ダンジョンに近代兵器を持ちこむのは間違っているだろうか   作:ケット

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運転教習(実地)

 昼休みが終わり、絶望の色を浮かべる「学生たち」の前に、3両の怪物がそびえていた。全長約9メートル、全幅約4メートル。

 校庭より広いルームの壁は30ミリ機関砲で深く傷つけられている。

 

 アイズとティオナは我慢できず、別のルームに戦いに出かけてしまった。レフィーヤももちろんついていく。特にアイズは、何があったのか思いつめている様子だ。

 ティオネも戦いたいが、フィンのそばを離れない。

 

 フィンとリヴェリアは、瓜生の言葉を真剣に聞いて範を示している。

「さて、まず……これのエンジンは」

 と、一人一人エンジンを見せ、手には竹製の水鉄砲を出す。【タケミカヅチ・ファミリア】に屋台のおもちゃとして渡したものと同じだ。それで遊んでみる。

「その太い棒の中は、これと同じようなものだ。穴は開いていないが」

 と、一人一人に配り、水を配って遊ばせた。

「エンジンに、水ではなくこれと同じ燃料を入れる」

 燃料の入った缶を指し、少し皿に注ぐ。戦車の燃費は最悪なので、膨大に用意されている。普段は注油口に大きい漏斗をかませて直接出す。

「この油は、食べられないから気をつけろ。まあディーゼルなら食用油でも燃料になるが、色々痛むから緊急時のみだ」

 燃料油に布をつっこんで、火をつけて見せる。

「その、火が爆発的に燃える力が、車を動かす力になる。だから、燃料が切れたら動かない。大気がなければ、あるいは呼吸できない大気だと動かない。

 エンジンは熱くなり、熱くなりすぎると壊れる。潤滑油がなくなってもすぐ壊れる。

 この燃料タンクから、決まった量の液体燃料をエンジンに送る……パイプが切れたら、動かなくなるし車が燃えてしまう」

 飽きてきた雰囲気を感じて、瓜生はまず自分が操縦席に乗り、手足もちゃんと映るようにビデオカメラをセットした。

 ダンジョン内ではコンパスがきかず、電波もあまりよくない。だが短距離ならなんとかなる。ビデオカメラの撮影映像を車外の、発電機をつけた、テレビモニターに送る。

「まず……」

 と、前進・後退・右折・左折・超信地旋回をやって見せる。動き出す前に、使う手足を強調してどのレバーなどを動かしているか見せる。

「さて、団長と副団長、それにアキ」

 瓜生が呼び寄せ、席を空ける。残りの2両の操縦席にもビデオカメラをつけ、3つのテレビモニターにつなげる。

 燃料とオイルを入れ、準備する。自分が何をしているのか、いちいち教えながら。

 ちなみに、多数のカメラを戦車のあちこちにつけているので、操縦席にいながらかなり周囲の様子はわかる。一人で運転することが多いから、狙撃兵がないからこその反則技だ。

 

 フィンとリヴェリアはあっという間に慣れた。それで瓜生は、一人でRWS(遠隔操作砲塔)を使えるようにして、そちらの訓練をさせる。

(冒険者というだけじゃなく、本当に怪物だな)

 と瓜生は思っている。

 銃を学んだ時もそうだったが、見て正確にまね、本質を理解して理解と真似を統合し、自分の心と体を高い精度で操ることができる。ミスをする前に、どうすればいいか素直に聞いて、正確に実行できる。

「うっかり」「慌てて」「ドジ」のなさが人間離れしており、慎重で的確。同じミスも決してしない。

 これだけで、

(人間ではない……)

 と、言い切れるほどだ。

 

 全員が最低限の操縦ができるようになったら、10人を3・3・4に分けた。

 ナメル+30ミリRWSが2組、最後の4人は重機関銃歩兵班。10人で役割をローテーションして、皆が車長・操縦主・砲手・歩兵すべての仕事をするように。

 遠距離は捨てているし、迫撃砲も天井があるので使えないので、最低限だ。

 緊急脱出も何度も訓練させる。

「本番の脱出では、目が見えなくなっていることもありえる」

 と、普通に脱出できるようになったら、目隠しをした状態で脱出を命じるようになった。

 それに、瓜生の一人乗り、フィンとリヴェリア、それに強引に乗ったティオネの三人で1両、合計4両で一気に前進。授業時間を取り戻すように圧倒的な速度で6階層踏破した。

 一応、発砲は瓜生だけ。ほかは、機関砲なのに一発ずつ車を止め、装填して、ほかの誰かが射線の安全を確認してから射撃するという念の入れ方。

 歩く者は装甲車の上に座って、小さく素早いのを瓜生が撃ち漏らしたら射撃を中止させ、叩く。

(とにかく事故が起きないことが、今は最優先だ……)

 このことである。

 動く前に、もちろんアイズたちはティオネが呼び戻し、次の集合場所を指定する。

 20階台で30ミリ機関砲は、一つだけだとしても完全に過剰威力だ。ほとんどのモンスターは一撃で血霧となり、魔石も残らない。一度見つけたグリーンドラゴンすら、一連射で原型が残らなかった。

 一度、22階層で普段は出てこないような、高さだけで5メートルはありそう、長さがどれだけかわからないヤスデが何匹も出たことがあった。それも、30ミリ機関砲の一閃ですべて粉砕された。

 問題になるのはデッドリー・ホーネットやガン・リベリアのような、空を飛び奇襲してくるタイプ。だがそれらはそれだけ弱いので、ガリルACE53のフルオートで迎撃できる。

 順次フィン、そしてリヴェリアが前に立って射撃と操縦を両立させ、他のメンバーはそれを見て学ぶ。

 とにかく慣れる。やってみて慣れる。できなければ何度でも教える。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやる……」

 山本五十六の名言の、繰り返しだった。

 

 

 やっと夕食の時間になった。ルームを思い切り傷つけた。アイズたちもどこまでいったものか、帰ってきた。

「疲れているだろう?」

 瓜生は人数分のトレーラーハウスで、しっかり全員分の風呂も用意した。ラベンダー・ローズウッド・カモミール・ネロリの精油を垂らす。

 食事はハンバーグ・ステーキ・ソーセージと豪華に焼く。パンと高級缶詰スープも温め、パウンドケーキと高級なブドウもつける。

 だが、贅沢を喜ぶよりも、「学生たち」は精神的に疲れ切っていた。あまりにも多くのことを一日で学んだのだ。

 様子を見た瓜生は、ハチミツのほうが多いぐらいのホットミルクを配る。

 風呂に入り、食べて歯を磨いたら、あとは言葉もなく熟睡するだけだった。瓜生に、いろいろなことを聞く余裕もない。

 瓜生も疲れている。多くの物資を出し、使えるよう整備し、使い方を教える。簡単に作れておいしく栄養のあるメニューを考える。そして、ダンジョンではどのような兵器をどう運用したらいいか、フィンとリヴェリアの二人も交えて考える。

 同行している冒険者たちと、個人的に話す余裕はほとんどなかった。

 

 レフィーヤが火の番をしているところに、リヴェリアがやってきた。

「ごくろう」

「お疲れさまでした」

「レフィーヤ」

「はい?」

「おまえは、いいのか?入りたければ入れる、と彼は言っているぞ」

 エルフの少女は、首を振った。

「あれに乗れば、レベル……いくつだろうな。大荒野(モイトラ)なら、10人の私以上だろう。レベル6が全力で切れば、壊せるかもしれない……少なくとも、このキャタピラなら壊せる」

 ティオナは少し離れて、じっと周囲を見ている。戦士の目で。

 揺れる灯油ランプの火。それから少し離れたところの、蛍光灯ランタンの光。かすかに鳴り続ける、エンジン音。

 不寝番の仕事として、発電機の燃料補給も命じられている。それでホームベーカリーの予約を保ち、朝にはほかほかのパンが食べられるのだ。

「でも、それって、魔剣を持ってうぬぼれるみたいに、冒険者としては」

「彼は言っていた。これは『恩恵』を持たぬ人たちが、工夫を積み重ねて作ったのだと。魔剣とは違う」

 レフィーヤの目が見開かれる。

「強くなりたい……それはみんな同じだ。【ロキ・ファミリア】の者は、特にその飢えが激しい。

 おまえがアイズを追っているのはわかっている。そして、おまえはどこに放り込めば一番強くなるか、みんな考えている」

「え」

 意外な嬉しさに、レフィーヤはあわあわした。

「アイズのように一人でひたすらダンジョンにもぐるのは、魔法特化のおまえには向いていない。あっさり死ぬか、そうでなければ楽すぎる階層しか無理だろう。

 魔法剣士には、なろうと思ってもらってはファミリアが困る。確実に無駄になる修行時間は魔法に当ててくれ。

 一番いいのは、レベル2ぐらいの青いのを数人集めて、おまえも入れる。おまえが失敗したら全滅する、となったら……」

 レフィーヤは想像して、ぞっとした。

 そして、なぜか泣き出してしまった。

 

 

 翌日から、【ロキ・ファミリア】は二手に分かれた。

 訓練しながら稼ぎまくるリヴェリアと瓜生、レベル4から2の「学生たち」。

 この冒険を始めるとき、稼ぎ目的で受けたクエストをこなすフィン・アイズ・ティオネ・ティオナ・レフィーヤ。

 大体の時間と、合流場所候補を決めておく。

 

 ただし、フィンは瓜生からナメル+30ミリRWSをもらっている。瓜生同様、一人で操縦と射撃の両方や、無人遠隔操作砲塔の装填作業もこなせるようになっている。半日で。

 寝袋・テント・火ではなく石灰などの化学反応で温める軍用携行食など、余裕のある兵員室に詰めてもらっている。

 

「あーっこれでいつもどおり!」

 ティオナなどは、ずっと驚嘆し続け、警戒するだけだった冒険からいつも通り腕一本になり、喜んでいる。

(団長の隣を歩けない……あれを勉強してでも……密着できるなら……)

 ティオネは戦車の運用を学ぶか否か、迷っている。

 レフィーヤはサポーターを兼ね、ある程度の荷物は背負っている。

「車が、中のものを出す暇もなく燃えたら大変だろう?」

 と。クルミ、ブラジルナッツ、ペカンナッツ、レーズン、シリアルバーなど高カロリー保存食が主だ。

 それでもいつもの装備に比べれば、全然軽い。

 普段より多めに出る敵を、アイズたちが快調に切り倒している。

 アイズは飢えたように、すさまじい勢いで戦い続けている。仲間が眼中にないのではないか、とフィンが危ぶむほど。当然それは、アマゾネス姉妹を鼓舞し動かしてしまう。

 瓜生が同行していない今は弾に限りがあるので、フィンはほとんど射撃をしない。

 休憩はナメルの屋根。頑丈な装甲があるのは気が休まるが、閉じ込められる感じは怖い。

 それで屋根に妥協した。それでも足元は巨大な鉄が守ってくれている。

 それに、食事も少し待てば熱いものが食べられる。フランス軍とイタリア軍なので、味も申し分ない。

 

「学生たち」は、リヴェリアとアキがまとめてナメルと、新しく加わったメルカバの訓練をしている。

 120ミリ主砲の圧倒的な威力は、誰もが驚嘆した。キャニスター弾は対集団戦でも使える。

 

 訓練が一段落したら、29階層にある小さい安全地帯に大量の資材とトレーラーハウスをいくつか出した。

「もしよければ、ここをリヴィラに次ぐ橋頭保にしてもいい。常駐してくれる、せめてリヴィラまで生き残って危急を知らせられる……レベル3か4ぐらいがいればな」

 などといいながら。

 少し遅れてクエストをこなしたフィンたちも合流し、ゆっくりと汗を流してふかふかのベッドで寝た。

 

 

 そんな三日間、目標の37階層に着く。ホワイトパレスとも呼ばれ、作りが大きく美しい。

 作りが大きいということは、普通の冒険者から見れば壁や床の面積も大きく、常時モンスター・パーティ状態にある、ということだ。しかも魔法が事実上通用しない敵が多い。多数を一気に殲滅する集団戦術が通用せず、力押ししかない。

 さらに、特に大きなルームには階層主ウダイオスも出る。

 深層に本当に挑めるか否か、【ファミリア】の試金石ともなる階層だ。

 だが、【ロキ・ファミリア】にとっては、小遣い稼ぎの場でしかない。第一級冒険者たちにとっても、重火器で武装した訓練中の者たちにとっても。

 

 特に恐れられている闘技場(コロシアム)……そこには、一定の数を上限に、無限にモンスターが出る。

 倒しても倒してもひとときの休みもない戦い……精神をすり減らし、ミスを積み重ねて倒れるだけだ。また、戦利品を拾う暇がないのも痛い。

 アイズ・ヴァレンシュタインでさえ、そこで単独で稼ぎ続けることは危険が大きすぎると止められている。

 だが、近代兵器を手にしたレベル2から4の精鋭たちにとって、ここは巨大な稼ぎ場に他ならない。

 

 牽引用の車のついた4連装対空機銃が押し出される。機関砲が4つ束ねられれば、目の前の、土砂崩れのような敵の群れを一瞬で吹き払う。淡雪を火炎放射器で消し飛ばすように。弾薬の補充などはめまぐるしいが、一つが止まっても他が動くので余裕がある。

 特に濃密な、強敵の群れには30ミリ機関砲が2門、十字砲火で叩きこまれる。榴弾と徹甲弾を混ぜた鋼鉄の暴風に、強大なモンスターが次々と消し飛び、爆発に吹き飛び、破片で穴だらけになって力尽きる。徹甲弾の直撃で吹き飛んだ敵の破片、それが凶器に変るほどの過剰威力。榴弾2門で作った爆風の壁は、あらゆる突進を完全に阻む。

 歩兵4人全員が重機関銃を手にし、銃身が赤熱したら味方のフォローを得て銃身を交換する。その繰り返しで止まらず撃ち続ける弾幕は、一定範囲内に絶対に敵を入れない。

 遠隔操作砲塔の機関砲に、砲弾を補給するにも歩兵のフォローは絶対に必要だ。味方を誤射しないように信号を使い、連絡を絶やさない。以前からも大人数の遠征で複雑な作戦をとるため、信号システムは完備していた。

 瓜生は信号弾を見て補給のため走り回って弾薬を出し、出口近くの自走式対空砲に走り戻って25ミリ4連装の弾幕をあちこちに送る。

 一定時間殺戮をしたら、半数が移動して味方の陣地、敵を排除した領域を動かす。アメーバが仮足を伸ばすように。新しく味方陣地にした地域に散らばる無数の魔石やドロップアイテムを、二人が拾い集めては装甲兵員輸送車の広い人員室に放り込み、かわりに大量の弾薬を担いで仲間と交代する。

 どれだけの時間だったか……どれだけの弾を撃ったのか。

 さしも広大なルームが、空薬莢で埋まりそうだ。温度すら数度上がったように感じる。

 半日以上の闘技場滞在は、【ロキ・ファミリア】でも例がない。唯一のLv.7、オッタルでも可能かどうか……

 何度も、ルームの出口を装甲兵員輸送車が往復し、莫大な収穫を運び出している。

 次の部屋は壁が深く傷つけられ、安全地帯となっている。

 最初にアマゾネス姉妹が傷をつけたときに、貴重なアダマンチウムの鉱石が出た。

 それでフィンに、

「ここらの壁を破壊してもらえないか?」

 と言われて、

「なら砲弾よりこっちのほうが早いし安全だ」

 と瓜生が、大量の爆薬を仕掛けてその周辺の壁を爆破しまくった。

 被害のわりに、最初に出た鉱石の三倍程度しか出なかった。だが、爆薬による鉱石採取の可能性は、フィンなどは深く考えたものだ。

 

「そろそろ帰るか」

 フィンがやっと言いだした。

 ナメル3両の、10人入れるスペースが魔石とドロップアイテムでぎゅう詰めになっている。

 だがアイズは、一人で残りたがった。そしてリヴェリアもつきあうという。

「なら……」

 と、瓜生はリヴェリア用にナメル+30ミリRWSと、室内にキャンプ用具と食料、銃と弾薬をぎっしり用意した。皆も、瓜生が出せないポーションの類を渡す。

 瓜生は、あくまで部外者として、無理に輪に入ろうとはしていない。アイズの異様な焦りも知らない。それよりも、学ぶ意欲がある者に教えることで精一杯だ。

「ありがとう」

 そう言ったリヴェリアを振り返りながら、装甲車の車列が18階に向かう。

 先頭の、アキが指揮する装甲車の30ミリ機関砲が、さっぱりと敵を掃討していく。

 戦ったり運転したりしている者以外は、車の屋根に乗っている。

 そして速度自体が、特に長い時間でみると歩くよりずっと速い。

 少し行ってから比較的安全なところで、17階層より上も考えて二人で動かせ手軽、狭い場所でも使えるヴィーゼル空挺戦車の訓練や、小口径だが歩兵の延長で使える対戦車砲の訓練も始めた。

 

 車の類は19階まで、18階のリヴィラには大きいリヤカーに大量に乗せて、強引に運んだ。

 ぼったくりの街には価値の低い魔石やドロップアイテムを売り、残りの多くは高レベルの力にあかせて運びあげる。

 

 皆が荷物を17階層方面に運び上げている間、瓜生とフィンに言われたボールスは、何人か信用できる者を選んだ。

 瓜生が、寝台車でできた新しい街を囲む小高い丘をまわり、2cm Flakvierling 38、20ミリ機関砲4挺の対空機銃を設置した。その近くに大きな鉄箱を出し、大量の砲弾も用意した。

 そしてボールスたち十数人を19階層に連れて行き、使い方を半日特訓した。

 街を確実に守るために。

 ボールスはえげつない威力に呆然とするだけだった。

「あの花やタコ女がいくつ来ても問題ないな、これなら……」

 

 

 17階からの帰り道は、ヴィーゼル空挺戦車2両で前後をはさみ、ウニモグ全地形トラックを2両連ねた。

 20ミリ機関砲の威力は、モンスターを一切寄せつけなかった。

 2階層の大きいホールに着いたら荷物を特大リュックに詰め替えて、リヤカーに山積みにして車両を消し、ひいひい言いつつ短い距離を地上に向かう。

 

 収穫は17億ヴァリスを超えた。37階層が主だが、量が圧倒的だった……レベル2のサポーター50人が担げる荷物以上の、とんでもない量。普通なら重くてあきらめるようなドロップアイテムや鉱石も平気で持ってきた。

【ロキ・ファミリア】全体での、50階層に至る深層探索をしのぐ換金額。

 それは、換金を担う『ギルド』にとっても悲鳴になった。ヴァリス準備高の底が見えそうだった……準備がなければ。

 出発前にフィンが、上級の職員に自分の体重以上の純金地金を渡したのだ。

「これで大量の高額ヴァリス硬貨を鋳造しておくことを勧める。この純金の分は、証文を取っておくよ」

 と。無論瓜生が出したものを鋳直して文様を消したものだ。

 

 その膨大な信用と収益、資源……【ロキ・ファミリア】の会計は大きくプラスになった。

 遠征参加者もそれぞれ莫大な分け前を得た。

 そして瓜生。彼は金の分け前は要求せず、都市のお偉方や、信用できる人間への紹介を求めた。

 オラリオを動かす側に回るために。

 

 フィンもアイズとリヴェリアを心配しつつ、瓜生の想像を絶する能力が与える影響、次の遠征を考えていた。


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