クリュセの守護神   作:ランブルダンプ

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宇宙へ

今は夜、俺は三日月さんと基地の見張りをしていた。

 

(ぶっちゃけ目視よりレーダーの方が範囲と精度共に上だし、三日月さんには休んでて貰いたいんだけどなー)

 

現在俺のレーダーに反応してるのは地上で星を眺めてるクーデリア位である。

 

(あー寒くないのかねぇ?三日月さーん?)

 

軽く唸るとそれに気が付いた三日月さんが窓の外を見やり、窓を開けてクーデリアに声を掛けた。

 

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毛布を取りに行って戻ると丁度クーデリアが上がって来た所だった。尻尾を使ってクーデリアに渡す。

 

「あ……ありがとうございます。シンも三日月と一緒に見張りをしているのですか?」

 

首を縦に振って肯定の意を表す。

 

「見張りはいつもはやらないけど今は交代でやってる。ギャラルホルンがいつ来るか分からないから」

 

三日月さんが懐を探り「食べる?」と言ってクーデリアと俺に火星ヤシを渡してくれた。

 

(お、初めて食べたけど……初めて?)

 

何故か初めて食べたハズだが既視感を感じる。

 

(……まぁいいや美味しい事に変わりはないし)

 

見ればクーデリアはハズレを引いた様だった。「それたまにハズレが混ざってるんだ」と悪戯が成功した顔で説明する三日月さん。

 

(……三日月さんもしかしてワザとハズレ渡しました?)

 

当たりで良かったーと思いつつ、でもちょっとハズレの方も食べてみたかったかなと思った俺だった。

 

 

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場の雰囲気が和んだ所で三日月さんがクーデリアに話し掛ける。

 

「……オルガは一度やるって言った仕事は絶対にやり遂げる。だから俺もあんたを絶対に地球まで連れていくよ」

 

三日月さんのその言葉に、

 

「わ……私は私の戦いを頑張ります。私には私の戦い方がある、その事にここに来て気付いたんです」

 

クーデリアも自らの思いを伝える。

 

その言葉に僅かに頷く三日月さん。少しした後、窓の外の星が輝く夜空に目をやり、クーデリアに話し掛ける。

 

「そうだ、地球に行けば月って見えるかな?三日月って名前そっから取られたらしいから」

 

「月は厄祭戦で大きな被害を受けて、今では霞んでしまったと聞いています」

 

「そっか、見えるといいな」

 

「はい……本当に」

 

 

(……いい雰囲気過ぎて俺の存在感が皆無!外の見回りに行った方が良かったかね?ま、今は邪魔をしない為に俺はレーダーに徹しますかね)

 

そうして夜は更けていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

翌朝、

 

「私を炊事係として鉄華団で雇ってください!女将さんには事情を話してお店は辞めてきました!」

 

朝御飯を食べてる三日月さんの横で火星ヤシを貰っていると、食堂の入り口にアトラが現れるやいなや大声で鉄華団に入りたい旨を告げてきた。

 

「いいんじゃねぇの?なあ?」

 

「アトラのご飯はおいしいからね」

 

と直ぐに団長と三日月さんが反応する。

 

突然の事で反応出来なかった皆も二人の反応を見て賛成し出した。

 

(家事関係が殆ど出来ない鉄華団にとってアトラは貴重な戦力だよなぁ)

 

むしろ頼んででも入って欲しい人材である。

 

その皆の歓迎する雰囲気にアトラも、

 

「あ……ありがとうございます!一生懸命頑張ります!」

 

と返していた。

 

 

皆の気分が盛り上がった所で団長が立ち上がり、

 

「よ~しお前ら!地球行きは鉄華団初の大仕事だ!気ぃ引き締めていくぞ!」

 

と気炎を上げる。意気込んだ団長のかけ声に各々反応して歓声を上げる鉄華団のメンバー。

 

ほぼ全てのメンバーの気分が高揚している中、ユージンだけは冷静にギャラルホルンを敵に回している今の状況のマズさを考え、トドはほくそ笑んでいた。

 

 

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翌日、俺は三日月さんが搭乗するバルバトスと共にシャトルの格納庫に入っていた。

 

(まーそうなるわな、俺に対応した席、なんて有るわけないし)

 

それに団長に頼まれた事もある。

 

さっきまで暇なので三日月さんと無線で会話していた。

今は三日月さんに連絡が入ったので俺は黙っている。

 

因みに、何で伝わるのか分からないが、三日月さんだけは俺の鳴き声から完璧に俺の言いたい事を理解していた。

 

三日月さん程ではないが、昭弘とフミタンは俺の鳴き声から言いたい事を大体理解出来た。

 

他の鉄華団の面々は鳴き声から大体の感情を読み取ってくれる。

 

それを知って俺が考えた事はただ一つ!

 

(意思を伝達出来るって素晴らしい!)

 

この見た目で俺が鉄華団に馴染めたのも意思の疎通が出来たという事が大きいと思う。

 

そんな事を考えているとバルバトスの三日月さんから声を掛けられた。

 

『シン、オルガから連絡。もうすぐ出発だって』

 

(了解しました三日月さん!)

 

一声鳴いて尻尾を使って体をワイヤーで床に固定していく。

 

何故最初から体を固定していなかったのかと言うと、団長に言われてハッチが開くと同時スモークが炊かれるように準備していたからだ。

 

(さあ!いよいよ宇宙だ!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして10分後、マスドライバーが作動し俺達を乗せたシャトルは一気に滑走路を駆け上がり、

 

……火星の大地の遥か上空、宇宙に到達した。

 

 




(宇宙キター!!)

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