ダンまちにアクシズ教を!【更新停止】   作:アクシズ

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後始末は大変です

 

 目が覚めると、そこには大好きな母アクアの姿。どうやらわたしは膝枕されているようだ。ここに楽園はあったか。

 

「あっやっと起きたわ!大丈夫?ケガは治ってるはずだけど、どこかおかしなところない?って聞いてよかずみん!何だか色々ありすぎて私面倒くさくなっちゃった。あんたが決めてちょうだい!」

 

 よし寝起きからアクアは絶好調のようだ───そういえば先程中々酷い目に合わされたのでしたっけ。まぁあんなもの“冬将軍さん”(※1)に比べれば大したことなかったですけどね!わたしはあれに3回挑みましたが、いずれも瞬殺です首ちょんぱです。冬将軍さんまじ冬将軍。だがいつかあのあんちきしょうに逆土下座させるのが、わたしのささやかな願いでもあります。

 

 ウィズのスパルタ特訓に比べても楽なものです。あのリッチー最初は優しかったのだが、わたしが色々出来るようになってきたら、昔の血が騒ぐとかぬかし始めて、あの胸と同じく凶悪な本性を現しましたからね。わたしの知り合いの中で、戦闘中テンション上がったウィズ程怖い存在はいません。(※2)

 

 それはさておき『神の恩恵』思った以上のものでした。オラリオにいる有名な冒険者には、レベル7とかいると村人から聞いてます。3であれだけの身体能力。レベル7ともなればどれ程のものか。1レベルの差がどれくらいかも知りたいです。我々の世界でいうレベルとは、上位の数字が違うことから予想はしていましたが、1レベルの重みが相当違うようですね。

 

 それが神へと至る道だというのなら、何とかアクアにも、その恩恵とやらの授け方を、学んでもらわなければ!

 

「ちょっと聞いてるのかずみん?ぼぅっとしちゃって大丈夫?」

「あぁすみませんアクア。体の方はアクアが治してくれたのなら完璧です。それで面倒なこととは?」

「それはそこの盗賊Aから聞いて頂戴」

 

 盗賊A・・・なんともモブっぽい名前のつけられ方をしたものだ。言われた本人はさほど気にしているようには見えないし、いいのだろう。

 

「そんじゃぁ俺から報告しまさぁかずみんの姉さん」「まて、その姉さんという呼び方をやめてもらおうか」

「じゃあかずみんさんか?」「さん付けとかもいいですよ。わたしはまだ7歳。それなりに高貴な血筋ですが、普段敬られるような生活はしてませんので、自分より明らかに年上のオッサンにそんな接し方されてもやりにくいです」

 

「「「・・・・・・・・・7歳・・・だと・・・?小人族(パルゥム)じゃなかったのかよ」」」

 

 そんなこんなやり取りしつつも、アクアの頭を悩ませた問題というのは、いくつかあった。

 

・わたしが寝てる間に、何人か外に出ていた盗賊達が戻ってきたらしい(既に神の拳で床に沈んでいる)しかもまだ数人戻ってない者もいる。

 

・盗賊A~Fをはじめ、元ボスに逆らえず仕方なく盗賊してた連中と、根っからの悪はどう扱うか。

 

・お宝がたんまりあったんだが、もの欲しそうな目で見ているもの多数。

 

・囚われていた女性達は、一人の幼女を除き、帰る場所があるのだという。この幼女2.3歳の扱いはどうするか。

 しかもその幼女はアクアしか言葉が通じないのだそうだ。共通語(コイネー)と呼ばれるものでなく、姿から見て恐らくアマゾネスの言葉だろうとのこと。幼さゆえか自身の名すらわからぬらしい。勿論元いた場所もわからない。

 

 うんメンドイ、これはアクアでなくても、放り投げたくなりますね。なので困った時のアクシズ教です。サクサク終わらせましょう。

 

「ではアクシズ教特別司祭であるこのわたしが、さっさと方針を決めます。異論は許しません」

 

「盗賊の扱いはこうです。Aから見て更生の余地がありそうな者は、アクシズ教に入信し、毎日3回アクアに対して祈りを捧げること。それで許します。残りの悪と判断した者達は、ここから近くにある、犯罪者を裁くことが出来る、然るべき場所に連れてき後は任せます」

「アクシズ教ってのは何だ?『いいからまずは聞きなさい』おっおう」

 

「宝に関しては半分は我々が頂きますが、残りに関してはあなた方で分けなさい。再起をはかるにしろ、ただ元いた場所に戻るにしろお金は必要でしょうからね」

「おおおおおおおおお!!!天使だ!天使がここにいるぞぉぉぉ~~~~!!!」「ありがとう!ありがとう!」「ハァハァかずたんマジ天使」

 

「囚われの女性の帰る場所を聞いて、その方向が自分の目的を沿うものかどうか、皆ですり合わせをしなさい。そして女性1人につき最低1人の男性がついて、そこまで送るのです。男の方が多いですから出来るはずです」

 

「アクシズ教とは偉大なる水の女神アクアをご神体とし、崇める最高で最強な宗教です。詳しい事は説明書を用意してあるので後で読みなさい。兎に角アクアを崇める気持ちがあれば後は大体おっけーです。」

 

「ではわたしは残った幼女とやらと話してみます。皆さんはまずAの指示に従い、アクシズ教徒になる者はこの入信書に必要事項を記入後、女性達とのすり合わせに移行。まぁ勿論女性陣も入信大歓迎ですからね!今入れば今後の人生幸せにおくれますよ。ただでさえ美しいあなた達だ、更にモテモテでウハウハになること間違いなしです」

 

 そうして場は動き出す。

 

「さすが私の娘ね!立派な指示とその雄姿、しっかり撮っておいたわ!」サムズアップを決めるアクア。

「やればできる子ですからね、後でそれ見せて下さい。ちょっと寝起きでテンション低かったので、仕草が甘かった気がします」

 

 我々はとりあえず幼女担当となることとしましょう。警戒しているのか、皆とは離れたところで、一人佇む幼女の元へアクアと共に向かう。

 アクアが近づいてくるのがわかったのか、ただ一人言葉が通じたこともあり、嬉しそうだ。

 

「幼女よ、私は戻ってきたわ!」「・・・おかえり」

「よしよし、エリスから『神サマ親切サポート』によって転移先の言語や最低限の知識には、この子の言語も含まれていたようです」

 

「あらかずみん、その『神サマ親切サポート』(※3)なら言ってくれれば、私でも出来たのに」

 

(直接脳に情報を叩き込むという性質上。運が悪いアクアにやってもらい、うっかり脳がくるくるぱーになったら、怖かったとは流石に言えませんね)

 

「では次の機会はアクアに頼むことにしますね!さぁ名前もしらぬ幼女よ、わたしの言葉はわかりますか?」「・・・うん」「あなたは元いた場所に帰りたいですか?」「・・・うん」「そうですか・・・」

 

「ではまず名乗りましょう!我が名はかずみん、自分の名前もわからぬ幼女を元いた場所へ帰す者!」

 

 ふっ寝ぼけた頭がしゃっきりしました。やはり名を名乗るのは気持ちいい。この喜びを感じることが出来ないとは、可哀想に。

 おや幼いながらもこの私の名乗りのカッコ良さが分かったと見える、キラキラと目を輝かせておるわこの幼女くっくっく。

 

「・・・かずみん・・・あくあ」わたし達を指さしながらそういう幼女。

 

「そうよ、私はアクア!かずみんが面倒みるというのなら、私も付き合いましょう!安心なさいな幼女よ、汝は女神アクアの庇護を得た。きっと元の場所へ帰れるでしょう!」

 

 アクアが全ての者を安心させるだろう、素敵な笑みを浮かべてそう言った。

 

「・・・うん!」

 おやちょっとだけ笑いました。そうですアクアと共にいると皆が皆笑顔になるのです。素敵ですアクア!ここに未来のアクシズ教徒がまた生まれましたね!この場面は映像に残しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからわたしはお宝鑑定士(※4)としての力を発揮し、何となく公平になるように分け与え、残りの作業はほぼ盗賊Aにぶん投げた。

 今わたしがやるべきことは、アクアと共にこの可愛らしい幼女と遊ぶことだ!キャッキャ!盗賊Aが先程からわたしを見つめているが、そんな視線には気づかないったら気づかない。

 

「・・・疲れた」「そうねかずみんもいい働きしたし、後は大人たちに任せて私達は寝てましょうか!」

 

 こういうナチュラルに他人を煽るスキルは、まだまだアクアにかないません。あんたも大人じゃないの?とかずっと遊んでなかった?みたいな視線が多数送られてきますが、我が母には通用することはないでしょう。

 

「そうですね、では盗賊Aよ全て終わったら教えて下さい」

 

 おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

「おいっおきてくれ」ゆさゆさ「なぁもう全部終わったぜ?早く出ないと、また残りの奴らが帰ってきちまうかもしんねぇ」

 

「むぅ誰ですか、我が安眠を妨げる愚か者は・・・」ぐう

 

「そういうのいいから!かずみんが起きてくれねぇと、流石にアクア様をゆすって起こすわけにゃいかねぇだろう?てかこの状況でぐうぐう寝るあんた達、図太いにも程があるだろうに」

 

「A?女の子に対して太いとか言ってはいけませんよ?全くいい大人がそんなんだから奥さんに逃げられるのです」

「な!?べべべ別に逃げられてねぇし!俺には可愛い娘がいるし!それよりだ!お前さんらはあのアマゾネスをかえしにいくなら、港街メレンに行くんだろ?俺達あの街の生まれだからよぉ一緒させてくれや!」

 

 メレンに決まりだね!みたいなノリで話されても、正直わからないのですが、あの幼女は、元の居場所を覚えてないといいますし、人の出入りが多いであろう港街は選択としてありですね。

 

「仕方ないですね、足引っ張るんじゃありませんよ?」「でぇじょうぶだって!俺の生まれ故郷だからな~こんな稼業に身を落としちまってからあそこにゃ帰ってないが、変わらないものもあるだろうよ。案内でもさせてくれや」

 

 そんなやり取りをしているところへ、丁度話題の娘さんがやってきた。

「アクア様にはすでにお礼をいいましたが、かずみんあなたにもありがとう。もうここから抜け出すのは無理かと、半ば諦めかけてたけど本当に、本当に助かったわ。しかもお宝まで頂いて感謝しきれないわ」

 

 目に涙を浮かべながらもそういう娘さん。

 

「えぇいいんですよA子。盗賊Aの娘とは思えないくらい、良く出来た方ですね!これからも苦労かけると思いますが、どうかあの駄目父を見捨てないであげて下さい」

「おいしまいにゃ俺泣くぞ?いい歳したおっさん泣いちゃうぞ?それに娘にはちゃんとした可愛い名前があるというのにA子とか」

「いいのよお父さん。私は盗賊Aの娘A子。メレンの街までよろしくね、かずみん」

 

「はいよろしくされました!」

 

 さて次なる行先は決まりましたが、その前に!新たなアクシズ教徒達に、尊き教えを直接叩き込んでやるとしますか!ここで別れることになろうとも、アクアの偉大さを知れば、皆が自発的にアクシズ教を広めたくなるはずです!

 

 




(※1)冬将軍 雪精という小さな白い大福の様な存在が、危機に陥ると出現する精霊。姿形は日本の鎧武者。出会ったら即土下座しないと首を刀で切られる。

(※2)テンション上がったウィズ 普段は温厚で優しい言葉使うのだが、この状態のウィズは一昔前の暴走族、レディースみたいな存在へと変貌する。オラオラである。

(※3)神サマ親切サポート 異世界転生や転移する際、転移先の言語や最低限の知識を一瞬でインストールしてくれるもの。ただしその作業は対象の海馬や大脳皮質周辺部に、瞬間的な高負荷をかける必要があるため、まれに対象者の脳が使用困難状態(くるくる●ー)になることがある。

(※4)お宝鑑定士 これはへっぽこ魔道具店、店主ウィズから認定されたもので、その信頼性は謎。


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