遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
初投稿したポケモン小説の息抜きに作りました~!ごゆるりと。
TURN - 1 START OF THE NEW DUEL
- ボクはただ、平穏に生きたいだけなんだ -
今朝はじめて袖を通したばかりの、新しい制服の胸ポケットから
まだ予定の登校時間まで、かなり余裕がある。少しくらい寄り道なんかしちゃっても、まぁ大丈夫だよね。
いやぁ今日という日が楽しみ過ぎて、ボクにしては珍しく目覚まし時計のアラームをセットした時刻より、30分も早く起きちゃったからなぁ。うむ、偉いぞボク。ほめてつかわす。
……少し歩くと、壁一面が鏡張りになっているビルを発見した。ボクは鏡面の前に立ち止まって、そこに映し出された自分の身なりを再チェックする。
やや癖毛があって、ところどころ毛先が跳ねている、
トレードマークと称して常日頃かけている、フレームが赤いメガネの奥から覗くのは、黒色の瞳。
人からはよく童顔と言われる、生まれてこの方17年の付き合いになる、見慣れた丸い顔。
服装は、これから通う学園の生徒であることを証明する、ピカピカの制服一式。
白いラインが入った黒のジャケット。その下には白のワイシャツを着ていて、首元には青いネクタイを巻いている。
ズボンはジャケットと同じ黒色で、新品なので折り目がクッキリと浮かんでいる。
忘れ物も無し。うん、バッチリ!
この日は運よく天候にも恵まれて、見上げれば雲ひとつない晴れ渡った青空が広がっている。
そして、快晴に元気を貰っているのはボクだけでなく、この街…『ジャルダン』も一緒だ。
正式名称『ジャルダン・ライブレ』。通称・ジャルダン。
総人口・約34万人、総面積・約20平方キロメートル。(暇な時にウィキ○ディアで調べた。)※東京都新宿区と、ほぼ同じ人口と面積。
しかもどうやら、街は7つのエリアに分けられているらしく、ボクが主に暮らす事になったこの地区は、ジャルダンの都心部・『1
これだけ広大な都市の中心部というだけあって、街は朝から驚く程の賑わいを見せている。駅前に行けば大勢の人々が往来しているし、ボクと同じ制服を着た学生の姿も、たくさん見受けられる。これで昼頃に繁華街でも寄ったら、人酔いして倒れてしまいそう。
だけど、この街の最も特徴的なところは…
行き交う全ての人間が『デッキ』と『デュエルディスク』を、常に肌身はなさず携行している…つまり『
『デュエルモンスターズ』
8000種以上の(そのうち1万を超えるだろう)多種多様なカード群の中から、厳選した40枚のカードで
今や、このカードゲームはカードゲームの粋を超越して、世界を動かすレベルにまで発展している。プロにもなると、契約金が何百万やら何千万やら、時には億単位で支払われる事もあるんだとか。なんて言うか……すごい(語彙力)。
そんなわけで
何せ、『デュエルが全てを支配する街』とまで言われているのだから。
無理もない。ここ数年のプロリーグに進出するデュエリストは、驚く事に6割がジャルダン出身。
他の街で『デュエルチャンピオン』になったり頭角を現したりしてるのも、元はジャルダンの人間だったって事例が多いと聞く。
それだけ、この街はデュエリストのレベルが高いんだ。
…その分、デュエルの実力が低い人には、死ぬ程シビアな世界だけどね。
「トドメだ!ダイレクトアタック!!」
「うわああぁっ!?」
聞き慣れた単語が耳を掠めた。次いで、轟音が鳴り響き、同時に誰かの悲鳴が聞こえる。
すぐ近くで、こんな朝早くからデュエルが行われてるのか。さすがデュエルの街。
それにしても今の音…相当、強力なモンスターの攻撃によるものだよね。……見てみよう。
現場に急行すると、何やら怯えた様子で地面に座り込んでいる茶髪の少年と、そんな彼を見下ろして笑っている、若い男達の集団に出くわした。
よく見ると双方ともに、ボクと同じデザインの制服を着ている。男達の方は、だいぶ着崩しているけれど。
この状況を見るに、もうデュエルは終わっちゃったみたい…残念。
「ケッ!相変わらず
「ぎゃはははっ!もうちょい優しくしてやれよ、ケンちゃん」
「バッカ、手加減してるっつの。コイツが歯応え無さ過ぎんの」
「うっ……ううっ…」
『一ノ瀬』と呼び捨てにされた茶髪の男の子は身体を震わせて涙目になっていた。悔しさか恐怖か…たぶん両方かも。
さっき、彼らの会話の中で『ケンちゃん』と呼ばれていた金髪の男が歩き出して、茶髪くんとの距離を縮めていく。彼が茶髪くんをデュエルで倒した相手か。
金髪のケンちゃんは、自分の左腕に装着してあるデュエルディスクを右手の指先で操作し始める。それから茶髪くんを睨み付けて舌打ちした。
「……たった300DPかよ、小遣い稼ぎにもならねぇじゃねぇか」
『DP』とは『デュエルポイント』。デュエルに勝利すると獲得できるボーナスポイントの事で、そのポイントを使えばカードパックや色々な物を購入できたり、サービスを利用できたりする。
ボク達デュエリストにとっては世界共通の『お金』というわけだ。
そして、加算される
「話になんねーんだよ!いい加減そんなカスデッキ捨てて、もっと
「っ!……くっ、うぅ…!」
「無理無理!どーせ、そいつ負けっぱなしでDPスッカラカンだもんよ。ろくなカード買えねえって!」
「ブハッ!それもそうか!こりゃ失礼しちまったぜ、ギャッハッハ!」
さっきから男達は言いたい放題の笑い放題。ガラの悪い連中だね。どこに行っても、こういう人種は居るものか……ん?
「……撤回…して…」
「あ?なんか言ったか
「…ぼ…僕のデッキ、を…バカに、しないでくださいっ…!」
「「「…………」」」
……あーあ。
「はぁ?カスをカスっつって何が悪いんだよ?」
「ひっ…!」
目の色が変わった金髪のケンちゃんは、右拳を固く握り締めて、茶髪くんの顔面を狙って殴りかかった。
……揉め事は好きじゃないんだけどな、しょうがない。
ボクは2人の間に素早く飛び込んで、金髪のケンちゃんのパンチを、カバンから引っ張り出したデュエルディスクで受け止めた。カードが
「ッ!?」
「!?」
「はい。ストップ」
ボクが横から乱入したことで、茶髪くんも金髪のケンちゃんも目を丸くしていた。後ろで眺めていたケンちゃんのお仲間も同様だ。
茶髪くんは何が起きたのか理解できてないみたいで呆然としている。
一方、金髪のケンちゃんは一歩だけ後退して、ボクの出方を
「……誰だテメェ?…見ねぇ顔だな」
「
「あぁ?転入生?」
「そう。輝かしい転入初日に血を見るのは勘弁なんだ。しかも登校前になんてさ。そういうわけだから今回はこの辺で、お開きにしてもらえないかな?」
「…………」
ボクの
すぐに彼の友達も、ボク達の周りにゾロゾロと集まってきた。
えーっと、右から順に、モブ1号、2号、3号と名付けよう。
「なんだぁクソガキ!!調子ノッてんじゃ…」
「待てよ」
左端に陣取った、短い黒髪の巨漢・モブ3号の怒声を制止したのは、意外にも金髪のケンちゃんだった。
「良いぜ。お望み通り見逃してやろうじゃねぇか。ただし」
「…ただし?」
「テメェの持ってる、そのデュエルディスクとデッキを置いてけ」
「!!」
そう来たか…ただでは解放してくれないみたい。
「おら、どうした?とっとと出せよ!言っとくが逃げようなんて思うなよ?」
モブ3人が
どうせ、ここで素直に応じてデッキとデュエルディスクを明け渡しても、どの道ボクの事はボコボコにする算段なんだろう。
チラッと横を
この人達のターゲットはボクに変わっている。だから今の内に離脱すれば良いのに。腰でも抜けちゃったかな?
ボクは目を閉じて、小さく
「…デッキもディスクも、持ってかれるのは困るなぁ。どうかな金髪のケンちゃん。ここはひとつ、『デュエル』で決めるというのは」
「デュエルだと?…つか馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇよ」
「ボクが負けたら言う通りにする。でも、ボクが勝ったら大人しく退散してもらうよ」
「…あ"ぁ?」
最後は少し挑発的な言葉を
「…おもしれーじゃねぇか。テメェが負けたら『土下座して謝る』も追加だ」
「お好きなように」
OK、交渉成立だ。
ボクは愛用のホワイトタイプ・デュエルディスクを、左腕に装着する。そのホルダーには、同じく愛用のデッキをセッティングした。
ディスクを起動すると、カードをセットするプレート部分が展開して、デッキが
ライフカウンターには、白い電子文字で『4000』と数値が表示される。これで準備は完了。
「ちょ、ちょっと待ってください!そんなの無茶ですよ!」
「茶髪くんは下がってて、危ないからね」
「で、でも…」
「大丈夫だよ、上手くやるから」
「挑んでくるからには、ちったぁまともなDP稼がせてくれよぉ?テメェのデッキ売れば、少しは足しになるだろうがな」
「そう簡単に譲れるほど、ボクのデッキは安くないよ」
「「
セツナ
金髪のケンちゃん
「ククッ、先攻は俺だ。手札から【
「!」
「手札の【サイバー・オーガ】2体を融合!【サイバー・オーガ・
相手フィールドのモンスターゾーンに、融合モンスター【サイバー・オーガ・2】が
【サイバー・オーガ・
「ま、また出た…サイバー・オーガ・2…!」
ボクの背後で、茶髪くんが呟くのが耳に届いた。なるほど、これがさっきの爆音を起こした張本人か。納得。
さしずめ金髪のケンちゃんの、エース・モンスターと言ったところかな。
「なら…そのモンスターを倒せば、このデュエルは貰ったも同然だね」
「ケッ、ほざいてろ!俺は更に、カードを2枚セットする!」
裏側表示のカードが
今、フィールドに出ているカードさえ何とかすれば、勝機は十分にある!
「先攻は最初のターン、攻撃する事は出来ない。俺はこれでターンエンドだ!」
「それじゃ、ボクのターン!デッキから、カードをドローする!」
ディスクに差し込んだデッキの、一番上に重なっているカードを、1枚だけ引く。これでボクの手札は現在6枚。
さて、ここからどうプレイングしていくか…。
「…………フッ」
「あ?なに笑ってやがる」
「…?」
ボクは勝ち誇った様な、不敵な笑みを浮かべる。そして、手札の中から1枚のカードを勢いよく引き抜き、デュエルディスクの魔法・罠カードゾーンにセットして、それを発動した。
「ボクは手札から
「……は?」
「えっ…」
ボクが無駄なキメ顔をしながら発動したカードを見て、この場にいたボク以外の全員が、拍子抜けと言いたげなキョトンとした表情を露にした。やめてくれよ傷つくな。
手元に残った5枚のカードを全部デッキに戻すと、ディスクの機能によって、デッキが再びシャッフルされる。それが済むと、ボクは最初に戻した枚数分、つまり5枚のカードを、もう一度デッキからドローした。
「ギャハハハハハッ!!ダセーッ!初っぱなからそんなカードかよ!手札事故か!?」
「そうみたい。いやぁ今朝は調子がよろしくないみたいでさ。あはは」
「だ…大丈夫かな…この人…」
「聞こえてるよ~茶髪くん」
「ひゃい!?ご、ごめんなさい!」
さぁ仕切り直しだ。新たにドローした手札の内容は……うん、悪くない。ここからが本番!
「ボクは【暗黒の
【暗黒の
「ハッ!そんな古い雑魚モンスターで何が出来んだよ!」
「目に物を見せてあげるよ。魔法カード・【フォース】を発動!その効果で、サイバー・オーガ・2の攻撃力を半分にして、その数値分、暗黒の
【サイバー・オーガ・2】 攻撃力 2600 → 1300
【暗黒の
「なにィ!?」
「バトルだ!暗黒の竜王で、サイバー・オーガ・2を攻撃!
ボクの攻撃宣言を受けて、暗黒の竜王が口から放った灼熱の炎が敵モンスターを襲う。
「させるかよぉ!
「!」
あのカードは『モンスターを破壊から守る』か『自分への戦闘ダメージを
「俺が使うのは1つ目の効果だ!サイバー・オーガ・2は、このバトルフェイズ中、戦闘では破壊されねぇ!」
「やっぱりね。でも、戦闘ダメージは受けてもらうよ!」
「ぐうっ!!…チィッ!くそが!」
金髪のケンちゃん LP 4000 → 2500
竜王の攻撃が見事ヒットして、サイバー・オーガ・2は全身を業火に包まれる。もちろん【攻撃の無敵化】の効果で戦闘破壊は出来なかったけど、その分ダメージは与えられた。
(ッ……す、すごいです、この人…!レベルの低いモンスターで上級モンスターに躊躇なく攻撃を仕掛けて、あんな
「フゥ、さすがに一筋縄じゃ行かないか。ボクはカードを2枚
「
【サイバー・オーガ・2】 攻撃力 1300 → 2600
【暗黒の竜王】 攻撃力 2800 → 1500
(…このままだと次のターン、サイバー・オーガ・2の攻撃で、ボクの竜王は破壊されてしまう……でも大丈夫。今ボクが伏せたカードは…
【鎖付きブーメラン】。攻撃してきた相手モンスターを守備表示にして、更に自分のモンスター1体の攻撃力を500ポイント上昇させる
このカードを使えば敵の攻撃を止められるだけでなく、竜王の攻撃力が上がって、2000ポイントになる。
サイバー・オーガ・2の守備力は1900。次のボクのターンに、パワーアップした竜王で攻撃すれば倒せる。これで勝つる!
「俺のターン、ドロー!……ククッ、このターンで、早くもデュエルはお
「えっ?」
「俺がドローしたのは、魔法カード・【リミッター解除】!発動!!」
【サイバー・オーガ・2】 攻撃力 2600 → 5200
「攻撃力が
「それだけじゃないぜぇ?サイバー・オーガ・2が敵モンスターを攻撃する時、攻撃対象にしたモンスターの攻撃力の、半分の数値だけ、こいつの攻撃力が上がるのさ!」
「…ということは…」
「バトルだ!サイバー・オーガ・2!!あの雑魚を叩き潰せ!!」
サイバー・オーガ・2の
【サイバー・オーガ・2】 攻撃力 5200 + 750 = 5950
(攻撃力5950!?この攻撃が通ったらボクのライフは
「ボクはリバースカード・オープン!【鎖付きブーメラ…」
…………シーーーーーン…………
「メラ……ブーメ…ラ……ン……ん?んん???」
あれ?えっ、ちょっと待ってナニゴト!?何度スイッチ押しても反応が無いんですけど!!
ディスクの故障?いや、メンテナンスは間違いなく万全だった
(まさか…あの時、金髪のケンちゃんの
「あぁ?何か言ったか?死ねやァ!!」
ディスクの突然の不調にボクが
マズイまずいマズイまずいマズイ!!!!!
(さっき【リロード】や【フォース】が発動できたって事は、たぶん魔法は使える!頼む一生のお願い!!)
「リバースカード・オープン!速攻魔法・【非常食】!!ボクの魔法・
セツナ LP 4000 → 5000
「ムダな悪あがきしやがって…砕け散れ!!」
サイバー・オーガ・2の攻撃によって、暗黒の竜王が撃破されてしまう。
「うわあぁああぁっ!!ぐっ!?……
地面に背中からダイブする形で倒れ込み、身体を叩き付けた。めっさ痛い。
セツナ LP 5000 → 550
「くっ…ライフが一気に
なんとか上半身を起こしてディスクに目をやると、ライフカウンターに表示されている数字の色が
「だ、だだ、大丈夫ですか!?」
「おおっ、茶髪くん。平気平気。これくらい何てことないよ」
「ぎゃははは!無様だなぁおい!」
「威勢よく挑んできた割りに大したことねぇなあ!」
「往生際が
モブ1号・2号・3号が、口々に侮蔑の言葉をボクに吐きかけてきた。ボクは、そんな
その流れに乗じて金髪のケンちゃんも、ボクへの
「全くアイツらの言う通りだぜ、口ほどにもねぇな転入生。テメェはそこの雑魚を庇おうなんつー下らねぇ正義感で前に出てきて、結局こうやって
「あぁーっ!?ボクの制服に汚れがあああっ!!新品だったのにー!(泣)」
「聞いてんのかテメェ!!」
「あっ、ごめんごめん。それで、何だっけ?」
「この…!……ケッ!テメェの実力はもう分かった。所詮
「…!」
彼が最後に言い放った暴言がトリガーとなって、ボクの中のスイッチが入る音が聞こえた。
「…………なるほど、確かに許せないね。自分の事はともかく……命より大切な自分のデッキを侮辱されるって言うのは……」
「え…?」
小声で喋ったから、
ボクはゆっくりと立ち上がり、制服を二度三度と軽く
そして、
「…あんだ?その目は。まだやろってのかよ。つーか何カッコつけてんだよ!メガネ外して、ちゃんと前は見えてんのかー?ほ~ら、指は何本たってる~?」
「2本でしょ。心配しなくても、しっかり見えてるよ。
そう言ってボクは
「デュエル続行!!まだ君のターンだよ、金髪のケンちゃん」
「気安く呼ぶなっつってんだろーが!」
「ターンエンドかい?その場合、【リミッター解除】の効果によって、サイバー・オーガ・2は
ボクが告げると金髪のケンちゃんの口角がニヤリと邪悪に吊り上がった。
「だーからテメェはマヌケなんだよぉ!トラップ発動!【
「!」
「サイバー・オーガ・2を、エンドフェイズまでゲームから除外する!」
亜空間物質転送装置の効力で、サイバー・オーガ・2の姿が一瞬にしてフィールドから消失した。
「ターンエンドだ!この瞬間、除外したサイバー・オーガ・2が俺のフィールドに戻ってくる!」
その宣言通り、わずか数秒でサイバー・オーガ・2はフィールド上に帰還した。攻撃力は初期値の2600に戻り、リミッター解除による自壊も行われない。
「ヒャッホゥ!これでリミッター解除のデメリット効果はリセットされて、サイバー・オーガ・2はフィールドに残り続けるぜぇ!」
「………」
「あわわ…こ、こんなの…もう、どうしようもないですよぉ…」
「テメェの場はガラ空き!手札は1枚!こっから一体どうしようってんだ?転入生!」
(……この1枚だけじゃ足りない…勝つ為には、
「ボクのターン……ドロー!」
渾身の思いで、デッキからカードを引く。正に運命の…デスティニー・ドローだ!
……恐る恐る、ドローしたカードを見る。
直後、ボクは目を見開いた。そして次第に、自然と、お腹の底から笑いが込み上げてくるのを感じた。
「…くっ、ははは……あははは!あはははは!!」
「えっ、ええ…?」
「…どうしちまったんだ?あの野郎」
「引いたカードがゴミ過ぎて、笑うしかねぇんじゃねーの?」
「ブホッ!マジ超ウケるわーそれ!」
「あはは!あははは……っはぁー……あぁもう、これだから大好きなんだよ。ボクのデッキは!」
「!?」
「さぁ行くよ!まずは【トレード・イン】を発動!手札からレベル8のモンスター1枚を墓地に捨て、その
(!!よし、波に乗ってきた!)
「続いて【思い出のブランコ】を発動!墓地に眠る通常モンスターを1体、特殊召喚できる!ボクが呼び出すのは、さっき墓地に送ったモンスター、【ラビー・ドラゴン】!!」
ボクのフィールドに、ウサギを彷彿とさせる、白くて長い耳を生やし、毛並みの柔らかそうな、モコモコした白い体毛を
【ラビー・ドラゴン】 攻撃力 2950
「こ、こ…攻撃力…!2950、だとぉ!?」
金髪のケンちゃんと3人のモブは、驚愕の余り、開いた口が塞がっていない。これは良い優越感。ドヤ顔したくなる。
「ぐっ…だ、だがなぁ!サイバー・オーガ・2が倒されても、まだ俺にはライフが残るぜ!【思い出のブランコ】で召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される筈だ!そんなドラゴン、ただの一時しのぎにしかならねぇよ!」
「うん、そうなんだよね。そこで、このカードさ。【ボマー・ドラゴン】を通常召喚!」
【ボマー・ドラゴン】 攻撃力 1000
「バトル!ボマー・ドラゴンで、サイバー・オーガ・2を攻撃!」
「は…はぁ!?ははは!血迷ったかマヌケ野郎!攻撃力1000ぽっちの雑魚で、俺のサイバー・オーガ・2に攻撃!?自爆するつもりかよ!」
「いいや、爆発するのは君のモンスターも
ボマー・ドラゴンがサイバー・オーガ・2に突貫した。この時、ボマー・ドラゴンのモンスター効果が誘発する!
「ボマー・ドラゴンが攻撃を行う時、お互いが受けるダメージは0!そして、ボマー・ドラゴンを戦闘で破壊した相手モンスターは、破壊される!!」
「なっ、なんだとォオオオオオ!!!?」
ボマー・ドラゴンが大事に抱えていた謎の球体。その正体は言わずもがな、爆弾だ。
それが大爆発を起こすと、爆風に巻き込まれたサイバー・オーガ・2は、ボマー・ドラゴン
「これで、今度は君のフィールドがガラ空きになったね」
「んな…バカな…!」
「チェックメイトだ」
「ひっ!」
「ラビー・ドラゴンで、プレイヤーに
ラビー・ドラゴンは
標的となった相手は為す術もなく、瞬く間に光の
「うぎゃあああああっ!!!!」
金髪のケンちゃん LP 0
「ボクの勝ちだね!!」
デュエルが決着した後、金髪のケンちゃんと他3名は速やかに退却していった。
ひとまず一件落着っと。あー、まだ朝なのに、もう疲れちゃったよ。
そうだ、壊れたデュエルディスクは早いとこ修理しないと。いつまでも
それにしても、久々にスリルのあるデュエルだったな。デュエルアカデミアに行ったら、もっと腕の立つデュエリストがゴロゴロ居るのかな?
そんなことを、ボンヤリと考えながら、外していた赤メガネを掛け直していると、あの茶髪くんが話しかけてきた。なんか瞳がキラキラしてる気がする。
「あ、あの!ありがとうございました!!助けていただけて…!」
「気にしないで良いよ~?初登校の矢先に嫌なもの見たくなかったって、それだけだからさ。ところで怪我はない?茶髪くん」
「えっと…一ノ瀬です。
「ルイくんかぁ。良い名前だね!ボクの事はセツナって呼んでくれて良いよ。改めてよろしくね」
「は、はい!ええ、えっと…その……せ、セツナ先輩!よよ、よろしくです!」
「先輩?なんか…こそばゆい響きだね、あはは。悪くないけど。ルイくんって、もしかして下級生?」
「あ、はい。一応…ジャルダン校の高等部1年生…です…」
「おっ!ボクの1個下なんだ?早くも後輩が出来ちゃったね、しかも学園に着く前から。あはは……は…は……。……ちょっと待って今
端末で時間を確かめてみると、なんということでしょう。すでに始業の鐘が鳴る時刻まで、あと10分を切っているではありませんか!
「ぎゃあああ!!転入初日から遅刻なんてシャレにならない!急ごうルイくん!」
「ひゃあああ!!はいいいいっ!!」
こうして、ボク・
あんな事があったのに、まだ部屋のベッドで起床してから2時間しか経過してないとか信じられない。
なんだか今日は丸1日、いろいろな人達と出会って、いろいろなイベントに遭遇しそうな予感がする。
まぁそれはそれで、けっこう楽しめそうだけど!
アニメ新作・遊戯王VRAINS 楽しみですね!遊作くん可愛いよ遊作くん!(*´Д`*)hshs