この鬼殺隊士に祝福を!   作:冬威

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盗賊少女にお宝を!2

 

 

 

 

めぐみんside

 

 

私は今、ギルドにきています。

 

 

 

朝食を食べ終えた後、シンジロウは直ぐに出かけてしまいました。1人残った私は、シンジロウに言われた通りパーティーメンバー探しを始めたのです。

 

…ですが、街で出会う冒険者達に声を掛けて回り、もうすでに半日が経ってしまいました。

 

(…どこも取り合ってくれませんね)

 

私がこのアクセルの街に来たばかりの頃は、アークウィザードで爆裂魔法を使えると言えば、直ぐに入れてもらえたのですが…。

 

爆裂魔法()()使えないと分かれば、手のひらを返したようにパーティーに入れてもらえません。この噂が広がり、紅魔族の爆裂娘と覚えられパーティーを組む前に断られてしまいます。

 

(シンジロウくらいですね。私の本質を知っても一緒にいてくれたのは…)

 

偶然声を掛けてきた、無一文のシンジロウに下心満載でお金を貸し、一緒にクエストへ。あの時もいつものように断られるのでは無いかと思いましたが、それでもパーティーを組んでくれました。

 

そして、今は他の人とクエストに出ています。このままでは…。

 

悪い考えを払うように頭を振り、よし!っと気合いを入れて立ち上がり、ギルドでパーティーを募集していないか探してみようと思います。

 

(シンジロウは大人ぶったところがありますが…。私と一つしか変わりません。大人ぶっている分、まだまだ子供なんですよ。私が側にいてあげないといけませんね‼︎)

 

 

 

 

そして現在、ギルドのボードでパーティーメンバー募集の紙を見ています。

 

『パーティーメンバー募集‼︎アークプーリストである女神アクア様と一緒に魔王をしばいてみませんか?パーティーはアットホームで和気あいあいです‼︎』

 

『※上級職に限る』

 

…これなら私でも入れそうですね。シンジロウは上級職ではありませんが、このパーティーには最弱職の冒険者もいるみたいなので、押せばいけそうですね。

 

募集されてる方は…。あの方達ですね。

 

ギルドを見渡すと、隅のテーブルに寂しそうに男女が座っていました。

 

(待っていて下さい、シンジロウ!必ずパーティーに入ってみせます‼︎)

 

私は気合いを入れ、口上に問題が無いか確認した後声を掛けました。

 

「パーティーメンバーの募集を見てきたのですが、ここでよいのでしょうか?」

 

「えっと、はいそうですが」

 

私の問いに緑色の変わった服をきた男の方が返事をしました。年は16〜17くらいでしょうか?水色の髪の女性も同じくらいですね。

 

おや?男の方はシンジロウと似た様な、異国の風貌ですね。来ている服もシンジロウが持っている上着に似ていますね。…おっと、話が逸れましたね。

 

それでは…。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者…!」

 

(ふっ…。決まりました!完璧です‼︎わたしの口上の素晴らしさに声も出ないようですね)

 

「……冷やかしにきたのか?」

 

「ち、ちがわい‼︎」

 

(マズイです!この流れはダメです‼︎…しかし負けませんよ絶対に‼︎)

 

こうして、私の戦いは幕を開けたのです。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

シンジロウside

 

ゴブリンの討伐を終え、無事にお宝をゲットし遺跡を出ようとしている。

 

(あの匂いは、なんだったんだろ?)

 

そんな事を考えていると、前を歩くクリスがピタリと止まり、俺の手を掴みながら《潜伏》スキルを発動させた。

 

「シンジロウ。いま《敵感知》に引っかかったんだけどね、初心者殺しが待ち伏せているみたい。このまま行けば確実に狙われるわ」

 

「でも、出入り口はここだけだよね?それに森迄は少し開けているから、隠れる場所もないよ」

 

俺の言葉にクリスは頷き、真剣な顔で言葉を発した。

 

「…うん。森に入っても初心者殺しに補足されてたら、逃げきるのは難しいの。…だからね、遺跡の前の開けた場所で迎え討って追っ払った方がいいわ。君は大丈夫?」

 

先程の戦闘で体力が減っている上に、水の呼吸の連発で体のあちこちに痛みを感じる。だが、そんな事を言っていられる状況じゃない。

 

「大丈夫だよ。遺跡を素早く出て二手に散った方がいいよね」

 

「そうだね。固まっていたら2人とも囚われるからね」

 

互いに頷きあい、出口までそっと近づく。

 

「行くよ。…せーの‼︎」

 

2人同時に飛び出し、左右に別れる。俺達が飛び出して一呼吸おくと、森の中から俺目掛けて黒い獣が飛び出してきた。

 

「ッ⁉︎ぐぅ!」

 

刀を鞘ごと抜きガードしたものの、スピードの速さに反応しきれず組み伏せられてしまった。

 

「グルルルァ!」

 

押し返そうとしても、力が強く逆に押されてしまう。

 

目の前に大きな二本の牙が迫り、押さえ付けられた肩と肋骨あたりに鋭い爪が食い込む。俺を殺そうと殺気立った目が、俺を睨みつける。

 

「シンジロウ‼︎」

 

ザシュ!

 

「グギャン⁉︎」

 

クリスが初心者殺しの背後から、ナイフで切りつけた。初心者殺しは俺から離れ、一度距離をとった。

 

「大丈夫?立てる?まだ戦える」

 

「コホッ!だ、大丈夫」

 

クリスはナイフを構えながら、初心者殺しから目を離さず俺に問い掛けて来た。

 

「よし!私が気を引くから、シンジロウは止めをさして」

 

「了解」

 

俺が返事をすると同時に、クリスは初心者殺しへと真っ直ぐに突っ込んでいく。

 

俺は隙の糸を辿り、ピンとはる瞬間を待つ。その間に《水の呼吸》を発動さる。

 

《水の呼吸》。全集中の呼吸と言われ、体の血の巡りと心臓の鼓動を早くさせる。血の巡りが早くさせることで、全身の筋肉と骨は強く、熱くなる。

 

 

 

ヒュウウウ…。

 

 

 

今できる最大限を呼吸へと集中させ高める。

 

鼓動が早く脈打つ、

 

全身の隅々に血が通う、

 

筋肉が燃える様に熱く、

 

高鳴る…。

 

 

 

ピンッ

 

 

 

隙の糸が張った。

 

「『弐ノ型 水車』!」

 

初心者殺しがクリスのナイフを後方に飛んで避けた瞬間。俺は全力で地面を蹴った。

 

その勢いのまま体を縦回転させ、日輪刀を初心者殺しの胴体に叩き込む。

 

鮮血が飛び散る。

 

「グギャン‼︎‼︎‼︎」

 

ひとつ大きな悲鳴をあげ、初心者殺しは地面へと倒れ込み起き上がることはなかった。

 

「ッ!…ハア、ハア」

 

「シンジロウ!…待ってて、すぐに傷の手当をするから」

 

クリスはポーチから回復ポーションと包帯を取り出し、手際よく傷の手当を始めてくれた。

 

「…ありがとう、クリス」

 

「いいよ、気にしないで。…まさか初心者殺しを倒しちゃうなんてね〜。最後の一撃なんてスゴかったよ!」

 

「クリスが居てくれたからだよ。俺1人じゃ殺されてたよ」

 

「あはは、それでも凄いことだよ!…それより歩ける?」

 

「ちょっと、キツイかも…」

 

呼吸を使いすぎた反動なのか、全身がガッタガタだ。耳鳴りもすごく、鼓動音が全身で響いているようだ。

 

炭治郎達も修行を積んでなお、使い過ぎると動けなくなっていた。それをスキルで覚えたばかりの俺では、まだまだ体がついて行けない。

 

クリスに肩を貸してもらい、刀を杖代わりにしてなんとか歩くことが出来た。こうして俺たちは帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

…ドーーン!

 

 

 

 

 

 

 

途中、街の近くの平原と思われる場所から、爆発音が聞こえた。

 

街に着くと俺はクリスに宿まで送ってもらい、毛布にすぐさま倒れ込んだ。

 

(…なんか、帰る途中に爆発音が聞こえたけど、めぐみんだよな?パーティー組めたの、かな…)

 

 

 

すー、すー…

 

 

 

 

「あれ?寝ちゃったのかな…」

 

クリスは今日1日、一緒に冒険をした少年の顔を覗き込んだ。

 

(寝顔を見ると、まだまだ幼いね)

 

熟睡する少年に手を伸ばし、ちょびっとしかない眉をそっと指で撫でた。

 

「…良く頑張りましたね。あなたのおかげで一つ()()する事が出来ました」

 

優しい笑みを浮かべ、そっと呟いた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

シンジロウが夢の中へと旅立っている頃。

 

 

 

「お、おい!放せよ‼︎…ちょっ、握力強っ⁉︎」

 

「見捨てないでください!荷物持ちでも何でもしますから!それに、私を仲間にして貰えれば、ちょび眉剣士も付いてきます‼︎だから私を捨てないでください‼︎」

 

めぐみんは粘液まみれの体で、本日パーティーを組んだ少年に離れまいと必死にしがみついていた。

 

「ーーやだ。あの男、あんな小さな子を捨てようとしているわ」

「ーー女の子2人とも粘液まみれじゃない。どんな変態プレイをしたのよ!とんでもないクズね‼︎」

 

周りからヒソヒソと辛辣な言葉と冷たい視線が飛び交う。これ幸いとばかりに、口元を歪めて笑いめぐみんは声を張り上げた。

 

「どんなプレイでも耐えてみせます!先程のようなカエルのヌルヌルプレイでも‼︎」

 

「よーし分かった!めぐみん、これからもよろしくな‼︎」

 

アクセルの街に1人のクズで変態な少年が誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

ヌルヌルプレイ騒動の後、めぐみんはギルドにある浴場で粘液を落とし、パーティーメンバーと食事を終えすぐさま宿に戻ったのだか…。

 

「やりましたよ、シンジロウ!遂にパーティーが決まり、まし、た…。あれ?寝ているのですか?」

 

そこには毛布に包まり、スヤスヤと眠るシンジロウの姿があった。

 

(…ふむ、疲れているようですね。それに怪我もしているようですし)

 

ふとシンジロウの枕元に、少し大きめな袋とメモが置かれている事に気づき読んでみると

 

『今日はお疲れ様。クエストの報酬は明日受け取りに行こうか。ギルドで待ち合わせね』

 

(一緒に冒険した盗賊の方ですかね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

『ps.君の寝顔可愛いね〜。お姉さんドキッとしちゃった♡』

 

「……」

 

 

 

 

グシャッ

 

めぐみんは何も言わずにメモを握りつぶした。

 

 

 

 

 

 






これでクリスとの冒険編は終わりです。
そして、次回からあの人達と対面です。

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