団長からの連絡で歳星で整備長と作っておいた囮用のダミーハンマーヘッドをちゃんと向かわせたらしい。
(ジャスレイとかテイワズの俺達を良く思っていない連中とやり合う時用に作っていたのがまさかここで役立つとはな……)
あの後はちゃんとオペレーターとして仕事をし、目標宙域に無事に艦隊を到着させる。
今俺はイオクの指示でグレイズにダインスレイヴを装着する為に再びガレージへと向かっている。
「ねぇねぇアンタなんだって?あのヴィダールのモビルスーツを整備したの」
「そーですよ」
「何でアタシは関われなかったのかな!?あのガンダムフレームなのに!ガンダムフレームなのに!!」
「さあ?」
……それとずっとガレージから追い出していたヤマジンとかいう女整備士に絡まれていた。
「というか何でアタシがいきなり整備主任から外されるわけ!?」
「知りませんよ」
まぁ俺がデータを改竄したのが理由なんだが。
「キチンと仕事はやったので見といて下さいよ」
「分かったわ!!あとそれと……」
ひたすら五月蝿いので適当にスルーする。
ヤマジンの話は置いといて考えるのはアザーの事だ。
(アイツは一体何なんだ?明らかにハシュマルなんかのAIとは違うし……俺が無意識に作った……?うーん……)
考えてもどうにも答えが見つからない。
(アザー……お前は誰だ?)
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《俺の中の俺~♪なんつってね!!よぉシn!アブネエ……ハサン!!》
ガレージに入るとアザーが
「………………は?」
ポカーンとしているとキマリスのコクピットからヴィダールが出て来た。
『なぁ……ハサン、本当に何なんだコイツは』
何も言えずに呆然としていると向こうからジュリエッタが駆けてきた。
「ヴィダール!訓練が終わったならこれ観ませんか!」
手に持った端末を指差す。
覗いてみると仮面ライダー剣だった。
「……何でそんな昔のが……?」
《俺がウェブで拾ってきたんだよ》
アザーが説明してくる。
『むっ……では俺はこれで』
ジュリエッタが俺も誘ってきたが仕事があるので丁重に断る。
《おっと待ってくれよ!俺も久し振りに観たい!》
そう言ってアザーも向こうへ歩いていった。
……そうして三人でガヤガヤとモニターを囲んで仮面ライダー剣を観始めた。
「………………え?」
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(はっはっは、まぁそういう反応になるよな~)
仮面ライダーを見ながらアザーは一人ごちる。
(
首を傾げながらダインスレイヴをグレイズに装備させる作業に向かうシンを眺める。
(次はマイティブラザーズXXかな?)
俺の存在の意味を知ったらそうなるに違いない。
後ろを振り向きキマリス・オーディンを見上げる。
(……お前がガンダムフレームを無駄に高性能にするのはその不安の大きさの現れだ。やっと見つけた自分の仲間、それを失うって事のな)
(大いなる力には大いなる責任が伴う。だけど大いなる責任が伴うってのは何も力を手にした者は必ず大切なモノを失うって訳じゃないんだぜ?……いいじゃねぇかハッピーエンド)
(お前の
黒幕じみた思考を続けるアザー。
その思考を刺すようにテレビからオンドゥルルラギッタンディスカー!?と聴こえてくる。
(300年振りに聴いてもオンドゥルにしか聴こえねぇ……w)
ちゃっかり楽しんでいた。
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その後の俺の行動は完全に無意識だった。
自分を遠くから眺めているような気分だ。
ヴィダールとジュリエッタのイオクを責める声が聞こえた。
イオクが停戦信号や降伏信号を無視しダミーのハンマーヘッドをダインスレイヴで沈めるのも、勿論艦内のカメラや俺自身がちゃんと記録を取っていたがぼーっとしている内に過ぎていった。
(武装していない艦を降伏信号を黙殺して墜としたのは決定的な証拠だ。……筋肉号使ってずらかるか……)
データを書き換えヤマジンを整備主任へと戻す。
艦隊が近くのコロニーを通りすがった時を見計らいガレージへと侵入する。
《よっ!鉄華団に帰るのか》
暗がりからアザーの声がする。
振り向かずにコックピットに入り黙々と筋肉号のシステムを立ち上げていく。
「じゃあな、アザー」
《ああサヨナラだ。俺だって明るく振る舞ってるが心に穴が空いた気分なんだぜ?》
「フフッ……そうかよ」
《まぁお前には
「……お前は……一体何者なんだ?」
《お前にとっての
「……良く分からん」
《まぁいずれ分かるさ、いずれな》
アザーの伏線は張ってあったので探してみると面白いかもしれません。