遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

9 / 55

 最近、『セツナトリップ』という曲が主人公・セツナのイメージソング、キャラソンにピッタリなのではと妄想しております。

 アップテンポで聴いてて楽しくなる名曲なので、ぜひ一度、聴いてみてください!(〃ω〃)
 曲名もそうだけど、歌詞がね、セツナっぽい!



TURN - 9 A promise

 

 季節は初夏。草木が新緑に覆われて、涼風(すずかぜ)が吹き抜ける今日この頃。

 ボクが転入した『デュエルアカデミア・ジャルダン校』にも、いよいよ衣替えの時期が訪れた。

 

 朝。ボクは家の自室で、姿見用のスタンドミラーの前に立ち、自分の身だしなみを確認する。

 

 半袖(はんそで)の白いカッターシャツに、黒のスラックスという、クールビズな服装。

 襟元には、だいぶ(ゆる)めてるけど、青色のネクタイを巻いている。

 

 先週までは黒のブレザーを着用していたから、夏服バージョンの自分が何だか新鮮に思えた。

 これから秋口(あきぐち)までは、この格好で通学か。軽くて動きやすいけど、しばらく日焼け止めは()(ばな)せないね。

 

 

 

「忘れ物なし。じゃ、今日も行ってきます」

 

 

 

 ボクにとっての必需品(マストアイテム)である、赤色のメガネを掛けてから、ボク以外には誰も住んでいない一人暮らしの自宅に、出発の挨拶を告げる。

 

 行き先は勿論(もちろん)、ボクの新しい()(こう)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日前までは、ポカポカ陽気で過ごしやすい気温だったのに、今日は太陽が照りつけて、日差しが刺す様に降り注いでいた。

 まぁ(よう)するに……

 

 

 

「暑い…!」

 

 

 

 好天なのは喜ばしいけれど、こんな日はもう少し、(そら)に雲が欲しくなる。

 午前中でこれなのだから、正午になったら猛暑かも知れない。季節の変わり目は体調を崩しやすいと聞くし、皆さんも熱中症には気をつけて。

 

 

 

 学園の門を(くぐ)り、敷地内に入ると、前方に(した)しい同級生(クラスメート)を発見した。

 やや長めの、赤色を織り交ぜた黒髪。間違いない。アマネだ。

 ボクは小走りで彼女に近づいた。

 

 

 

「おはよう、アマネ!」

 

「ん?あぁ、おはよう。セツナ」

 

 

 

 アマネはボクと顔を合わせると、立ち止まり、笑顔で挨拶を返してくれた。

 暑さからか前髪の左側を、耳の後ろに掛けていたので、左耳に開けているピアスが3つとも丸見えになっていた。

 

 

 

「セツナ夏服、似合ってんじゃん」

 

「そう?ありがとう」

 

「なんかチャラ()っぽさが()してる」

 

「それ()めてる!?」

 

 

 

 アマネもボクと同じく夏服に着替えていた。

 下は黒のミニスカートで、上は白のオーバーブラウス。

 スタイルの良さが如実に(あらわ)れており、(むね)の大きさが特に(きわ)()っていた。

 

 

 

(おおっ……夏服…すごい破壊力…)

 

「……せいっ!」

 

「ぶっ!?」

 

 

 

 突然アマネの持っていた(カバン)がボクの顔面に直撃した。なんで!?

 

 

 

「な…なにを…」

 

「いや、怪しい視線を感じたから、つい」

 

「…………」

 

 

 

 あまり胸を凝視するのは()めておこう、うん。

 

 

 

「アマネた~ん!」

 

「わっ!?」

 

 

 

 と、今度は、ピンク色の髪が特徴的な女の子が駆け寄ってきて、アマネを背中から抱き締めた。

 不意に背後を取られたアマネは、ビックリして目を丸くしている。

 

 

 

「おはよう~!ンフフ、捕まえたゾ~?(いと)しのアマネたん」

 

「マ、マキちゃん…!」

 

 

 

 アマネが『マキちゃん』と、アダ名で呼んだ少女・()(づき) マキノちゃんは、捕獲したアマネの、スレンダーな()(たい)を、好き放題に触り始めた。

 あれ?この光景、なんかデジャヴ!

 

 

 

「ちょ、コラ!変なところ触るな!あと暑苦しい!」

 

「ダーメ。こんな(うす)()なアマネたんを前にしたら、ガマン出来ない~!」

 

 

 

 マキちゃんの両手が扇情的な動きで、アマネの身体を(あい)()する。

 左手は露出した太股(ふともも)に指先を(すべ)らせ、右手はブラウスの(すそ)の下から入り込んで、素肌に()れていた。

 (ほお)を赤らめて、くすぐったそうに身を(よじ)るアマネと、同じく顔を火照(ほ て)らせ、息を荒くしながら彼女の柔肌(やわはだ)をまさぐるマキちゃん。朝っぱらから、なんてエロス!!

 

 

 

「こ、の…ッ!やめんかい!」

 

(いた)ッ、いたたたッ!」

 

 

 

 しかし、そんな(いん)()な時間は、アマネがマキちゃんの手首を締め上げた事で、早くも強制終了した。

 

 

 

「ごめんって、アマネたん」

 

「もう。毎年この時期になると、すぐこうなんだから」

 

「毎年ヤられてるんだ……ホント(なか)いいね、ふたりとも」

 

「アマネたんとは中等部からの付き合いだからね~。ここだけの話、アマネたんのおっぱいがおっきいのは、あたしが日々(ひ び)()み続けて(そだ)てたから…」

 

「デタラメ言うな!」

 

 

 

 マキちゃんはアマネにツッコミを入れられると、ケタケタと楽しそうに笑った。

 

 ちなみに、マキちゃんの制服も、夏服に変わっていた。

 ただ、アマネと比べると、胸部(きょうぶ)の盛り上がりは(つつ)ましやかだった。

 ※決して貧乳というわけではない。

 

 なんて(くち)にしたら最後、何をされるか分からないので、心の奥深くに(とど)めておきます。

 

 

 

「とにかく、さっさと教室に行くわよ。暑いし早く冷房に当たりたい」

 

「そうだね、行こっか」

 

「ねぇねぇ、アマネたん。涼しい室内(と こ)でなら触っても良い?」

 

「却下!」

 

 

 

 外は蒸し暑いので、早めに教室に入って(りょう)を取ろうと、ボク達の足が校舎に向いた瞬間…

 

 

 

「お待ちなさい!!総角(アゲマキ) (セツ)()!!」

 

 

 

 突如、女性と思わしき、張りのある凜然(りんぜん)一声(いっせい)がボクの名を(さけ)んだ。

 

 ボクは呼ばれたので後ろを見ると、そこには一人の女子生徒が立っていた。

 

 髪の色は白に近い金髪で、ツインテールをドリル状に巻いた、派手(ハ デ)な髪型をしている。

 キリッと引き締まった目元に()える水色(みずいろ)(ひとみ)は、(おごそ)かな(まな)()しをこちらに向けていた。

 八頭身で脚線美、しかも巨乳という、ワガママボディ。

 その(れい)()な美貌は、偶然(ぐうぜん)この場に居合わせた(ほか)の生徒達の視線をも、すでに釘付けにさせてしまっている。

 

 

 

「あっ、ワニ(じょう)ちゃんだ」

 

 

 

 マキちゃんが(くち)を開いた。すると、目の前の美女は気を悪くしたのか眉根を寄せて、マキちゃんを(にら)みつけた。

 

 

 

「そこの下級生!その呼び方はお()めと言っているでしょう!(アタクシ)には、鰐塚(ワニヅカ) ミサキという名前がありましてよ!」

 

 

 

 彼女の口調や(ふる)()いからは、どことなく気品(あふ)れる、お嬢様の品格を感じた。

 なるほど、鰐塚(ワニヅカ)だから『ワニ(じょう)』か。

 

 

 

「マキちゃん、知ってる人?」

 

「有名人だよ?名門・鰐塚(ワニヅカ)財閥(ざいばつ)の一人娘。見ての通り美人さんだから、学園にファンクラブまで出来てるんだって」

 

「はあ~…なるほど。所謂(いわゆる)セレブってやつだね」

 

 

 

 イメージに(たが)わず、高貴な家柄の御令嬢でしたか。

 

 

 

「良かったわね、セツナ。また『十傑(じっけつ)』と闘えるわよ」

 

「えっ!この(ひと)も『十傑(じっけつ)』!?」

 

 

 

 アマネが何やらニヤニヤしながら、ボクの右肩に手を置いて、そう教えてくれた。

 

 『ジャルダン十傑(じっけつ)』。

 学園の生徒、一人ひとりに与えられる、5段階の階級(ランク)の最上位、ランク・(エー)

 それを叙勲(じょくん)している生徒(エリート)達の中でも、頭ひとつ抜きん出た、天才と称される十人の決闘者(デュエリスト)

 

 先週、デュエルした虎丸(とらまる)くんに引き続き、新たな『十傑』の登場ってわけか。

 

 

 

「朝から両手に花とは随分(ずいぶん)と浮かれておりますわね?ですが(アタクシ)がこうして出向いた以上、貴方(アナタ)(てん)()でいられるのも、ここまででしてよ!総角(アゲマキ) (セツ)()!」

 

 

 

 ボクを指さして、鰐塚(ワニヅカ)ちゃんは声を上げた。いやいや両手に花って…

 

 

 

「へぇ~?あたし達って、そういう関係に見える?」

 

「え、ちょ、マキちゃん!?」

 

 

 

 マキちゃんは目を細めて怪しく笑いながら、ボクの左腕に、自分の華奢(きゃしゃ)な両腕を絡めてきた。

 

 腕を組まれて身体を密着させられた事により、その、なんていうか…ボクの腕に、マキちゃんの(むね)の、(やわ)らかい感触が…

 

 

 

「えーっと…マキちゃんさん?…当たってる…」

 

「当ててるの♡」

 

 

 

 こういうのを小悪魔って形容するのか!マキちゃんはボクが困惑しているのを面白がって、更に胸を押し付けてきた。

 

 そして、それを見ていた鰐塚ちゃんは、鬼の様な形相に変貌していた。なんかドス(ぐろ)いオーラまで放出されてる!?ゴゴゴゴッて、擬音も聴こえる!

 

 

 

「……風紀委員会・代表である、この(アタクシ)の前で良い度胸ですわね?不純異性交遊など、(だん)じて認めるわけにはいきませんわ!」

 

「風紀委員だったの!?」

 

「構えなさい!(アタクシ)が直々に、性根を叩き直して差し上げますわ!」

 

 

 

 鰐塚ちゃんは、水色の決闘盤(デュエルディスク)を左腕に装着した。

 あまり状況は飲み込めていないけど……OK(オーケー)決闘者(デュエリスト)が向かい合ったなら、やることは(ひと)つだ。

 ボクは未だに引っ付いているマキちゃんを、やんわりと離してから、デュエルディスクを装着した。

 

 

 

「デュエルなら喜んで受けて立つよ、鰐塚ちゃん」

 

「言っておきますが!(アタクシ)虎丸(とらまる)のボウヤの様に、(あま)っちょろい決闘者(デュエリスト)ではなくてよ!」

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 鰐塚(ワニヅカ) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

(アタクシ)の先攻で(まい)りますわ。手札からフィールド()(ほう)・【忘却の(みやこ) レミューリア】発動!」

 

 

 

 鰐塚ちゃんの後面に古代都市が顕現し、フィールド全域が海に沈む壮観な光景が広がった。

 

 

 

「このフィールドでは水属性モンスターの攻撃力・守備力は、200ポイント上昇しますわ。(アタクシ)は【ライオ・アリゲーター】を召喚!」

 

 

 

【ライオ・アリゲーター】 攻撃力 1900

 

 

 

フィールド魔法(レ ミ ュ ー リ ア)の効果で、攻撃力アップ!」

 

 

 

【ライオ・アリゲーター】 攻撃力 1900 + 200 = 2100

 

 

 

「カードを1枚()せ、ターン終了ですわ」

 

「いきなり攻撃力が2000を越えてきたか……おもしろいね!ボクのターン!手札から、【プチリュウ】を召喚!」

 

 

 

【プチリュウ】 攻撃力 600

 

 

 

「ハッ、なんですの?その低級モンスターは」

 

「こう見えて意外と強いんだよ?魔法(マジック)カード・【財宝への隠し通路】発動!」

 

「!」

 

「この効果で、プチリュウは相手に直接攻撃(ダイレクトアタック)が出来る!さぁ見せ場だよ!行け、プチリュウ!」

 

 

 

 プチリュウは気合いの(こも)った(たい)()たり攻撃を、鰐塚ちゃんに仕掛ける。

 

 

 

「そんな安い攻撃を通すと思って?トラップ発動!【竜巻海流壁(トルネードウォール)】!」

 

「!」

 

 

 

 フィールドを飲み込んでいた海面から竜巻(たつまき)が発生し、プチリュウを軽々と弾き返した。

 

 

 

「【忘却の都 レミューリア】は、カード名を【(うみ)】としても扱いますわ。そして【竜巻海流壁(トルネードウォール)】は、【海】がフィールドに存在する限り、(アタクシ)が受ける全ての戦闘ダメージを、(ゼロ)に出来ますの」

 

「そう易々(やすやす)とは通らないかー……ボクは2枚のカードを伏せて、ターン終了!」

 

貴方(アナタ)ごときが(アタクシ)の身体に()れようなど、千年早くてよ。(アタクシ)のターン、ドロー!」

 

(……フッ。この決闘(デュエル)、瞬殺でしてよ!)

 

「【ライオ・アリゲーター】をリリース!【スパウン・アリゲーター】、アドバンス召喚!」

 

 

 

【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 2200

 

 

 

「【レミューリア】のフィールド・パワーソースを得て、攻撃力アップ!」

 

 

 

【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 2200 + 200 = 2400

 

 

 

「ッ…!」

 

「バトルですわ!【スパウン・アリゲーター】で、【プチリュウ】を攻撃!『スピニング・イート』!!」

 

 

 

 【スパウン・アリゲーター】の大顎(オオアゴ)が【プチリュウ】を丸飲みにしてしまう。

 

 

 

「うあ…ッ!」

 

 

 

 セツナ LP 4000 → 2200

 

 

 

「エンドフェイズ時、スパウン・アリゲーターの効果により、墓地の【ライオ・アリゲーター】を特殊召喚しますわ」

 

 

 

【ライオ・アリゲーター】 攻撃力 1900 + 200 = 2100

 

 

 

(アタクシ)はこれで、ターン終了(エンド)。……先程から貴方、まるで手応えが無いですわね?九頭竜や虎丸に勝てたというのも、マグレだったのではなくて?」

 

「どうだろうね……ボクのターン!」

 

 

 

 相手の場には高攻撃力のモンスターが2体。どうやって戦況を打破しようかな…

 

 

 

「……それなら!ボクは(トラップ)カード・【戦線復帰】を発動!墓地から【プチリュウ】を、守備表示で復活させる!」

 

 

 

【プチリュウ】 守備力 700

 

 

 

「さらにカードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

「またですの?弱小モンスターを何度出してきても、同じ事でしてよ!」

 

「…………」

 

(アタクシ)のターン!さぁ、覚悟なさい!【ライオ・アリゲーター】で、【プチリュウ】を攻撃!」

 

 

 

 【ライオ・アリゲーター】が【プチリュウ】を喰らおうと迫り来る。

 だけど、ボクの大切なモンスターを、二度もワニの(エサ)にさせはしない!

 

 

 

「リバースカード・オープン!【ハーフ・シャット】!この効果で【プチリュウ】は、攻撃力が半分になる代わりに戦闘では破壊されない!」

 

 

 

【プチリュウ】 攻撃力 600 → 300

 

 

 

「おおっ、セツナくん上手いね!守備表示なら攻撃力が下がっても関係ないし、これでこのターンの攻撃は(ふせ)げるよ!」

 

「…いや、まだよ…!」

 

 

 

 観戦していたマキちゃんとアマネの、そんな会話が耳に届いた。

 アマネが言った「まだ」の意味が分からずにいたけど、答えはすぐに出た。

 

 

 

無駄(ム ダ)足掻(あ が)きでしてよ!【ライオ・アリゲーター】は爬虫類族の攻撃に、貫通効果を付与(ふ よ)しますわ!」

 

「なっ…!」

 

 

 

 【ハーフ・シャット】の効力で、プチリュウの破壊は(まぬが)れたけど、貫通した戦闘ダメージがボクのライフを削った。

 

 

 

「ぐっ…!」

 

 

 

 セツナ LP 2200 → 800

 

 

 

「そして、これで終了(フィニッシュ)でしてよ!【スパウン・アリゲーター】の攻撃!」

 

「…!(トラップ)カード・【(ふく)()(よう)?】発動!」

 

「!?」

 

「このカードは相手に最大3枚まで、好きな枚数デッキからドローさせ、ボクは1枚につき、2000ポイント回復する!さぁ何枚引く?鰐塚ちゃん!」

 

「チッ…1枚で結構(けっこう)ですわ!」

 

 

 

 セツナ LP 800 → 2800

 

 

 

()(くだ)いておしまい!『スピニング・イート』!!」

 

「…!」

 

(耐えて…プチリュウ…!)

 

 

 

 【スパウン・アリゲーター】の攻撃を、【プチリュウ】が必死で受け止める。

 貫通ダメージでボクのライフは減らされたけど、何とか【プチリュウ】は守れた。

 

 

 

 セツナ LP 2800 → 1100

 

 

 

「やけにそのモンスターを(かば)うんですのね?ですが…貴方のおかげで(アタクシ)の手札には、素晴(す ば)らしいカードが来ましてよ」

 

「…?」

 

「装備カード・【()(どう)()(ちから)】を、【スパウン・アリゲーター】に装備!」

 

「ッ!」

 

「これを装備したモンスターの攻撃力は、自分フィールドの魔法(マジック)(トラップ)カードの枚数 × 500ポイント強化されますわ。(アタクシ)の場には合計3枚。よって、【スパウン・アリゲーター】の攻撃力は、1500ポイントアップ!」

 

 

 

【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 2400 + 1500 = 3900

 

 

 

「攻撃力…3900…!?」

 

「次のターンで確実に仕留(し と)めてあげましてよ。ターンエンド!」

 

「…ボクのターン…」

 

 

 

 …そろそろ頃合いかな。

 

 ボクは掛けていた眼鏡(メガネ)を、ゆっくりと取り外すと…

 

 

 

「アマネ!」

 

「!」

 

 

 

 それをアマネに投げ渡した。アマネは少し驚いた顔をしながらも、上手にメガネをキャッチしてくれた。

 

 

 

「…いよいよ本領発揮?セツナ」

 

「うん。良い感じに身体も(あった)まってきた」

 

 

 

「?急にメガネ外して、どうしたの?セツナくん」

 

「そう言えば、マキちゃんって、あの状態(・ ・ ・ ・)のセツナを見るのは初めてだっけ?」

 

「…うん」

 

「こうなった時のセツナはね……かなり(すご)いよ」

 

 

 

「行くよ、ドロー!!」

 

「見苦しいですわね!この状況で、よもや勝算でもあるんですの?」

 

「…まぁね!」

 

「!…何をヘラヘラと…!」

 

「リバース(トラップ)・【無謀な欲張り】!次の自分のドローフェイズを2回スキップするのと引き換えに、カードを2枚ドローできる」

 

 

 

 これで通常のドローと(あわ)せて、3枚のカードをドローした。この4枚の手札を使って……勝つ!

 

 

 

「まずは魔法(マジック)カード・【(わな)はずし】を発動!【竜巻海流壁(トルネードウォール)】を破壊する!」

 

「!」

 

 

 

 永続(トラップ)・【竜巻海流壁(トルネードウォール)】が消滅した今なら、鰐塚ちゃんにも戦闘ダメージが通る。

 

 ついでに魔法(マジック)(トラップ)ゾーンのカードが1枚なくなったので、【魔導師の力】を装備している【スパウン・アリゲーター】の攻撃力も下がる。

 

 

 

【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 3900 - 500 = 3400

 

 

 

「ボクは【エレメント・ドラゴン】を召喚!」

 

 

 

【エレメント・ドラゴン】 攻撃力 1500

 

 

 

「たかが攻撃力1500程度で、何をなさるおつもり?」

 

「フフッ、驚かないでね?手札から速攻()(ほう)・【(うつ)()()(たて)()】、発動!」

 

「…!」

 

「この効果で、フィールドに()る装備カード1枚を、別のモンスターに移し替える事が出来る!(きみ)の【魔導師の力】、ちょっと借りるよ!」

 

「なんですって!?」

 

「【エレメント・ドラゴン】に【魔導師の力】を装備!鰐塚ちゃんの場には、魔法カードが2枚。よって攻撃力、1000ポイントアップ!」

 

 

 

【エレメント・ドラゴン】 攻撃力 1500 + 1000 = 2500

 

 

 

「そして装備カードを(はず)された、【スパウン・アリゲーター】の攻撃力は減少する!」

 

 

 

【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 3400 → 2400

 

 

 

「くっ…(アタクシ)のカードを勝手に…!」

 

「まだだよ!魔法(マジック)カード・【(いっ)()()(せい)】を発動!【エレメント・ドラゴン】の攻撃力を、さらに1500、アップする!」

 

 

 

【エレメント・ドラゴン】 攻撃力 2500 + 1500 = 4000

 

 

 

「こ…!攻撃力4000!?」

 

「最後に【プチリュウ】を攻撃表示にして……バトルだ!【エレメント・ドラゴン】で、【ライオ・アリゲーター】を攻撃!」

 

「うぅ!」

 

 

 

 鰐塚 LP 4000 → 2100

 

 

 

「この…!よくもやってくれましたわね!?」

 

(もう許しませんわ…!少々(あなど)りましたが…次のターン、【スパウン・アリゲーター】で【プチリュウ】を破壊すれば、(アタクシ)の勝利でしてよ!)

 

「悪いけど、君が考えてる(よう)にはならないよ。鰐塚ちゃん」

 

「……はい?」

 

「【エレメント・ドラゴン】は、フィールドに風属性のモンスターが存在する時、2回目の戦闘(バトル)(おこな)える!」

 

「か…風属性…?まさか…!」

 

「君が散々、小馬鹿にしていた【プチリュウ】のおかげで、【エレメント・ドラゴン】は真価を発揮できるんだ」

 

 

 

 モンスター同士の(キズナ)の強さ。それこそがボクのデッキの、真骨頂でもある。

 

 

 

「【エレメント・ドラゴン】で、【スパウン・アリゲーター】を攻撃!『スパークル・スフィア』!!」

 

 

 

 【エレメント・ドラゴン】の放った、エネルギー(だん)が命中し、【スパウン・アリゲーター】は破壊される。

 

 

 

 鰐塚 LP 2100 → 500

 

 

 

「そ、そんな…(アタクシ)が…!」

 

「これで、チェックメイトだ!【プチリュウ】で鰐塚ちゃんに、ダイレクトアターック!!」

 

「キャアアァァーッ!?」

 

 

 

 鰐塚 LP 0

 

 

 

 【プチリュウ】は全身全霊のタックルで鰐塚ちゃんを吹き飛ばし、フィニッシャーとして、見事ラストを飾った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決闘(デュエル)が終幕すると、周囲の生徒達が騒然となった。

 あちゃ…また変な目立ち方したかな。

 

 (とう)の鰐塚ちゃんはというと、地面に座り込んで、悔しそうな表情を浮かべていた。

 このまま立ち去るのも気が引けるので、ボクは彼女に手を差し伸べる。

 

 

 

「立てる?鰐塚ちゃん」

 

「………ひとつ…お聞きしてもよろしくて…?」

 

「ん?」

 

「何故あそこまで…【プチリュウ】での攻撃に(こだわ)ったんですの?」

 

「…あー…うん。以前(ま え)にね、約束してたんだ。『次は活躍(・ ・ ・ ・)させるから(・ ・ ・ ・ ・)』、ってさ」

 

 

 九頭竜くんとの決闘(デュエル)では、ぞんざいな扱いをしてしまったからね。ボクは約束は守る男だ。

 

 ポカン、と、鰐塚ちゃんはボクを見上げた。かと思えば今度は急に笑い始めた。ボク何か可笑(お か)しなこと言ったかな?

 

 

 

「フッ、フフフフッ!なんですの?それ!」

 

(……カードをここまで大切にする決闘者(デュエリスト)がいたなんて……完敗ですわ…)

 

「…次はこうはいかなくてよ、総角(アゲマキ) (セツ)()

 

「フルネームなんて堅苦(かたくる)しいよ。セツナって呼んで?」

 

 

 

 ボクは鰐塚ちゃんの手を握って、優しく立ち上がらせ…

 

 

 

「セツナくんカッコ良かったよー!」

 

「うわっ!?」

 

 

 

 後ろから、マキちゃんが抱き着いてきた。完全に(きょ)を突かれたボクは、自分の身体を支えきれず、バランスを崩して前のめりに倒れ込む。

 

 

 

「ちょ、ちょっと!?きゃあ!」

 

 

 

 鰐塚ちゃんの短い悲鳴が()(まく)(たた)いた。

 次いで、ボクは鰐塚ちゃんを押し倒して、マキちゃん共々、地面に横になる。

 

 

 

「いったた…もう~。マキちゃん退()いてよ~」

 

「えへへ」

 

 

 

 けっこう勢い良く()()かっちゃったから、鰐塚ちゃんが怪我(ケ ガ)でもしてないか心配だ。

 

 早めに起き上がろうと、腕を動かした時、右の手の平に、柔らかい感触を覚えた。

 

 

 

「…………ん?」

 

 

 

 それに気づいた瞬間、ボクは全身が硬直した。

 

 ボクの右手は、鰐塚ちゃんの豊満な胸を、(わし)(づか)んで揉んでいた。

 

 指先に少し(ちから)を込めると感じる反発力。本能的に全神経が(てのひら)へと集中し、(ふく)()しに伝わる胸の触り心地を、(いや)(おう)でも堪能する。(きわ)めつけは、大胆に(はだ)()た胸元だった。恐らく転倒した際に、ブラウスのボタンが弾け飛んだんだろう。健康的で、きめ細やかな柔肌(やわはだ)が外気に(さら)されており、(あらが)いようもなく目線が引き寄せられる。暑さからか汗に()れた美肌が何とも魅惑的で、そのあまりにも艶麗(えんれい)な場景に、ボクは言葉を失い……

 

 

 

 …………。

 

 いやいやいや。

 

 なにを冷静に、おっぱい触った感想を、詳細に描写してるんだ、ボクは。

 

 

 

「~~~~~~ッ!!」

 

 

 

 鰐塚ちゃんの顔は、(すで)()(ダコ)みたいに真っ赤だ。肩を震わせ、涙目になっていた。

 

 

 

「け……ケ…!ケダモノォォーーーッ!!!」

 

「ぶはぁあーっ!?」

 

 

 

 鋭くも乾いた音が鳴り響く。

 (ほほ)に平手打ちを(たまわ)ったボクは、身体が数センチ(ちゅう)を舞った(のち)、地面を転がった。これ女の子のビンタの威力じゃなくない!?

 

 

 

「この()(らち)(もの)!野蛮人!やはり貴方の様な()(せん)決闘者(デュエリスト)を、のさばらせるわけにはいかなくてよ!」

 

 

 

 (あらわ)になった胸を隠しながら、鰐塚ちゃんは(まく)し立てる。

 

 気がつくと、ボクは数人の男子生徒に取り囲まれていた。あれ?全員、殺気の濃度が半端じゃないんですけど。

 

 

 

「彼らは風紀委員会が誇る精鋭にして、(アタクシ)の忠実な部下ですわ。やっておしまい!」

 

「「「ハッ!!!!」」」

 

「やっ、待って待って!これは不可抗力……うわぁーっ!!」

 

 

 

 学園中を追いかけ回された。正直、死ぬかと思った。

 

 最終的には決闘(デュエル)で倒して事なきを得たけれど、公衆の面前での事故だったため、しばらくボクに対する周りの印象は最悪でした…トホホ。

 

 

 

 





 金髪ツインドリル高飛車巨乳お嬢様かわいい( ^ω^)

 さて!衣替えもさせたし、次の記念すべき第10話は、リクエスト回になります!夏ですからね!

 リクエストは随時募集中!感想もお待ちしておりますですわ(?)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。