「地球外縁軌道統制統合艦隊を組織改編しアーブラウの件で難しくなった地球上での活動を再編各経済圏との新たな関係を構築した手腕。見事だな、マクギリス・ファリド新司令」
ボードウィン家の当主、ガルス・ボードウィンが誉め称える。
「シン司令?……おっと失礼。いえいえ、これも皆様方のご指導の賜物です」
一瞬シンの名前かと勘違いしたマクギリス。華麗に失態を取り繕う。
「いやいや地球外縁軌道統制統合艦隊をもうお飾りなどと呼べませんなぁ」
ファルク家当主のお世辞に対しマクギリスは自分はカルタ司令の後を継いだだけに過ぎず、また監査局時代に起きた火星の件をまだ片付けてられていない事を言い謙遜する。
「なので、我が地球外縁軌道統制統合艦隊が火星区域へ干渉することを許可いただければと思います」
その言葉に直ぐ様イオク・クジャン公が反応した。
「貴様それは!エリオン公のアリアンロッド艦隊の職域を侵す行為だ!断じて認められる物では……!」
「まあまあ落ちついて」
「ハハハ、若者が血気盛んなのはいい事ではないですか」
二人の当主がまだ若いイオクを宥める。
「ラスタルさ……エリオン公それは……」
「クジャン公。我らギャラルホルンは世界の秩序を守る為に存在する。その為ならば『誰が』など小さな問題に過ぎない。……我々に必要なのは秩序を維持するための力なのだからな」
「そう、力。……アーブラウに居座るあの化物については皆さんはどうお考えで?」
マクギリスが唐突に議題をぶっ込んだ。
これまでの会議で皆がそれと無く避けていた話題だったがそれもお構い無しだ。
(シン君に今度会ったときの手土産にでもなればいいがな)
「痛い所を突いてくる。しかし、それも若さか。……ファリド公、以前ゴジラが再出現した際に
「左様。昔はモビルアーマー50機が戦闘に投入されたがその殆どが破壊された上で何とか倒せた相手だ。その上昔の文献にはさらに進化する可能性まで示唆されている」
「幸い今のゴジラはまだ進化していない上に人を無闇に殺さずアーブラウに留まっている。この期がチャンスだ」
「成る程。……質問にお答え頂き感謝します」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
執務室へと戻ると早速石動に会議の顛末を話す。
聞き終えた石動から早速質問された。
「火星側はどう出るでしょうか?」
「問題ない。今の火星支部の臨時司令は監査局時代に私が推薦した男だ。それに火星には頼りになる仲間がいる」
(一番頼りになるのとその次に頼りになるのは地球にいるのだがな)
「成る程。ご友人ですか?」
「……一人は友人なのだが……もう一人は……人?いやしかし匹というのは失礼では……?元は人だと聞くし……う~む……」
一つで完結している個体なのだからいっそ新しい数え方を作るのが正しいのではないか?
「……一ゴジラ?……成る程!石動!一人と一ゴジラだ!!」
「准将、准将!分かりましたのでそこまで悩んで頂か無くても!」
「あ、あぁ済まない」
石動は内心で考えていた。
もしかして、この上司は会議でもこんな面白ミスをしでかしているのではないかと。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一方鉄華団はクーデリアの護衛任務を無事終えようとしている所だった。
「は~あ、結局何にも来ないでやんの。初陣がこんなのでいいのかねぇ」
ザックがぼやく。
「ちゃんと見張ってろって」
そう言いつつハッシュも意気込んでいただけに落胆は大きかった。
背後に控えるグシオンとバルバトスの両機を見上げる。
ハッシュは知るよしも無かったが、今のグシオンは【
シンのレーダーが出鱈目過ぎるだけで周囲を警戒する分には十分過ぎる警戒網をグシオンは持っている。
そして、グシオンのレーダーが敵を感知しカメラアイが輝く。
『!……敵が来た。早く持ち場に付け!!』
三日前に夜明けの地平線団が火星に降りたという情報を入手してからバルバトスと交代交代で監視していたのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「グシオンはもう先行してるよ!それとその装備がシン君が提案した新装備のソードメイス!メイスとして使える上に中にγナノラミネートソードが入ってる!起動すれば勝手に鞘ごと斬れるから叩き付けて、受け止めた!と思わせて斬るのが楽しい使い方だね!」
「分かった。要するに何時でも刀になるんだね」
「うん!大体合ってるよ!!じゃあ頑張って!!」
バルバトスが出撃する。
「三日月……あのテンションの整備長相手に普通って凄くない?」
同じく格納庫に居て、流星号の最終調整をし終えたヤマギがドン引きしつつ呟いた。
「おう、ヤマギ!流星号の準備は出来たかぁ!!」
「うん、準備万端だよ。シノ」
「うっし!行くぜ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「やはり仕掛けて来ましたね。あの男」
モニターを見つつフミタンが呟いた。
「テラ・リベリオニスだな。俺らの家族に手ぇ出したんだ。ケジメは取らせるさ」
「……随分と頼もしく成りましたね」
「当たり前だろ?俺達を誰だと思ってる?」
「鉄華団です」
「正解だ。安心しろよ。お前とお嬢様は俺達がきちんと守る」
「……」
(……あれ?フミタンと団長さんってもしかして?)
狙われている張本人にも関わらず、その後ろで空気と化していたクーデリアだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜明けの地平線団が送り込んできたモビルスーツは15機。普通の組織相手に奇襲を掛けるのには些か過剰戦力である。
しかし、それでも鉄華団を相手取るには全然足りなかった。
『ぬぅん!!!』
先行したグシオンが接触と同時に二機をハルバードで葬る。
混乱しつつも纏まっていては不味いと散開する敵モビルスーツ。
予定通り、逃げ切れなかった重武装のモビルスーツをグシオンが相手取る。
『シノ!そっちに行ったぞ!!』
グシオンと相手している三機を残し残りの10機は半々に分かれて鉄華団の本部を目指そうとする。
そこにシノ率いる流星隊が襲いかかった。
『オラオラァ!!こっから先は通行止めだぁ!!』
『シノ……どっちが悪役か分かんねぇよ……』
ダンテが呆れつつ敵のモビルスーツに挑んで行く。
シノの流星号は阿頼耶識を搭載しており、他の紫電と違い流れる様な動きで敵を翻弄する。
『オラオラどうしたぁ!?』
『くっ……!しかし、ガンダムフレーム【鉄華団の悪魔】は仲間が抑えてる!お前らを倒せば……!』
『ん?何か勘違いしてねぇか?鉄華団の悪魔って呼ばれてんのは……』
その時敵モビルスーツが何者からの攻撃によって横凪ぎに吹っ飛んだ。
『がはぁっ!!……な、何が』
『ソイツだよ。【鉄華団の悪魔】って呼ばれてんのは』
そこに立っていたのはバルバトス・ルナノーヴァ。
カラーリングは以前の白と青に加えて新たに各所に赤色のアクセントが入っている。
バルバトスがシノの流星号以上の異常な動きで敵を叩き潰して行く。
『ば、馬鹿な……』
一瞬にして五機のモビルスーツがコックピットを潰されていた。
ゆらりと相手の機体が動いた瞬間、反射的に盾を構えていた隊長機。
それが功を奏し何とか受け止める事に成功した。
『そっか、ならこれだ』
次の瞬間起動したγナノラミネートソードに隊長はコックピットごと両断される。
その後は流星隊とバルバトスに残った敵は殲滅された。
一方グシオンはというと、残った敵に対して……
『パロ・スペシャル!!』
『タワーブリッジ!!!』
『筋肉!バスタァァァ!!!!』
その技の後にはモビルスーツ
基地ではそれを見たせいで笑いすぎて腹筋がつったラフタと呆れて眺めるアジーが居たという。
ギャラルホルン最大最強を誇る月外縁軌道統合艦隊アリアンロッド。
それに対抗する為に用意したシンゴジラです。