ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか 作:ケット
残る者たちの祈りに見送られ、重いトレーラーを牽引した4両の装軌装甲車が51階層に向かう。
先頭はリヴェリアが一人で動かすナメル重装甲兵員輸送車。30ミリRWSだけでなく、左右に4門ずつパンツァーファウスト3をつけている。
その屋根には、ティオナが長槍を構えている。長剣のような、だが剣としては極端に厚く広い穂先がぎとぎとと光っている。
その少し後ろに、レベル4サポーター4人が操縦するメルカバMk-3主力戦車。道に余裕があれば並ぶ。
その後ろ、中央部にフィンとティオネのナメル。
最後尾をガレス・ベート・レフィーヤの3人が操縦するナメル。
崖に近い急坂を、キャタピラはゆうゆうと踏みしめる。
51階層。51~57階は、このダンジョンにしては珍しく、ダンジョンらしい部屋と廊下がある迷路構造になっている。
だが全体に広く、幅の広い主力戦車でも通れる。
フィンは地図を、カーブを含め通過できる幅と高さを頭に入れている……もし通れない道があるのなら、もっと小さい車両を使っていた。
だが、装甲戦闘車両は必要だったろうか。
アイズ、ベート、ティオナ、ティオネ、椿……五人の心の炎は激しすぎた。
ベル・クラネルの偉業に、あてられた。
フィン、リヴェリア、そしてレフィーヤも、すさまじい炎を内に抱えていた。
多数出る蛇やサソリの怪物は、瞬時に葬られた。
〈ローラン〉シリーズ……対新種の『不壊属性』武器シリーズの、試し切りでしかなかった。
「手ごたえがなーいっ!」
とティオナなどは文句を言っているが、機関砲の死角から出てきたブラックライノス6頭、レベル4が何人もいても苦戦する敵を瞬殺してからである。
車を操縦していない者が持っている長槍は、【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師たちがダンジョン内で打ったものだ。
団長の椿・コルブランドが持ち帰った、瓜生が出した刀とナイフ、そしてクロッゾの名ゆえに疎外してきた下っ端が作った短剣。どれも曲がり、深くへこみ、削られ、ねじれ……もう原型がないほどに痛んでいた。折れてはいなかった。
それを見、椿の熱い語りを聞いて、鍛冶師魂に火がついた。
折れない。切れる。滑らない。刀が折れたという苦情はない……刀が折れればその場で死ぬから。
鍛冶師の原点に、魂が燃え上がった。
そして、異質ではあるが鍛冶場を用意できる瓜生の存在もあった。鍛冶師たちも携帯炉は持っていたが、規模が違った。
アセチレントーチや、エンジン発電機からのアルゴン・タングステン電極アーク溶接は、火炎石に劣らぬ高温を産んだ。
鋼の鎚と金床に不満を言えば、銅の鎚を用意し厚い銅板を金床に乗せた。最近ファミリアが手に入れた、奇妙な金属や異様な純度の鉄や銅も出した。
【ロキ・ファミリア】も、その場で多くのドロップアイテムを得ては提供してくれた。
ありったけの情熱で打った。
椿は率先して奇妙な器具の使い方を学び、アセチレンや高電圧の安全注意を全身で聞き、同じミスは決して二度しなかった。
折れない、切れる、滑らない……それ以外はすべて余分。飾りも何もない、厚く武骨な刃。
【ロキ・ファミリア】の皆に、打っては配り実戦で試させた。
その結晶は、戦闘車両の間を駆けまわるティオナと椿、アイズの手によって振るわれ、しっかりと折れることなくパーティを守っている。
通路の奥から新種が……出現、できなかった。
気配をティオナが感じ、警告の声を上げてから。
ナメルのハッチからフィンが上半身を出し、リボルバーを3発発射、ハッチ近くに固定していたゲパード14.5を片手で2連射。
それまで、1秒もかかっていない。
通路の向こうで、先頭が潰れ……破裂した溶解液は、仲間も溶かした。
そして小さな洪水がふくれあがり、迷宮の床を溶かす。
床が溶ければ、いつかは止まる。風呂桶の縁に波を立てるように。キャタピラを溶かす前に。
フィンの指示、四両の巨大戦闘車両は別の通路を通る。
時速35キロメートル前後を保つ。生身の人間にとっては実質限界の速度(時速36キロメートル=100メートル10秒)、第一級冒険者ならその何倍も余裕で出せるが、ずっととはいかない。
車列の横から出る怪物はアイズがライフルで片付ける。
あまり好きではないが、使える。
51階層をついに抜ける……まったく別格の緊張感が出る。
「ここからは、この兵器でも地獄だ」
誰もがわかっている。体験していないのは、レフィーヤと椿。
「対策はある。その時にする動きも訓練できている」
フィンの鼓舞、ひるがえる二枚の旗。まだロゴが決まっていない【ヘスティア・ファミリア】の旗はないが。
「いけっ!」
叫びとともにガタガタ道を、キャタピラがこともなげに踏破する。
通路を抜けた……今まで通りに襲ってくる巨大な怪物。
「最小限だけ殺し、抜けろ!動き続けろ!」
スピーカーから響くフィンの叫びに、椿は戸惑った。
「これでも、当たったら……」
防御最強で知られる重戦車に乗る4人のレベル4サポーターが、恐怖に震える。
「とにかく脱出っス!」
ラウルがガタガタ震えながら、必死でいくつもの計器を見、車長ハッチから身を乗り出して周囲の音を聞いている。
あの恐ろしいうなり声が聞こえるのはいつか……
それをあざ笑うように、とんでもない数のモンスターが出た。モンスター・パーティ。
それを切り開いたのは、ナメルの30ミリ機関砲とメルカバの主砲だった。
歩兵を素早く後方に下げる。そして30ミリ機関砲が射撃をはじめ、車両に直接とりつけたパンツァーファウスト3が放たれ、120ミリ主砲が咆哮した。
キャニスター弾、並のライフルより高初速で鉛より高密度の散弾……それは膨大な敵の群れに、瞬時に大穴を開けた。
後方の2両のナメルも30ミリ機関砲を発砲し、それでさらに道を広げながら、モンスターが走るより早い速度で突破する。
その時だった。
「くる!」
アイズが、エンジンとキャタピラの音に負けず竜の唸り声を聞きつけた。
「どこから」
椿が耳を澄ませるが、どこにいるかわからない。
「加速しろ!」
フィンの叫びが通信を通じて各車両の中、さらにスピーカーで外にも響く。
加速する車両の屋根に、歩兵たちは飛び乗った。
キャニスター弾が敵の壁に風穴を開け、戦闘車両がフルスピードで穴を通り抜ける。
細かい射撃がきっちり戦車を守る。アイズが手持ちにした重機関銃と、メルカバの砲塔の上に鍛冶師たちが無理やりでっち上げたアタッチメントで取り付けられたGAU-19……12.7ミリガトリング砲が細かく叩きつけられる。
後方に、何百というモンスターが固まり、目の前を通過する4両を襲おうとする……
かすかな、不吉な咆哮。
「くる!」
叫び、ガレスたちのナメルが追突しかねないほど加速する。
その直後、すさまじい炎が吹き上がった。
床を突き抜けて。
「お、おお……」
初見の椿・コルブランドが呆然と見る。
階層を、天上であり床を……厚さメートル単位の岩板を貫通する炎。
戦車を追おうと固まったモンスターたちが瞬時に蒸発する。
砲竜(ヴァルガング・ドラゴン)。
58階層に巣食う、常識も何もひっくり返す巨大な大火力竜。
これがあるから、戦車があってもレベル3を連れてこなかったのだ。瓜生を連れてこなかったのだ。地雷とIEDに対抗するためエスカレートしている新型戦車の頑丈な底面装甲も、何枚もメートル単位の岩板をぶち抜く超炎の前には無力と思われる。試す気もない。
あてになるのは、高レベル冒険者の敏捷と耐久、上位の防護呪文だけだ。
何日も前から、瓜生はその機密を聞いてフィンたちと対抗策を話し合っていた。訓練もしていた。
最後尾に走るアイズと、操縦をベートに任せてナメルから飛び出したガレス・ランドロックが、トレーラーに積まれた巨大な羽根つきラグビーボールを抱え上げる。
1000ポンド、454キログラム。
戦闘機から投下される、航空爆弾マーク83。
信管を訓練通りいじり、穴に投げ落とす。
アイズが投げた爆弾もその後を追う。
「穴があるということは、こっちからもそっちに手が届くってことだろ……」
相談していた時の瓜生の言葉に、ガレスはにんまりしたものだ。
「走れ!いざとなれば脱出!」
長いようで短い時間。何百メートルもの高さを鉄塊が自由落下し……着発。
ダンジョン全体が揺れた気がした。
すぐ、穴から再び何かが噴き出した。炎とも違う、衝撃波。
「よし、いけっ!」
フィンの指示。
「ベート、操縦だけでよい!」
ガレスが叫び、トレーラーからがちがちに緩衝された、でかいミイラを引っこ抜く。
さらに巨大な対物ライフルを担ぐ。
ティオナも訓練通り、大荷物の乗ったリヤカーを引っ張り、ついてきた。
「頼む」
「ええ、えええええええええ」
「いくよっ!」
ガレスが、トレーラーから両手に緩衝された大荷物をかつぎ、ひとつずつ紐をほどいては落とす。ティオナも同じことをする。
放った荷物はすぐに小さいパラシュートを開く……それを見もせず、長い大荷物を背負ったガレス・ティオナ・レフィーヤの3人が巨大な縦穴に身を投げた。
対砲兵爆撃からの空挺制圧。セオリーと言えばセオリーだが、このスケールと、縦穴の狭さを考えればむちゃくちゃにもほどがある。
実際に、何の問題もなく200メートルある崖を走り降りている。第一級冒険者の体力では、もう重力も縦も横もほとんど関係ないのだ。
実は瓜生は、20階台にある何層もぶち抜く滝を利用して戦闘ヘリの訓練も考えたが、あきらめた。
落ちながらも襲撃してくる飛竜と激しく切り結び、射撃や呪文で叩き落しながら、3人は58階に直行する。
衝撃波と爆風、大量の破片は、巨大なワンフロアである58階層の、とんでもない数の怪物を一掃していた。
上のフロアから縦穴に出ようとした飛竜(ワイバーン)も。
ガレスたちが抱えた荷物は、対物ライフルと重機関銃、パンツァーファウスト3対戦車ロケット。愛用の武器と、椿が用意した〈ローラン〉シリーズの不壊属性武器。
そして次々と、クレーターになった地面に落ちてくるパラシュート……うまく開かず、あるいは縦穴の縁にぶつかってひっかかり失われるものもあるが、無事に落ちたものもある。
ガレスが緩衝材を引っぺがすと、そこには牽引式の20ミリ単装機関砲。12.7ミリ重機関銃の、三脚の上に2連装になったものもある。
クレーターから引きずり上げ、設置し……そのころには壁にひびが入り始める。
出たそばから、まずガレスの12.7ミリライフル、ついで対空機関砲が追随する。
敵の出現が多く、さらに57階層への出入り口からは新種の溶解液イモムシまであふれ出てきてカオスと化した……だが、弾薬はたっぷりある。箱詰めの弾薬も次々と、小さいパラシュートで落ちてくるのだから。対戦車ロケットも、手榴弾も。
そしてティオナの大剣と、ガレスの剛力、レフィーヤの広域呪文。
もう一人火器を使える者が欲しかったが、それはやむを得ない。レフィーヤは特訓でとにかく12.7ミリ重機関銃は使える。銃身交換が可能なので、弾と予備銃身がある限り撃ち続けられる。
多少人数が減ったが、車両数は変わらない装甲車両隊は、狙撃を気にすることなく地下に急いでいる。
惜しげなく30ミリ機関砲と戦車主砲のキャニスター弾、ガトリング重機関銃で道を切り開きながら。
やや狭い通路で、とんでもない数の新種、溶解液イモムシが出現したこともあった……が、フィンは通信で恐ろしい指示を出した。
閉所での、戦車主砲発砲。
普通にやれば、随伴歩兵が死ぬ。
だが、随伴歩兵はレベル6と5。
巨大な砲口炎が起こしたことは、単純だった。
膨大なガスが、狭い通路の圧力を爆発的に上げた。無反動砲の砲身のように。
そして砲弾になったのは、溶解液の洪水……
強引に液を押し戻し、敵を一気に圧倒して方向を変えた。そのわずかな時間に、床が溶けてそこに吹き戻った液は溜まった。
そこにリヴェリアの凍結魔法が走り、溶解液を無力化する。
まあ、吹っ飛んだ椿が少しピヨってはいたが。瓜生の故郷の軍人が見たら生きていることに驚くだろう。
大きいルームに出てきた、通常の4倍は巨大な大銀蛇の『強化種』……それも、戦車砲と30ミリ機関砲が粉砕した。
58階が制圧されているうちに急ごう……とする一行の前に、それは立ちふさがった。
ひときわ巨大な新種に乗った、紫紺のフードつきローブと仮面、銀のグローブをつけた男……
あの調教師女の仲間と思われる。ベートは見たことがあった。
軍隊のように並び重なり、一気に吐いてきた溶解液……戦車砲の砲口炎、爆風がそれを押し返す。さらにアイズの風の魔法が渦巻き、押し続ける。風の魔法はベートのメタルブーツにも付与されており、それがさらに風の壁を後押しする。
後ろから風の壁を破った30ミリ弾が、一瞬でイモムシの壁を消し飛ばし……そのまま左に逃走。
だが、走り続ける中、突然横道から急襲が来た。
メルカバのキャタピラが溶けてはじけ切れる。
「操縦手は脱出し機関砲を!固定砲台、撃てるうちは撃つっす」
車長ラウルの指示で機敏にハッチから飛び出した一人が、牽引されていた23ミリ連装機関砲をつかんで引きずる。
メルカバの巨体、それ自体が横穴をがっちりふさぐ。
溶解液をよけて進み、一瞬止まった末尾のナメルに機関砲をくくりつけ、射撃準備のまま牽引される。
それをしり目に、残った3人は荷物を準備しつつ激しい援護射撃をつづけた。
壁をぶち抜き、爆風で後ろから溶解液を押し流し、後ろから迫る多数のモンスターの群れを12.7ミリガトリングで消し去り……
そして、持てるだけの荷物を持った3人は戦車を捨て、大急ぎで3両のナメルを追った。
しばらくは下からの狙撃がないとはいえ、ここの恐怖は忘れられない。
追いついたら3人とも、操縦を交代する。レベル4の4人とも、ナメル・メルカバとも、操縦も射撃もできるぐらいは訓練されている。
リヴェリア・フィン・ベートの3人が歩兵に戻った。
三人とも、銃と大長槍、愛用の武器で重武装している。
主力戦車こそ失ったが、30ミリ機関砲は3門ある。連装機関砲を牽引している。
「あの調教師(ティマー)、まるで戦術を使うようだった。なら次は……」
フィンはナメルの屋根で、チェスのように読み合いも楽しんでいる。
次の階層には、先にベートとアイズが走っていた。二人で1000キロ近いタイヤつき機関砲を牽引して。
半円を描いて囲んだ、膨大な数の新種……背後には食人花までいる。
アイズが飛び出す。ベートがまず魔剣を振って稲妻の嵐を叩きつけ、即座に機関砲を連射しながらぐるっと回す。
2門の23ミリ機関砲。食人花も一撃で粉砕し、イモムシなど瞬時に霧にする。
そして一気に強化された風の呪文をまとったアイズが、すさまじい速度で突撃した。
溶解液の海と化した床、機関砲が波に呑まれる。
ベートは断末魔の砲身を踏んで跳び、空中で魔剣をメタルブーツにたたきつけた。
魔剣が崩れ、巨大な魔力を帯びたブーツが狼人の、超速の蹴りとともに力を解放する。
破壊の嵐。
そこに、背後から援護射撃。
12.7ミリ重機関銃を手にしたフィンとリヴェリアが、膨大な射撃を叩きこむ。頑丈な食人花は狙わない、徹底的にイモムシ狙い。
あふれかえる溶解液は、食人花も次々と溶かした。
「伏せろ!」
フィンが叫ぶと、かなり大きな塊を投げつける。
カバン一杯に爆薬を詰めて手榴弾同様の信管をつけた爆弾が、第一級冒険者の腕力でグレネードランチャー並みの距離を飛んだ。
そしてすさまじい爆発。
それでできたクレーターに、大量の溶解液が流れ込む。そのままどんどん穴は深くなり、溶解液が床から消える。
「いまだ!」
フィンの指示のもと、3両のナメルが一気に次のルームに向かった。
その通路の中でだった。
前の2両が並び、どうしても両方壁に近くなっていた。
その壁そのものが、食人花に食い破られた。
打撃そのものは、分厚い装甲に阻まれた。だが脆弱なキャタピラが、花開いた花弁の牙に食いちぎられる。
フィンの槍に魔石を砕かれた、その灰をかいくぐってイモムシの溶解液が完全にキャタピラを破壊する。
さらに砲声。
前も後ろも囲まれている。
アイズは、何も言わせなかった。
ナメルの大重量の壁を足場に、リル・ラファーガで一気にフードつきローブに向かう。途中の、膨大なイモムシをすべて粉砕しながら。
30ミリ機関砲が咆哮する。対戦車手榴弾が床に大穴を開ける。穴が溶解液を吸い、ますます大きくなる。溶解液を下のフロアまで落として洪水を止める。
別のナメルも牽引していた23ミリ機関砲が、集中的に食人花を撃ちちぎる。
それで目をくらませ、フィンと椿がフードつきローブの怪人を襲い、圧倒した。
なぜか姿をくらまされたが、それで怪物の統一的な動きはなくなる。あとは機関砲の嵐で一掃するだけだった。
壊れたナメルの荷物は残った2両に分散し、機関砲も牽引している。だが2両の装甲戦闘車を失った。
(人を失っていないだけ、まし……)
ではあるが。
それから、通路をふさぐ新種たち、巨大なサソリの群れを機関砲で消し飛ばして58階層のガレスたちに合流した。
こちらは弾薬が尽きかけるほど、連装機関砲が溶けかけるほど戦い続け、階層貫通狙撃を阻止し続けていた。
それだけでなく、上から押し寄せて59階層に向かおうとする新種どもとも戦い続けていたのだ。
58階層で、軽い食事をとる。複数のカセットコンロで、自衛隊缶詰白飯・レトルトカレー・レトルトハンバーグを温め、袋生ラーメンをゆでる。レトルト食品もラーメンもできるだけの高級品。
「お、おい、おいしい」
「うん」
「ジャガ丸くん……」
「帰ってからのお楽しみだ」
たっぷりとおいしく温かい食事をとり、マジックポーションで魔力を回復させる。
小さい炉を出した椿が武器を軽く整備していた。
また、傷んだナメルのキャタピラも整備し、弾薬や荷物をあらためて整理する。
そして、ついに……アイズがあの女に予告されていた、59階層。
以前深層を制していた【ゼウス・ファミリア】の報告では氷河とのことだが、なぜか今通路の前に立つと熱気が吹いてくる。
あらゆる装備を確認する。あらゆる兵器を確認する。
決意を込めてうなずき合う。
(ベル・クラネルのように)
何人もそう思っている。あの戦いで火がついた胸の炎は、竜の壺の死闘などでは全然燃え足りていない。
溶解液を出す芋虫型新種は、装甲車両にとっても天敵でした。
足回りから壊していきますからねえ…特にキャタピラにとっては最悪。
タイヤなら交換して少し進めるかもしれませんし、パンクしてもかなり走れることは走れますが、それも二度目にやられたらもう動けないでしょう。