クリュセの守護神   作:ランブルダンプ

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(来るな!!)



たわけが行く!

「ではクジャン公、鉄華団の戦力調査を頼むぞ」

 

「お任せを!ラスタル様!!」

 

そう言ってイオク様は勢いよく出ていった。

 

『彼に任せて本当にいいのか?』

 

「いや、端から奴の調査能力は期待していない。しかし何かをしようとすればするほど余計に被害を撒き散らすのが彼の欠点であり長所だ。私はそっちには期待しているよ」

 

『成る程、それが目的か』

 

ヴィダール、ラスタル様に反感を持つ男。

 

……私も私だ。何故私は彼がラスタル様にとって信頼できる人物では無いことを伝えないのか。

 

「ジュリエッタ、先程から黙ったままだがどうした?」

 

急に話を振られたので咄嗟に話をでっち上げる。

 

「いえ、以前鉄華団と戦ったときに相手にすらされなかった事を思い出していて……」

 

「そうか……しかし余り気にするな。奴等は阿頼耶識を使っている。人じゃない」

 

『人じゃない……か。姿は人間だが?』

 

「ゴジラの遺伝子を自らの身体に埋め込んでいるんだぞ?いわば小型のゴジラだ」

 

今までは何とも思わなかったのに何故かラスタル様の言葉を聞くのが嫌になってくる。

 

「ラスタル様、では戦力調査の方は私が引き受けます」

 

ではこれで、と言って扉へ向かう。

 

歩いている背後でヴィダールもラスタル様に別れの言葉を告げているのが聞こえてきた。

 

 

 

(………………)

 

廊下を少し歩いた所で立ち止まりヴィダールが歩いてくるのを待つ。

 

『おや、どうした?』

 

「別に。格納庫までちょっと話しませんか」

 

暫く歩いた所でヴィダールから話し掛けてきた。

 

『君は俺がラスタルを良く思っていない事をラスタルに伝えていない様だな』

 

少しドキッとしたが平常を装って返す。

 

「……それが何か?特に報告する事では無い、それだけの事です」

 

フム、と呟いてヴィダールが止まったので此方も歩くのを止める。

 

『阿頼耶識を付ける事は化け物に成るのとイコールだと君は思うか?』

 

「知りません。それを決めるのはラスタルさ……」

 

『君はどう考える?』

 

「……阿頼耶識を付けていようといまいと……人は人です」

 

その私の言葉にヴィダールはすこし間をおいて反応した。

 

『そうだな。……君は凄い。俺はその答えを得るのに親友から目を覚まさせられる必要があったというのに』

 

「それは……前に言っていた貴方の罪の話ですか?」

 

ヴィダールは何も言わなかったが、その沈黙が答えなのだろう。

 

「貴方は……」

 

私がいいかけた言葉を遮りヴィダールが話し始める。

 

『ラスタルに交渉して俺も火星へ行く事になった。いざという時にイオクを止める為にな』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やあ!鉄華団の諸君!民間組織の一つでありながらモビルアーマーを討ち取るとはこのイオク・クジャン自ら……ん?誰も居ないではないか」

 

火星のシャトル発着場から降りたイオクはシャトルから出るや否や盛大に自己紹介をし始めた。

 

『クジャン公、特に出迎えはしないと前もって言われている』

 

「何!?何と無礼な!!」

 

憤慨するイオクを側近の人達が宥めている間に私とヴィダールでタクシーの手配をした。

 

それからは何かと騒ぐイオクとそれを宥める側近達。

 

そして観光気分で楽しんでいる私達の二人と見事に対照的に別れて目的地の鉄華団本部へと向かっていった。

 

 

そして漸く鉄華団本部の近くにあるクリュセの街へと着く。

 

「ここがクリュセですか」

 

『あぁ、嘗てガンダムフレームが造られていた土地だ』

 

ふと街の中心にモビルスーツの彫刻が有ることに気づく。

 

「あれは……?」

 

『ガンダムフレーム一号機、バエルだな』

 

「お、そっちの仮面の兄ちゃんは良く知ってるじゃないか!」

 

近くのハンバーガーの屋台の人が声を掛けてきた。

 

何処から来たんだい?地球からだ。へーそりゃまた遠い所から……といったやり取りがあって、良くバエルの名前を知ってるな、という話に移った。

 

『少し資料を読んだ事があってな』

 

「へぇ、そうかいそうかい!でもその資料って奴にそのバエルの別名は載っていたかい?」

 

『別名?知らないが……』

 

何故私を見てくるのですかヴィダール。

 

「私も知りません」

 

クリュセの守護神(・・・・・・・・)ってんだよ!300年前に火星にやってきたヤバい敵共をたった一人でやっつけた英雄さ」

 

『英雄?アグニカ・カイエルの事ではないのか?』

 

「アグニカってのはその機体を受け継いだ人さ。地球ではそっちが有名かもしれんが火星ではクリュセの守護神の方が有名だな」

 

『そうなのか』

 

このまま話が長引きそうだったので話を変えようと質問する。

 

「私達は鉄華団本部を目指しているのですが、いい行き方はありますか?」

 

「鉄華団本部かい?こっからずっと荒野だから車を借りるのが一番だろうね。鉄華団に会いに行くならついでにクリュセの守護神に会えるんじゃないかな」

 

「……?300年前の人物ではないのですか?」

 

『…………』

 

「今はあの子供達の守護神をやってるよ。まぁ会えば分かるさ」

 

「会えば分かる……」

 

何となくその言葉に含みを感じていると店主が手を動かしながら言葉を続けた。

 

「子供達もいい子ばっかりだ。会ったらたまにはウチにハンバーガー食べに来いと伝えてやってくれよ」

 

『ご主人、情報をありがとう。ではそのハンバーガーを二人分頼む』

 

「お、毎度あり!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『鉄華団の子供達は愛されているようだな』

 

「何で分かるのですか?」

 

『あの店主の目を見れば分かるさ』

 

「そういうものですか。……所で仮面をつけているのにどうやってハンバーガーを食べる気です?」

 

『知らなかったのか?この仮面は口の所だけ開くんだよ』

 

「…………ソウデスカ」

 




一方たわけはMrビーンばりの騒ぎを起こし、部下の人が奔走する羽目になっていました。

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