宴会の翌日・・・・・・
宴会の片づけを手伝って帰宅した小傘はいつも通り『道具屋 傀儡』を経営していた。
椅子に座りながら『鈴奈庵』から借りて来た道具に関係する本を読んでいた。
すると、一人の妖怪が御店へとやって来た。
その妖怪は癖のある緑の髪に、真紅の瞳。白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着用し、その上から同じくチェック柄のベストを羽織っていた。そして手元には布が被さった籠を提げていた。
それを確認した小傘は妖怪に声を掛けた。
「あら、幽香さんじゃないですか。いつもありがとうございます」
「構わないわ。貴方には結構世話になっているからね」
そう言いながら風見幽香は籠を小傘の前に置いて布をはがした。
そこには色々な種類の新鮮な野菜が入っていた。
「本当、幽香さんの作った野菜は綺麗で美味しそうね」
「当然よ、太陽の畑の日光を浴びて育ったんだから」
幽香は自慢げにそう言った。
その様子を見ながら小傘は幽香に頼まれていた物を渡した。
「はい、貴方から直すように頼まれていた如雨露よ。錆びにくい様にして置いたから」
「ありがとうね。これからも仲良くしていきましょうね」
「えぇ、本当にそうしたいものです」
そう会話を交わしながら幽香は如雨露を持って店を出て行った。
それを見送った小傘は野菜をしまうために店の奥へと入って行った・・・・・・
「はぁ、ミスティアちゃんは鈴奈庵に行っているし、朱鷺子ちゃんは彼に会いに行っていたわね。まったく、あの人も朱鷺子ちゃんも・・・・・・早く進展してくれないかしら?」
~・~・~
人里にある本屋『鈴奈庵』・・・・・・
そこには、ミスティア・ローレライの姿があり、手元には料理に関係する本があった。
すると、ミスティアに近づく者がいた・・・・・・
「ミスティアさん、いい本見つかりましたか?」
「あぁ、小鈴ちゃん」
彼女の名前は本居小鈴。
此処、本屋『鈴奈庵』の娘にして「あらゆる文字を読める程度の能力」を持っている。
「えぇ、今回借りようとしている本は見繕ったわ」
「そうですか、少し前に外来の料理本が入荷したのでどうかと思いまして・・・」
「そうなの?それじゃあ、それも借りれるかしら」
「はい、大丈夫です!!」
そう言いながら小鈴とミスティアは会計へと向かって行った。
その後ろ姿を部屋の隅から伺っている者がいた。
「あの者がミスティア・ローレライですか、スタンド使いと聞いていたのでどのような者かと思えば危機感が薄い妖怪ですか。まぁ、本当に注意しておく必要がある者は別に存在するのだけれど・・・・・・」
そう言いながら二本の刀を持った者は鈴奈庵を後にして行った・・・・・・
~・~・~
人里離れた所に建つお店、道具屋『香霖堂』・・・・・・
その店を営む店主、森近霖之助は何時もの様に道具の掃除をして過ごしていた・・・
それもそのはず、この店に訪れる者は滅多に居らず、買い物に来た者が居たとしても月に1,2回ぐらいだからである。そう、買い物に来る者は・・・
「こんにちは~」
「おや、朱鷺子ちゃんじゃないか。久しぶりだね」
「はい、と言っても4日前に来たんですけどね・・・」
「はは、そうだったかな?」
そこに朱鷺子が普段以上の笑顔を浮かべながらやって来た。
それを霖之助は少し顔を赤めらせながら、歓迎した。
今の会話からするに頻繁にこの店を出入りしている様だ。
すると朱鷺子は霖之助に近づくと、彼の傍に紙を置き開いた。
そこから多くの外来道具が出て来た。
「今回も買い取りをお願いしますね」
「おぉ、これはすごい。少し待っていたまえ」
霖之助はそういうと、道具の鑑定に移った。
その様子を朱鷺子は後ろから何故かうっとりした様な表情を浮かべながら眺めていた。
暫くして鑑定が終わったのか霖之助は朱鷺子の方へと向き直った。
その時には朱鷺子の表情は元に戻っていた。
「お待たせ、今回はこれくらいで買い取らせてもらうよ」
「はい、それで大丈夫です」
霖之助は示した額をそろばんで確認した朱鷺子の返事を聞き、会計所からその額を持ってきた。
そして、朱鷺子に渡す際手と手が触れ合ってしまい、お互いに顔を紅くして目を逸らした。
「あ、ありがとう、ございます!!」
「あ、あぁ・・・またよろしく頼むよ」
そう会話を交わすと朱鷺子は店を出て行った・・・
それを見送っていた霖之助は暫くボーとしていたのだった・・・