ダンまちにアクシズ教を!【更新停止】 作:アクシズ
誤字脱字報告ありがとうございます。修正しました。
───昨日はお風呂入ってからの記憶が曖昧になっちゃってるけど、朝ごはんを食べたらかずみんと修行の続きだ!昨日は途中から家に帰っちゃった、お爺ちゃんとアクア様が一緒に見ててくれるみたい。少しは成長した僕を見てもらいたいな。
僕の村には同じ年の子が全然いない(結構上か赤ちゃんとか)。だからかずみんとのやり取りはなんか嬉しい。ずっと一緒いてくれないかなぁ。
あれ?かずみんの“紅い瞳が爛々と輝いてる”(※1)。僕の目はあんなに光ったりしないよね?何だかかみずんの“漆黒の魔法使い”っぽい恰好(特にあの眼帯!)(※2)とか、喋る言葉とか一々カッコイイんだよなぁ。
でもお爺ちゃんに言ったら、『ベルよ眼帯というものはケガをした時に付けるもの。しかしあの様子だと随分前にケガを負ってもう治ることはないのであろう。女の子が自身の体に消えない傷を負ったのだ。決して触れてはならんぞ』だって。それなのにあんなに元気なかずみんはやっぱりカッコイイや!
「さてベル、まずは昨日の復習から始めますよ」
「うんわかったかずみん!今日も一日お願いします!」
「ええこちらこそよろしくお願いします。ではまず『アクシズ教教義』から」
『アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、上手くいかなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは世間が悪い』
『自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても明日は何が起こるか分らない。なら、分らない明日の事より、確かな今を楽に行きなさい』
『汝、何かの事で悩むなら、今を楽しくいきなさい。楽な方へと流されなさい。自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい』
『汝、我慢することなかれ。飲みたい気分の時に飲み、食べたい気分の時に食べるがよい。明日もそれが食べられるとは限らないのだがら……』
『人生には選ぶことが難しい選択がある、人は心の底から難しい選択に迷ったとき、どちらを選んでも後に後悔するもの、どちらを選んでもどうせ後悔する。ならたった今、楽な方を選びなさい 』
『犯罪でなければ何をやったって良い』
『悪しばくべし』
よし決まった!アクア様もかずみんも嬉しそうだ。でも何でだろうお爺ちゃんの笑顔が少し曇って見える。
「次は名乗りです。まずはわたしから。名乗られたら名乗り返す。このタイミングは重要ですよ。試験に出ます」
「我が名はかずみん!アクシズ教特別司祭にして、未来の英雄ベル・クラネルを見出した者!」
僕を未来の英雄と言ってくれるかずみん。ホントに──ホントに嬉しいよ!
「我が名はベル・クラネル!未来の英雄にして、悪魔っ子以外種族問わずのハーレムを築く者!」
「ふむん。あなたに『魔力』があればここから更に、背後に雷落としたり色々指導出来るのですが、それ以外は素晴らしい出来でした。あなたの熱き魂しかと受け止めましたよ・・・・・・合格です」
「やった!これもかずみんのおかげだよ!でも魔力かぁ僕もいつか、かずみんみたいに『魔法』使ってみたいなぁ」
「我が師がこう言っていたことがあります。魔法は願いから生まれたと。そしてわたしは楽して生きたいと願い、数々のスキルや魔法を手にいれました───ベル楽に生きることです、それがアクシズ教の教えであると共に真理です。もしも今楽しくない生活をおくっているのでしたら、それは世間が悪い。常に楽しい事を探しなさい、あなたはやればできる子なはずです・・・」
「うんわかった!今もすっごく楽しいけど、これからも楽にいくね!」
「えぇ同士よ!我らが逝く楽道に祝福を!!」
なんだろうこの胸が熱くなる想いは───きっとかずみんも同じような気持ちでいてくれてるだろうと、何故だか確信出来ている。僕たちの間には、確かな繋がりが出来たんだ!
「さてアクシズ教徒として生きる気持ちが十分でも、英雄になる為には戦う技術も必要でしょう。体を鍛えるのは専門外ですからあなた自身で何とかするとして、次はスキルの復習をします!」
「まずはわたしがあなたに授けた、あの伝説の技を見せてください!」
「よしやってやるぅ!やってやるぞ!これだ【スティール】ッッ!!」
スキルを使用した瞬間、手の中になにかを掴んだ感触が──
「よし掴んだ!ってあれ?・・・石ころ?」
「ファ~ハッハッハァ~!スティールは『相手の持ち物を奪い去る能力』です。それがこういったゴミアイテムでさえ対象なんですよ。昨日のベルはただ『運』が良かっただけです」
「なので基本はゴテゴテと物を持っていそうな相手ではなく、明らかに装備数が少なそうな相手だと効果的ですよ」
「そっか別に狙ったものをいつも取れるとは限らないんだね」
「それも『運』次第といったところです、かの英雄カズマさんは狙ったパンツは絶対逃がさなかったといいます」
「狙ったパンツは逃がさない!くぅ~何てカッコいいんだカズマさん!!!」
「その気持ち分かりますよ、後はただ修行あるのみです。では次は敵感知、潜伏、逃走、狙撃に関して応用編です」
「なぁ女神アクアよ、本当にそんな英雄がいたのか?ある意味漢って感じはするが・・・」
「ハハハ・・・そうね~カズマさんはカスマ、クズマ、ゲスマやら呼ばれる程の鬼畜男な上に、更にお調子者でヘタレだったりしたけど、基本的にはお人好しの善人だったわ!何だかんだ言いつつ困った人を助けちゃったり───そうねあの男はツンデレだったわ!」
「孫がクズネルとか呼ばれる未来を想像したら、思いの外辛いんじゃが!」
「大丈夫よ!あの子はいい子だわ!ちょっとかずみんに影響されて中二病になりそうだけど、兎に角大丈夫ったら大丈夫!」
「まぁ中二病は男の子なら大体かかる病気と思えばよいか」
「それこそうちの女の子は、一生かかり続けるだろうから余裕よ!」
何やらお爺ちゃん達がごにょごにょしてるが、集中集中!応用編か、昨日は単純は反復行動をひたすらしてたんだよね。
「これは『ソロ』でいることを前提とした流れです」
「まずは敵感知で“敵を知る”。そして潜伏して“敵を見る”からの、狙い撃つという気持ちに乗せての
「自分と敵の戦力を計ることはとても重要です。勝てないと思ったら迷わず逃げることです。これらのスキルは絶対ではありません。余りにも格上の敵には、全く通じないってこともあり得ます。もしもの時は『英雄パワー』(※3)で何とかするのですよ!」
英雄パワーってのが何だか分からないけど、忘れないよ。
「慣れた敵ならば、潜伏から武器での直接攻撃も有効なはずです。ただし接近戦は危険度が増しますから気を付けて下さい」
「パーティでも似たような流れは作れるのですが、体の接触がないと潜伏出来ません。逃亡は自分のみの効果です。ただ“PT全員でのハイドアタック”(※4)は強烈ですからね!夢が広がるでしょう」
「パーティかぁ、いつかかずみんと一緒にダンジョンに行きたいなぁ」
「一度くらいならいいかもしれませんが、わたしの場合高確率でダンジョンを破壊しちゃいますよ?」
「えっと壊さない方向でお願いします」
「まぁ機会があれば、どうにも紅魔族の血なのか狭いところでの戦闘は、派手な魔法をぶっ放せないので、ストレスがたまるのです。次はドレインタッチにいきましょう」
紅魔族・・・魔王と戦う為に生まれた種族だっけ。ホント一々カッコいいところはずるいと思うんだ。
「これは相手のどこを触ろうが効果発動することが出来ますが、服の上より直接肌。それも心臓の位置に近い方が効率がいいとされます」
「えっと心臓というと、このドクドクいってるところ?」むねのあたりを押さえて言う。
「ええそうです。昨日教えたことに加え、タッチする箇所にも気が回るようになれば上出来です」
「うんわかったよ」
そうして、実技も交えて応用編の特訓は夕方まで続いた───
♢
なんかみんな大変なことになってる・・・夕飯を食べていたらアクア様がかずみんにお酒が欲しいと言い出したんだ。するとかずみんが家の外へ出て、玄関先にお酒の泉(※8)を魔法で生み出しちゃった!魔法ってホントぉ~~~~~に凄いや!
それからはアクア様が『宴会芸』とかいうのをやり始めて『あれは正に神技って言うんだと思う!』すんごく感動した!お爺ちゃんなんか、何が楽しいのか服を脱ぎ始めて踊りだしちゃうし、かずみんまで一緒に服を脱ぎだして踊りだす。
僕はちょっと恥ずかしいから、少し離れたところで眺めてたんだけど、騒ぎを聞いた村の人達まで乱入してきちゃって、外はもう暗いのに火を焚いて村広場での大宴会に発展しちゃった。何でもかずみんの生み出したお酒は凄い美味しいんだって。小さい子は飲ませて貰えなかったのがちょっとだけ悔しい。でもみんな楽しそうだから僕も何だか嬉しいや。
ずっとこんな日々が続けばいいのになぁ───
そんな気分に長いこと浸っていたらかずみんが立ち上がり、皆の注目を集めだす。
「さてそろそろお開きの時間ですかね、わたしもアクアの娘。母に負けじと練習した宴会芸をお見せしましょう!」
【
かずみんが早口過ぎてよくわからない言葉(なんちゃらッくす?)を言い放った後、夜空に大きな大きな花が沢山沢山咲いたんだ・・・
何て綺麗何だろう、アクア様の芸はこうなんていうか、こう匠の技って感じでグイグイ引き込まれるんだけど、かずみんのこれは派手だ。爆発するようにドン!ドン!と音を鳴らしながら、暗かった空を真昼間みたく明るくしちゃうなんて!
「うぉぉぉぉぉおぉ!」「すげっぇぇぇl」「キレイ『君の方が綺麗だよ』えっそんな、ポッ」「「「「「「爆発しろ!!!」」」」」
みんなそれぞれ楽しんでるところ、最高の技を見せてくれたかずみんがこっちにくる。
「ありがとうかずみん!凄いよこれ、僕もいつかこんなの出来るかな!?」
「どういたしましてです。このスキルは無駄に魔力を喰いますから、ちょっと難しいかもしれませんね。その変わりといっては何ですが、アクシズ教徒001であり、わたしが初めて先生した記念として、あなたにこれをプレゼントします」
そういうとかずみんが一本の短めの剣?を渡してくれた。
「えっとこれは剣?」
「これは我が家に代々伝わる《宝刀ちゅんちゅん丸》(※6)を模したもの。わたしが昔、師匠と共に作ったものです。切れ味は大したことないですが、【不懐の呪い】というものが掛かってますから、そうそう壊れません」
「そっその・・・わたしには友達は沢山いるけれども、殆ど年上の者ばかりでして、実はベルのように同じ年くらいの友達というのは、初めてなのです。ですから壊れない友情を願って───受け取ってもらえませんか?・・・」
───それって僕も同じ
「勿論だよかずみん!僕の方こそお願いするよ!僕もさ、この村には同じ年くらいの友達がいなくて、かずみんとのやり取りは凄く楽しかったんだ!ありがとう、大事するよ!」
何だかお互い照れくさくって、何とも言えず空に浮かぶ花を眺めてると。
「わたし達は明日にはこの村を出ていくでしょう。ですが、ずっと友達ですよ」
「そっか・・・そうだよね、かずみんにはアクシズ教を広めるという目的があるんだし」
これからも一緒にいたいと思ったところで、これは悲しいや・・・でも僕に夢があるようにかずみんもなんだよね。
「約束しましょうベル。我ら二人、姓は違えども兄弟の契りを結びして、共にアクシズ教を気の向くままに広めんと」
「そしていずれあなたは
かずみんの瞳が今日“一番の紅い輝き”を放つ。
「うん約束!ってええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!????ちょっと?僕の英雄だって大きな夢だと思ってたんだけど、神って何!?かずみんってばスケール大きすぎじゃないかな!?」
「夢は大きい程おっぱいのサイズも大きくなるそうなのです。今は真平ですけど次会う時にはバインバインになってますから、楽しみにしててくださいね」
「それはそれでビックリだよ!?ほんともう君には驚かされてばかりだよ」
「でも────────我が名ベル・クラネルにおいて誓おう!僕たちはずっと・・・・・・友達だよ!」
「ベル!」「かずみん!」ガシっ!っと音が鳴る程の強さで抱きしめあった。
そしてその二人の様子を、アクアとベルのお爺ちゃんが微笑んで見守っていた。
「ところでこの夜に咲くは花はいつまで続くんじゃろうのぉ?」と村人Aが言う。
「あぁそれならかずみんの魔力が続く限り終わらないわ、か~ずみ~ん!花火いつまで続くのっだって!」
「ん?まだまだ魔力残ってますから、朝になるまででも咲かせてみせましょう!」
「「「ちょっ綺麗なのはいいんだが、音うっさいしそろそろ寝ないといけないだが」」」
あっ何となくわかる。今かずみん“すっごくいい笑顔”になってるから、何かやらかす気だ!
「では最後に我が奥義をお見せしましょう!【深紅の流出を以て、新たな花火を覆さん】」
かずみんが何やら奥義を見せるといい呪文を唱えだすと、夜空に花火とはまた違う、大きな模様が浮かび上がる。凄く綺麗なんだけど、何かこう全身に震えが走るこの感覚はなんなんだろう!
「おい!いったい何やらかす気だ!?とんでも魔力を感じるぞ!」お爺ちゃんがかずみんに問いかける。この感覚が魔力?「大丈夫よ、魔力が尽きないと花火が消えないから、最後に特大な花火を上げるだけよ───いけぇ~~~~かずみん!」とアクア様が答える。
「はい!咲かせてみせましょう!大花火!──────【エクスプロージョン】───ッッッッッッ!!!!!!」(※7)
今日一番の大きな、それは大きな花火が咲きましたとさ。
(※1) 紅魔族は興奮すると瞳が輝きだす。
(※2) かずみんの左目は別に怪我をしているわけではない。本人曰く左目の眼帯には、ナニカが封印されているらしい。
(※3)英雄パワー 英雄がどんな無茶な状況に陥ったとしても、何とかしちゃう力。
(※4)皆一斉にハイドアタック MMOなどで、皆で不意打ちからの一方的なリンチ。やられる方からしてみたら理不尽な暴力。相手は死ぬ。
(※5)無限花火 オリジナルスキル。使用者の魔力が尽きるまで、花火を揚げ続ける宴会スキル。
(※6)ちゅんちゅん丸 かの英雄カズマさんが自身の故郷に伝わる武器『刀』を使ってみたいと、鍛冶師に依頼して作らせたもの。
(※7)エクスプロージョン それは人類の持てる最強クラスの攻撃魔法。消費魔力が半端ない上、取得する為の消費ポイントが多く、実際に放てる存在は少ない。というか大抵オーバーキルになる程、威力が高すぎだったりして使い勝手がすこぶる悪く「習得するのは頭のおかしい人だけのネタスキル」と言われている。
(※8)お酒の泉 オリジナルスキル。仲良くなった古竜に教わった竜言語魔法で、お酒の泉が沸き上がる。美味しいらしい。