この鬼殺隊士に祝福を!   作:冬威

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異世界の出会いと初クエスト

 

 

「おお、本当にファンタジーな世界だ」

 

俺は女神アクアの魔法陣で送られ、目を開けるとそこには石畳の街並みを車ではなく馬車が行き交っていた。

 

ふと自分の姿を確認してみる。

服装は剣道の稽古着に部活指定のジャージの上着。学校指定のスニーカー。ファンタジー感の欠片もない。

 

そして左手に握られた一振りの刀。今すぐ抜いてみたいが、流石に街中で刃物を抜くのはまずいと思い後回しに。

 

(さて、取り敢えず冒険者にならないと…。ギルドとかそうゆう施設に行けばいいんだろうけど…、冒険者っぽい人を探して聞いてみるか)

 

街中を歩き始めてすぐに、トンガリ帽子にマント。そして長い杖を持った、いかにも魔法使いっぽい人が前を歩いている。

 

「あの!すいません教えていただきたい事が…⁉︎」

 

「はい?何ですか?」

 

魔法使いっぽい人に話しかけたはいいが、振り向いた瞬間にしまったと思った。

 

(やばい、女の子だった。ナンパと思われなければいいけど…)

 

その少女は真路郎と変わらない年齢で、身長も僅かに低い位。容姿は黒髪に赤い瞳、左目に眼帯を付けた可愛らしい美少女だった。

 

「「……」」

 

二人の間に僅かな沈黙が流れる。しかし、魔法使いの少女によって沈黙は破られた。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才にして爆裂魔法を操るもの‼︎」

 

マントをばっと翻し、眼帯を付けている顔を僅かに手のひらで隠すポーズをとり、高らかに宣言した。

 

「あっ、すいません人違いでした」

 

さっと回れ右をしてその場を去ろうとしたが、ジャージを掴まれてしまった。

 

「おい、何か言いたい事があるなら聞こうじゃないか!…というか聞きたい事があったのでわ?」

 

あまりの出会いの衝撃に忘れかけていた。

 

「えっと、冒険者になりたくてこの街に来たんですけど、どうすれば冒険者になれるのかな?と思いまして」

 

「成る程。冒険者になるにはギルドで登録する必要があります。…私もこれから行く予定なので一緒に行きますか?」

 

変な自己紹介だったが、良い人みたいだ。

 

「はい!お願いします。自分は倉富 真路郎です。あの、めぐみんって…」

 

「本名ですよ?何か言いたい事があるなら聞きますよ?それに私から言わせれば貴方の名前の方が変わってますよ?」

 

(マジかよ。めぐみんの名前がスタンダードなの?)

 

カルチャーショックを受けながら冒険者ギルドに案内してもらった。ギルドは街の中でも大きな建物で中もとても広かったが、あまり人がいないようだった。

 

「奥のカウンターで登録するんです。付いてきてください」

 

めぐみんに案内され、カウンターにつくと美人の受付嬢のお姉さんがにこやかに挨拶してくれた。

 

「こんにちは。本日のご用件は?」

 

「冒険者登録をお願いします」

 

「冒険者登録ですね。登録料は1,000エリスになります」

 

(えっ!金掛かるの?…しまったな考えてなかった)

 

どうしたものかと黙り込んでしまうと、めぐみんが察してくれたようだ。

 

「ひょっとしてお金持ってないんですか?」

 

「…無一文です」

 

真路郎の返答に少し考えたあと、めぐみんは財布から1,000エリスを足り出した。

 

「私が出しましょう」

 

「いや、でも悪いですよ」

 

「構いませんよ?…ただ登録が終わったあと、簡単なクエストに付き合ってくれませんか?」

 

「クエスト?俺なんかで良ければ…」

 

「ふふ、決まりですね」

 

めぐみんは何処か嬉しそうに笑うと、受付嬢のお姉さんに登録料を渡した。

 

「では、この用紙にお名前と身長、体重、年齢。それに身体的特徴を記入してください」

 

身長158センチ。体重48キロ。黒髪黒目。

 

「はい、次にこちらの水晶に手をかざして下さい。初期のステータスを読み取ります」

 

受付嬢のお姉さんに言われるまま、水晶がはめ込まれた不思議な機械に手をかざす。

 

「魔力が平均を少し低いですね。知力と運が平均的…。おお!筋力、生命力、器用度に敏捷性が平均を上回っています!特に筋力と敏捷性が高いですね‼︎これなら殆どの職業につけますよ‼︎」

 

少し興奮気味に説明してくれたが、魔力が低い事が微妙にショックだった。一度は魔法を使いたいものだ。

 

「職業は何に、なれるんですか?」

 

横で見ていためぐみんが話を進めてくれた。

 

「そうですね。下級の前衛職なら全て可能です。上級職はソードマスターにクルセイダーですかね。…あら、キサツタイシ?下級職のようですが始めてみる職業ですね」

 

鬼殺隊士。受付嬢のお姉さんは、受付を長い事しているが初めてみる職業に困惑している。

 

「それでお願いします」

 

「えっ!いいんですか⁉︎」「ソードマスターにも慣れるのに⁉︎」

 

受付嬢のお姉さんとめぐみんが驚いた声をあげるが、おそらく特典に関係する事だから是非ともコレにしたい。

 

「はい!」

 

ニツと爽やかに笑い、無事に冒険者になる事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

冒険者登録の後、受付嬢のお姉さん。ルナさんから冒険者と冒険者カードに付いて説明を受け、めぐみんが選んだ「ジャイアントトード。2匹討伐」のクエストを受けた。このジャイアントトードは巨大なカエルで繁殖期が近い為、人里付近に現れ人や農家のヤギなどを狙うらしい。その駆除の依頼だ。

 

(てか、受付嬢のお姉さんの名前、普通じゃん。…めぐみんってなんだ?)

 

めぐみんと歩きながら色々教えて貰っているが、初対面で根掘り葉掘り聞くの失礼だと思い、今は取り敢えずスルーで。

 

それに冒険者カードを作ってから、異様に鼻が効くようになっている。

 

(なんだろう。めぐみんは良い人なのは間違いない。…けど、何故か残念な人な気がする。あの自己紹介の事もあるし)

 

「鬼滅の刃」の主人公、炭治郎が匂いで人の本質を嗅ぎ分けていた。()()()()が効果を表したのだろうか?

 

「あっ!いましたよ。アレがジャイアントトードです」

 

めぐみんの指差し方に目を向けると巨大なカエルがいた。

 

「…でかくね?」

 

予想以上の大きさだった。

 

「私は魔法を打つ準備をします。それまで足止めをお願いします!」

 

「りょ、了解」

 

いきなりの初クエストで初戦闘。取り敢えず足止めなら文字通り足を狙って動きを止めれば良いだろう。

 

ふーと息を吐き、腰に差した【日輪刀】を鞘から引き抜く。色変わりの刀【日輪刀】は持ち主によって刃の色が変わる。真路郎が刀を構えると、刃の色が藤色へと変色した。

 

息を整え、回り込むようにジャイアントトードの死角から、足を斬りつける。途中めぐみんの厨二病ぽい台詞が聞こえたが、今はカエルに集中。

 

「グァ⁉︎」

 

不意打ちを食らったジャイアントトードが、真路郎をその巨体で踏み潰そうとするも、すぐさま後ろに回り込みもう片方の足に斬りかかる。

 

「下がってください。魔法を放ちます!」

 

めぐみんの声にを聞き、全力で充分に距離をとった。めぐみんが紅い瞳を輝かせ、カッと見開き

 

「『エクスプロージョン』!」

 

膨大な光がめぐみんの杖から放たれたと思うと、凄まじい轟音と爆炎を巻き起こし、更には爆風に煽られる。魔法が直撃した場所に大きなクレーターが出来、カエルは見るも無残に四散していた。明らかにオーバーキルだ。

 

(…すげー。これが魔法)

 

始めて見る魔法に感動と恐怖を覚え、改めて異世界に来たのだと思い知らされ、ほうけてしまった。

 

「ッ!すごいな‼︎めぐ…みん?」

 

我に帰りめぐみんの方に少し駆け寄り、足を止めた。丘の上から魔法を打っためぐみんは、うつ伏せに倒れ草原を僅かに滑り降りていた。

 

「ふ…。見ましたか我が最終奥義!爆裂魔法はその最強の威力と引き換えに、魔力消費も莫大なもの…。ゆえに限界を超える魔力を使った我は身動き一つ取れません」

 

「マジかよ」

 

そんな事を話していると、ひょこりとめぐみんの背後から2匹目のジャイアントトードが現れた。

 

「ッ⁉︎」

 

全力疾走でめぐみんの元に駆け寄り、今にも長い舌で食らいつこうとしていた所に間一髪で滑り込みめぐみんを回収した。

 

「ねえ、ホントに動けないの⁉︎」

 

「はい、動けません」

 

はいじゃないよ!と心の中で愚痴り、はぁーと溜息を吐く。仕方がないのでめぐみんをおんぶし、左手で支え右手に日輪刀を構える。

 

先ほどと同じ要領で、動きを抑えてから止めをさす。

 

これで初クエストが完了し、一気に疲れが出て来た。

 

(大丈夫か?俺の異世界生活…)

 

 

 

 

 

 





早速ヒロインである、めぐみんを登場させました。めぐみん可愛いですよね。顔とかセリフとか声とかetc.

真路郎がアクアから貰った特典は何か?なるべく早めに出したいですが、話の流れに合わせて今後出していく予定です。

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