遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
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「
「…………zzZ」
選抜デュエル大会・本選のトーナメント1回戦。
その最後の試合が始まる時間まであと少しだと言うのに、それに出場する選手である
スヤスヤと夢心地で、全く起きる気配がない。
「ほら、ろぉーじょ~くーん! 起きないと不戦敗だよー?」
ちょっと強めに肩を揺する。このまま起きなかったら、スタッフさんに叩き起こしてもらおうか……
「……んあ?」
「お、やっと起きた?」
うっすらと狼城くんのまぶたが
長いまつ毛の下から覗いた
(ッ……!)
何故だか少し、ドキッとした。
イケメンと至近距離で見つめ合うのは何と言うかこう……心臓に悪い。
男のボクでこれなんだから女の子だったら卒倒するんじゃなかろうか。
「……おはよう、狼城くん。もうすぐ試合だよ」
「……あ"ー……もうそんな時間か……」
「相変わらずだらしがありませんわね
ボクの横に立っていた
身体の正面をボクに向けて、胸の下で腕組みしているものだから、メロンみたいに大きく
……事故とは言え、アレを
柔らかかった……って、いかんいかん! 今は消え去れ
「あー、オレ寝起き頭回んねーんだよなぁ。…………」
「? どうなさいましたの? ワタクシの顔に何かついてまして?」
寝ぼけ
なんと──いきなり鰐塚ちゃんのスカートの下に手を入れて、そのまま思い切り腕を振り上げ、バサッと大きく
「「「「 !!!? 」」」」
スカートに覆われていた絶対領域が余すところなく外気に
これには油断し切って無防備だった鰐塚ちゃんはもちろん、ボクとアマネとマキちゃんもビックリ仰天だ。
「キャアッ!?」
即座に両手を下ろしてスカートを抑えつける鰐塚ちゃん。
その
(し、白のレース……!)
「おーおー、さすがイイとこのお嬢サマは高そうなパンツ穿いてんなぁ?」
「なななな、なんですのぉーーーっ!!」
「ぶっ!」
当然ながら鰐塚ちゃんは
「あらら、狼城くん大丈夫?」
「
「ねぇねぇセツナくん、何色だった? 何色だった?」
「マキちゃん静かに」
ほっぺたに手形の
「くぅ~、今のァ効いたぜ。おかげで目ぇパッチリ覚めたわ」
「……もしかして眠気覚ましてもらう為にセクハラしたの?」
「セ、セツ……
「えっ!? っ……いっ、いや、見てない……よ?」
今日何度目かの赤面をしながら睨み付けてくる鰐塚ちゃんから視線を逸らしつつ、そう答えた。
本当は、ピンク色の小さなリボンが付いたランジェリーをガン見してしまったんだけども……
でもここでバカ正直に「はい見ました」なんて言って、女の子を傷つけたりしたら大変だ。
ところが狼城くんが空気を読まずに異議を申し立ててきた。
「おいおい嘘つくなよセツナ君。オマエの髪と
「いやボクの髪は白じゃないよ! これは銀髪──」
「おや~? 誰も『白』だなんて言ってねーんだけどなぁ?」
「ハッ!?」
か、カマをかけられたぁ~~~っ!!
やられた……こうなってはもう白状するしかない。
「うぅ……ごめん、ホントは見ちゃった」
「~~~~っ!!」
(うぅぅ~! セツナさんに下着を見られてしまうだなんて……! こんな事なら、もっと良い物を穿いてくるんでしたわ~!)
「──鰐塚選手、狼城選手。間もなく第8試合の開始時間です。準備をお願いします」
ほっ、良いタイミングでスタッフさんが来てくれた。助け船だ。
「あいよー」
狼城くんが気の抜けた返事をして、先に部屋を出ていこうとする。
その時すれ違い様に、鰐塚ちゃんの肩にポンと手を置いた。
「せいぜい頑張れよ、
「っ──!?」
小声で何か
ただ鰐塚ちゃんがすごい勢いで狼城くんの方へ振り返ったのを見るに、もしかすると彼女をまた怒らせる様な事でも言ったのかも知れない。
「なっ、なな……!」
(
(──って、言いたげな顔してんなぁ。んなもん見てりゃあ誰だって分かるっての。最も、
「んじゃ、また後でな。ミサキ
こちらに背中を向けたままヒラヒラと手を振って、狼城くんは退室していった。
「ぐぐぐっ……覚えてらっしゃい!」
「鰐塚ちゃん、行ってらっしゃい」
「っ! は、はい! 行って参りますわ、セツ……あ、アゲマキさん!」
「?」
『ヘイヘイヘーイ!! みんな元気かぁっ!? そろそろ第8試合の始まる時間だぜぇっ!! ついにアリーナ・カップの初日、最後の試合だ! 長い様であっという間だった気がするぜ、ラスト声出してくれるかぁーいっ!?』
「「「「 おおおおおおおおおおっ!!!! 」」」」
センター・アリーナの場内は、バンドのライブの終盤みたいな盛り上がり具合を見せていた。
ボクとアマネとマキちゃんも、最後の試合は
ソファーでくつろぎながらテレビ中継を観ているのも良かったけれど、やっぱり現場の方が臨場感は段違いだ。
『良いねぇ、お前ら最高だッ!! そんじゃあ、選手入場と行こうか! 本日のトリを飾ってくれるのは、この二人だァァァァッ!!』
『第4試合と同じく、今回もまた十傑同士の激突だっ!! 一人はこの学園の風紀委員長も務める才色兼備の令嬢! 3年・十傑──
高い位置でまとめたプラチナブロンドのツインテールを
すると男子生徒の何割かが野太い大歓声を張り上げた。
「あぁ鰐塚さん、今日も綺麗だなぁ~!」
「鰐塚様ぁ~! 俺と
「意識
やっぱ学園1の美女と
「「 お嬢様ァーッ!! 」」
ボクらの座席の近くで、見覚えのある男子二人が立ち上がり、鰐塚ちゃんにエールを送った。
「お、
「なんか久々に見たね~」
黒髪が広瀬くんで、茶髪が京川くん。
鰐塚ちゃんと同じ風紀委員会のメンバーで、二人とも副委員長らしい。
だいぶ前にマキちゃんと組んで、彼らとタッグデュエルをした事があったっけ。
「今年も貴女の実力と!」
「美しさを!」
「「 全世界に知らしめるのです!! 」」
……相変わらずだね、あの二人も。
『そしてもう一人はぁーッ! 驚くなかれ、去年のアリーナ・カップ第3位!! 〝トリックスター〟の二つ名で知られる奇才の
鰐塚ちゃんの真向かいから歩いてきたのは、制服を着崩し、両耳にトランプのピアスを付けた
こちらもやはりと言うべきか女子ウケは相当なもので、黄色い声援がひっきりなしだ。
美男美女が顔を突き合わせる。
モニターに映されたその場面を観て、
「──先ほどはよくも
「なんでぇ、勝負パンツじゃなかったのかよ? そりゃ
「そういう問題ではなくてよ!?」
両雄、同時に左腕のデュエルディスクを起動させ、構える。
鰐塚ちゃんは水色のディスクを。
狼城くんは、灰色のディスクを。
……いよいよだね。
『さぁ始まるぞ、本日のファイナル! 選抜デュエル大会・本選──アリーナ・カップ1回戦・第8試合! 鰐塚 ミサキ vs 狼城 暁!! イィ~~~ッツ! タイム・トゥ──』
「「
闘いの幕は上がった。
……ところでボクには1つ、気がかりな事が。
「鰐塚ちゃん大丈夫かな? さっきの狼城くんのセクハラで、冷静さを欠いてなきゃいいけど」
「ん~~、冷静さは今日ずーっと前から欠いてたと思うよ~?」
「え? どういうことマキちゃん?」
「さぁねぇ~~~? なんでだろうねぇ~~~?」
「?????」
何やら含みのある物言いが引っ掛かったけど、追及してもはぐらかされそうなので
(──見ていてくださいまし、セツナさん!)
「先攻はワタクシですわ! フィールド魔法・【伝説の
地響きと共に、海底に沈んでいた古代都市が
『鰐塚選手、いきなり仕掛けてきたぁーッ!! 【伝説の都 アトランティス】は水属性モンスターの攻守を200アップさせ、さらに手札の水属性のレベルを1つ下げるという特殊な効果を持ったフィールド魔法ッ!!』
「ワタクシはレベル5から4となった、【スパウン・アリゲーター】を通常召喚!」
【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 2200 + 200 = 2400
おぉ久々に見た、鰐塚ちゃんのエース。開始早々プレッシャーをかけていくね。
「カードを2枚伏せ、ターン終了ですわ!」
(伏せカードの1枚は【波紋のバリア -ウェーブ・フォース-】。これでワタクシは万全ですわ!)
「イイねぇ張り切ってんじゃん。──ほんじゃ、オレのターンだなっと」
『先攻1ターン目から上級モンスターを繰り出した鰐塚選手! これに狼城選手はどう応戦するのかっ!?』
さぁ、去年の選抜試験・第3位、──お手並み拝見だ。
「ドロー。……オレはカードを1枚伏せて、ターン
「なっ!? カードを伏せただけですって!?」
予想だにしない展開に鰐塚ちゃんは驚き、他の観客達も
『なななんとぉーっ!! これはどうしたことか! 狼城選手、伏せカードを1枚セットしただけでターンを終了してしまったぁーッ! まさか手札事故かぁーっ!?』
いや、仮にもこのハイレベルな大会で第3位まで登り詰めた実績を持つほどの人が、手札事故なんてそうそうやらかすとは思えない。
鰐塚ちゃんも同じ考えなのか
「貴方ワタクシを舐めてますの!?」
「そーカッカすんなよ、やってみりゃ分かっから。ほら、ミサキ嬢のターンだぜ?」
「くっ……ワタクシのターン、ドロー!」
(茶番に付き合ってられませんわ、速攻で終わらせますわよ!)
「【ライオ・アリゲーター】召喚!」
【ライオ・アリゲーター】 攻撃力 1900 + 200 = 2100
「バトルですわ! 【スパウン・アリゲーター】で、
- スピニング・イート!! -
二足歩行のワニが狼城くん目掛けて突進。
巨体を高速で回転させながら、牙を剥き出しにして襲いかかる。
「ぐおっ!!」
狼城 LP 4000 → 1600
多大な衝撃で狼城くんの上半身が、大きく
伏せカードを発動するのかと思いきや、それすら無く……不気味なぐらいあっさりと、攻撃が通った。
「ワタクシを舐めてかかった事を後悔なさい……! この攻撃がトドメの一撃でしてよ!」
とは言え、こんな好機を逃す人もそうはいない。
鰐塚ちゃんはここで決着をつけるべく、迷わず追撃を宣言する。
「【ライオ・アリゲーター】で、ダイレクトアタック!!」
「──もうちょい冷静になれよ、ミサキ嬢」
「っ!?」
「オマエらしくもねぇ。その一手を、オレが許すとでも思ったか?」
「ま、まさかここで!?」
もしこのタイミングであの伏せカードを発動するんだとしたら……
──! そ、それってひょっとして!
「
「【コンフュージョン・チャフ】!?」
「ワニ同士、仲良く
予感が的中した。
【コンフュージョン・チャフ】は、一度のバトルフェイズで相手が2回目の
いくつもの金属片がバラ撒かれ、【ライオ・アリゲーター】を
【ライオ・アリゲーター】は本来の標的だった狼城くんを見失い、代わりに味方の【スパウン・アリゲーター】を獲物に見定め、飛びかかった。
これに【スパウン・アリゲーター】は対抗して【ライオ・アリゲーター】の胴体に噛みつき、
バトルは【スパウン・アリゲーター】の勝利。しかしその結果によって損害を
「くっ……
鰐塚 LP 4000 → 3700
「ですが甘くてよ!
上手い! 鰐塚ちゃんも見事な切り返しだ。
これなら呼び戻した【ライオ・アリゲーター】でもう一度攻撃すれば、今度こそ勝てる!
……と、思った次の瞬間──
「!?」
どういうわけか、確かに発動した筈の【激流蘇生】が、元のセットされた状態に戻ってしまった。
「はい残念。手札からカウンター
「て……手札から
「こいつはライフを半分払えば手札からでも使える便利なカードなのさ」
狼城 LP 1600 → 800
「【激流蘇生】の発動を無効にして、再セットさせてもらったぜ」
「この……!」
(屈辱的ですわ……ワタクシがここまで手の平で踊らされるだなんて……!)
「そう睨むなよ。そん代わしミサキ嬢は、デッキから
「ッ……ならワタクシは、──【
【激流葬】──モンスターが召喚されると、たちどころにフィールドのモンスターを全滅させる恐るべき
無論、狼城くんにもバレてはいるけど、逆にそれがモンスター召喚への
最悪【スパウン・アリゲーター】を【激流葬】に巻き込む結果になったとしても、即座に【激流蘇生】で復活できる。
まだまだ鰐塚ちゃんの優勢は
「……ワタクシはこれでターンエンド」
ターンを明け渡された狼城くんは、おもむろに左手で頭を掻き始めた。
「ふーん……【激流葬】ねぇ……。まっ──関係ねーけどな」
「っ……!!」
(なんですの……この悪寒は……!)
「オレのターン、ドロー。まずオレは手札から、装備魔法・【悪魔のくちづけ】を発動。【スパウン・アリゲーター】に装備する」
「!?」
悪魔の美女が出現して、【スパウン・アリゲーター】の顔にキスを落とした。
【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 2400 + 700 = 3100
『おーっと! これはトリックスター、またもや予想外の手を打ってきたぁーッ! わざわざ鰐塚選手のモンスターを強化してしまうとは!』
「……どういうつもりですの?」
「んでもってこいつを、──【魔法除去】!」
「はぁ!?」
鰐塚ちゃんが
いきなり相手モンスターに装備カードを付けてパワーアップさせたかと思ったら、今度はそれを自分で破壊してきたのだから。
【スパウン・アリゲーター】 攻撃力 3100 → 2400
「フィールドから墓地へ送られた【悪魔のくちづけ】の効果。オレのライフを500払って、デッキの一番上に戻す」
狼城 LP 800 → 300
「あ、貴方! 先ほどから一体何がしたいんですの!?」
「さらにカードを1枚伏せる。……これで、準備完了だ」
「!」
「行くぜ? 手札から魔法発動。【大逆転クイズ】!」
「っ! そ、そのカードは!?」
「発動時にコストとして、オレの手札とフィールドのカードを全て墓地へ送る」
狼城くんの手に残った最後の1枚と、直前にセットした伏せカードが墓地へと消える。
「今からオレは、自分のデッキの一番上にあるカードの種類を当てる。当たったらオレとミサキ嬢のライフは入れ替わるって寸法だ」
「デッキの一番上……ま、まさか!」
「そうさ。オレの回答は、『
狼城くんがデッキの一番上を
「──さっきオレがデッキの上に戻した、装備
「そんな……!」
「つーわけでクイズはオレの
狼城 LP 300 → 3700
鰐塚 LP 3700 → 300
『なぁんて事だぁーッ!? 狼城選手の巧妙な
「ぐっ……で、ですが! それが何だと言いますの!? これで貴方の手札は
(次のターンで手札の【クロコダイラス】を召喚して総攻撃すれば、ダメージはピッタリ3700! ワタクシの勝利ですわ!)
「もう貴方にできる事は何も──」
「んじゃオレ上がんね、おつかれ~」
「えっ!? ちょっと!」
あろう事か狼城くんは
「ふざけるのも
「いーや、もう終わりだよ。オレの勝ちでな」
「な、なにをバカな……!」
「さっき【大逆転クイズ】で墓地に送った伏せカードな、ありゃ【
「ブ……【
「優等生のオマエなら、どんな効果か知ってんだろ? つまり──」
【
──! フィールドから墓地へ送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える……!
「──『ゲーム・オーバー』だ」
鰐塚 LP 0
「ぁ……!」
デュエルディスクからライフポイントが
敗北を悟った鰐塚ちゃんはガクッと膝を折り、その場に座り込む。
「……まっ、悪く思うなよ」
狼城くんが舞台を降りた頃、数秒だけ静まり返ったドーム内に……
『……あ、けっ、決着ゥゥーーーッ!! ウィナー・狼城 暁ッ!!』
MCのマック伊東さんによる試合終了のコールがマイクを介して響き、やや遅れて観客が歓声で呼応した。
『あまりに一瞬の出来事で私とした事が、ろくに実況できていなかったぁーっ! 同格の鰐塚選手を、よもや
「お……お嬢様ァーッ!?」
「おのれ狼城ォォッ! よくもお嬢様を!」
「とにかくお嬢様の元へ急がねば! 行くぞ京川!」
「おうよ広瀬!」
バタバタと席を立って走り去っていく、風紀委員・副会長コンビを横目に見送りつつ、ボクは
「……【大逆転クイズ】にこんな使い方があったなんてね……」
もしも自分があんな風に、わけの分からないまま、気づいたら負かされていたとしたら……考えただけで背筋が凍る。
「──ねぇセツナくん、あとで励ましに行ってあげたら?」
「え? ボクが?」
「うん。セツナくんに
(なんたって惚れた男だからね~)
「……いや、今は京川くんと広瀬くんに任せるよ、それに……」
「それに?」
「ほら、たぶんボクってさ……彼女に嫌われてると思うから」
ボクがそう言うとマキちゃんは急に目を点にして……
「……ハァ"ァ~~~~~ッ(クソデカため息)」
「えぇっ!? なんでっ!?」
(なんで女慣れしてるくせにこういうとこは鈍感なのかな~……)
「これはかな~り時間かかりそうだよ~、ワニ嬢ちゃん」
「???」
……それにしても、さっきマック伊東さんも言ってたけど、同じ十傑の鰐塚ちゃんを一度もバトルしないどころか、1体のモンスターも出さずに
狼城 暁くん、か……下手したらカナメ以上に、底の知れない
『1回戦から白熱した
──こうしてアリーナ・カップ1日目の全行程が終了した。
ゾロゾロと会場から退席していく観衆に混じって、ボク達3人も出入り口を目指す。
その道中、ボクは呟く。
「結局、狼城くんがどんなデッキを使うのか、よく分かんなかったね」
「
珍しくぼやくマキちゃん。でも今の言い方は──
「手こずりそうでも負ける気はない?」
「もちのろんだよ!」
そうこう話している内に、会場の外へ出た。
まだ昼下がりを少し過ぎた時間帯。周囲は大勢の人々で賑わっている。大会の熱気に当てられたのか、そこかしこで
「私はもうこのまま帰るけど、二人はどうする?」
「そうだねー、ボクも特に予定とか無いし、帰るかな~。(色々あって)クタクタだし」
「ねぇねぇねぇ! 祝勝会しようよ祝勝会!」
「マキちゃん静かに──……祝勝会?」
「浮かれるのは早いわよマキちゃん。まだ1回戦突破しただけでしょ?」
「そうだけどさぁ~。念願のアリーナ・カップに出れて、しかも十傑に勝ったんだよ? もっとこう……勝利の喜びを分かち合いたいじゃん!」
「まぁ、めでたい事ではあるよね。ボクは構わないよ」
「ちょっとセツナまで……」
渋るアマネにマキちゃんが引っ付いて、さらにせがむ。
「ね? 良いでしょアマネたん。こんな早い時間に帰ってもヒマなだけだしさ~。ね? ね?」
「っ……ハァ……分かったわよ」
「やったー!」
「なんだかんだ言ってもマキちゃんには甘いよね、アマネって」
「うるさいわね」
「それじゃあ決まりだけど、どこでやるの? どっかお店に入る?」
「う~~~ん、そうだね~……」
しばし悩んだ
「セツナくんの家に行こうよ!!」
「ええっ!? ボクん
「
「セツナさえ良ければ、私は良いわよ」
「ん~……」
「あれれ~? もしかしてぇ~、見られたら困るものでも置いてあるのぉ~?」
「いやそんなの無いよ!?」
「大丈夫だよセツナくん。一人暮らしの男子の家に、エロ本があっても何もおかしくないよ」
「んななななっ!? そそ、そんなの置いてないしっ!!」
(……ねぇ、アマネたん見た? 今の反応~)
(えぇ、十中八九あるわね)
「てわけで今からセツナくんの自宅にレッツゴー!!」
「そうね、なんか私も楽しくなってきたわ」
「えぇーーーっ!?」
こうして
けどまぁ、これと言って断る理由も無いから、
皆さんはどの辺で「あ、こいつ【大逆転クイズ】使う気だな」と気づきましたか?
次回はデュエル無しの日常回になります!