐怖と衝撃、畏怖。

(ここまでやるか……)

(『剣姫(けんき)』じゃなく『剣鬼(けんき)』だったんや)

 誰もが、熱狂が嘘のように呆然とした。

 そして、まるでいつもの事のようにアイズは、ハイポーションをベルの傷口にかけ、もう一本飲ませて、ベルをティオナの腕から抱き取って走り去ったのだ。

 その先でベルを膝枕してほくほくしているのを見つけたリヴェリアが、あわててアイズともども【ロキ・ファミリア】のテリトリーに引っ張りこんだ。

 それから、【ロキ・ファミリア】とヴェルフ・クロッゾも含む【ヘファイストス・ファミリア】、そしてヘスティア・リリ・ビーツを集めた。

「絶対に、よその人間が近づけないように。特に神ヘルメスとアスフィには注意して。姿が見えなくなるアイテムの噂があるっす」

 と、ラウルが厳しく言う。

「さて……」

 ここはリヴェリアが仕切った。

「やりすぎだよアイズ、いくらなんでも」

 ティオナが抗議する。

「ヘスティア様。真っ先に泣き叫びそうなのに……というかその膝枕はなんですか」

 とリリが突っこんだ。

 ヘスティアがちゃっかりベルを膝枕している。アイズがなんだか物欲しそうに見ている。

「神ヘスティア、ここでベル・クラネルの能力にもある程度触れる。しかし、ここで言わなくても、本拠地で言うだけ。能力を見られたくなければ、我々が来る前に片付けておけ、としか言えない」

 リヴェリアが一礼した。

「……仕方ないな。何度も命を助けてもらったんだ」

 ヘスティアは悔しそうに言った。

 軽く咳をしたリヴェリアが語り始める。

「観衆たちは、アイズが残酷だと誤解すると思う。その誤解は解かない、アイズには悪いが【ファミリア】にとっては好都合だ。

 その上で……ティオネ。お前でも同じようにした。違うか?」

「そうね」

 アマゾネスの姉がうなずき、説明を始めた。

「私たちは、まだレベル1のベル・クラネルが、強化種と思われるミノタウルスを単独撃破したのを見ているわ。

 さっきの試合で、モルドという同レベルの冒険者を倒した時のことも今見たばかり。

 ベル・クラネルは、短文詠唱程度の時間があれば、速度も攻撃力もとんでもなく強まる」

 ティオナもリヴェリアもうなずいた。聞いている強豪派閥の冒険者たちは声もない。

「たぶん、もっと時間があればもっと強くなるだろう。長文詠唱でとてつもない攻撃力を発揮した、という噂もある」

 リヴェリアが補足する。ティオネが続けた。

「だから、詠唱させない。何もさせない。それを徹底しないと、レベルが上の私やアイズでも危険。強敵と認め、勝つために必死だっただけ。そう、私でも同じように、呼吸一つさせないように速攻する。階層主と戦うつもりで」

「あたしなら、じっくり準備した全力を受け止めたいな」

 ティオナが言うが、

「あれを見たでしょ?さらにランクアップしてるのよ……冗談抜きに死ぬわよ。レベル6になってても」

 ティオネが妹の頭をはたいた。

「ガレスも正面から受けたがるだろうな。まあそれはともかく。加えて、ベル・クラネルは……ウリュウと縁がある。袖の中から銃弾が飛んでくるかもしれない。足の指で撃ってくるかもしれない」

 リヴェリアが引き継いだ。

 そして前に瓜生にもらったリボルバーのトリガーに紐をかけて腕に縛りつけ、優雅にふくらむドレスの袖に隠し、人のいない方向に手首をあげて向けて、空いている方の手で胸元にまわした紐を引いて発砲してみせた。

 轟音と閃光。空砲、穴はどこにも開いていない。だが、全員がぞっとする。

(銃にはそういう使い方もあるのか……)

 と。

【ロキ・ファミリア】の幹部は、【ソーマ・ファミリア】事件の顛末は詳しく聞いている。リリとヴェルフが銃を見ていることも。またベルとミノタウルスの対決を見た幹部は、ベルたちの銃の残骸を回収すらしている。

「指一本動かすことを許さず、気絶させなければやられる。それほど優れた冒険者だ……ということで、許してもらえるかな?」

 目が覚め、ヘスティアの膝枕に目がイトミミズになっていたベルに、リヴェリアが顔を寄せて声をかけた。

 余計ベルのパニックはひどくなる。

 逃げようとして手に走る痛みにうめき、転がってアイズの胸に落ちて、リリに引っこ抜かれる。

「まあ、体は大丈夫なようだな」

 リヴェリアが確認し、笑った。

「アイズを許してやってほしい。それほどお前は強かった。何もさせずに全力で無力化しなければ、第一級冒険者でも死の危険がある、と判断できるほど」

「……はい。試合で、全力を出してくれたんですから、ありがとうございます」

 まだひっくり返ったまま、ベルは言った。だが、嗚咽がわきそうになる。差があることはわかっているのに、悔しいのだ。

「……ほんとう?」

「もちろん、です」

「なにいい雰囲気になろうとしてるんですか」

 と、リリが騒いで、なし崩しに食事が始まった。

 今晩はすき焼き。最高級の和牛と割下、卵と、圧力鍋で炊いた熱いご飯がたっぷり。

(ほんとうに、強くなった。特訓の時とも、見違えた。速度差で潰したけど、先を読んで重心を崩し、こちらにとって攻撃しにくい位置に常に移動しようとしていた。振りかぶりが全部、いい受け流しになっていた。最後まであきらめず戦い続けた。スピードも威力も、レベル4でも驚かないぐらいすごかった)

 アイズは、ベルのことをとても高く評価していた。だからこそ、

(嫌われたのではないか……)

 という恐れもあったのだが。

 

 しっと団と化していた【ロキ・ファミリア】男団員たちも、リヴィラの荒くれたちも……もう、ベルとビーツ、【ヘスティア・ファミリア】の実力を疑う者はいない。

『インチキルーキー』ではなく『チートルーキー』と呼ぶ者が出てくる……ついでに、ベルとアイズが恋人では、と疑う者もいなくなった。




人の悪意なら、カヌゥたちからしっかり勉強してますので。
「来年から恒例にしようぜ」もちろん『ここはグリーン・ウッド』で寮長にされたすかちゃんが歌わされた一件です。

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