ダンまちにアクシズ教を!【更新停止】 作:アクシズ
あれこれと考えながら歩いていると、ベルの家だという木造の建物が見えてきた。
「到着です。お爺ちゃんはやっぱりまだ帰ってきてないみたいです。とりあえず家へ上がってください」
中に入ってみるとそこそこ片付いた、木製品を主とした素朴な感じの部屋であった。
適当に座らせてもらいながら、ベルがお茶やらお菓子やら持ってきてくれるのを待つ。
「お待たせしました」
「いいえありがとうございます。ところで先ほど我が
「え!?かずみんのお母さんってアクア様の娘ってこと?それじゃかずみんも『神様』だったり?」
「いいえ違いますよ。わたしは『魔王』を倒す為に造られた『改造人間』です、生みの親はすでになくアクアに拾ってもらったのでアクアが母なのです」
「その“設定”好きねぇ」ボソっと言うアクア。
「『魔王』を倒す為に造られた!?ところで『改造人間』ってなに?何だかカッコイイ響きだけど『ヒューマン』とは違うの?」
「いえ忘れて下さい───あなたは『ヒューマン』なのですか?」
「え?うん」
「ならばわたしも『ヒューマン』ということでいいでしょう」
わたしが忘れて下さいの下りから、気落ちした様子をみせていると
「なんていうかごめんね?でも僕も生みの親がいないしちょっと似てるかもね、僕はお爺ちゃんと二人で暮らしてるんだ」
「そうなんですね。わたしも母と二人暮らしでしたし確かに似ているかもしれません。しかも髪の色は違えど瞳が仲良く緋色です。まぁともかく先ほどの質問いいですか?『神』の存在について」
「あぁうん。この村では見る機会なかったけど、有名な場所だと、少し離れたところにある“迷宮都市オラリオ”には沢山『神様』がいるんだって!」
『神』が沢山いる世界ですか、成程それなら一柱くらい増えても良さそうですしこれは期待出来るかもしれませんね。
「へぇ~沢山の『神』が下りてきて一体何してんのかしら?」
「えっとそれはアクア様の方が詳しいじゃないでしょうか?」
「いや私は最近こっちきたのよ、だから子供達にどういう風に伝わってるか聞きたいだけよ」
おおぉ!アクアの素晴らしい切り返しです。このいい事言った的な顔は映像に残しておきましょう。『撮るんだーZ君』(※1)をこっそり起動させます。
「なるほど、これはお爺ちゃんから聞いた話なのですが、1000年くらい前、天上の
「そして下界に住む子供達が、モンスターに蹂躙され絶望してるのをみた『神々』は、とある権能【
(いきなり良い情報を!これが『神』となる方法か!?)
「ふ~ん、まぁどこも似たようなことしてるのね!でも『神』に近づくとはトンデモ設定だわ」
「あのっ!・・・・・・僕をアクア様の【ファミリア】にいれてもらえませんか?まだ子供で出来ることはあまりないかもしれませんが、僕は冒険者になってダンジョンに行きたいんです!」
「お爺ちゃんが言うんです、男ならダンジョンで困ってる女の子を助けて英雄になる。そして『ハーレム』を目指さなきゃなって!」
「プ~クスクス!なんですかその超理論。面白いお爺ちゃんね!でも悪いわベル、私【ファミリア】とかやってないの」
うん、ベルのお爺さんは中々ファンキーらしいです。アクシズ教と相性が良さそうですね。
「そうなんですかぁ」
「まっあんた、そこはかとなく人が良さそうだから?きっとそのうちいい【ファミリア】とやらが見つかるわ!女神アクアが保証してあげる!」
あっごまかしました。
「ありがとうございます!」
凄いいい笑顔だけど、ベルは近い将来いろいろと騙されそうな気がします。やはりアクシズ教に入れて守ってあげるべきですね(確信)
「ベル我々は【ファミリア】という形はとっていませんが、アクシズ教というアクアの尊い教えを学び毎日面白おかしく過ごす素敵な教団ならあります」
「しかもまだこの地において一人も勧誘していないという、超レアな状態です!今ならアクシズ教徒001の称号と共に入団させてあげましょう!」
「そのアクシズ教徒になれば、僕は英雄になってハーレムを目指せるのかな!?」
「そうですね、アクシズ教徒はやればなんだってできます。実はわたしには
別に必要ないのですが、それっぽく占ってる風の動作を見せておきます。これが結構効くそうですからね。
「ふむふむ視えましたよ。まずはここで己を磨き、更にそのオラリオとやらでいい【ファミリア】を見つけるといいでしょう。そうすれば
「ハーレム王!!!凄い!!!アクア様、僕をアクシズ教に入れてもらえますか?」
「えぇいいわよ、アクシズ教はベル・クラネルのすべてを受け入れるわ!ようこそベルあんたは今日から私の子よ!」
「はい!アクア様!」
素晴らしい光景です。ここに未来の英雄が誕生しました。しっかり録画しましたし、帰ってから皆で見直すのが楽しみです。
「えっと儂の家で何をやってるんだあんたら?」
おそらくベルのお爺さんでしょうか?ベルに似ず日に焼けたえらくガダイのいいお爺さんです。
「あっお爺ちゃんおかえりなさい!えっとさっきゴブリンに襲われているところ、助けてくれた女神アクア様と、その娘のかずみんだよ」
「なんだって!?怪我はないのか?何だか色々と聞きたいことがあるがまずは大丈夫なのか!?」
「安心しなさいなお爺ちゃん。もしどこか悪くなったとしても私がちょちょいと治してあげるわよ、もうベルはアクシズ教徒。私の子供のようなもんだし」
おぅ不安から安心喜びからの、一気に困惑ってところですか。まぁ『神々』が沢山下界にいる世界といっても、誰でも『神様』バンザイって訳ではないですか。
「お爺さんご安心を。アクシズ教とは偉大なる水の女神アクアを『ご神体』とし、崇める宗教。その規模は2千万に届くほど。敬虔な信者が多く、アクシズ教徒は信仰心がとても高い。とわたしの故郷では言われています」
「そしてアクシズ教は全てが赦される教え。ハーレム対象が、獣耳少女でも、幼女でも、ニートでも、人外でも。アンデッドや悪魔っ娘以外であれば、そこに愛があり犯罪でない限りすべてが赦される───そう!あなたの推し進めるベル・クラネル
「なん・・・だと?」
「その驚きの気持ちはわかります。ですかこれ程寛容な教えはアクシズ教において他にはないでしょう、どうですかあなたもお孫さんと一緒に、アクシズ教に入りませんか?」
「いや魅力的な誘いありがたいが、儂は宗教団体に入ることが出来なくてな、儂がそんなこと言い出したらもの凄く怒りそうなやつがおるし。だがその教えは素晴らしいと思うぞ!」
「信仰は自由であるべきですので強制はしません。だがこの素晴らしさがすぐに理解出来るとは、やはりあなたとアクシズ教は相性がいいみたいですね!とりあえずはベルのことを認めていただけるだけで結構ですよ」
「あれっもうベルが入る事決定してるのか?ちょっと待ってくれ、そのアクシズ教?はそこの女神アクアの【ファミリア】ではないのか?入ったとしたら何かしら、【ファミリア】の為にしなければならないこと、とかあるのではないのだろうか?」
なるほど、入団だなんだとなると、まずはその【ファミリア】とやらと思われる訳ですか。入信書にもアクシズ教は【ファミリア】ではなく、他の【ファミリア】に入っていても問題ない。との旨は必要でしょうね。
『汝、我慢することなかれ。飲みたい気分の時に飲み、食べたい気分の時に食べるがよい。明日もそれが食べられるとは限らないのだがら……』
素晴らしいタイミングで、更にたまに発揮する『女神オーラ』(※2)を全開にしながら、いい笑顔で言い放つアクア。どうしちゃったんでしょう今日のアクアの出来る女神っぷりが半端ないです。最高ですよ母よ!
「今アクアが言った通り、好きなように生きればいいだけです。たまにアクアと遭遇するようなことがあったら、美味しいお酒でも献上すればとても喜びます。ただ今回に限り、少しの間、ここにいさせて欲しいのです。どうもベルとは似たようなシンパシーを感じまして、英雄になりたいというベルの願いを応援したいのです」
「さらにアクシズ教徒になるのでしたら、英雄になる為に役に立つであろうスキルを2、3伝授しておこうかと」
「スキルを伝授!?凄いそんなことできるの?」
「えぇアクシズ教徒はやれば出来る子よ。もし上手くいかなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかない場合は世間が悪いのだから安心しなさい」
うんうん頷いているアクアと、目を輝かせているベル。反対にお爺さんはまだ不安のようですね。
「どうにもお爺さんはまだ不安のようですから、特別にクーリングオフ制度を利用しましょう。とりあえず入団し、肌に合わないなぁとか思ったら、入団3日以内でしたら、すぐに取り消してあげるということでどうです?」
「うむお試し期間ということだな?ならばいいだろう。ベルとりあえずやってみぃ、そしてその道がハーレムへと繋がると思うたら、とことん突き進めばよい!」
「はい!お爺ちゃん!」
「うんうんいい話ねぇ。んじゃ早速かずみん始めちゃって?ベルにスキル伝授とか出来るかみて見たいし」
「わかりました母よ。ではこの入信書に名前、特技、趣味を書いて下さい。んで最後にここを押すとあなたの顔写真が撮られます。いい顔して下さいね!」
言われるがままに記入し、最後に指定されたところを押すと、ピロロロ~ン♪という音と共に、入信書が光だし「あわわわ」その光が収まった後、ベルの手のひらに収まるくらいの【アクシズプレート】(※3)が出来上がった。
「凄いってこれ僕の顔が写ってる?アクシズ教徒No.001 ベル・クラネル。カッコいいや!ありがとうございますアクア様!かずみん!」
いつ見てもこの【アクシズプレート】を貰い喜ぶ信者の姿とは、素敵なものですね。うんうんとやはりアクアも嬉しそうです。
「どれ見せてください。なるほど、スキルポイントは発生しましたか。今から外へ出てスキル伝授の儀を行いますよベル。そこに立てかけてある木刀も持ってきて下さい」
「うん!」
外へでて数
「いいですかベル。今からわたしがあなたへスキルを放ちます。あー別に痛かったりするような攻撃スキルではないので安心を。それとその木刀はしっかりと構えるように、ではいきます」
息を吐く時に腹が膨らむ逆腹式呼吸法で鼻から吸って鼻から吐く、そして何か必殺技を出しそうな雰囲気を醸し出しながら、無駄に魔力も放出しときましょうか。
「【スティール】──ッッ!!」
そのかけ声と共にわたしの手のひらには、狙った通りベルが持っていた木刀が握られていた。
「え?えぇ?離れていたのに、僕の持っていた木刀がかずみんの手に?」
「えぇそうです、これぞ『伝説の勇者カズマさん』(※4)が女神エリスから、最初に授かったとされるスキル、スティールです」
もう何か興奮しまくりのベルが顔を赤くしながらはすはすしてる。いいですね彼の感性は、紅魔族であるわたしと合いそうです。
「さきほどの【アクシズプレート】を貸してください。おぉちゃんと覚えられるリストに記載されているようです」
「ここにスティールと書いてあるのがわかりますか?『うん』ではこれをタッチして覚えますか?ハイと『えっとタッチで、ハイ』よし、これでベルはスティールを覚えました。おめでとうございます」
「えぇ!?いまので伝授完了?どうやったら使えるのかな?さっきのかずみんの構えを真似すればいいの?」
「その前にこのスキルの説明をします。技の名前はスティール。相手の身に着けているものを何か一つ奪い取る。そしてその奪い取れる物や確率はあなたの『運』に影響するのです。わたしの場合『運』がいいものですから、何となく狙った物を奪えたりします」
「あなたの場合はまず、ただ相手の身に着けているものを奪うと意思をのせ、魂からの叫びに身を任せながら叫ぶのです。『スティール』と、さぁやってみてください」
「えっとかずみんに対して、やっていいのかな?」
「もちろんですとも。遠慮せずやっちゃってください」
なにやら緊張した面持ちで深呼吸するベル。
「よーし、いくよ!──【スティール】!!」
まさか!?このすぅすぅする感じ、そしてベルの手に握られている、よく見覚えがある布切れは!!!
「やった!成功だぁっぁぁっぁ!ってこれ何だろう?凄く肌触りが良くてちょっとあったかい」
「─────ベル・・・どうやらあなたは本当に英雄の器があるようです。『えぇ!?』先ほど言いましたが、『伝説の勇者カズマさん』がこのスキルを伝授された時奇跡がおきたのです。試しに撃たせたエリスは幸運を司る女神。はっきりいって幸運の権現ともいえるエリスに、スティールを成功させる可能性などほぼ0に近しいでしょう」
「だが『伝説の勇者カズマさん』は成功させたのですよ。しかもあなたと同じく女神エリスのパンツを奪ってみせたのです!素晴らしい!わたしにはエリス程の『幸運』はありませんが、それでも下界にいる人間種には“じゃんけんで負けた事がありません”(※5)。そんなわたしからパンツを奪うとは!」
かずみんは大真面目だが、クスクス笑ってるアクアがいた。
「性格は全然違うけど、確かにカズマさんみたいな英雄になれちゃうかもしれないわね」
なにやらあわあわしてるベルが
「ってこれかずみんのパンツだったの!?ごっごめんね?」というが。
「気にしませんよ。それは記念としてあなたにあげましょう。大事にしてくださいね。それよりこの調子でジャンジャンいきましょう!」と言って出来る限りのスキルを伝授することとする。
♢
(スティールに敵感知、潜伏、逃走、狙撃だと?見た目はそれ程派手なものではないが、冒険者として生きていく上で、どれも優秀なスキルばかりではないか!このようなスキルをアクシズ教団とやらに入団するだけで手に入るというのか?)
「のう女神アクアよ、これらのスキルは誰にでも伝授出来るのか?」
「う~んどうかしら、才能が全くないとこうポンポン覚えることは出来ないと思うわ。あんたの孫は中々優秀みたいじゃない、良かったわね!」
何とも能天気そうな笑顔でのたまうが、この女神ことのやばさをわかっていないのではないか?
「いや良かったといえば良いのだが、そちらこそ良いのか?このような力を与えるなどと、
「ん?そんなん使ってないわよ。これは元々私の世界にある冒険者カードのシステムを、なにやら娘が色々周りの連中とやって【アクシズプレート】に転用しただけだから」
「このスキルの伝授システムを、そこな娘かずみんが作りだしたというのか?」
「まぁ大本は違うけど、プレートに関しては大体そうね」
「このスキル伝授はやはりこれからも伝え続けていくのであろうか?」
「どうかしら、今は直接あげてるけど、人が増えたら入信書も人伝になったりするでしょ?そんな人にまでわざわざ伝授とか、メンドイことはしないと思うわよ?それにさっきもいったけど才能がないとね、ベルには魔法の才がないみたいだし、魔法は伝授出来ないわ」
「魔法も才があれば出来るというのか?」
「まぁ伝授する側が覚えてるのが前提よ?このプレートで覚えられる魔法を使えるのなんて、私とかずみんしかいないしあんたが心配するような、この力が無差別に広がるようなことはないから安心なさい!」
そこまでわかっているのなら、まぁ様子見で大丈夫か?
「ここらの『神』なんか、恩恵とかいって色々ヤバイ力を子供達にあげたりしてるんでしょ?それに比べたら大したことないわよ」
「まぁ何とも言えんが、やたらと力をばら撒くようなやり方をすると、他の『神々』が何かとちょっかいかけてくるやもしれん。孫を応援してくれる神アクアに面倒事が降りかからんといいが」
「まぁ大丈夫よ!私これでもエリートな女神だから!(※6)その忠告は頂戴しとくわ、ありがとうお爺ちゃん!」
娘の方には全く悪意を感じられん。そして『神』だというアクアもまたかーーこれもベルが持つ『運』ということで見守るとするか・・・
♢
「さてスティールに敵感知、潜伏、逃走、狙撃と教えましたが、次はドレインタッチ。これは相手の魔力や体力を吸収して自身に補充したり、自身の魔力、体力を他者に受け渡したりすることができる、中々えげつない技です。ベルは弱っちいですからね、狙撃だけではモンスターを倒すことが出来ないかもしれません。そんなとき潜伏から相手の死角をつき、ドレインタッチで、体力なり魔力なりを奪ってしまうのをオススメします」
「ただしこの技は色々注意しなければならないことが、他のスキルに比べて多いですからね!いきますよ」
と日がくれるまで後はドレインタッチの微調整に費やしたわたし達は、くたくたになりながらベル家にたどり着く。
「なんだが今日一日で英雄に近づけた気がするよ僕!」
「気がしただけですよ。明日も修行しますから、今日はご飯食べてお風呂入ったらすぐに寝ましょう」
わたし達が外にいる間にお爺さんが既に、ご飯とお風呂の準備はしていてくれたようだ。ありがたい。
「ではいただきます」「「「いただきます」」」
あっという間に食べ終えたわたしとアクアは、先にお風呂へ入るとする。
「はぁ~いいお湯です。わたしも遂に先生デビューでウィズと一緒ですね!何だか会いたくなってきました」
「そうね、可愛い生徒が出来て良かったじゃない。それでどうするのこの先?」
「そうですね、明日一日は色々教えて、その後旅立ちましょうか例の“迷宮都市オラリオ”とやらにでも」
「あら随分早いのね、まぁ後は自分でなるようになれってところもあるし、あのお爺ちゃんなんか、明らかに『歴戦のオーラ』放ってるしね」
「確かにあのお爺さんは、アクセルの街にいる高レベル冒険者とも、いい闘いが出来そうな貫禄ありますね、ベルにはスキルだけに頼る事ないよう、戦いの基礎などはこれからもお爺ちゃんについて修行するのですよとは伝えてあります」
♢
二人がお風呂に入ったのを確認した後、ベルと爺は動き出した。
「ベル良いかよく聞け、これからいいと言うまで会話は極力小声で行うこと。そして儂の後をゆっくり音を立てずについてくるのだ!これは修行だぞベル!」
「うんわかった。どこにいくのか聞いてもいい?」
「男の戦場だ!いいかベル。いい女が風呂へ入っているのなら、男はそれを覗かなくてはな!これは─────ロマンじゃ!」
「覗きは・・・ロマン???」「そうじゃ!ロマンなのじゃ・・・わかるなベルよ?」
「うんわかったよお爺ちゃん!」
ゆっくりと近づいていくベルと爺は桃源郷にたどり着く。
(儂長生きしててよかった)(僕お爺ちゃんの孫でよかった)
二人の気持ちが一体化した瞬間であった。
戦いの基礎よりも、漢の浪漫を追及する修行をしてる二人がいた。
♢
「むっ外に気配が二つ、ベルにお爺さんどうしましたか?」
ガタっ!ガタっ!
「もう少し浸かっていたいのですが、待ちきれないようでしたら、一緒に入りましょう」
「うん!僕も一緒入る!」
(なん・・・じゃと!?)
早くも一人の裏切りによって一体化が解かれた瞬間であった。
そしてすぐにお風呂に入ってくるベル。
「おやベルだけですか?お爺さんは?」
「何かお爺ちゃんは恨めしそうな顔で僕を睨んで、部屋に戻っていったよ」
「あっあの何だか、僕やお爺ちゃんの体とアクア様は全然違うんですね!何だかとっても綺麗です!」
「ふふふベルは違いがわかる子よねホント。これからはアクシズ教徒として女神アクアを称えるのよ、そしてほめてほめ倒してちょうだい!」
「ベル褒めるのはアクアだけですか?わたしのナイスばでぇを見て、何か言いたいことはないのです?」
風呂が暖かいだけではない理由で、体を赤くしてるベルはかずみんの胸元に自分にはない模様を見つける
「かずみんその胸にある模様はなにかな?」
「これはですね『バーコード』といって改造手術を受けた際、発現したまさに『エリートソルジャーの証』なのです!昔の紅魔族はこの『バーコード』を他人に見られることを恥ずかしいと感じたらしいですが、わたしにとってこれは、まさに『聖痕』!むしろ目に焼き付けるといいです!」
「『エリートソルジャーの証』ッ!───『聖痕』ッッ!!いいなぁ。僕にも何かあれば良かったのに・・・」
「まっ大丈夫よ。望めばそのうち手に入ったりするかもしれないわ。悩むなんて時間の無駄よ、きっと大丈夫と気楽に生きなさい」
「はい!ありがとうございますアクア様」
「いったいどうしたのですかアクア?今日のあなたはホントに女神女神してますよ?熱あったりしませんよね?」
「なによ今日はすぐ女神と認めてくれる少年がアクシズ教徒になったりと、気分いいし女神したくもなったりするわよ」
「なるほど~でもそんなアクアも大好きですよ。明日からも楽しみですね!」
「ふふっそうね!さぁそろそろあがりましょう」
そして最後のアクアの笑顔に見惚れたベルがノックアウトされ、真っ赤になってブクブク湯に沈むというオチがついた。
「「ちょっ大丈夫(ですか)?」」
(※1)撮るんだーZ君 鍛冶スキル持つかずみんが、いつでもアクアの雄姿を録画出来るよう作り上げた。魔力操作で宙に浮かすことも可能な、超小型高性能ビデオカメラ。量産しその売上をアクシズ教の財源にしようかと目論んだが、悪用される恐れありとしてウィズに却下された。
(※2)女神オーラ アクアが女神オーラを全開にすると蒼く神聖なるオーラに包まれる。
(※3)アクシズプレート このすばの世界において、冒険者ギルドから発行される冒険者カードを真似て、作り出したもの。最初は教団員の証みたいなものだったが、誰かが言い出した、冒険者登録しなくても宴会スキルを覚えたい!との要望に応える為機能が増えた。
スキルポイントを保持してさえいれば、スキルを覚えることが可能であり、レベルアップしたり、ステータスが表示される機能はない。またスキルを覚えるには誰かに教えて貰う必要がある。信者が一番に取る人気スキルは勿論宴会スキル
(※4)伝説の勇者カズマさん その伝説の一つに、女性に対しスティールを発動すると、真っ先にパンツを奪い取る鬼畜の如き男だったとある。
(※5) かずみんは血筋の関係で、元から高い幸運のステータスを持っているところ。更に幸運の女神エリスからふんだんに祝福を貰っている為、途轍もなく豪運の持ち主。
(※6)私これでもエリートな女神だから! アクア様は本当にエリートな神様なのです。
スティール 相手の身に着けているものを何か一つ奪い取る。奪い取れる物や確率はステータスの『運』に依存する。
敵感知 近くにいるモンスターの気配を感知する事ができる。敵の数もわかる。
潜伏 周囲から気配を断つ。体のどこかに触れていれば発動している自身以外にも有効
逃走 敵から逃げる時回避力が高まる。術者にのみ有効。
狙撃 飛び道具を扱う際の飛距離が伸び、『幸運値』が高いほどに命中率が増す。
ドレインタッチ 相手の魔力や体力を吸収して自身に補充したり、自身の魔力を他者に受け渡したりすることができる。心臓に近いほど吸収、供給の効率がよい。本来はアンデッドの持つスキルである為、人間でこのスキルを持つ者はほとんどいない。