「来たか」
遠くでライドが俺を呼んでる声がする。
「シンと整備長の仕事も終わって今は潜入中と……後はイオクってのがシンの予想以上の阿保ならいいんだが……」
「団長!イオクってのが来ました!」
ライドがドアを開けるや否や俺に報告してくる。
「分かった。今行く」
椅子に掛けておいた上着を手に取りドアへと向かう。
「さて……大勝負の始まりだ」
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出て来た鉄華団団長とイオク様が握手をした後、イオク様が話し始めた。
「貴方が鉄華団団長のオルガ・イツカ殿か!会えて光栄だ!私はイオク・クジャン、セブンスターズのクジャン家の当主をつとめている」
「これは挨拶どうも。ようこそ鉄華団へ」
暫くは相手を伺うような会話が続く。
そこでタイミングを見計らい私は七星勲章の授与へ話を持っていった。
「私達ギャラルホルンがここへ来たのは貴殿の鉄華団がモビルアーマーを討ち取った事に対する御礼としきたりに沿い七星勲章の授与を……」
「待てジュリエッタ!確かに私達は七星勲章を授与する為にこんな田舎の火星まで足を伸ばした。しかし!世界の管理者として本当にモビルアーマーを討ち取ったのか証拠を確認する必要がある!」
「ちょ……!イオク様それは失礼ですよ!」
本人の居る前で疑ってるだの火星を貶める発言をするなんて正気なのですか!?
「ははは、まあそう仰るのも無理はない。いいでしょう案内しますよ」
幸い団長の方は優しいらしく聞いても怒ったりしなかった。
それどころか案内までしてくれるらしい。
席を立って私、ヴィダール、イオク様の三人で建物の通路を歩いていく。
(どうだジュリエッタ!私の華麗な機転は!)
イオクさ……イオクが小声で話し掛けてくるが全て無視してヴィダールを盾にする為に隣へ移動する。
「はぁ…………」
『君も大変だな』
ヴィダールが話し掛けてくる。
「……なら少しは手伝って下さい」
『承知した』
そしてガレージへと到着する。
目の前にボロボロになったモビルアーマーが鎮座していた。
「……!モビルスーツの何倍も……!」
「おお!確かにこれは正真正銘モビルアーマーだ!」
どうやって倒したのだ?とイオクが団長さんに質問して話始めた中、後ろから何か聞こえてきた。
『Gyaaaa!!』
「よーしよし。シミュレーター終わったらシンさんの青い薔薇に水やりに行こうなー」
『Gya!Gya!!』
その聞き慣れない音に振り向くと少年と……機械の鳥?が戯れていた。
『あれは……?』
隣のヴィダールも驚いた様子だ。
「そのマスクで翻訳出来ませんかヴィダール?」
『済まないが犬と猫にしか対応してないんだ……』
「……むしろ犬猫に対応してる事に驚きですよ」
誰がそのマスクを作ったのだろう?
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「へっくしゅ!!」
「どうした?新入り?」
「いやー何か噂話されてる気がしまして」
「そうか?体調管理はしっかりしとけよー。クジャン公の艦のオペレーターになったんだからな」
「はっはっは!分かっていますよ!」
その笑っている黒髪の少女は
「大丈夫ですって。万事オーケーですよ」
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「ではそのモビルアーマーを倒したモビルスーツを見せて頂きたいのだが……」
「そう来ると思ってましたよ。地下の方です。こっちへ」
何かどんどんイオクの要求がエスカレートしているような気がする。
「こんな堂々とした戦力調査があっていいのですかね……」
『まぁ、彼は役目を果たそうと頑張っているだけだ』
そして団長さんについていき、地下のモビルスーツ倉庫へと到着する。
「……!あれは……」
夜明けの地平線団の件で歯牙にも掛けられなかったモビルスーツ。
見れば各所があの時と変わっていて強化されているのが分かる。
「おお!全部で何機なんだ?」
「そこまで教えるのは流石にですね……」
「そうか……済まなかったな」
団長さんからイオクが離れてひーふーみーと数えだしたので余計な事をしないように追いかける。
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ガレージ内を見渡していた俺はとんでもないモノを見つけてしまった。
『団長殿、少し耳を』
「ん?」
慌てて近くにいたオルガ・イツカへと声を掛ける。
(このガンダムの背中の装備!これはダインスレイヴじゃないのか!?イオクは馬鹿だから気付いていないが、ラスタルが気付いたら難癖をつけられるぞ!?)
(それはシンが造ったギャラクシーキャノンだから違うな)
(あー……そうなのか?)
それでいいんだろうか?まぁいいのかな……?
(アンタがマクギリスの協力者か?)
(そうだ。今はヴィダールと呼んでくれ)
(ならヴィダール、マクギリスに一つ伝言だ。これからイオクの野郎が何をやらかしても放って置いてくれ)
(それは……本当にいいのか?)
(ああ。この後の戦いの為に必要なんだよ)
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最初の部屋に戻ってきた。
「ではオルガ・イツカ殿。貴殿に七星勲章を授与する」
「光栄です」
ガレージでは転んで重要そうなケーブルを抜きかけ、立入禁止の場所では何故か入ろうとするイオクを何とか止め、無事に七星勲章も渡す事が出来たと思ったその矢先。
またイオクが爆弾を投下しやがった。
「ではガンダムフレームの返却も了承して頂こう」
「は?」
何言ってんですかこの人は。
『……は?何を言ってるんだクジャン公?』
ヴィダールも当惑した声音だ。
「何を言っているも何も、先程の話よりモビルアーマーを討ち取ったのはモビルスーツ、そのモビルスーツは元々ギャラルホルンが製造したガンダムフレームだ。ならばモビルアーマーを倒すという大役を果たした今、持ち主の元へ戻すべきだろう」
「イオク様!そんな300年前の所有権がまかり通る訳無いでしょう!!大体探しもせず放置していたモノを他の探した人から取り上げるような真似……!」
『オルガ殿。どうするのだ?』
「ちょっと!ヴィダール貴方も止めて下さいよ!!」
「クク……いいでしょう。確かにガンダムフレームは元々貴殿方ギャラルホルンの所有物だ」
……団長さん今笑っていた?……まさか。
「機体の外装は他から流用したり新造したものなので当てにはなりません。なのでエイハブリアクターの波長でそちらのデータベースと一致するモノは持っていって貰って構いませんよ」
「おお!貴方は実に話が分かる御方だ!!では早速……」
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イオクと団長さんは部下の人を連れて地下のガレージへ行き、私達は同じ部屋で二人の帰りを待っていた。
「こんな横暴……!許される訳が……!」
そんな怒りに震えていた私にヴィダールが声を掛けてきた。
『安心しろ、ジュリエッタ。団長殿には何か考えがあるようだった』
「考えと言ったって……あれは紛れもないガンダムフレームです。エイハブウェーブの固有の波長は誤魔化せません」
『確かにな。しかし、イオクは知らん。
「……それはどういう……?」
ヴィダールに尋ねようとした所、イオクが不機嫌そうな顔で帰って来た。
「……帰るぞジュリエッタ、ヴィダール」
「?どうしたんです?イオク様。不機嫌そうな顔して」
「どうもこうもない!回収できた機体が筋肉何とかというグレイズにしか見えん機体だけだったからだ!!!」
わめき散らすイオクを尻目にヴィダールがこっそり囁いてきた。
『な?言った通りだろ?』
筋肉号グレートのエイハブリアクターはバルバトスに元々使われていたモノでしたので。
イオクの部下の人達はこっそり夜明けの地平線団戦でのエイハブウェーブも試してみましたが、バルバトスにグシオンも全く違う反応で泣く泣く回収を断念しました。
盗人猛々しいクジャン公残念!!