『さて、整備長。我々やるときはやるですよ』
「ほあああああああ!!!!!」
早速仕事に取り掛かる。
まずは素体を回収する。流石は俺といった所で一切傷は付いていなかった。
元の動力はぶっ壊れていたので俺が新しいエイハブリアクターを製造する。
その間に整備長には図面を渡して素体の上に被せる専用のフレームを制作して貰う。
整備長は今自身が今ガンダムフレームを造っている、その事実にさっきから興奮しっ放しである。
「あはははははははは!!!!!」
そのくせ仕事は確かなのが凄いと思う。
エイハブリアクターが四基完成する。その並列稼働を調整しつつ整備長とガンダムフレームを素体に被せてエイハブリアクターと筋肉号から取り出した操縦席を取り付ける。
「4つ?」
『ツインリアクターではなくクアトロリアクターですね』
「YEAH!!!!」
その後も二人で分担してバルバトスの予備パーツをグシオン用に改造していく。
ひたすら頑丈に、どんな状況下でも確実に動作するように。
「腕?」
『六本』
図面を渡す。
「フォウ!フォォォォオオオオ!!!!」
パワーを損ねないために腕一つごとに小型生体式エイハブリアクターが一基使われている。
武器にも手を加えた。筋肉号の闘いっぷりを見るにハンマーとも相性が良さそうだったのでハンマーにブースターを付けてみた。その他ナックルガード、ハルバート、大型バスターソード等も試しに製作する。
それとそんだけ出力があるならとダインスレイヴ擬きのハイパーロングレンジライフルも制作してみた。
ちなみに、連射出来るダインスレイヴっていいよね→いい……という経緯を経ている。
整備長に確認した所通常弾頭を使う限りなら一応法には触れないらしいのでOKだろう。
整備長にナノラミネートアーマーの塗装をして貰い、その間にグシオンのシステムを構築する。
まずは基本の戦闘モードである【
センサーの感度の最大化とそれに伴う情報処理の高速化をした【
そして【
【
そのシステム移植作業をして、調整を終えたのと同時に整備長から塗り終わったとの報告が来る。
程よい疲労感と共に整備長と二人で出来上がった機体を見上げる。
元のグシオンの緑色の影は一切無く全身蒼色を基調として所々に金色の線が走っている。
筋肉号に代わる昭弘の乗機、
【グシオン・ディアボルス】であった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
グシオン・ディアボルスを完成させた後、そのままの勢いで筋肉号も修理し、やり終えた所で整備長がぶっ倒れたので俺が整備長を休みにした。
(整備長……体力とか考えようよ……というか、筋肉号の操縦者どうしよう?)
筋肉号は壊れた手足をマンロディのパーツで修理した。
戦闘データから負荷の掛かる箇所は補強したので前よりは強度が上がっているハズだった。
名前は【
ハンマーヘッドからイサリビへと戻る。
宇宙空間を泳ぎながら思案していると、遠くにコロニー群が見えてきた。
(おぉいつの間にかあんなに近くまで来てたのか)
表向きのテイワズからの仕事として、工業物資をドルト2へ届ける必要がある。
(整備長と作業する前に覗いたら、フミタン交えて作戦練ってたみたいだけどどうなったんだろ?)
そんな事を考えている内にイサリビへと辿り着く。連絡してあったので開いているモビルスーツデッキからイサリビへと帰還した。
おやっさん達に挨拶し、モビルスーツデッキからイサリビのブリッジへ向かう。
道中年少組から散々声を掛けられる。
(たった三日会わなかっただけなんだけどなぁ)
しかし、少し嬉しくもあった。
『ただいま戻りました~!』
見れば主要メンバーが揃っていた。
「おう、おかえりシン。お前があっち行ってる間に皆で色々作戦を考えてたんだが、お前の意見も聞きたいからコレを見てくれ」
団長がそう言い、イサリビのモニターに今まで話し合い総合した情報を出してくれた。
ドルト2は主に作業従事者が住むコロニー、酷い条件で働かされているらしい。
反対にドルト3は地球から来た会社の経営者や富裕層が住んでいる。環境も整っていてドルト2とは雲泥の差だ。
その環境の差、労働条件の劣悪さにドルト2では不満が燻っているらしい。
「そのドルト2にお嬢様を連れ出す、と言うのが私に命じられた指令でした」
俺の読んでる所を見計らってフミタンが補足の説明を加える。
(で、そこにクーデリアとテイワズのアイツが運ばせようとした武器弾薬を同時に持って来させて難癖つけて殺そうとしたのか)
『……どうするんです?いっそコロニー行かなくてもいいんじゃないですかね?』
わざわざ危険に飛び込む必要は有るのだろうか?
「いえ、シンさん。私は行きます」
クーデリアがそう告げる。
「私が地球を目指したのは火星の人々が幸せに暮らせる世界を作る為でした。……でも火星だけじゃない。ここの人たちも同じように虐げられている……それを守れないなら……立ち上がれないなら、地球へ行ったとしても私の言葉など誰も聞くはずがない」
顔を上げたクーデリアの強い眼光が俺を射抜く。
「……だから私は戦います」
(……この数日で何があった!?クーデリア!?)
あの日のフミタンとクーデリアの会話は一切知らない……が、お互い本音で話し合って何か精神的成長があったのだろうか。
「ていうクライアント様の要望だ。俺達はこれを助ける……どうだ?シン」
『問題無いです。そういう事ならクーデリアさんの力になりますよ!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
団長達の作戦としてはこうだった。
まずドルト2へ行き本来の工業物資を渡す。
当然クーデリアは連れていかず、武器弾薬も無いのでギャラルホルンが来たとしても相手は引かざるを得ない。
団長達はそのまま労働者側の代表者を見つけて交渉する。
クーデリア達はドルト3に侵入。
会社側に交渉の席に着かせる事を目標とする。
いつ刺客が来るか分からないので当然クーデリアの護衛は俺と三日月さんだ。
ドルト2へ行くのは団長、ユージン、シノ、ヤマギ、メリビット。
ドルト3へはクーデリア、三日月さん、アトラ、ビスケット、俺、そしてノブリスの手先を呼び寄せて捕らえる為にフミタン。
しかし、ドルト3の経営陣はそう簡単に会話の席に着くだろうか。
顔を上げるとクーデリアと目が合った。
「分かっています。私が説得しても相手は動かないかもしれない……でも」
『最悪相手を無理矢理交渉の場に引きずり出すのも考えとかないとね』
「……はい」
(…………)
『昭弘、ハンマーヘッドでグシオンの調整するから来て』
「おう……完成したのか」
『昭弘専用機だからね、頑張ったよ』
ドルトに着く前にやり終えなければならない。
急いでハンマーヘッドへ行く為にランチをイサリビのモビルスーツデッキの片隅から引っ張り出す。
準備していると昭弘がパイロットスーツに着替えて此方へ来た。
しかし、一人ではない。
『あれ?昭弘の弟さん』
「シンさん。俺の事は昌弘って呼んで欲しい」
何故ここに?と昭弘に視線を向けると、「お前に話が有るってな」と言って昌弘の肩を叩いた。
……すっかり仲のいい兄弟に戻ったみたいでなによりだ。
申し訳無いが急いでいるのでランチの中で話を聞くことにする。
『で、話って?』
「シンさん、俺を筋肉号に乗せて下さい。……お願いします!」
昌弘がそう言って頭を下げる。
『筋肉号に?』
(確かに操縦者を探していたので好都合だけど……)
『どうして急に?あれは生半可な筋肉じゃ扱えないよ?』
「……鉄華団は俺の事を家族だって受け入れてくれた。それにオルガさんも俺達ヒューマンデブリの事を『宇宙で生まれて宇宙で散ることを恐れない誇り高き選ばれたヤツらだ』って言ってくれて……だから俺は兄貴もいるこの場所を護りたいんだ」
そう言い切り俺の目をじっと見てくる。
「俺からも頼む」
昭弘もそう言って頭を下げた。
確かにマンロディのパーツで修理したから操縦者はブルワーズの誰かがいいんじゃないかと思ってはいた。
昭弘も頼んでくるのは今まで何もしてあげられなかった弟に対する償い……かな?
ならば、ここは兄貴の顔を立てる事にしよう。
『……分かったよ。筋肉号グレートの新しい操縦者は昌弘だ。団長には俺が言っておくよ』
「ありがとうございます!!」
「……恩に着る」
二人とも嬉しそうな顔してるなぁ。
「「……グレート?」」
反応までそっくりだ。
味方にゴジラがいる状況ならではですね。