「なぁ……ハッシュ。俺夢みてんのかな……」
ザックが口をポカンと開けたまま此方に問い掛けてくる。
「……安心しろ俺も同じ気分だ」
俺も目の前で起きた冗談しみた光景に唖然としていた。
チラリと隣のデインを見上げると何時もの細い目では無く、目をクワッと見開いて目の前の光景を凝視していた。
『団長!三日月さん!只今帰りました!』
「あぁ、おかえり」
「お帰り、シン」
『はい!!』
モビルスーツの背丈を優に上回る体躯の持ち主が人語を喋り三日月さん達と会話していた。
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……地球に居たメンバーを乗せたシャトルが降りてきたのにも関わらず古株のメンバーが発着場へ行かず空を見上げたままだった。それに気付き、俺も三日月さんに習って空を見上げていると、突如黒いモビルスーツが何の装備も付けずに落下してきた。
それを見た俺達新参が騒いでいると、そのモビルスーツの大きさが急激に巨大化していく。
そして遂にはモビルスーツの何倍もの体躯の龍となり地響きを立てて火星の大地へと降り立った。
「あれが……シンさんか……」
ここへ来る前に三日月さんから「シンが帰ってくるよ」とは聞いていたが……
「やっべぇなこりゃ……」
……あれ?そのヤバい奴がさん付けする三日月さんって相当凄いんじゃ……?
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団長達と話ながら俺はスススーッと体のサイズを落としつつ第二形態になり、宙に浮いて三日月さん達に近づいた。
『昭弘も久しぶりだね!ナイス筋肉!』
「……」(無言のガッツポーズ)
相変わらず凄い筋肉だ。
さて、挨拶はこれくらいにして。
『団長、俺向こうの荷物下ろすの手伝ってきますね』
「分かった。此方も手伝いに行くから先に始めててくれ」
『了解です!』
その日は荷物を下ろすのが終わるや否や火星に居た年少組の皆とひっきりなしに遊び続ける羽目になった。
ゴジラの高性能レーダー&情報処理機能&重力制御が合わさって世界一スリリングな遊園地と化したシンゴジラ印のアトラクション。
フリーフォール(第四形態時の俺の頭の天辺から自由落下、重力制御でふんわりと着地)!
ジェットコースター(但しコースは無い)!
空中散歩(歩いている人の動作を認識し思い描いた通りに自由に空を動き回れる)!
途中から地球支部、年長組、大人組も参加し大にぎわいになった。
「わ!三日月!凄いよ!浮いてる!」
「うん」
「何でスタスタ歩けるんですか三日月は……」
「スゲェなぁミカは……」
「団長さん、良ければあのフリーフォールをやってみませんか?」
「ん?アンタか……って……アレか……」
「皆さん叫び声を上げて……余程楽しいのでしょうね」
「いや単純に怖いんじゃねぇかな……」
「うぉぉぉぉぉおおお!!フリーフォールってのスゲェ!!シンさん!もう一回!」
『はーいよーっと』
「ふ、ふーん……な、中々面白そうじゃねーか」
「何だよユージン、びびってんのかぁ?」
「は?違ぇよ!」
「オーイ!シン!ユージンもやりてぇってよ!」
『りょーかーい!鉄華団副団長様一名ごあんなーい!』
「は?オイ馬鹿シン止めろおぉぉぉぉぉ!!??」
「はっはっは!ヤマギ!俺達ももう一回やろーぜ!」
「こういうの好きだねシノ……」
「小さくなったりデカくなったりアトラクションしてたりもう俺訳わかんねぇ……」
「ザック……もう理屈抜きで楽しむのがいいんじゃねぇかな……」
「その通りだ。ジェットコースターってのがオススメだな」
「……やってきたのかよ」
「楽しかったぞ」
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その日の夜。
三日月さんとアトラが住んでいる桜農場へと帰って来た後、二人についてきてと言われたのでついていく。
「じゃーん!コレ!」
「花火っていうんだって」
二人が見せてきたのは元日本人の俺にとってかなり懐かしく感じる花火だった。
『どうしたんですか?コレ』
「前に地球へ行った時に買ってあったんだよ」
「その時アトラがシンが帰って来た時にやらないかって」
(え?てことは……)
『俺の為に取っておいてくれたんですか……?』
「そうだよ!」
「うん」
アトラは満面の笑みで。三日月さんは少し微笑んで頷いた。
「「お帰り、シン」」
『……っ!……ただいまです!』
そんな感じで俺は火星へ帰って来たのだった。
改めて絶対に