クリュセの守護神   作:ランブルダンプ

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盃を交わすのは原作と同じなのでカット。
ただ鉄華団サイドにパーカーを羽織ったシンがいてくっそシュールな絵面ですが。


怒り

団長と名瀬さんが盃を交わした後、俺はバルバトスの修理の為に一足先に式を出て歳星の整備場へと向かっていた。

 

(これでクーデリアさんはテイワズ預りに、名瀬さんのタービンズとは兄弟分か)

 

こっそりとレーダーで聞き耳を立てていたので状況は把握している。

 

(さてマクマードがどう出るか……)

 

 

 

 

暫く歩き重力ブロックを抜け、泳いで進んで整備場へと到着した。

 

……したんだが。

 

「厄祭戦を終わらせたガンダムフレーム!その72機の内の8号機!!バルバトスをこの手でいじれる日が来るなんて!!!予算は際限無し!何て最高な日なんだ!!……マズハエイハブリアクターノチョウセイニアア!モチロンフレームノショウモウヒンゼンブコウカンシナイト‼ソレニソウコウモヤクサイセンジダイノサイゲンヲ……チクショウ!ワタシハナンデモットマジメニガンダムフレームノシリョウヲアツメテイナカッタンダ‼……」ブツブツ

 

整備長(変態)がいた。

 

気付れていない様なので、先に到着していたおやっさんとヤマギの元へと近づく。

 

(何です、あの御方(変態)は)

 

「あぁ……言葉はわかんねぇが今お前さんが何を言いたいのかは凄い分かる」

 

「さっきからずっとあの調子でさ」

 

ヤマギによると何でも整備場にバルバトスを搬入しその姿を一目見た瞬間からあの調子なのだそうだ。

 

(あー、……うんうん。はい)

 

さっきから聞こえてくる言葉を拾うにマクマードがバルバトスに何か仕込もうとする等の線は完全に消えた。

 

(まぁ信頼出来る人みたいですね)

 

俺の雰囲気で伝わったみたいでヤマギも、

 

「うん、悪い人ではなさそうだね」

 

と最終的に判断した様である。

 

 

すーっと近づき、取り敢えず整備長にこっちの世界へ戻ってきて貰う為に尻尾で背中を叩く。

 

「……シカモパイロットハアラヤシキヲツケテイルソウジャナイカ!ソレナラコノバルバトスノノウリョクヲサイダイゲンヒキダセ……何だね!」

 

整備長がぐるりと此方を振り向き俺を視認した途端に目を見開いて、

 

「何だねお前は!?」

 

即座にツッコミが入った。

 

(あ、このおっさん気に入ったわ)

 

 

現実へと戻ってきた整備長に一旦バルバトスから離れて貰い、お互いの自己紹介を済ます。そして整備長とバルバトスの改修について話し合う事になった。

 

さて、俺が意思を伝える方法だが尻尾と繋げたタブレットに文字を表示させることで意思を伝えている。タービンズ相手には会話が出来ない事で苦労したのだが、その後色々と試した結果この体は生体コンピューターの様なモノらしく尻尾をタブレットに繋げるだけでタブレットを思考したままに操れる事が出来る事が分かった。

 

 

俺から整備長に俺の改修プラン、整備方法、それと俺の知っているガンダムフレームの情報の3つを教えた。

 

最初の二個は表情を驚愕と歓喜を行き来させながら聞いていた整備長だったがガンダムフレームの情報を教えていると次第に言葉を失ってポカンと口を開けたままになった。

 

(……大体こんな感じなんですが、どうしたの?)

 

タブレットを外し、尻尾を整備長の目の前で揺らして大丈夫か確かめると急に整備長が俺の尻尾を両手で掴んできた。

 

「つ、つまり!君が!ガ、ガンダムフレームを!作り出したってのかい!?あのガンダムを!?」

 

うんうん、と首を振ると整備長は俺の尻尾を握手代わりなのかブンブンと振り、

 

「嗚呼!本当に!今日は!今日は素晴らしい日だ!!ガンダムフレームだけじゃなく!それを造り出した君に出会えるなんて!!」

 

と歓喜の雄叫びを上げた。

 

「君の改修プランだが、最高だ!私から指図する事は何もない!そんなおこがましい事出来ないね!さぁどんどん指示を出してくれ!機械の使い方が解らなかったら言ってくれ!二人で最高のバルバトスを完成させようじゃないか!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それから俺と整備長はバルバトスの魔改造に没頭した。

 

(近接戦が得意な三日月さんに合わせて外装を一から作ります。図面はこれで)

 

「任せてくれ!」

 

(後、その際に腕のフレーム延長させましょう。ただ延長するのも勿体ないので俺が小型エイハブリアクターを埋め込み……やっぱ変更、いっそ全身に小型リアクターを付けて可動の妨げに一切ならないブースターを全身に配置できるように設計描き変えます。メインのツインリアクターは俺がまた新規で製造して元のと全部取り替えるんで外しといて下さい)

「OK!リアクター新造なんてギャラルホルンに喧嘩売ってるね!そこがいい!」

(アスタロトの装備を造ります。機能は絶対切断!ですね)

 

「ロストテクノロジーだよね!それ!最高!!」

 

(阿頼耶識の反応速度も三日月さんに合わせて調整しますよ!!)

 

「パイロットの彼反応速度凄いね!?」

 

(今完成予定の機体ををシミュレートしてみたんですが……わーい!割りと最強チック!!)

 

「わーい!たーのしー!!」

 

 

 

 

そして遂に完成する。

 

角は大型化し、両手首は延長され腕には専用の剣へと接続するコネクターが格納されている。

全身の至るところにブースターが増設されていてその機動力は計り知れない。

 

全身がやや丸みががった青いフレームに覆われた新しいバルバトス、【バルバトス・ルナノーヴァ】であった。

 

 

『完成しましたね……』

 

「あぁ……」

 

俺と整備長は完成した機体を見上げていた。

 

『これ以上ないって位強化しましたからね……一昨日言いましたけど現行最強機ですよコレ。造った俺が言うのもなんですが、頭おかしいですね』

 

「私もテンション上がっちゃって何かおかしくなってたね……」

 

バルバトスを見上げてふと思い付く。

 

『ロストテクノロジー再現にリアクター新造、ここで造ったってバレたらヤバくないですか?』

 

「いやぁ、その時は君らの所へトンズラさせて貰うよ」

 

そう言い整備長がハッハッハと笑っていたが、途端に真剣な顔になって考え込み始めた。

 

「いや……いっそそうするのも……」ブツブツ

 

あっちの世界へ行ってしまった整備長を置いておき、格納庫をぼんやりと眺める。

 

『……そう言えばツインリアクターが余ってますね』

 

「ブツブツ……ん?あぁ、それは予備に使うと思っていたんだが?」

 

『ウチにグレイズが一機余っていましてね』

 

「……つまり?」

 

整備長が目を輝かせて続きの言葉を待つ。

 

『ツインリアクターのグレイズってロマンありません?』

 

「……!あるとも!あぁ!これ終わったらテイワズに辞表出してくる!!君らの所の方が何倍も何十倍も楽しそうだ!!」

 

とんでもない事を整備長が言い出した。

 

『え!?流石に辞表は不味いですって!』

 

俺が慌てて考え直した方が良いですよと説得するも、

 

「何なら鉄華団の技術顧問としてでもどんな方法使ってでも行くよ!絶対説得してみせる!!」

 

もう止められない雰囲気だった。

 

『あー……。整備長ふぁいと~』

 

さて、ここで俺が何故三日月さん相手でもないのにスムーズに人と会話出来るのか、について。

 

最初は意図を伝えるのに一々タブレットの画面を見せていたので効率が悪かったのだが、途中で整備長が文字の読み上げソフトをくれた。それによって俺は人とスムーズに会話することが出来るようになったのだ。

 

追加でタブレットと繋げられるのは尻尾だけでは無く背鰭ならどこに繋げてもいいと分かったので、これで会話しつつ作業をこなせるようになった。

 

当然作業効率がぐんと上がり、たった3日で機体を新造する、という無茶が出来たのである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

あの後、作業は一段落したし今日は休み!という事に整備長と決定して、帰りがてらイサリビへとバルバトスを運んだ。

 

ハンガーに設置した後グレイズを搬出しようとしていると、丁度三日月さんが来たのでバルバトスに乗ってもらい阿頼耶識の調整をする事にした。

 

『ナイスタイミングですけど、どうしたんです?』

 

「テイワズからの荷物が運び込まれるからその手伝いをしようかなって」

 

『手伝いですか。忙しかったら後でも平気ですよ?』

 

「人手は足りてるらしいから平気だよ」

 

『了解です!なら始めますね!』

 

俺がバルバトスのコンソールを叩いていると、三日月さんが「シン、そういえば首のそれって?」と訊いてきた。

 

『あぁ、これは整備長に手助けしてもらって出来たものでして、やっと会話が出来るようになりましたよ!』

 

「そっか。これで皆と話せるね」

 

『はい!』

 

そんな会話をしつつ、三日月さんにバルバトスの調子を確かめて貰う。

 

各部に増設されたブースターを制御する為に情報量の負荷は増えたが、その大部分をバルバトス自体の脳とリンクさせる事によって前のバルバトスと同じだけの負担ですむようにしてあるのだが。

 

『どうですか三日月さん?』

 

「うん、反応が凄く良いしパワーも上がってるみたいだね」

 

『そうなんですよ!文句無しの最強です!』

 

「腕のコレは?」

 

どうやら腕に増設されたエイハブ粒子の供給コネクターに気付いた様である。

 

『それはですね、後で運んできますがγナノラミネートソードって言って……まぁ要するに刀ですけど凄い機能が有りまして……』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

刀が何なのかイマイチ理解出来ない三日月さんだったが、『食堂でアトラが使ってる包丁のモビルスーツ版です』と説明したら一発で理解してくれた。

 

細かいスラスターの微調整は後日やるとして、一応バルバトスを今すぐ戦闘に出しても平気なレベルには調整を終えた。

 

『そう言えばテイワズからの荷物って何ですかね』

 

「見に行く?」

 

『そうしましょう!』

 

三日月さんを連れて作業をしているタカキ達の元へ近づいていく。

 

「あ、三日月さんにシンさん!」

 

『どうも~』

 

「……、……!?え!?今のシンさんの声!?」

 

『遂に喋れるようになりましたよ~』

 

「……!ら、ライド!それにおやっさん!!シンさんが!!」

 

 

改めてタカキ達三人に話せるようになった経緯を説明する。

三人とも驚きながら俺の話を聞いていた。

 

 

ふとおやっさんが向こうのバルバトスを眺めて、言ってくる。

 

「しかしシンよ、随分とバルバトスいじくり回したみてぇじゃねえか」

 

『あはは、文句無しの最高の機体ですよ』

 

「……今までずっと一緒にいたがこうして話すのが初めてってのは、何か変な気分だな」

 

「あ、そうだ!俺シンさんにずっと前から訊きたかったことがあるんだけど……」

 

 

と、こんな感じですっかり荷物の事はそっちのけで話が暫く盛り上がった。

 

話しているとふと人の気配を感じてそちらを振り向く。

 

すると、マクマードが護衛を連れずにこちらへとやって来ていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

て、テイワズの偉い人!?とタカキ達が萎縮する中マクマードが俺に話し掛ける。

 

「おう、シン。整備長にきいたらここにいるってんでな」

 

『どーも、お陰でバルバトスの整備が出来ましたよ』

 

「……!しゃべれるようになったのか」

 

『整備長のお陰でね』

 

(……やっぱりコイツの俺を見る目が気に入らない)

 

 

 

『そう言えば、テイワズから預かった荷物ってどこです?』

 

とおやっさんに尋ねる。

 

「それはお前ぇの右のデカいコンテナだ。中身は……えっーと」

 

「中身は工業用の物資だ。ウチの系列の工場がドルトってコロニーにあってな、そこへ運んで欲しい」

 

マクマードが答える。

 

目の前のコンテナの中身をつい癖でスキャンする。

 

(あ゛?)

 

「ウチから鉄華団に任せる最初の仕事だ。しっかり頼むぞ」

 

(…………成る程、そういう態度に出るのか)

 

「なぁシンよ」

 

ポンと肩に置かれた手を振り払う。

 

瞬時に体を大きくし、尻尾をコンテナに叩き付ける。

 

ひしゃげるコンテナ。

 

「な……!シンさん!?何てことをするんだ!」

 

とっさに声を荒げるタカキ。だが次の瞬間俺の尻尾がコンテナからモビルワーカーを引き摺り出した事で止まる。

 

マクマード(人間)、これはどういう事だ?』

 

振り返りざまに尻尾でマクマード(人間)の体を打ち据え、反対側の壁へと叩き付ける。

「ガッ!」

 

『答えろよ。これのどこが工業用の物資なんだ?』

 

コンテナから大量の銃火器、弾薬が零れ出す。

 

「ゲホッ……落ち着けよ。シン。今お前が誰を相手に何をしているのか理解しているのか?」

 

マクマード(人間)がそう威圧し、

 

「お前には利用価値がある。今なら何もなかった事にしてやる」

 

と言ってきたが、俺の怒りに油を注ぐだけだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『調子に乗るなよ。人間如き(・・)が』

 

シンさんが先程のまでの落ち着いた様子からうって変わり、背鰭を紫色に発光させながら今までに感じた事がない程の殺気を放っている。

 

テイワズの偉い人も顔を青ざめて言葉を失っていた。

 

『なんだったら今ここで歳星を堕としてもいいんだぞ?』

 

『今お前が生かされているのはテイワズの持つ影響力、その一点だけだ』

 

一歩一歩シンさんが近づいていく。

 

『だがその価値も俺の力の前では意味を持たない』

 

『クーデリアの火星独立だって俺が地球の人類を全て滅ぼせばいいだけの話だ』

 

『只でさえギャラルホルンなんかの人間のめんどくさいしがらみに付き合ってやってるのに』

 

『いっそ、また人間を滅ぼすのも面白そうだよなぁ?』

 

「……!だったら!人間だってのならそいつらはどうなる!?何故お前はそいつらに従う!?」

 

『何言ってるんだ?こいつらは鉄華団だろ?人間とは別の種族じゃないか』

 

「……!?な……?」

 

『俺を利用出来ると思ったのか?こいつらを盾にして』

 

「……ッ」

 

マクマードの顔は理解出来ないモノを目の前にして恐怖で歪んでいた。

 

『俺は仲間を誰一人として見捨てない』

 

『だが、お前は仲間じゃない』




言葉は同じ、意思も通じる。

ただし『それ』はゴジラだった。

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