遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
お花畑でほっこりしてるリボルバーちゃん可愛い。
ゾロゾロと観客席に移動したボク達5人の
彼と相対しているのは『
ちゃん付けしてるけど女の子ではなく、オネエ言葉で話す立派な男性だ。それも無駄に顔が良い美青年である。
コータはイエロータイプのデュエルディスクに、ヨウカちゃんはネイビータイプのデュエルディスクに、
オートシャッフル機能が作動し、デッキをこまめに混ぜる。
「カラダのシャッフルはアナタが勝ったあと♡」
「いやマジで気持ち悪いんでやめてもらっていいスかっ!? カタカナで『カラダ』とか言うな!!」
もしかしてヨウカちゃんってガチなのかな? ……考えるのはやめとこう、うん。なんか怖くなってきた。
「コーター! がんばれーっ!」
「
(あ、アマネさん……!)
「コータくーん! アマネたんにカッコイイとこ見せてやれー!」
「ちょバッ! み、
「なんで私限定なのよ?」
「ムフフ、アマネたんが魔性の女って事だよ~」
「? 大丈夫なのマキちゃん、熱でもあるんじゃない?」
「いやいや……」
(そうだ……ここで十傑を倒せば、アマネさんの評価は間違いなくウナギ登り! 見ていてくださいアマネさん! 男・川陽
「……へぇ? アナタ、あのアマネちゃんって
「うっ!? な、なんで分かった!?」
「女の勘よ♡」
「あんた男だろーがっ!!」
(クスッ、分かりやすい子ね。嘘がつけないタイプかしら)
「そ、そんな事より、とっとと始めるッスよ!」
「せっかちねぇ、まぁいいわ。アナタが勝ったら好きにしていいわよ、朝まで♡」
「全力で遠慮しときます!!」
「「
コータ
試合開始だ! お互いに手札を5枚引く。
ヨウカちゃんの実力は未知数。入場口で初めて会った時に感じた雰囲気からしても、相当な手練れなのは間違いない。一体どんなデッキを使うのか──
……ん? 気のせいかな、コータが手札を見つめたまま硬直してる様な……
(……なっ……ぬぁんじゃこりゃあああああっ!? か、完ッ全に──手札事故ッッッ!!)
……まさか……ねぇ? ボクは双眼鏡でコータの手札を覗いてみた。
「…………うわ……コータやっちゃってる……」
((((あぁ……))))
コータの身に降りかかった悲劇を説明するには、この言葉だけで事足りるだろう。全てを察したアマネ達は哀れみの目でコータを見ていた。
(おいおいおいおい何でよりによってこんな大事な試合で事故るんだよ!! 相手は十傑だぞ!? 死ねってか!? 俺に死ねってか!?)
「どうしたの? また固まっちゃって」
「ッ! ……………………完璧な手札だ!!」
「今の
「う、うるせぇ! 何でもねーよ! せ、先輩が先攻で良いッスよ!」
「あら、レディファースト? 紳士なのね」
「だからあんた男だろーがっ!!」
「ではアタシのターン。手札から、フィールド魔法・【
「!」
木々が二人を取り囲んでいき、殺風景なフィールドは
「この森の中では、昆虫、獣、植物、獣戦士族の攻撃力・守備力は、200ポイントアップする。さらにアタシは【プリミティブ・バタフライ】を特殊召喚」
【プリミティブ・バタフライ】 攻撃力 1200 + 200 = 1400
「このカードは自分のフィールドにモンスターがいない時、特殊召喚できるわ。そして【プリミティブ・バタフライ】をリリースし、
【兵隊アリトークン】 攻撃力 500 + 200 = 700
【兵隊アリトークン】 攻撃力 500 + 200 = 700
「まだまだ。続いて【
【
蝶々にアリの次は、お花と来たか。ヨウカちゃんのデッキは昆虫族と植物族が中心の構成みたいだね。
「へっ! それっぽっちの攻撃力なんか怖くもなんともねぇぜ!」
「ボウヤ、アタシの
「だ、誰がボウヤだとぉ!? 俺には川陽 光太って名前があんだよ!」
気をつけてコータ。仮にも十傑クラスの
「【対空放花】の効果発動。自分の昆虫族モンスター1体をリリースする事で、相手に800ポイントのライフダメージを撃ち込む」
「なに!?」
「1体目の【兵隊アリトークン】をリリース」
花の中心から長く伸びる柱頭の根元に兵隊アリが飛び乗る。
「アナタのハートを撃ち抜いてアゲル♡」
「なんでいちいち言い回しが気持ち悪いんだよ!?」
「
ヨウカちゃんが人差し指をコータに向けてピストルを撃つ様な仕草をしたのを合図に、【対空放花】に装填された【兵隊アリトークン】が砲弾と化して発射され、コータの身体を撃ち貫いた。
「ぐはっ!!」
コータ LP 4000 → 3200
「弾はもう一発残ってるわよ?」
「ぐっ……」
2匹目の【兵隊アリトークン】もリリースされて、【対空放花】に撃ち出される。
「うわぁ!!」
コータ LP 3200 → 2400
「ま、ほんの挨拶代わりってところね。アタシはこれでターン
凄いや、攻撃の出来ない先攻1ターン目から、いきなりライフを半分近くまで削ってきた。これが挨拶代わりだなんて恐ろしい。
だけどこれはチャンスだ。ヨウカちゃんの場に残ったのは攻撃力200の【対空放花】1体と、フィールド魔法のみ。
もしかするとコータを試す為にわざと隙を作った可能性もあるけど、何にせよ反撃するならこの好機を逃す手はない。
ところが……そんな肝心な時にコータの手札はと言うと……酷い有り様だった。
(ち、ちくしょおぉぉ……これじゃまともにモンスターも出せねぇ……! どうにか後攻は取れたが、このドローで何とかしねぇと……!)
「ど、ドロー!」
(──!! き……キターーーーッ!! 天はまだ俺を見捨ててはいなかった!)
「
「いきなり手札交換カード? なんだ、手札事故だったのね」
「んなっ! そ、そんな、そんなこここと、あ、あるわけねぇだるるぉ!?」
「どうでもいいから早くしなさい? 女を待たせる男なんてサイテーよ?」
「だからあんたは男ッ……あーもう! 分かったよ! 俺は手札を全部交換だっ!」
気持ちは分かるよコータ。ボクも
(頼むぞ~、俺のデッキ……)
「ドロー! …………よ、よし、よし! これなら行けるぜ! こっからが本番だ!」
「まだ始まってすらいないじゃない」
「うるせーっ! 俺は【
乾電池にオレンジ色の頭と手足を取り付けた様な、ユニークなデザインのモンスターが現れる。
【電池メン-単三型】 攻撃力 0
「あらあら、アナタこそ攻撃力
「先輩こそ、俺のイカしたモンスターを舐めてかかると痛い目見るぜ! 【電池メン-単三型】の効果! こいつは自分フィールドの【単三型】が全て攻撃表示の時、1体につき、1000ポイント攻撃力をアップする!」
【電池メン-単三型】 攻撃力 0 → 1000
「バトルだ! 【単三型】で【対空放花】を攻撃! 『バッテリー・パンチ』!!」
【電池メン-単三型】は拳に電気を帯びて、【対空放花】に
蝶ヶ咲 LP 4000 → 3200
「静電気ね、この程度」
「へっ、言ってろよ」
「川陽くーん! その調子ー!」
(ふおおおおっ!! アマネさんが俺に声援を送ってくれてる!! ゆ、夢じゃないよな!?)
「…………痛い。夢じゃない!!」
「???」
自分のほっぺをつねって、訳の分からない事を叫び出すコータに、さすがのヨウカちゃんも若干困惑したみたいだ。
(スゲーぞ俺! あの十傑にダメージを与えられた! やれば出来るんだ、俺!)
「フハハハーッ! 参ったか! ターンエンドだ!」
ヤバイなー、コータの悪い癖が……割りとすぐ調子に乗っちゃうタイプだから。
「あら生意気。アタシのターン──ドロー」
カードを引き抜く右腕や、手札を扱う指先まで、ヨウカちゃんの動きの一つ一つが、ダンスを踊る様に流麗で、思わず目を奪われてしまう。
「
「……知らねーッスよ、んなもん」
「なら教えてアゲル。アタシは【
【
「うげっ! 攻撃力が【単三型】より強いだと!?」
「【電池メン-単三型】を攻撃──『ハウリング・プレッシャー』!」
耳を
「くそっ……!」
コータ LP 2400 → 2000
「ターンエンドよ」
「っ……俺のターン!」
(……! おっしゃあっ! ようやく運が向いてきたぜ!)
「へへっ、今から俺の必殺コンボを見せてやるぜ!!」
「あら、そう。楽しみね」
「
コータ LP 2000 → 1500
【電池メン-単三型】 攻撃力 0 → 1000
「そしてぇ! 見て驚け! こいつが俺の必殺カードだ! 速攻魔法・【地獄の暴走召喚】!!」
「!」
「相手フィールドに表側表示のモンスターが存在し、俺のフィールドに攻撃力1500以下のモンスター1体を特殊召喚した時に発動! その同名モンスターを手札・デッキ・墓地から、可能な限り特殊召喚できる! さらに2体の【単三型】を、特殊召喚だぁ!!」
【電池メン-単三型】 攻撃力 0
【電池メン-単三型】 攻撃力 0
場に3体の【単三型】が集まった! これが何を意味しているかと言うと──
「なるほど……それがアナタの狙いってわけね」
「さすが十傑、察しが良いじゃないスか。そう! 【単三型】は全て攻撃表示! つまり同じ【単三型】1体につき、攻撃力が1000ポイントアップする! よって3体の攻撃力は──」
【電池メン-単三型】 攻撃力 1000 → 3000
【電池メン-単三型】 攻撃力 0 → 3000
【電池メン-単三型】 攻撃力 0 → 3000
攻撃力3000のモンスターが3体!
その驚異的な展開力を見て、観衆も大いに盛り上がりを見せた。
「す、すごいです! 一気に形勢逆転ですよ!?」
「
ルイくんとケイくんも同様に驚嘆の声を上げた。
コータのこのコンボには、ボクも何度も苦しめられたっけ。本当、波に乗った時の爆発力は尋常じゃない。
「どうだっ! これが俺の最強コンボ──名付けて、『アルティメット電池メン』だ!!」
「アルティメット電池メン? うーん……」
「ビミョ~」
アマネとマキちゃんの評価はイマイチだった。コータ
「行っくぜー! バト──……へ?」
【
【
「えっ……お、おい! なんであんたのモンスターまで増えてんだ!?」
「自分のカードの効果をお忘れかしら? 【地獄の暴走召喚】は、アタシにも特殊召喚の権利があるのよ」
「あっ!」
コータ……完全に忘れてたね……
(しまったぁ~~~! 普段これ使って相手に特殊召喚される事ってあんましないから、すっかり抜けてたぜ!)
「だ、だったら戦闘で破壊するまでだ! まずは攻撃表示の【
- バッテリー・パンチ!! -
「……」
蝶ヶ咲 LP 3200 → 1600
自分のモンスターが倒されてライフが半減しても、ヨウカちゃんは全く動じず涼しい顔をしていた。
「【
【
「
2体目の【単三型】の電流を纏った飛び蹴りが、鈴虫のモンスターに炸裂する。
「【
「リクルートの次はサーチか……」
「どうするの? 最後の1体で、【
「………」
(あのモンスターを破壊しても奴はノーダメージな上、新たな虫を呼ばれるだけだ……)
「攻撃は……しねぇ。ターンエンドだ!」
「フフッ、おりこうさん」
(さすがにそこまで短絡的ではない様ね)
(……押している……ハッキリと俺が押している! だってのに……奴の落ち着き払った態度は何だ!?)
「アタシのターン。【
【女帝カマキリ】 攻撃力 2200 + 200 = 2400
「でけぇ!?」
「【
「くっ、だが俺の【電池メン】達の方が攻撃力は上だ!」
「甘いわね。手札から装備魔法・【
【女帝カマキリ】 攻撃力 2400 + 700 = 3100
「なに!? 攻撃力3100!?」
「さぁ、華麗なる闘いを。【女帝カマキリ】で【単三型】を攻撃! 『エンプレス・サイズ』!!」
一刀両断。【女帝カマキリ】の大鎌は【単三型】の1体を、容赦なく真っ二つに切り裂いた。
「くうぅっ……!」
コータ LP 1500 → 1400
「【単三型】が1体減った事で、残る2体の攻撃力もダウンするわ」
「──!」
【電池メン-単三型】 攻撃力 3000 → 2000
【電池メン-単三型】 攻撃力 3000 → 2000
「ターン終了。さっ、アナタのターンよ?」
「……ちくしょう……!」
(やっぱ……強ぇわ十傑……勝てる気がしねぇ……! ここまでなのか俺は……!)
「──がんばれーっ!! コータァーッ!!」
「!!」
ボクは立ち上がり、精一杯声を張り上げて、コータにエールを送る。友達がピンチで
「
「まだまだ行けるよコータくーん!!」
「ライフはまだ残ってる! 諦めるのは早いわよー!」
「観月……アマネさん……!」
皆もボクと一緒に、コータへ声援を投げかけてくれた。
「こっから巻き返しですぜ川陽センパイ!!」
「が……がんばってくださいー!」
「……お前ら……!」
(そうだ……ルイだって、自分より2つもランクの高い金沢相手に、最後まで諦めないで勝ったんじゃねぇか! 先輩の俺が情けねーとこ見せてちゃ……示しがつかねぇよなっ!!)
「俺は……諦めねぇ!! 勝負はこれからだぜ!!」
そう、その意気だよ、コータ。君のデッキには、まだ逆転の可能性が残されてる!
「……美しい友情ね。ちょっとだけ、羨ましいわ」
「行くぜ! 俺の……タァーーーンッ!!」
(アマネさんにカッコいいとこ見せるんだろ俺! 下なんか向いてる場合じゃねぇぞ!!)
「──! よっしゃ来たぜ! 俺は【単三型】を1体リリース!」
「! アドバンス召喚……!?」
「俺のデッキのエースを紹介してやるぜ!
【超電磁稼働ボルテック・ドラゴン】 攻撃力 2400
「……攻撃力2400ぽっちのモンスターがエースカード? 拍子抜けね」
「そいつはどうかな? 【ボルテック・ドラゴン】の効果発動!」
【ボルテック・ドラゴン】の胸部に、召喚の為にリリースした【電池メン-単三型】が装着された。すると、【単三型】に
「【電池メン-単三型】をリリースして召喚した【ボルテック・ドラゴン】の攻撃力は、1000ポイントアップする!!」
【超電磁稼働ボルテック・ドラゴン】 攻撃力 2400 + 1000 = 3400
「攻撃力3400──!?」
レベル5としては破格の攻撃力だ。
しかし引き換えにフィールドの【電池メン-単三型】が1体だけとなり、その攻撃力が1000に下がる。
【電池メン-単三型】 攻撃力 2000 → 1000
「まだまだぁ! 手札から速攻魔法・【
【電池メン-単三型】 攻撃力 0
「場に2体の【単三型】が揃った事により、それぞれの攻撃力は再び2000になる!」
【電池メン-単三型】 攻撃力 1000 → 2000
【電池メン-単三型】 攻撃力 0 → 2000
上手い! これで準備は整った、いよいよコータの猛攻が始まる!
「覚悟しろよ、この
【ボルテック・ドラゴン】は体内にチャージした電力を口の中から放出し、それを食らった【女帝カマキリ】は全身が
「くっ!」
蝶ヶ咲 LP 1600 → 1300
「おぉし! この布陣なら、もう怖いものなしだぜ! 【単三型】で【
「ッ! 破壊された【
「へっ! 今さらどんな虫が来ようが──」
「デッキから──【
【代打バッター】 攻撃力 1000 + 200 = 1200
「!」
(マジかよ……よりによって【代打バッター】だと!?)
あのカードは確か、フィールド上から墓地へ送られた時、手札の昆虫族モンスター1体を特殊召喚できる効果を持っていた筈。
わざわざこのタイミングで、しかも攻撃表示で出してきたって事は、十中八九、手札に強力な昆虫族が控えている……!
(俺の攻撃を誘ってやがるのか?)
「フフ……どうしたの? 攻撃すれば良いじゃない」
「くっ……! …………」
(奴の1枚だけ残った手札……1ターン目からずっと持っているあのカード……怪し過ぎる!)
「明らかに何かあるわね……」
「攻撃するかしないか、悩み所だね……」
アマネとボクが呟く。ここで【代打バッター】を破壊すれば戦闘ダメージは与えられる。でも、そうするとヨウカちゃんは新たなモンスターを呼び出せてしまう。下手したら【ボルテック・ドラゴン】以上の上級モンスターが待ち構えている恐れだってある。
(フフッ、アナタが攻撃しようがしまいが……アタシの勝利に揺るぎはないわ)
「……っ」
(落ち着け俺、これは
「くっそー、邪魔くせぇバッタだぜ! 俺はこれで──ターンエンドだ!」
悩んだ
「そう……残念。もっと積極的な子かと思ったんだけど。アタシのターンね」
「……!」
「【レッグル】を召喚」
【レッグル】 攻撃力 300 + 200 = 500
「アナタがその気じゃないなら、自分で動くしかないわね。【代打バッター】、【電池メン-単三型】に負けてらっしゃい!」
「なんだと!?」
攻撃力の劣る【代打バッター】が自ら【単三型】に攻撃を仕掛けた!?
当然バトルの結果は【単三型】の勝利。【代打バッター】は自滅してしまう。
蝶ヶ咲 LP 1300 → 500
「負けるって分かってて攻撃してくるかよ普通!?」
「……ボウヤ、いえ、コータちゃん」
「んなっ……! コータちゃん!?」
「誉めてあげるわ、思った以上に楽しかった。だから、ご褒美に……アタシもイイモノ見せて──ア・ゲ・ル♡」
「!?」
「墓地に送られた【代打バッター】の効果発動! 手札から昆虫族1体を特殊召喚できる!」
ヨウカちゃんが最後の手札に手をかけた。何が来る……!
「現れなさい! 【究極変異態・インセクト
──!! なに……このモンスターは……!
それは【女帝カマキリ】をも遥かに上回る巨体を誇る、異形の怪物だった。
上半身は
下半身は大きく膨張した腹部が
昆虫の女王と呼ばれるのも納得の、一度見たら忘れられない迫力満点なビジュアルだ。
【究極変異態・インセクト
「こ……こんなのいたのぉーっ!?」
「【森】の
【究極変異態・インセクト
「うぐぐ……っ! だがなぁ! まだ俺の【ボルテック・ドラゴン】の方が攻撃力は上だぜ!」
「アタシのお目当てはその子じゃないわ。バトル! 【究極変異態・インセクト
「──! し、しまった!」
「『クイーンズ・ヘル・バースト』!!」
女王様の口が縦にガパッと開かれ、奥から破壊光線が放たれた。
標的となった【単三型】は、一瞬にして消し飛んでしまった。
「うわぁあああっ!!」
コータ LP 1400 → 400
マズイ! 直接攻撃できる【レッグル】で攻撃されたら……!
「このまま【レッグル】のダイレクトアタックで終わりにしてあげても良いけれど……それじゃあ美しくないわね。最後はアタシのエースモンスターで、トドメを刺してあげるわ」
「な……なに言ってんだ! そのモンスターはもう──」
「【究極変異態・インセクト
「連続攻撃だと!?」
「当然アタシは【レッグル】をリリース」
うげっ、女王様、【レッグル】を食べちゃった……! ルイくんが口元を手で押さえて涙目になっちゃったじゃないか!
聞きたくない
お世辞にも『美しい』モンスターとは言えない気がするんだけど、ヨウカちゃん的にはセーフなの!?
「アナタの場に残った最後の【単三型】は、攻撃力が1000にダウンする」
【電池メン-単三型】 攻撃力 2000 → 1000
「あ……あぁ……!」
「せめて美しく散りなさい。【究極変異態・インセクト
- クイーンズ・ヘル・バースト!! -
2発目の砲撃によって【電池メン-単三型】が全滅する。そして、コータのライフポイントも……
「どわあああああああっ!!!」
コータ LP 0
「アタシの勝ちね。また
大の字で伸びるコータに
やっぱり十傑だね。圧巻の強さだったよ。
「コータくん負けちゃったね~」
「……なぁ、ひとつ思ったんスけど、【代打バッター】が出てきた後、あらかじめ【単三型】を1体守備表示にしとけば、まだ生き延びれたんじゃねぇスか?」
ケイくんの疑問に答えたのはアマネだった。
「無理ね。【電池メン-単三型】は、1体でも表示形式を変更すると、全ての【単三型】の攻守が
「っ……! てこたぁ、つまり……」
「そう。この
「…………!」
「まぁでも、あの十傑のヨウカちゃんのライフを500まで削ったんだ。善戦だったと思うよ」
ボクがそう言ってパチパチと拍手すると、皆も続いてコータに拍手を送った。
「お疲れコータ! 良い
「
「……っ……お、お前らぁ~……!」
「カッコ良かったわよ! 川陽くん!」
「!!」
(アマネさんに!! カッコいいって!! 言われたアアアアアアッッッ!!!)
「……? なんか急に元気になったわね川陽くん」
「やっぱりアマネたんは魔性の女だよ」
その後、次の4試合目まで順調に消化し、予選2回戦は全て終了。
時計の針は12時を指し、今は昼休み。生徒達は食堂でランチを摂っていた。3回戦に勝ち進んだ生徒は、次の闘いに向けて鋭気を養っている。
一方で、ここの食堂の高品質な料理が喉を通らない程に浮かない顔をしている生徒や、中には泣いている生徒もチラホラ見かけた。きっと運悪く負けてしまった人達なんだろう。
ボクの隣に座っているコータも、そんな感じだ。
「ちっくしょおぉぉぉ……」
「コータ、いつまで泣いてんのさ。ほら、ボクのカツカレーのカツ1個あげるから元気出しなよ」
「
「何が!?」
さっきまでアマネに励まされたのが嬉しかったみたいだけど、今になって悔しさが込み上げてきたらしい。注文した塩ラーメンが、ちっとも減っていない。
無理もないか。もう少しで勝ててたかも知れないんだもの。
「
「ヨウカちゃんと当たったらね。まずその前に本選に行かないと」
「…………なぁ」
「ん?」
「俺が諦めかけた時……声、かけてくれたよな。皆も応援してくれてさ……正直、アレがなかったら俺……サレンダーしちまってたかも知れねぇ」
「コータ……」
「……ありがとな。
「…………まっ、礼はいいから前に貸した牛丼代、返してね?」
「それ今言うなぁ~~~っ!」
「あはは、ほら早く食べないと、ラーメン伸びちゃうよ」
「うっせ!」
気を持ち直して食欲が戻ったのか、勢いよく麺をすするコータ。こういう立ち直りの早いところが彼の長所だよね。
「──今度は俺が
「うん、がんばるよ!」
さぁて、好物のカレーでお腹を満たした後は……午後から予選3回戦の始まりだ!
おぉ! 久々に文字数が一万字以上!
今回、特に悩んだのが【究極変異態・インセクト
コータはDMで言えば城之内くん、VRAINSで言えば島くんポジですね。彼は作者的にも扱いやすいので好きです(笑)←おい
セツナもコータの反応が面白くて弄ってるところありますねw
いずれカッコいいとこ見せる時が来るのでコータの今後の活躍にご期待ください! 果たしていつになるかなー(遠い目)