「アリアドネに反応!エイハブ・ウェーブ確認。報告にあった船と一致しました!」
一瞬のノイズの後、画面に此方へ向かってくる敵戦艦の姿が映し出された。
「まさか本当に来るとは……いいえ、それでこそよ!」
早速カルタが命令を出そうとした所にガエリオからの通信が入る。
『カルタ……』と言い掛けるが、「カルタ
「あなたの無理を聞いて作戦に参加させてあげたのだから、精々我々の足を引っ張らぬようそれなりの働きをしなさい」
『分かって……イマス』
言葉の途中でそっぽを向く。
そんなガエリオにカルタは今一番知りたい情報を問い掛けた。
「そっ……それよりあの男はどうしたの?」
『?……あの男?』
ガエリオが首を捻る。
「そんな鈍いことで今回の作戦が務まるの!?金髪で高慢ちきな……地位のためにしょんべん臭い子供なんぞと婚約した、いっつも前髪を弄ってるあの男よ!!」
『ハァ……相変わらずの物言いだ。マクギリスなら休暇中です。地球でうちの妹と過ごしてますよ』
その話を聞いてカルタが眉を吊り上げる。
「地球に?それで私になんの報告もなかったと?」
『直属の上司でもないあなたに報告する義務が?』
ガエリオがそれに呆れた表情で返す。
「ガエリオ!あなたも我ら地球外縁軌道統制統合艦隊をバカにするつもり!?」
突然の言い掛かりにモニターの中のガエリオが焦りだす。
『はっ?いやそんなつもりは……』
「いい!?成果を上げられなかったら承知しない。折檻が待ってるわよ!」
『折檻!?折檻って何……』
カルタの手振りを受けて通信係がガエリオとの通話を終了させる。
「統制局の連中にお飾りだなんだと言われてきた私達……その真の実力をここで証明してあげる!」
カルタの雰囲気を察して後ろに控えている親衛隊が背筋を伸ばす。
「我ら地球外縁軌道統制統合艦隊!」
「面壁九年!堅牢堅固!」
「さあ、捻り潰してあげるわ!!」
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一方こちらは地球外縁軌道統制統合艦隊のカルタが乗ってる艦の上。
居るのは一人と一匹。
俺とダンテの電子戦得意コンビである。
今は中の様子をハッキングして見ていたのだが、
「何やってんだコイツら……?」
先程の面壁九年堅牢堅固にダンテが困惑を隠しきれない様子だった。
『まあ、お陰で違和感を感じさせずにシステムに潜り込めて良かったじゃない』
「そうだけどよぉ……」
『しっかし団長凄いね……俺とダンテで敵艦に取りついてイサリビの位置と砲撃を錯覚させるとか普通考えつかないよ』
「ああ、何かモンタークって野郎から色々聞き出してたな。この地球外縁……何ちゃらは未だに実戦を一回もこなしていないお飾り部隊だって話だったっけ」
『まぁモビルスーツを一機も出してない時点でお察しだけどね』
「そうだな、だからこそ付け入る隙がある」
『よし、じゃあ始めようか』
【
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「敵艦、進路を変えずに直進して来ます!」
「フン、火星のネズミ風情が高度な戦術を取れる訳がない……か。全艦隊砲撃用意!」
「了解!」
「目標前方敵艦!」
「カルタ様、いつでも撃てます」
「よし……撃てぇい!」
モニターに全砲撃をもろに受けた敵艦が映る。
「んん……張り合いの無い……」
勝利の感覚に浸ろうとするカルタ。しかし、オペレーターからの敵艦未だ健在の報を聞いて引き戻される。
「何!?」
「エイハブウェーブの反応が二つに!?」
「まさか、艦を盾に!?……何と野蛮な!!」
直ぐにカルタは指示を出し、鶴翼の陣に移り敵を撃沈しようとする。
その判断の早さは素晴らしい。
それが現実に起こっている事であったら、の話だが。
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「よし!二隻撃墜!」
全部で七隻の地球外縁軌道統制統合艦隊の内、両端の艦が残りの五隻から集中砲火を喰らって爆発する。
それを見たダンテが次に俺達がブルワーズの船を盾にして突撃してくる様に誤認させる。
『鶴翼の陣ねぇ……なら、お互い向き合おうか』
俺はそれに合わせて各艦の位置情報を弄ってお互いがお互いを狙うように調整した。
ダンテは阿頼耶識接続でハッキングしている、しかも俺のやたら情報処理能力の高い身体を通しているので鼻血を噴くような事も無く膨大な処理をこなして地球外縁軌道統制統合艦隊全艦に偽装情報を送り続ける。
「シンの身体凄ぇな!俺のカスタマイズしたパソコンがゴミみたいに思えるぜ!」
『それを使いこなすダンテも凄いよ!俺一人だったら細かい所まで手が回らなかったと思うし』
「覚えといて良かったぜ、ハッキング。そこだけはマルバの野郎に感謝しとかねぇとな」
『お、お互い向き合った』
「よっしゃあ!!テメェら同士で自滅しやがれ!!」
そして各艦隊が砲撃を開始する。
味方を狙っているとは露も知らずに。
\ファイナルベント/