遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 遊戯王wikiに『採用する価値は低い』って書かれたカードほど使ってみたくなる作者です。(お久しぶりです)



TURN - 35 SHARK ON

 

「1回戦突破おめでとう、カナメ」

 

 

 

 センター・アリーナの内部、決闘(デュエル)リングへと続く長い通路。

 大間くんとの試合を終えて戻ってきたカナメに、ボクは(ねぎら)いの言葉をかけて微笑(ほほえ)んだ。

 彼のコバルトブルーの(ひとみ)が静かにボクを見据え、お互いの視線が交差する。

 

 

 

「……そんな事を言いに来たわけではないだろう?」

 

 

 

 おっと、お見通しか。なかなか鋭い慧眼(けいがん)をお持ちで。

 ボクは寄りかかっていた壁から背中を離し、口角を(ゆる)め、(ガラ)にもなく真面目な顔をしながら一言。

 

 

 

「……さすがに、ああいう決闘(デュエル)はどうかと思うよ」

 

「……なんだ、説教でもしに来たのか」

 

「そんなんじゃないけどさ」

 

 

 

 ついさっきまで、ボクは本選出場者用の控え室に設置された大型モニターで、他の選手達と一緒にトーナメント1回戦の第1試合──カナメと大間くんの決闘(デュエル)を観戦していた。

 

 カナメの規格外の強さに大間くんは手も足も出ず、あっという間に追い詰められていった……そこまではいい。

 

 問題は決闘(デュエル)の終盤。

 起死回生のカードを引き損じ、モンスターも伏せカードも出せないまま敗北が確定した大間くんに対し、カナメはあろう事か『1ターン待ってやる』と言い放ち、わざとトドメを刺さずに自分のターンを終え、見逃した。

 

 その()の大間くんの(おこ)りようと言ったら凄まじかった。結局、健闘むなしく返しのターンで負けてしまったのだけれど。

 

 あの時の大間くんの気持ちが、ボクには痛いほど分かる。

 

 例えどんなに実力の差があったとしても、手を抜かれたりして嬉しい決闘者(デュエリスト)はいない筈だ。あからさまに下に見られてるってわけだから。

 

 その上、相手の心を徹底的に折る様なカナメのやり(くち)を観て、どうしてもボクは苦言を(てい)さずにはいられなくなってしまった。

 

 

 

「……あんな、相手をおちょくるみたいな決闘(デュエル)は、ボクは好きじゃない」

 

「お前の好みなど知った事ではない。どんな決闘(デュエル)をしようと俺の勝手だ」

 

 

 

 うっ、ごもっとも。正論ではある……けど。

 

 

 

「だからってアレは、相手を舐め過ぎだよ」

 

「やめてほしいと言うのなら(ちから)で従わせてみせろ。できるものならな」

 

「っ……」

 

「俺は自分より弱い決闘者(デュエリスト)の言う事を聞くつもりはない」

 

 

 

 ダメだ、取りつく島もない。二の句が継げなくなったボクを尻目に、カナメは再び歩き出してボクの横を通り過ぎていく。

 

 

 

「……お前の言う通りだ。俺は相手を舐めている」

 

「え?」

 

 

 

 そのまま帰ってしまうかと思いきや、カナメはまたも足を止めて、そう切り出した。

 

 

 

「そうすれば相手は(いか)り、(いきどお)り、果ては俺を憎み、俺を殺す気で挑んでくる。さっき潰したあの男の様にな」

 

「……」

 

「そしてそれで良い。そうでなくては──俺が(たの)しくない」

 

「!」

 

 

 

 自分が楽しむ為なら例え嫌われても、それこそ殺意や復讐心まで向けられたとしても構わない……むしろ望むところだ、と。

 

 ボクは全てを察した。と言うより、彼の背中が雄弁に物語っている。

 

 ──カナメは、渇望しているんだ。

 

 自分を愉しませてくれる相手を。

 自分の──全力を引き出させてくれる強者を。

 

 そして、その果てに……

 

 

 

「…………」

 

 

 

 道理で()()として敵を増やす様な態度や発言を繰り返すわけだ。この人に何を言っても無駄みたいだね……仕方ない。

 

 

 

「……分かった。そういう事なら、お望み通りにしてあげるよ」

 

「なに?」

 

「君に決闘(デュエル)で勝ってあげる」

 

「…………」

 

 

 

 カナメがこちらに振り返る。無表情なのは変わらないけど、その透き通った碧眼(へきがん)には今どんな感情が宿っているんだろう。

 

 

 

「前に喫茶店でも、そう言ったでしょ?」

 

「……面白い。ならば決勝まで勝ち上がってこい。口先だけではないと証明してみせろ」

 

「もちろん。ていうか君こそ決勝行くまでコケちゃダメだよ? あはは、これで途中で負けたら超ダサいね、ボクら」

 

「フッ、有り得ないな。誰に口を利いている」

 

「君にだよ、鷹山(ヨウザン) (カナメ)くん」

 

「──待っているぞ、総角(アゲマキ) 刹那(セツナ)

 

 

 

 ボクは返事の代わりにウィンクを返す。そこで会話は今度こそ終了し、カナメはとうとう立ち去っていった。

 

 ……あーあ、益々(ますます)もって優勝するしかなくなっちゃったな。これでもし初戦敗退とかしちゃったらどうしよー。少なくともカナメには顔向けできなくなるし、下手したら……いや確実に、二度と相手してもらえなくなるね。

 

 とにもかくにも、やるしかないや。頑張ろっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!! 第1試合の興奮が未だ冷めやらぬ中! いよいよ第2試合の開始だぁーッ!!』

 

 

 

 MCの人(マック伊東さんだっけ?)の溌剌(はつらつ)な声がドーム全体に()()えと()(だま)する。まさか『GARDEN』の店長さんが実況だなんて知った時はビックリしたよ。

 

 あ、そうそう。ただいまボクは控え室ではなくて、生徒用の観客席をウロウロしてる最中なんだ。もちろんアマネとマキちゃんも一緒にいるよ。

 数分前ルイくんに端末でメッセージ送って、この辺にケイくんと二人で座ってるって聞いたんだけど……どこにいるかな~?

 

 

 

(あ、いたいた。目立つな~、あの髪)

 

 

 

 満席間近な客席の奥の列、左から数えて三つ目の席に座る、オレンジ色の短髪が目に留まった。

 間違いない、ケイくんだ。分かりやすい目印があって助かった。よく見れば彼の左隣には見慣れた茶髪──ルイくんもちょこんと座っている。

 そしてルイくんの横、列の端っこが空いていた。さらにその真後ろにも、ちょうど二人分の空席。ラッキー!

 

 階段を降りて、ボクはルイくんの隣に。アマネとマキちゃんは二人分の席に腰を降ろした。

 

 

 

「よっと」

 

「アマネたん、お先にどうぞ~」

 

「ありがと」

 

「あ、皆さん、こんにちは」

 

「チッス!」

 

「チーッス。席確保しててくれたの? ありがとう」

 

(あに)さんと先輩方の為なら御安い御用ですぜ!」

 

「先輩、控え室にいなくて平気なんですか?」

 

「良いの良いの。ボク達みんな試合は午後からだし、頃合いを見て行くよ。それに、あそこはどうも息が詰まるんだよね……」

 

「ねー」

 

「?」

 

 

 

 いやホント酷いもんだよ。言っちゃえば全員が敵同士みたいなメンバーが密室に集められて、ただでさえどこかピリピリしてたのに、カナメがあんな決闘(デュエル)をするもんだから余計に拍車がかかって空気が重苦しくなってるの。ずっと居たら気が変になりそうだったから、三人で逃げてきちゃった。

 

 

 

「にしても、ここからの景色はいつ見ても壮観だね~」

 

 

 

 予選1日目の開会式以来の眺めだ。ここで観る決闘(デュエル)はさぞ絶景だろうね。

 

 

 

『選手入場ォーッ!! みんな! 拍手で迎えてやってくれぇーっ!!』

 

 

 

 向かい合う二つのゲートから二人の決闘者(デュエリスト)が出てくると、ボク達を含め観客は一斉に両手を打ち鳴らす。

 

 

 

『自称・東海の人喰い(ザメ)! その鋭い牙で、歯向かう獲物を根こそぎ喰い尽くす! 2年・次期十傑候補──鮫牙(サメキバ) (ジョー)!!』

 

「シャアアアアアッ!!」

 

 

 

 髪がモヒカンで鼻にピアスの付いた派手で厳つい見た目の青年が、見事なまでに生え揃った(えい)()なギザ歯を剥いて、高らかに吠える。

 

 

 

『対戦相手に心理を悟らせぬ笑顔の仮面! 果たして今回はどこまで底力を魅せるのか!? 3年・十傑──豹堂(ひょうどう) 武蔵(ムサシ)!!』

 

「ウハハ。ご丁寧(ていねい)にドーモ」

 

 

 

 対するは、にこやかに細められた糸目と吊り上がった口唇(こうしん)で表情を固定した、ダークブラウンのミディアムショートヘアの青年だ。

 

 両者とも実力は未知数。はてさて、どんな決闘(デュエル)になるのかな?

 

 

 

『みんな準備は良いか!? これよりトーナメント1回戦・第2試合! 鮫牙 丈 vs 豹堂 武蔵!! イ~~~ッツ! タイム・トゥ──』

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 鮫牙 LP(ライフポイント) 4000

 

 豹堂 LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「ほな、後輩くんから先でえぇで」

 

「シャハッ! 先輩の優しさってヤツかぁ? それとも余裕かぁ? どっちにしろ後悔するぜぇ! オレサマの先攻(ターン)!」

 

 

 

 確かに先攻が有利とも言われる現代の決闘(デュエル)で、わざわざ進んで後攻に回るのはハンデと言えなくもないけど……うーん、豹堂くんの笑顔からは何を考えてるかさっぱり読めない。

 

 

 

「オレサマは永続魔法・【ウォーターハザード】発動! オレサマの場にモンスターがいない時、手札からレベル4以下の水属性モンスター1体を特殊召喚できる! 出やがれっ! 【ビッグ・ジョーズ】!」

 

 

 

 激しく打ち寄せる津波の中から、1匹の鮫が勢いよく飛び出してきた。(アゴ)や背ビレが機械で出来ているのか金属製で、銀の光沢を帯びている。

 

 

 

【ビッグ・ジョーズ】 攻撃力 1800

 

 

 

「さらに【サイバー・シャーク】を通常召喚!」

 

 

 

【サイバー・シャーク】 攻撃力 2100

 

 

 

 お次はサイボーグの鮫がお出ましだ。

 

 

 

『なんと!? レベル5のモンスターをリリースも無しに召喚したぁーッ!!』

 

「こいつは自分フィールドに水属性がいる時、リリース無しで召喚できる! これでオレサマはターン終了(エンド)だぁ!」

 

「なーるほど、頭ええやん自分。ワイのターン、ドロー」

 

 

 

 どうやら鮫牙くんのデッキは水属性が主体みたいだね。豹堂くんはどう出るのかな。

 

 

 

「ほんならワイも永続魔法、行くで。──【(ろく)()の門】を発動や」

 

「!?」

 

 

 

 今度は地響きがフィールドを揺らし始め、やがて豹堂くんの後ろに堅牢な城門が()り上がってきた。

 

 

 

「このカードはワイが【六武衆(ろくぶしゅう)】を召喚・特殊召喚する度に、『武士道カウンター』を2つ置く。ワイは【六武衆-ザンジ】を召喚」

 

 

 

【六武衆-ザンジ】 攻撃力 1800

 

 

 

「さらに、【六武衆の()(はん)】を特殊召喚や!」

 

 

 

【六武衆の()(はん)】 攻撃力 2100

 

 

 

『おぉーっとォ!! 豹堂選手も負けじと2体のモンスターを揃えたーっ! しかも奇しくも攻撃力は2体とも相手と互角だぁーッ!!』

 

「【師範】は自分フィールドに【六武衆】が()る時、手札から特殊召喚できるんやで」

 

「てめぇ……さっきからオレサマの真似ばっかしやがって!」

 

「しゃーないやん、手札に来てもうたんやもん。ともかくこれで、【六武の門】にカウンターが4つ乗ったで」

 

 

 

【六武の門】 武士道カウンター × 4

 

 

 

「ここで【門】の効果を使わせてもらうで! 武士道カウンターを2つ取り除き、【ザンジ】の攻撃力を500アップや!」

 

 

 

【六武の門】 武士道カウンター × 4 → 2

 

【六武衆-ザンジ】 攻撃力 1800 + 500 = 2300

 

 

 

「もういっちょ! 残り2つのカウンターも使って、今度は【師範】を強化や!」

 

 

 

【六武の門】 武士道カウンター × 2 → 0

 

【六武衆の師範】 攻撃力 2100 + 500 = 2600

 

 

 

「な、なんだとぉーっ!?」

 

「さ~て、戦闘開始と行こか? 【ザンジ】で【ビッグ・ジョーズ】を! 【師範】で【サイバー・シャーク】を! それぞれ攻撃!!」

 

 

 

 薙刀(なぎなた)を構えたサムライと歴戦の老兵が2匹の凶暴な鮫を一刀両断した。映画みたいで何かカッコいい!

 

 

 

「ギシャアァーッ!?」

 

 

 

 鮫牙 LP 4000 → 3000

 

 

 

「鮫の刺し身いっちょあがり~っと。ワイはカードを2枚伏せてエンドや。【ザンジ】と【師範】の攻撃力は元に戻る」

 

 

 

【六武衆-ザンジ】 攻撃力 2300 → 1800

 

【六武衆の師範】 攻撃力 2600 → 2100

 

 

 

 プレイングは似ていても、豹堂くんの方が一枚(うわ)()だった。これが2年と3年の、1年間のキャリアの差か。

 

 

 

「ち……ちきしょう……! オレサマのターンだ!」

 

(──!!)

 

「ッシャア!! 来たぜオレサマの切り札!!」

 

「お? えぇカード引けたんか、おめっとさん」

 

「そうやってヘラヘラ笑ってられんのも今の内だぜ! まずは【デプス・シャーク】を召喚! こいつはオレサマの場にモンスターがいない場合、リリース無しで通常召喚できる!」

 

 

 

【デプス・シャーク】 攻撃力 1400

 

 

 

「さらに魔法(マジック)カード・【大波(おおなみ)()(なみ)】発動! オレサマの場の水属性モンスターを、全て破壊するっ!」

 

 

 

 召喚されたばかりの【デプス・シャーク】が、高さ10メートルはありそうな荒波に飲み込まれてしまった。

 

 

 

「そして破壊した数と同数まで、手札の水属性モンスターを特殊召喚できる! 出やがれっ! オレサマのデッキの最強モンスター! 【エンシェント・シャーク ハイパー・メガロドン】!!」

 

 

 

 【デプス・シャーク】を沈めた高波の中から、新たな鮫が姿を現した。これまでのとは比較にならないほどの、まるでクジラみたいな超大型サイズ。そのド迫力にボクだけでなく、みんな目を見張り驚嘆の声を上げた。

 

 

 

【エンシェント・シャーク ハイパー・メガロドン】 攻撃力 2900

 

 

 

「ウッハー、まーたずいぶんとゴツいのが来おったで」

 

「バトルだぁ! 【ハイパー・メガロドン】で【六武衆-ザンジ】を攻撃ッ!! 『メガトン・ファング』!!」

 

 

 

 未だフィールドの上を好き勝手に暴れ回る津波に乗って、鮫のお化けが大口を開けながら迫り来る。波の勢いもあってか巨体に見合わない猛スピードだ。いかに屈強なサムライと言えど、とても太刀打ちできそうにない。

 

 

 

「……すまんの、【師範】」

 

「!」

 

 

 

 その時、【ハイパー・メガロドン】に狙われた【六武衆-ザンジ】を庇う様に、【六武衆の師範】が2体の間に割って入った。

 【師範】は【ザンジ】の代わりに【メガロドン】の餌食となり、あえなく丸飲みにされてしまう。

 

 

 

「なんだァ!? てめぇ何しやがった!?」

 

「【ザンジ】の、ちゅーより【六武衆】の共通効果やな。味方の【六武衆】を身代わりにして、破壊を免れる」

 

「チッ、だがダメージは受けてもらうぜ!」

 

「ッ……!」

 

 

 

 豹堂 LP 4000 → 2900

 

 

 

「──シャハッ! そしててめぇがダメージを受けた事で、【ハイパー・メガロドン】の効果を発動だ!」

 

 

 

 鮫牙くんはニヤリと歯を見せて不敵に笑い、そう宣言した。次の瞬間──

 

 

 

「!」

 

 

 

 なんと【ハイパー・メガロドン】が再び動き出した。またもや【ザンジ】に牙を剥き、ついに補食に成功。【師範】同様ひと飲みで喰らった。

 

 

 

「シャハハハッ! 驚いたか! これが【メガロドン】の効果だぁ! 相手に戦闘ダメージを与えた時、相手モンスター1体を破壊する!」

 

「ありゃりゃ、結局みんなやられてしもた」

 

「シャアアアア形勢逆転ッ!! 波に乗った今のオレサマはちょっとやそっとじゃ止まらねぇぜえっ!」

 

 

 

 ……前言撤回。鮫牙くんも負けていなかった。次期十傑候補に選ばれるだけはある。

 

 

 

「オレサマはクランドさんをコケにしやがった鷹山の野郎をぶちのめさなきゃなんねぇんだ! てめぇなんぞに負けてたまるかよっ!!」

 

 

 

 クランド? ……あぁ、思い出した。カナメと喫茶店で会った日に出くわした暴走族のリーダーだっけ。カナメが(アカ)()ちゃんのデッキを借りてボコボコにしてたね。

 そう言えばあの場に鮫牙くんに似たモヒカンがいたようないなかったような……?

 

 

 

「これでオレサマはターンエンドだぁ!」

 

「おっと、せやったらここで伏せカードを発動しとくで。永続(トラップ)・【神速(しんそく)()(そく)】。効果は、まぁ……後のお楽しみっちゅー事で」

 

「あぁ? なんだそりゃ」

 

『さぁ(まさ)に一進一退の攻防! 果たして軍配はどちらに上がるのか!?』

 

「ワイのターン、ドローや。……お! 早速とはツイとるわ。【神速の具足】の効果! ドローフェイズに引いたんが【六武衆】やったら、そのまま特殊召喚できる。出陣やで、【六武衆-ニサシ】!」

 

 

 

【六武衆-ニサシ】 攻撃力 1400

 

【六武の門】 武士道カウンター × 2

 

 

 

「シャハッ、何かと思えばただの召喚効果かよ。そんなモンスター、オレサマの【メガロドン】の前じゃ小魚も同然だぜっ!」

 

「まぁ見とき、こっからおもろいもん見したる。(トラップ)発動、【六武衆推参(すいさん)!】。墓地から【ザンジ】を復活や!」

 

 

 

【六武衆-ザンジ】 攻撃力 1800

 

【六武の門】 武士道カウンター × 4

 

 

 

「ほんで【六武の門】の効果や。今度はカウンターを4つ、全部使うで」

 

 

 

【六武の門】 武士道カウンター × 4 → 0

 

 

 

「4つ取り除いた場合の効果はデッキか墓地から【六武衆】を手札に加える。ワイは墓地から【師範】を回収──からの、もっかい特殊召喚や!」

 

 

 

【六武衆の師範】 攻撃力 2100

 

【六武の門】 武士道カウンター × 2

 

 

 

「くそっ、しぶとい奴らだぜ……! だがなぁ! 仮に【門】の効果でパワーアップしようが、この【ハイパー・メガロドン】には届かねぇぜ!」

 

「ちゃうちゃう、もう【門】は使わへん。必要あらへんからな」

 

「あ? どういう意味だ?」

 

「このターンでワイが勝って(しま)い、いう意味や」

 

「なっ……んだとぉ!?」

 

 

 

 ここでまさかの勝利宣言。【六武の門】も使わずにこのターンで勝つって……一体どうやって?

 

 

 

「バトルや! 【六武衆-ザンジ】で【ハイパー・メガロドン】を攻撃!」

 

「はぁ!? バカかてめぇ! わざわざ自滅しに来やがった! 喰ってやれ【メガロドン】!!」

 

 

 

 攻撃力では【ハイパー・メガロドン】の方が圧倒的に上。結果は火を見るより明らかだ。

 

 案の定【ザンジ】は【メガロドン】の口の中に自ら飛び込む形となり、またもや食べられてしまう。

 

 

 

 豹堂 LP 2900 → 1800

 

 

 

「シャハハッ! 勝てねぇと分かっておかしくなりやがったか!」

 

「そいつはどうやろな?」

 

「あん?」

 

 

 

 突如、【ハイパー・メガロドン】に異変が起こった。頭部から何か先の尖った細長い棒が生えてきたんだ。注視すると、それは【ザンジ】の武器である薙刀だった。

 

 

 

「ッ!? な、何がどうなってんだぁ!?」

 

「【ザンジ】の効果や。自分のフィールドに【ザンジ】以外の【六武衆】が()る時、攻撃したモンスターをダメージステップ終了後──破壊する!」

 

 

 

 脳天を貫かれた【ハイパー・メガロドン】はバチバチとショートを起こして大爆発。口内に閉じ込めていた【ザンジ】もろとも、跡形も無く吹き飛んだ。

 

 

 

「オ、オレサマの【メガロドン】がぁぁぁぁぁっ!?」

 

「あっけないもんやったな。さぁ行け、【ニサシ】!」

 

 

 

 【ザンジ】が敵と刺し違えて開いた突破口から、二刀流のサムライが切り込む。

 

 

 

「【ニサシ】は味方に他の【六武衆】が()れば、2回の攻撃が可能や! かましたれ、『連続斬り』!」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 

 

 鮫牙 LP 3000 → 200

 

 

 

「トドメは【師範】、任せたで」

 

 

 

 最後は【六武衆の師範】が鮫牙くんを一刀の(もと)、斬り伏せる。

 

 

 

「ギシャアアアアアッ!!!」

 

 

 

 鮫牙 LP 0

 

 

 

『決着ゥーーーッ!! 勝者(ウィナー)・豹堂 武蔵ィィィィッ!!』

 

「なかなか楽しかったで。十傑(ワイら)(あと)()ぐにはちぃーと足りへんけど。まぁまた来年がんばりや、ほなな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……【六武衆】……やっかいな展開力ね」

 

「相手にしたらメンドくさそーだね~」

 

 

 

 真後ろの席から、アマネとマキちゃんのそんな会話が耳に入った。確かに今の決闘(デュエル)を観ただけでも、豹堂くんの洗練された戦略性と実力の片鱗(へんりん)が見て取れた。

 しかも恐らくあのデッキの本当の強さはあんなものじゃない。全力で回したら、もっと凄い事になってると思う。

 

 こんなハイレベルな()()達と、これからボクも闘うのか……

 

 

 

「……あ、次って九頭竜くんの試合じゃん」

 

「私達はこのまま観てくけど、セツナはどうする?」

 

「もちろん観るよ。でもまだ全然時間あるな……ちょっとトイレ行ってこよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

 

 

 トイレを済ませ、洗った手をハンカチで拭きながら、ボクは鼻歌交じりに廊下を歩いていた。

 

 すると──

 

 

 

「よぉ」

 

「?」

 

 

 

 目の前に見覚えのある男子が二人、ボクの行く手を阻む様に立ちふさがってきた。

 

 黒い短髪の大男・厚村(あつむら)くんと、赤茶色の髪に三白眼の吊り目が印象的な、平林(ひらばやし)くんだ。

 

 そして背後にも気配を感じて振り返れば、やっぱりと言うべきか。

 

 アッシュグレーの髪をオールバックにして、サングラスを掛けた小柄な男・()(もり)くんに、何やらニタニタと嫌らしい笑みを浮かべている、通称・金髪のケンちゃんこと、金沢(かなざわ)くんの二人が立っていた。

 

 この4人に絡まれるとか面倒事の予感しかしないんですけど……

 

 

 

「……何か用?」

 

「ちょいと(ツラ)貸せや」

 

 

 

 金沢くんが実に簡潔に用件を()べた。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 狭い廊下で進路も退路も(さえぎ)られ、正に八方塞がりの状態。

 

 拒否権は……無さそうだ。

 

 

 

 





 関西弁が怪しくてすいません……

 なんかこのままスムーズに大会が進むのも面白くないなーと思ったので、一悶着入れてみる事にしました、ふへへ(^q^)

 セツナには生け贄になってもらおう(ゲス顔)

 気絶させて軟禁コースも考えたんですが今後の展開なども踏まえて今回はお蔵入りになりました。またの機会に←おい

 男の縛りプレイとか誰得だよだって? 安心してください。遊戯王ではよくある事だ!!

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