遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 あけましておめでとうございます!(3月)

 今年も相変わらずの遅筆っぷりですが、気が向いた時にでもセツナ達の物語にお付き合い頂ければ幸いです!



TURN - 37 Eat or be Eaten

 

「はぁ……ひどい目に遭った、色んな意味で」

 

 

 

 金沢くん達にリンチされかけ、アマネに説教され、マキちゃんに痺れた足を突っつかれ、心身共にぐったりと疲れ果てたボクは、やっとの思いで選抜デュエル大会・本選の会場──センター・アリーナの観客席に戻ってこれた。

 

 

 

「あっ、セツナ先輩!」

 

(あに)さん! どこ行ってたんスか、心配しやしたぜ!」

 

「ただいまー。ごめんね二人とも」

 

「聞いてよ~、セツナくんったらナンパなんかしてたんだよ~?」

 

「いやナンパはしてないよ!?」

 

「え~? でも女の子とお喋りしてたんでしょ? ナンパじゃなかったら何やってたの?」

 

「うっ……」

 

 

 

 あんまり否定すると、変に追及されちゃうな。マキちゃんって勘が鋭いし、これ以上この話題は広げないでおこう、うん。アマネやケイくんが事実を知ったら、金沢くん達に殴り込みに行きかねない。

 

 

 

「ま、まぁ、ちょっと話し込んじゃってさ、あはは……」

 

(あに)さん……こんな日まで緊張感ねぇッスね」

 

「でも先輩が無事で良かったです」

 

「ありがとう」

 

 

 

 座席に腰を下ろして、ほっと安堵のため息をつく。本当、一時はどうなるかと思ったよ、まさかあんな事されるなんて……助けてくれた豪炎寺くんには心から感謝だね。

 

 

 

「あ、ところでどうだった? 九頭竜くんの試合」

 

「予想通り、九頭竜の圧勝でしたぜ。さすが学園最強……圧巻の強さでした」

 

「やっぱりかぁ~」

 

 

 

 九頭竜くんの決闘(デュエル)は次こそは観ておきたいな。もしかするとカナメを倒して決勝に上がってくるかも知れない強敵だし。いや、その前にボクが決勝戦まで勝ち進める様に頑張らなくちゃなんだけどさ。

 

 

 

「そろそろ第4試合が始まるわね」

 

 

 

 アマネが手に持つ携帯端末に視線を落としてそう言った。確か4戦目の組み合わせは……

 

 

 

「ヨウカちゃんと虎丸(とらまる)くんだっけ」

 

「えぇ、両方とも十傑(じっけつ)ね」

 

「……そう言えばボク、十傑同士の決闘(デュエル)を観るのは初めてかも」

 

「そうなの? じゃあ良い機会ね。十傑レベルの決闘(デュエル)は……()(もの)よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──さぁさぁさぁさぁ!! 待たせたな諸君! お次は第4試合の始まりだッ!! 本日の前半戦、最後の試合! 全力で盛り上げてってくれぇーッ!!』

 

 

 

 安定のハイテンションな煽動(せんどう)で観客を沸かせ、会場内を温めてくれる実況のマック伊東さん。

 止めどない拍手と歓声に迎えられながら、二人の生徒がメインステージに登壇(とうだん)した。

 

 

 

『第4試合の出場者は、なんと両者共に十傑!! まず一人目は、冴え渡る動物的勘を()(かん)なく発揮し、フィールドを縦横無尽に駆け巡る生粋(きっすい)の野生児! 3年・虎丸 ()(すけ)ぇぇーーーッ!!』

 

「ニハハハーッ! やぁーっとオイラの出番だぜーッ!」

 

 

 

 短い()(がね)(いろ)の髪と小柄な体躯が印象的な男の子が、その場で飛び跳ね、空中で身体を縦に1回転させた後、華麗な着地を決めた。

 アクションスターもビックリの身のこなしだ。SAS○KEに出たら優勝できそう。

 

 

 

『そして二人目! その野生児に対するは、蝶の様に舞い蜂の様に刺す、(うるわ)しきナイスガイ! 人呼んで〝戦場に咲く一輪の華〟! 3年・蝶ヶ咲(ちょうがさき) (ヨウ)()ァァーッ!!』

 

「ん~、ナイスガイも悪くないけれど……どうせなら乙女って言ってほしかったわ。アタシ、ココロは女だから♡」

 

 

 

 美形で長身の青年が長めな藍色(あいいろ)の髪を(なび)かせると、観客席から黄色い声援が飛び()った。

 オネエ口調で喋る変わった()()だけど、女の子にはモテるみたいだ。

 

 

 

『今大会初の十傑同士の決闘(デュエル)! これは注目の一戦になりそうだ! それでは皆、準備は良いか!? イ~~~ッツ! タイム・トゥ──』

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 虎丸(とらまる) LP(ライフポイント) 4000

 

 蝶ヶ咲(ちょうがさき) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「ぃよーしっ、オイラの先攻だよん! オイラは【(おう)()ワンフー】を召喚!」

 

 

 

(おう)()ワンフー】 攻撃力 1700

 

 

 

『これは虎丸選手、いきなり厄介なモンスターを出してきたー! 【王虎ワンフー】が場にいる限り、攻撃力1400以下のモンスターを召喚、及び特殊召喚すると、たちどころに破壊されてしまうのだぁーっ!!』

 

「ニハハハッ。ヨウ姉の虫デッキには、まさに天敵だろ~?」

 

「……」

 

 

 

 そうだ、予選でコータとの決闘(デュエル)を観た時、ヨウカちゃんは攻撃力の低い昆虫族や植物族を多く使っていた。確かに【ワンフー】の効果はよく刺さる筈。

 

 

 

「オイラはカードを3枚伏せて、ターン終了(エンド)!」

 

「ではアタシのターン、ドロー」

 

 

 

 (なめ)らかな手つきとダンスの様に流麗な動き(ムーブ)で、デッキからカードを引くヨウカちゃん。

 1ターン目から召喚を制限されたも同然の状況で、どう打って出る?

 

 

 

「……ンフッ、甘いわねキスケちゃん。確かに【ワンフー】ちゃんの効果は厄介だけれど、アタシがそれを利用するとは考えなかった?」

 

「にゃ?」

 

「アタシは【代打バッター】を召喚!」

 

 

 

【代打バッター】 攻撃力 1000

 

 

 

「んげっ!? そいつは!」

 

「この子の攻撃力は1000。よって【ワンフー】ちゃんの効果が発動するわ」

 

 

 

 フィールドに大型犬ほどもあるサイズのバッタが出現するも、【ワンフー】のモンスター効果を受けて即座に破壊される。

 

 

 

「【代打バッター】の効果発動! この子がフィールドから墓地へ送られた時、手札から昆虫族1体を特殊召喚できる。現れなさい──【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】!!」

 

 

 

【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】 攻撃力 2800

 

 

 

 出たな変態女王。いつ見ても強烈なビジュアルをしていらっしゃる。

 

 

 

『おぉーっと蝶ヶ咲選手! 【王虎ワンフー】の効果を逆手に取り、早くも最上級モンスターを召喚したぁーッ!!』

 

「ぐぬぬぬっ……! そう来たか~!」

 

「詰めが甘かったわね。さぁ行くわよ、美しき闘いを──」

 

「待った! (トラップ)カード・【()(かく)する咆哮(ほうこう)】を発動!」

 

「!」

 

 

 

 【ワンフー】に吠えられた女王様は、(ひる)んで動きを止めた。

 

 

 

「このターン、ヨウ姉は攻撃宣言できないぜ!」

 

「あら残念。仕方ないわね、アタシはこれでターンエンドよ。そしてこのエンドフェイズ、【女王(クイーン)】はフィールドに卵を産みつける」

 

 

 

 ヨウカちゃんの言葉通り、【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】は卵を産み落とし、その中から1匹の幼虫が()()した。

 

 

 

【インセクトモンスタートークン】 守備力 100

 

 

 

「フィールドに他の昆虫族が存在する場合、【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】の効果で、アタシの昆虫族は相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない。さっ、アナタのターンよ、キスケちゃん」

 

「っ……!」

 

『虎丸選手、何とかこのターンは(しの)いだが、勝負の流れは今や蝶ヶ咲選手に傾いている! 果たしてここから対抗策はあるのだろうか!?』

 

「……ニハハッ、おーもしれっ。やってやろーじゃん!」

 

 

 

 盤面だけを見れば虎丸くんが不利な状況。だと言うのに彼は、ニカッと八重歯を見せつける様に口角を上げて笑った。

 

 

 

「オイラのターン、ドローッ!」

 

(おっし!)

 

「行っくぜ~ヨウ姉。今度はこっちの番だ! オイラは【ワンフー】をリリースして──【百獣王(アニマル・キング) ベヒーモス】をアドバンス召喚!!」

 

 

 

 新たに呼び出されたのは、紫の(たてがみ)()(つい)(つの)を生やし、肌がピンク色の筋肉質な巨体を持つ四足歩行の獰猛(どうもう)な獣だった。

 

 

 

「へへーん、どうだ! こいつがオイラの切り札だ!」

 

『おぉーっと虎丸選手も負けじと最上級モンスターを召喚だぁーッ!! しかも、レベル7のモンスターをリリース1体で召喚だとぉーっ!?』

 

「【ベヒーモス】の召喚はリリース1体でも出来るんだぜー! そん代わし、攻撃力は2000に下がっちゃうけどね!」

 

 

 

百獣王(アニマル・キング) ベヒーモス】 攻撃力 2000

 

 

 

「そんで【ベヒーモス】の効果発動! 召喚する時リリースしたモンスターの数だけ、墓地の獣族を手札に戻せる! オイラは【王虎ワンフー】を戻すよん!」

 

「虎の王の次は百獣の王と来たか……でも、その攻撃力じゃアタシの女王には勝てないわよ?」

 

「ニヒヒッ、そりゃあどうかにゃ~? 手札から魔法(マジック)カード・【野生解放】を発動!」

 

 

 

 【ベヒーモス】は大気をビリビリと震わせるほどの咆哮を轟かせながら、全身の筋肉を限界まで膨らませ、力を(みなぎ)らせる。言うなれば、バーサーカー状態(モード)だ。

 

 

 

百獣王(アニマル・キング) ベヒーモス】 攻撃力 2000 → 3500

 

 

 

「攻撃力3500……!?」

 

「【野生解放】で【ベヒーモス】の守備力分、攻撃力をアップしたんだぜ! さぁ狩りの時間だ……!」

 

(来るわね……)

 

「バトル! 【ベヒーモス】で──そこの()っこい虫を攻撃!」

 

「えっ!?」

 

 

 

 虎丸くんが攻撃対象に選んだのは、【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】ではなく、まさかの【インセクトモンスタートークン】だった。これにはさすがのヨウカちゃんも驚きの声を上げた。ボクも目を剥いたし恐らく誰もが意表を突かれた事だろう。

 

 

 

「この瞬間! 永続(トラップ)カード・【吠え(たけ)る大地】を発動! 【ベヒーモス】の攻撃に、貫通効果を加えるぜーッ!」

 

 

 

 アレはボクと()った時も使っていた(トラップ)か。何だか懐かしいね。

 【ベヒーモス】の太い前足が産まれたばかりの幼虫を容赦なく踏み潰した。その衝撃で発生した余波が多大な貫通ダメージとなってヨウカちゃんを襲う。

 

 

 

「くっ……!」

 

 

 

 蝶ヶ咲 LP 4000 → 600

 

 

 

「よっしゃあっ! 【吠え猛る大地】の効果で相手が貫通ダメージを受けた時、相手モンスター1体の攻撃力と守備力を、500ポイントダウンする! 下げんのはお前だ! んーっと……【きゅーきょくなんちゃらクイーン】!」

 

 

 

【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】 攻撃力 2800 - 500 = 2300 守備力 2400 - 500 = 1900

 

 

 

(アタシに大ダメージを与えて【女王(クイーン)】を弱体化させる為に【幼虫(トークン)】を? ……だとしても()せないわね)

 

「どういうつもりかしら? 【野生解放】の効果を受けたモンスターは、エンドフェイズに破壊されてしまうんでしょう? 【インセクト女王(クイーン)】の攻撃力を下げたところで、【ベヒーモス】が場に残らないなら意味がないじゃない」

 

「うんにゃ、ところがそうはならないんだよな~」

 

「……?」

 

(トラップ)発動! 【キャトルミューティレーション】!」

 

「──! そのカードは……!」

 

「自分の場の獣族1体を手札に戻して、同じレベルの獣族を特殊召喚する! オイラは【ベヒーモス】を戻して……もっかい【ベヒーモス】を召喚するぜっ!」

 

 

 

百獣王(アニマル・キング) ベヒーモス】 攻撃力 2700

 

 

 

『う、上手いっ!! これで【野生解放】のデメリットを回避し、下がった攻撃力は元に戻り、さらにバトルフェイズ中の特殊召喚という事は、2回目の攻撃が可能となる! 虎丸選手、十傑の称号に相応しい見事な戦術(タクティクス)を見せつけたぁーッ!!』

 

「なるほど……それがアナタの本当の狙いだったのね」

 

 

 

 【究極変異体・インセクト女王(クイーン)】には、他の昆虫族が場にいる時、昆虫族をカード効果から守る能力があった。

 最初に【インセクトモンスタートークン】を破壊したのは、【女王(クイーン)】を【吠え猛る大地】の対象にする為……!

 ここまで考えて先にトークンから攻撃したのか……すごい!

 

 

 

「行っけぇ【ベヒーモス】!! 今度の獲物はあのでっかい虫だっ! 『キングス・ファング』!!」

 

 

 

 強靭な牙で【インセクト女王(クイーン)】の胴体を喰い()()る【ベヒーモス】。

 百獣の王と昆虫の女王の一騎討ちは、百獣の王に軍配が上がった。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 蝶ヶ咲 LP 600 → 200

 

 

 

「惜っしぃ~~~! 削り切れなかったかぁ! まぁいーや、オイラはこれでターンエンドだぜ!」

 

『ななな、なんとハイレベルな闘いだーっ!! 蝶ヶ咲選手が勝負の主導権を握ったかと思えば、次のターンには虎丸選手があっさりと形勢を引っくり返してしまった!! 互いに一歩も退()かない! これがジャルダン校のトップランカー・十傑同士の決闘(デュエル)!!』

 

 

 

 場内はすっかり興奮の()(つぼ)と化していた。こんなスリリングなクロスゲーム、そうそう見られない。普段から十傑の決闘(デュエル)は生徒に人気があったのも頷ける。

 

 

 

「……やるわねキスケちゃん。アタシのターンよ」

 

 

 

 一転して今度はヨウカちゃんがピンチだ。

 【吠え猛る大地】がある限り、守備表示でモンスターを出しても、ダメージは()けられない。それに虎丸くんの手札には、【ベヒーモス】の効果で墓地から回収(サルベージ)した、【王虎ワンフー】も控えている。

 

 

 

「ドロー!」

 

(【レッグル】……このカードじゃダメね……今の手札じゃ【ベヒーモス】を倒す手段は無い……ならば一か八か!)

 

「アタシは速攻魔法・【リロード】を発動! 手札をデッキに加えてシャッフルし、その枚数分のカードをドローするわ!」

 

「むむっ!」

 

「ンフッ、アタシもキョーゴちゃんみたいに、運を引き寄せてみせようかしらね……ドローッ!」

 

 

 

 ヨウカちゃんは一気に4枚のカードをデッキから引き、それらを横目で確認した直後──口元に薄く笑みを浮かべた。

 

 

 

「……あと一歩だったわね、キスケちゃん。どうやら勝利の女神は……アタシに微笑んだみたいよ」

 

「──っ!?」

 

 

 

 突如、【ベヒーモス】に異変が起こる。

 何やら呻き始めたかと思うと、体内から青い色をした百足(ムカデ)の様な生き物が肉を突き破って飛び出し、【ベヒーモス】の身体中を這いずって(まと)わり付いたんだ。そのグロテスクな光景に観客は悲鳴を上げる。

 

 

 

「【ベヒーモス】!? な、なんだよこれ! どうしちまったんだぁ!?」

 

『いっ、一体何が起きているんだぁーっ!?』

 

「手札の【寄生虫パラノイド】は、フィールドのモンスター1体に装備できる。この子に寄生されたモンスターは種族が昆虫族になる。そして昆虫族となった【ベヒーモス】を対象に……魔法(マジック)カード・【超進化の(まゆ)】を発動!」

 

 

 

 虫に寄生された【ベヒーモス】が今度は金色の輝きを放つ巨大な繭に包み込まれる。

 

 

 

「ああっ! 【ベヒーモス】が!?」

 

「楽しませてくれたお礼よ、昆虫族最強のモンスターを見せてあげるわ。──産まれなさい! 【究極完全態・グレート・モス】!!」

 

 

 

 繭の中から、変態女王に匹敵する大きさの()が、(ハネ)を広げ鱗粉(りんぷん)()き散らしながら誕生した。

 (もと)日本チャンプのインセクター()()も使っていた、昆虫族では攻撃力・守備力共に最高のステータスを誇るモンスターだ。

 

 

 

【究極完全態・グレート・モス】 攻撃力 3500

 

 

 

『なんとぉーっ!! 現れたのは昆虫族の中でも最強と言われる伝説級のレアカード・【究極完全態・グレート・モス】だぁぁぁぁっ!!』

 

「ぐぐぐっ……!」

 

「まだよ! 装備カード扱いの【寄生虫パラノイド】が墓地へ送られた場合、手札にあるレベル7以上の昆虫族を、召喚条件を無視して特殊召喚できる! お次は【究極変異体】の()()をお披露目よ。──【インセクト女王(クイーン)】!!」

 

 

 

【インセクト女王(クイーン)】 攻撃力 2200

 

 

 

 ()()みたいな6本の足に、赤い前翅(まえばね)刺々(トゲトゲ)しい外骨格。名前こそ変態女王と同じだけど、姿形が所々(ところどころ)異なる虫が現れる。

 これまた羽蛾さんのデッキにも入っていたモンスターだ。バトルシティ編のDVDで観た!

 

 

 

「【インセクト女王(クイーン)】の攻撃力は、フィールドにいる、自身を含む昆虫族1体につき、200アップする」

 

 

 

【インセクト女王(クイーン)】 攻撃力 2200 → 2600

 

 

 

 虎丸くんの場は【吠え猛る大地】以外には伏せカードもセットされていない完全な無防備。もはや勝負は決まったね……

 

 

 

「バトルよ! 【究極完全態・グレート・モス】で直接攻撃(ダイレクトアタック)! 『モス・パーフェクト・ストーム』!!」

 

 

 

 【グレート・モス】は翅を羽ばたかせて突風を巻き起こし、虎丸くんを軽々と吹き飛ばす。

 

 

 

「うぎゃあぁぁぁーっ!?」

 

 

 

 虎丸 LP 4000 → 500

 

 

 

「──【インセクト女王(クイーン)】は自分のモンスターを1体リリースしなければ攻撃できない。アタシは【究極完全態・グレート・モス】を捧げるわ」

 

 

 

 うげっ、【インセクト女王(クイーン)】が【グレート・モス】を食べちゃった。

 あーあ、召喚条件が厳しすぎて滅多に拝めない激レアモンスターだったのに、もう見納めかー。にしてもやっぱりヨウカちゃんの美しさの基準って、よく分かんないや。

 

 

 

【インセクト女王(クイーン)】 攻撃力 2600 → 2400

 

 

 

「これでオシマイよ。【インセクト女王(クイーン)】の攻撃! 『クイーンズ・ヘル・ブレス』!!」

 

 

 

 縦に大きく開かれた【インセクト女王(クイーン)】の口内から、怪光線が放たれた。

 

 

 

「せめて美しく散りなさい」

 

「っ……ぎにゃああああああっ!!」

 

 

 

 虎丸 LP 0

 

 

 

『決着ゥゥーーーッ!! 勝者(ウィナー)・蝶ヶ咲 妖華ッ!!』

 

「フゥ……久々にドキドキしたわ」

 

「くっそぉぉーーーっ!! 負けたぁぁーーーッ!!」

 

 

 

 絶えず鳴り続ける拍手と歓声の中、ヨウカちゃんは前髪を掻き上げながら息をつき、虎丸くんは大の字で仰向けになって、悔しげに叫んだ。

 

 両者の実力は互角。どっちが勝ってもおかしくない接戦だった。ボクは他の観客に混じって拍手を送り、二人の健闘を讃える。

 

 

 

「良い決闘(デュエル)だったね、アマネ」

 

「そうね」

 

「あんなの見せられたらボクも燃えてきちゃったよ」

 

「その前に昼食の時間よ、食堂に行きましょ」

 

「あ、そっか」

 

 

 

 今から1時間のお昼休憩を挟んで……午後の最初の試合は──ボクと十傑の熊谷(クマガイ) (リキ)()くんだ。

 さっきまで色々あって消耗しちゃってるし、まずは美味しいランチで鋭気を養ってこなければ。今日の献立(こんだて)は何だろな♪

 

 

 

 





 今回のタイトルの意味は『喰うか喰われるか』です。(間違ってたらお恥ずかしい)
 獣族 vs 昆虫族のマッチアップにはピッタリなタイトルかと思いまして。

 次回は超久々に主人公のデュエルです!

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