二期終盤オルガがはっちゃける予定です。
式典の三日前、俺は昌弘に作戦を伝えていた。
『ラディーチェの消してた通信ログを見るに、奴はガラン・モッサという男と式典当日に接触するハズだ』
「俺は二人とも倒せば良いのか?」
昌弘が力こぶを作りながら尋ねてくる。
『いや、ラディーチェだけでいいんだ。ガラン・モッサという男についてデルマと手分けして調べてみたんだけど、ある日を境に一切の記録が残ってなくてね』
「シンさんが調べても見つからなかったのか?」
昌弘が驚く。
『流石の俺も紙媒体は全部調べられないからね。あとギャラルホルンからの支援もあるみたいだ。それが恐らくラスタルだと思う』
調べた所ガラン・モッサが関わったであろう事件は全て結果的にラスタルの益になっていた。
『その繋がりの確証が欲しい。その為には奴が何処にその情報を隠しているのか知る必要がある』
「そういう事なら分かったぜ。ラディーチェをボコしてガランは逃がす」
『ありがとう、ガランは他の人に追って貰うよ。……何かやたら志願者がいたんだよね』
「そりゃ皆シンさんと遊べなくてイライラが貯まってたからだろうな」
『あー……。成る程』
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段々と式典会場から爆発音が聞こえて来ない事に焦りを感じ始めたガラン。
爆発音がしたらラディーチェに格好つけて別れるつもりだったが……
(おかしい……誰かが爆弾を見つけて処理でもしたのか?)
見つかるとは思えない。だかもしそうなら今すぐ此処を離れる必要がある。
「……じゃあ今日の話はここまでd」
「なら拳で語り合おうか。おっさん」
その声に振り返った俺の顔面に拳が鋭く突き刺さった。
椅子ごと地面に倒れ込む。
「な!?貴方はヒューマンデブリの……!」
ラディーチェの困惑した声を聞きながらぐらつく頭を押さえる。
「ラディーチェ、テメェには聞きたい事がある。着いてきて貰うぞ」
「待て!まってください!これは何かの誤解で」
「散々シンさんの事を……よくもディスってくれたなパンチ!!」
カエルが潰れたような声を出しながらラディーチェが壁に叩き付けられる。
見れば殴っているのはやたら筋肉を鍛え上げた少年だった。
羽織ってる服から鉄華団だと分かる。
奴の意識がラディーチェに向かっている今の内に、俺は逃走を開始した。
「ふぅ……これで計画通りだな」
視線を向けずとも逃げ出すガランを背筋で感じながら昌弘は呟いた。
「あ……が……何で……?」
未だに何が起きているか理解していないラディーチェ。
「おいラディーチェ」
「は?」
こちらを向いたそのタイミングで腕の筋肉を活かした全力のスイングでガチビンタを喰らわせる。
バットで肉を打った様な音が響き、そのビンタ一発でラディーチェは意識を刈り取られた。
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「ハアッ……ハアッ……ここまで逃げれば十分だろう」
アーブラウ郊外の森の中までガランは走って逃げてきた。
もうそろそろ自身の乗機、ゲイレールが待つ格納庫だ。
(すぐにここからトンズラだ。……ラスタルには悪ぃが此方も捕まった洒落にならないんでな)
……ガランは呼吸を整えるのに意識を向けていたせいで気がつく事は無かった。
鉄華団の年少組がずっと物音を立てずに追跡していた事に。
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『成る程、その進行方向からして……多分ここの倉庫か』
年少組の報告を聞き、アーブラウの地理情報と照らし合わせて当たりをつける。
『ありがとう。戻ってきて』
今から戦闘を起こすので皆には退却して貰う。
そして早速マクギリスに連絡を取った。
『やぁ!シン君!』
マクギリスはいい笑顔だ。
『テロリストを捕らえる名目でラスタルの弱味を握りに行かない?』
『行くとも!!』
『ちょ……准将!?』
通信の向こうではマクギリスの部下の人が慌てている。
『あぁ、その人が石動か。夜明けの地平線団の時はどうも』
『あ、いえお構い無く。……シンさん、ですか?』
『そうだよ』
『フム、何故画面にはUNKNOWNと出ているのだろう』
今さらですか准将!?と石動さんのツッコミが入る。
『あー俺最近形態変化して第五形態になってさ。自力で通信してるんだよね』
『なるほど?……進化?』
『見た目は黒いバエルっぽいよ』
『OK分かった!聞いたか石動?すぐに出撃だ!!』
『……了解しました』
そうして通信は切れた。
……マッキーポンコツ化してない?大丈夫?
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「あ、親方!そんなに急いでどうしたんで?」
「敵が来る!急いで逃げる算段を取れ!!」
俺の命令にその場の全員の動きが一瞬止まり、直ぐ様慌ただしく動き出した。
俺はゲイレールに向かって歩を進め……
『見つけた。ここか』
突如漆黒の機体が天井をぶち破り侵入して来た。
それに続いて青いグレイズリッター二機が降下してくる。
『シン君!後で一緒に写真を撮って貰ってもいいかな?』
『いいよ~』
『准将、もう少し緊張感を……』
そんな漫才を開始した奴等にモビルスーツに乗った仲間が背後から武器を振りかぶり……
一機は漆黒の機体にコックピットを引きずり出され、もう一機はグレイズリッターに二刀をコックピットの隙間から突き刺さされていた。
その一瞬の攻防の凄まじさに周りの機体が動きを止める。
それを見た石動は日本に伝わる【馬鹿と天才は紙一重】という諺を思い出していた。
『ラスタルとお前の繋がりを示す情報は確保させて貰ったよ』
漆黒の機体のパイロットからの声がする。
……奴の口ぶりからするにまだ敵は俺のゲイレールにこそ全ての情報が入っているとは気付いていない。
何とかしてゲイレールに乗り込み自爆を……!
『成る程ね。ゲイレールを見たって事は情報は全てこの機体の中か』
「なっ……!?」
カマを掛けられた事に気付き、悔しさで歯を食い縛る。
『なら他の機体はもういらないね』
言うや否や漆黒の機体から伸びたテイルブレードが倉庫の全てのモビルスーツを切り裂いた。
『な……!?何て切れ味だ!?』
グレイズリッターの一機が驚きの声を上げる。
『おぉ格好いいぞ!シン君!!』
……もう一機は何か変というか……指揮官型?まさかアレに乗っているのはマクギリスか!?
『お前は来たるラスタルとの戦いでの弱味の一つになって貰う』
漆黒の機体が紅色のカメラアイを輝かせこちらを覗き込んでくる。
咄嗟に銃を構えたが、直後に襲いかかってきたとんでもない圧力、まるで地球の重力が三倍、四倍にもなったかの様な圧力に体が地面に倒れ、そのまま動けない。
『ガラン・モッサ。貴様をアーブラウにおけるテロ未遂で確保する』
マクギリスが宣言する。
それを見つつ石動は考えていた。
(こういう時の准将は真面目で格好いいのだが……なぁ……)
という訳で、シンゴジラ第五形態でした。