『ガンダムフレーム……!』
『俺がアイツをやるから昭弘は残りの二機お願い』
無線から『このクダル・カデル様のグシオンに敵うとで思ってんのかぁ!?』と煩いし。
一直線にグシオンに向かって前進し、向こうのハンマーに合わせて尻尾をぶつける。
威力は同程度、お互いに距離を取る。
(おぉ流石ガンダムフレーム、やっぱ他のと違って力強いな)
昭弘は筋肉号を駆り二機のマンロディに接近する。
『お前らが俺達家族に手ぇ出そうってんなら容赦はしねぇ……!』
背部の
そのまま相手に組み付き、右手で相手の機体を殴りつけた。
当然直ぐにもう一機が援護に来るが、サブアームに腰にマウントしてあったショートライフルを掴ませ牽制の弾幕を張り、敵機体を殴り続ける。
ツインリアクターの膂力を持ってして殴っているので、相手のフレームがどんどん歪んでいく。
「フンッ!フンッ!フンッ!うぉぉぉぉぉ!!オラァ!!ああ!」
コクピットにはエイハブリアクターの慣性制御が追い付かずに激震が走っているだろう。
その機体の動きと阿頼耶識が同調して 昭弘の精神も高揚していく。
何とかして昭弘の猛攻を止めようと、マンロディが筋肉号に組み付いてきた。
さっきからお互いに有効打を与えられない。
双方とも堅いし強いし重い。噛みついたとしてもそもそもの素体が頑丈で引きちぎれない。
(流石ガンダムフレーム……ってか俺か。無駄に頑丈だなぁ……)
そんな事を考えていると向こうのグシオンからの砲撃が直撃する。
(威力は戦艦級……だが俺には効かん!)
余裕綽々で受け止める。その時、レーダーに相手のグシオンが体を反転させたのが映った。
(逃げる気か?逃げるなら……ガンダムフレーム置いてけ!)
そう思い突進する俺の目の前でグシオンが背中のメインブースターを点火した。
グシオンが進みだす。
俺の予想以上の速度で。
(ちょ、速ッ!?燃費相当悪いだろコレ!?)
少し相手を舐めすぎていたかもしれない。
『昭弘ゴメンそっち行った!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
無線からシンの声がする。
レーダーには猛スピードで此方へ向かって来る敵の機体が映っている。
(問題ない。今の俺と、この筋肉号なら!)
そう思いガンダムフレームが近付く前に取り付いている敵を剥がそうとすると、相手の機体から通信が入ってきた。
『アキヒロ……って……まさか』
相手の操縦者の顔が筋肉号のモニターに映る。
『兄貴……?』
「!……お前は……!」
モニターに映る顔。生き別れた時から長い時が過ぎ、成長したがその変わらない面影は……
「昌弘……なのか……?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『昌弘……なのか……?』
相手の操縦者の顔がコクピットのモニターに映し出される。
間違いない。兄貴だ。
二度と会えないと思っていた。だが何故今になって、という両極端の感情が込み上げてくる。
「何で……何でこんな所にいるんだよ……」
『昌弘!?生きていたのか!?……まさかシンの言ってたのが当たるなんて……』
無線から『昌弘!そいつを押さえてろ!』とクダルの声がする。
グシオンの接近に対処すべく、兄貴の機体がデルマのマンロディを蹴り飛ばし俺の機体ごと移動し始めた。
『昌弘!待ってろ、今俺の仲間が援護に……』
「仲間って何だよ!俺達ヒューマンデブリを態々助けに来る奴なんかいるもんか。デブリは宇宙でゴミみたいに死ぬんだよ!」
『そんな事無い!俺も昔はそう思ってた……だがな、こんな俺を人間扱いして家族だって言ってくれる奴らがいるんだ!』
……今何て言った?
「家族……?家族だって……?」
俺の家族は父さん母さん、それに兄貴だけだった。
それだけだったんだ。
『……お前だって皆受け入れてくれる!それに……』
兄貴の声が無線からするも全て耳をすり抜ける。
(……そうかよ、俺がずっと待ってた間に一人いい目を見てたのかよ……)
心の中でどす黒い感情が渦巻く。
(……アンタは俺を裏切っ……)
『……だから、この俺の筋肉とこの筋肉号に誓って、お前を取り戻す!』
その
(……は?……筋肉?)
恨みで満ちていた心の中に変な角度から亀裂が入る。
『俺の筋肉を認めてくれて、トレーニング談義出来る仲間もいる。だから……来い昌弘!皆お前を受け入れてくれる!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「俺が動くなって命令してんだから死んでも動くんじゃないよォ!!」
無線で動くなと命令し、クダルはグシオンを昌弘が組み付いている敵機体に向かって爆進する。
グシオンのハンマーで昌弘ごと攻撃するつもりであった。
殺してしまってもそこはヒューマンデブリ、幾らでも替えはきくのだ。
今までこのグシオンで倒せない敵は居なかった。
それなのに、
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!何なんだよさっきの化物はぁ!!」
逃げる寸前に確認したが、虎の子の砲撃まで使ったのに全然堪えた様子がない。
今はこちらが速度が上なので振り切ってはいるが、追いかけて来ているのがモニターに映っている。
「どいつもこいつも!!俺の邪魔ばかりしやがってぇぇぇぇ!!!」
そうして喋っている内に敵の元へ辿り着く。
見れば相手はブースターを吹かして昌弘の機体ごと避けようとしていて、昌弘の機体はそれに抵抗していない様に見えた。
(昌弘の野郎ォ……帰ったら教育だァ!!)
だが多少位置がずれたとしても当初とやる事は変わらない。
「死ぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ハンマーを振りかぶり相手の機体に叩き付ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
当たるその直前、掴むのが緩んだマンロディの体を筋肉号が蹴り飛ばし、蹴った反動で自身もそこから飛び退く。
空振るグシオンの攻撃。
コクピットではクダルが怒りの叫び声を上げ、筋肉号へと狙いを定める。
しかし、筋肉号も負けじと相手の攻撃に合わせて右足の蹴りを叩き込む。
お互いに相手を弾き飛ばし、接近し、次こそは相手に攻撃を叩き込もうと激しく打ち合う。
途中シンが到着したが昭弘の要請で動かないマンロディ二機を戦闘領域から離脱させる。
これでグシオンは人質も取れず、真っ向から筋肉号に立ち向かう事を余儀無くされた。
筋肉号の蹴りとグシオンのハンマーの応酬が繰り返される。
しかし、遂に筋肉号の右足が負荷に耐えられず壊れた。
筋肉号の酷使された右足から折れたフレームが剥き出しになる。
もし昭弘の操縦をガンダムフレームで行ったなら十分追従出来る。たがグレイズがベースの筋肉号ではフレームの強度が足りなかった。
しかし、折れたフレームも使い様である。
昭弘は筋肉号の全ブースターを一斉に吹かし突撃し、折れたフレームをグシオンに突き立てる。
『折れたフレームは良く刺さるなぁ!!』
それは装甲に深く突き刺さり、筋肉号の機体がグシオンに固定された。
ハンマーで払い落とそうとするのを筋肉号のサブアームが腕を掴んで止める。
『うおおおおぉぉぉぉおおおお!!!!!!!』
筋肉号のカメラアイが操縦席の昭弘の雄叫びに呼応して光輝く。
実はこの時、筋肉号は操縦者の意思に応じてエイハブリアクターのリミッターを全てカットし、通常のガンダムフレームが出せる以上の力を発揮出来るようになっていた。
筋肉号【
『おおおおおおお!!!ああああああ!!!!』
列泊の気合いと共に筋肉号がただひたすらに両の拳をグシオンに叩き込む。
加速度的に壊れていくグシオンの装甲。
途中サブアームに捉えていた相手の右腕を殴り付け、ハンマーを奪い取る。
持ち替えたハンマーで相手を殴っていると、ある一撃で刺さっていたフレームから外れて吹き飛んでいきグシオンは近くの小惑星に叩き付けられた。
まだ終わらんと筋肉号が小惑星に降り立ち、ハンマーで殴り続ける。
そして遂にグシオンのダメージがエイハブリアクターが稼動出来ない程重傷となり、慣性制御が切れた。
そうとは知らない筋肉号の一撃はグシオンを激しく打ち据える。
それによって、中の操縦者は今まで慣性制御でギリギリ護られていたその身体を肉の塊へと変える事になったのであった。
ミンチよりひでぇや。
昌弘は無事仲間に。
この説得の為に筋肉号という名前にしておいたのです。