《幻命》の幻獣 -ザラキ神官が転生させられたそうです- 作:altelなヤフェト
Ⅰ・転生させられました
《side:クリフト》
・・・ここは、どこだろう。
確か私は死んだ筈だ。寿命を迎えて、姫様や、ソロ、皆さんに看取られながら、死んだはずだ。
それに、本当にここはどこなのだろう。真っ白な部屋みたいだ。
・・・。本当にどうしよって誰か来たっ?!
「やあ!お目覚めのようだね!」
「へっ、えっ」
目の前に現れたのは、赤い一つ目の付いた黄色い大きな魔女帽を被り、これまた黄色の長袖シャツと茶色のズボン、紫色のマントを纏った、長い青髪と赤目の少年だった。
少年は、ヘラヘラと笑いながらこちらを向きながら話す。
「サントハイム神官、クリフト君だっけ?キミ、自分はもう死んだはず、と思ってるよね?」
当たり前だ。だが、口に出していないのに思っていることがバレるとやはり、私も驚く。
「話を続けるよ。キミは確かにあの"世界"では死んだ・・・つまり、もう存在できないし、必要なくなったんだよ。」
「?!必要なくなったとはどういう事です!それに、あなたはだれで」
「世界に存在するモノってね、その世界に何かしら必要だから存在しているんだよ。
で、死っていうのは、その《存在》が世界に必要なくなったから起こるものなんだ。そして、死んだモノの魂は浄化されて、別の世界や、その世界の別のモノに生まれ変わらせられるんだ。」
私の問の言葉が終わるよりも早く、彼は一つ目の質問に答えた。
確かに、そんな気はしていた。生死の呪を扱えたが故だろうか。
しかし、何者なのかは彼は言わない。とりあえず、もう一度彼の方を見る。
彼は「続けるよ?」と言って話を続ける。
「で、本来ならキミもその流れに乗る・・・はずだったんだよ。」
彼は、人呼吸置いて、私の目を見て言った。
「キミは、流れに乗ることができなかった。
多分、生死の呪は、キミの魂を人とは違う、異質なものにしちゃったんだろうね。
これは、悪魔や天空人に見られる症状さ。」
悪魔や、天空人?異質?・・・ため息をついた。
私は人とは違うモノに成ってしまったのか、という。
だとしたら、私がここにいるのに納得がいく。
なら、これからされるのは人の道から外れてしまった私への罰なのだろうか。と思った。
しかし、そうでは無かった。返ってきた答えは違ったのだ。
「で・・・キミは、別の世界には必要なんだ。だから、別の姿で、転生させることに決まりましたー!」
一瞬、耳を疑った。
転生?いや、それ自体に疑問は無いのだが、別の世界?
えっ?と思い、また彼の方を見る。
「キミは流れに乗れなかったって言っただろ?
本当なら、前世の記憶は無いはずなんだけど、キミは別ルートで記憶を持ったまま、別の世界に送るよ。」
「そういうこと、ですか・・・。」
よく分かり、納得した。
彼は、腰にさしていた、瞳をかたどった装飾の短剣を抜き、言う。
「さ、そろそろ行く時間、なんだけど、キミには、まず新しいカラダに慣れてもらうため、練習のための世界に行ってもらうよ。」
そう言い、何かの呪文を唱えた。途端に眠気が襲ってくる。
朦朧とする意識のなかで、最後に聞いたのは、彼の声だった。
「あ、一つ答えてなかったね。ボクは、時空の番人さ」
そして、私の意識は途切れた。
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[場所:???]
ここはどこだろう(2回目)
周りは1面真っ白で、吹雪いている。
しかし、不思議と寒くない。
立とうとおもったが、いつもより少し目線が高い程度だが、手(?)と足を着いた状態から起き上がれない。
どうしてだろう・・・
『キュヒィィィィ・・・』
そう言おうとして漏れたのは、馬の鳴き声のような、しかしどこか幻想的な声。
驚いて、たまたま後ろにあった氷で姿を見る。
『ヒィィィィィン?!(なんですかこれぇぇ!)』
今の私の姿は、頭に蒼い角を一本持ち、青い毛と、真っ白な毛に包まれた、雷を纏った馬の様な生物だった。
ああ、そう言えば彼が言ってたな。転生するって。
しかし、つまりここが《練習の世界》か?
・・・もう考えるのやめようか。
とりあえず、問題なく動ける。身が軽く、ジャンプ力もかなりある。・・・羽無くてよかった。
見た所ここは雪山だろうか?
寒くないのはこのカラダだからだろう。
そう言えば、魔法は使えるのだろうか?
ザオリクは・・・死体がないから無理だ。
ザラキは・・・気が引ける。と言うか生き物をまだ見ていない。
なら、マヌーサ辺りだろうか?
手が無いので、詠唱くらいしかないだろっ!
・・・えっ。念じたらなんか出来たんですが。
ついでに雷も落ちたのですが。
何ですかこれ。いや、本当に。
そうか。念じたり、叫べば出来るのか。分かった。
しかし、ここまでは良くても問題は衣食住だ。
衣・・・は要らないだろう。
食・・・肉食か?何だか嫌だな・・・
まずは住処を探しますか。
私は、とりあえず下山してみることにした。
《幻獣神官下山中・・・》
ああ、いい洞穴があった。外から分かりにくいし、いい感じに暖かい。地熱?でしたっけねぇ・・・
地面に寝る、というのは野宿で慣れていましたが、近くに毛皮が放り出されていたのでそれをベットにすることにした。
暖かい・・・姫様も暖かかったなぁ・・・。
そのまま、眠りに落ちよう、とした時だった。
「グルァァァァ!」
獣の咆哮が鳴り響いた。洞窟の入り口の近くだ。
なんだと思って出て見る。
大きな前脚には翼がついており、どこか原始的な感じの、龍がいた。オレンジというか黄土色というか、そんな色合いをした龍は、こちらを向いた。
「グルルル・・・(食い物だ・・・)」
涎を垂らしたあと、こちらに真っ直ぐに突っ込んできた。
私は、軽くそれをかわした。
龍は勢い余って山壁に牙をくい込ませてジタバタしている。
個人的には、殺めるのは最終手段にしたいので、まずはマヌーサで追い払おうか。
『キュウウ・・・ヒィィイ!(ふう・・・マヌーサ!)』
幻惑を見せる霧が立ち込める。龍は牙を岩から抜き、こちらを向こうとした瞬間に呪文が発動したようだ。
龍は一瞬、驚いたようだが、スグにたちどまり、
「Guoooooooooooooo!」
鼓膜が破れるかと思うほどの轟音で、咆哮する。
霧も払われた。
スグに攻撃に転じようとした瞬間、龍は突進しながら目の前にいた。
《死》
その文字が脳裏をよぎった。ああ、もう死ぬのか、と。
そう思った瞬間、私の周りから黒い髑髏のような塊が、龍に向かって飛ぶ。
龍に髑髏が当たった瞬間、地に倒れ伏し、動かなくなった。
ああ、そうか。咄嗟に私はザラキを唱えたいたのか。
これは怖いな・・・。
そう思いつつ、龍の前に行き、この呪文を試すことにした。
『キュイイ・・・(ザオリク・・・)』
パァァ・・・と光が龍を包むと、数秒後、龍は目を覚まし、首を持ち上げてこちらを見た。
「グルル・・・(俺は、死んだんじゃ・・・)」
『ヒィィィン・・・(御免なさい、私のせいです・・・)』
「ガルルッ?!(お前がっ?!)」
龍はバッと立ち上がり、突進ではなく、こちらを向いた。
『ヒィィィ・・・(ごめんなさい、ごめんな)』
「グラァァ!(お前、スゲェじゃねぇか!なんて言うんだ?!)」
帰ってきたのは予想外の答え。
とりあえず答える。
『ヒィィィ(わ、私はクリフトと申します)』
「グララァ!(クリフトっつーのか!俺はティガだ!なぁ、さっきは襲っちまってすまねえな・・・
腹減って・・・)」
お腹すいてたんですか・・・なら、襲われても仕方ないですよねぇ・・・。私の方が小さいのですし。
そう納得したら、私の腹の虫がなりました。
グウウゥ
『ヒィィ(あはは・・・私もお腹空きました・・・あ、襲われたこと、怒ってないですよ)』
「グララ(本当にすまねぇ。お詫びと言ってもなんだが、いいポポの狩場、一緒に来ねぇか?お前も肉食だろ?)」
『ヒィィ(いいのですか?ありがとうございます)』
もういいか。うん。生き残るためには色々あれですし、もう私は神官では無いですし。
とにかく、私はティガさんについていき、その《ポポ》の狩場に案内してもらいました。
ありがとうございます。
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